ハイスクールD×D 2人の竜戦騎   作:バグパイプ

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 遅れはせながら、明けましておめでとうございますm(__)mバグパイプです。

今年もよろしくお願いしますm(__)m




第44話 忌々しい撤退

 紅色の魔方陣が現れ、そこからグレモリー陣営の面々が姿を現した。

 

「イッセー、大丈夫?」

 

 リアスがイッセーを見つけては彼を心配する。

 

「怪我はしてるが問題ない。撤退した方が良さそうだぜ?」

 

 俺はリアスに向かって撤退を示唆する。この状況では事によっては相手側の切り札、ゾルとレイナーレが出てくるはずだ。こいつ等には悪いが逃げてもらった方が俺達側にすれば助かる。

 

「ええ、その方が良さそうね。イッセーの怪我が心配だわ」

 

「ほう、フリード達の帰りが遅いと来てみれば、面白い顔に遭うものだな」

 

 俺の背後から別の声と2二分の気配が届く。とっさに振り向くとそこにはレイナーレを抱き上げたゾルの姿があった。

 

「悪魔祓いとしての仕事をしてたとはな、勤勉なもんだ」

 

「ボス!

 

「済みませんが、後をお願いします。時渡さん」

 

 リアスが頷き、朱乃が俺達に詫びてくる。

 

「構わねえ、行け」

 

「くそっ、アーシア!」

 

 イッセーはアーシアを残して置けないとばかりに腕を伸ばすが、結界の拒絶反応が起こったのか、アーシアの手をイッセーの手に走った電流が弾いてしまう。

 

「い、イッセーさん!」

 

「アーシアッ! アーシアーッ!」

 

 リアス達は転送用の結界を使ってこの場から離脱する。それを確認した俺は肩を下ろした。

 

「ふう、ようやく消えたか」

 

「あんれぇ? もしかしてあの悪魔達ってアンタには邪魔だったぁ?」

 

 フリードは首をかしげながら皮肉をこめているような素振りで確かめてくる。

 

 否定する理由も何もないのでしれっと答えることにした。

 

「そうだよ。足手まといを庇ってまで怪我したいだなんてのは、マゾだけだろ?」

 

「あっ、そういう事を言っちゃうんすか? 大した悪魔っすね」

 

 俺の返答に感心でもしたのか、口笛でも吹きそうな調子でフリードが軽口を叩く。

 

「悪魔だから足手まといは要らねえ。欲しいのは背中を任せられる戦友だけだな」

 

 俺はニヤリと不適に笑ってみせる。

 

「カァ~ッ! しびれちゃいますねぇ。カッコイイし、憧れるぅ!」

 

 俺の台詞に拍手しながら賞賛して食えるフリードだが、その目が笑っていないところを見ると口先だけの様だ。

 

「で、どうするんだ? 野暮が入ったから仕切りなおすか?」

 

 俺はやる気の削がれた現状に対して区切りをつけるために仕切り直しを申し出てみた。個人的にはこのままお流れに持って行きたい所だが。

 

「それもイイっすけどぉ~っ、俺様的にはこのままヤッちゃいたいきぶんなんすよねえ♪」

 

 ……やはり状況は止まる事を知らないらしい。

 

 だが予定外は立て続けに起こるものだと誰かが云っていた。そして逸れは起こるべくして起きてくれた、嫌な形で。

 

「……そう言うなよ、連中が勝てない戦いをすると思うか?」

 

 上から聞こえて来た男の声に俺達は一斉に上を見上げる。その視線の先にあるのはレイナーレを横抱きに抱えて滞空するゾルの姿だった。

 

「ボスにあねさん!」

 

「逃げるなら今のうちだぜ? 負け犬」

 

 フリードが喜ぶ中、ゾルが俺達に遁走をそそのかしてきた。

 

 あの台詞を前にして逃げ出せる者が居るのか。3人に視線を向けると皆同様に歯軋りをしてゾルを睨みつけている。トリーにいたっては持っていなかったはずの剣を鞘から抜き払い、切りかかる寸前の所まで来ていた。

 

 だが、この場で全員が掛かってもゾル一人を倒すどころか、手傷さえ負わせることは出来ないだろう。堕天使トリオが足かせになって俺とトリーが実力を発揮できずに。そうなれば俺は隊長失格の烙印を押され、部隊は解体の憂き目を見る。

 

 出来るか!

 

 俺は歯を食いしばり、ゾルを睨んでから辛い選択をした。

 

「……撤退するぞ」

 

「マジッすか!?」

 

 撤退命令を下す俺にミッテルトが目を見開く。他の二人もわめきだす中、トリーが俺に問いかけてきた。

 

「全部を考えてのことなの?」

 

「……全部を考えてだ」

 

 俺はトリーの質問に端的に答える。するとあいつは理解してくれたのか3人をまとめだした。

 

「さあ、撤退するわよ。アーシアちゃんならまだ大丈夫だろうから」

 

「しかし!」

 

「隊長命令なのよ」

 

 食い下がる3人にトリーが切り札を出して黙らせる。みんなの不満は分かっているが、俺は皆を守る決断をしなければならない。

 

「賢い指揮官だな、無策は命を落とすからな」

 

 ゾルは俺の指揮に対して目を細める。だが俺たちを嘲笑することは忘れてくれない。

 

「すまないアーシア」

 

「いいんです。これが最善だと思います」

 

 俺はアーシアに詫びを入れると彼女はその瞳の涙を堪えて頷いた。

 

 そして俺達は苦渋の撤退をした。

 


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