最近は多忙で遅れてすみませんですm(__)m
それではどうぞm(__)m
俺がゾルのことで悩んでいるところに、例の3人組が姿を現した。
「あれ、カケカケさん、帰ってきてたんすか」
「朝帰りしたかったんだけどな、相手が未成年だから出来なかったんだよ」
俺はミッテルトに対して軽くうそぶいて見せる。ただの食事会だ、朝帰りも何も無い。
「やったよ! アタシはやったんだよ! 見てみてよ!」
ミッテルトが見順の左胸を指差しながらはしゃいでいる。その指差した先を見るとそこには、輪郭線の無い、トライバルタトゥーの様に見えるが、間違いなく竜を模した紋章が描かれていた。長袖Tシャツの上からうっすらとだが、間違いなく見える。
「竜戦士になれたのかよ、お前」
「へへ~ん! 見たか!」
「本当なら培養槽まで使って鍛え上げる予定だったのにさ、その娘はやってのけたのよ」
近づいて来るトリーの声が聞こえたので見上げると、ミッテルトの後ろにトリーが立っていた。
実は組織の鍛え方では培養槽を利用し、電気信号を利用した筋肉鍛錬法を利用し、鍛えた筋肉をなじませるための組み手をこなすことで竜戦士に鍛える計画を立てていたのだが、それが良い意味で頓挫した。
「他のやつ等も意外と根性を見せてくれたわよ?」
トリーの言葉に俺は思わずトリーの後ろを見てみる。すると見事に自分の右腕を取り戻したドーナシークがそこに居た。
「ドーナシーク! その腕!」
「うむ、驚くほどの再生力だ。歴戦の傷は無いが、間違いなく自分の腕が蘇った」
よほどの事なのか、静かながらも興奮の隠しきれない様子でドーナシークが何度も自分の右腕を撫でる。無理も無いだろう、あの切断面を塞いだところで魔力を使っても再生は不可能と、俺は見ていただけに脅威的だ。
「私の方も見なさい」
ドーナシークの腕をまじまじと見ていた俺にカラワーナの声が降りかかった。見上げるとカラワーナがうっすらと竜の文様が線となって浮き出ている左胸の所を自分で指差していた。
「この状態は竜騎士か」
「そうなのよ! 私はやったのよ!」
小さくガッツポーズしながらカラワーナが喜びを露にする。よほど嬉しかったんだなと見ていて微笑ましい。
俺は補佐官に視線を移し、次の事を尋ねた。
「それで補佐官、次の工程はどうしますか?」
「そうだね。カラワーナは培養槽で調整をして、ミッテルトは竜気の修行、ドーナシークは身体の具合を確かめながら身体強化の続き、だね」
「それで今回は間に合うんですか?」
「うん、無理」
俺は補佐官の修行状況を聞いて、この問題に対処できるかを尋ねると彼女は無理だと答えてきた。
「正直に時間が足りない、って所だよ。良くてミッテルトだけが竜戦騎になれるけど、最悪カラワーナが竜騎士、ドーナシークが竜戦士になった所で実戦だろうね」
要するに、ミッテルトだけが竜戦騎になれるかどうかといったところなのだろう。戦力としては難しいところだ。
「ずいぶんと竜戦騎にこだわるな。それだけの強さを持っているのか?」
「ドーナシーク、それは当然だよ。何たって1騎で国を落とし、2騎で世界を落とし、3騎で星を落とすと謳われた竜戦騎だからね。本部も間に合わなかった場合は後々でボクを派遣する計画を立てるって言ってたよ」
ドーナシークの疑問に補佐官がハッキリと断言する。彼等にとっては下級の堕天使が持っている力とは到底思えないのだろう。だが竜戦騎は根底から考え方が違う。
全ての魂はその中に竜が棲み、その力の解放を待ち望んでいる。竜戦騎はその竜を食い、力と変えて災いに抗うのだ。
そう、災いに……。
「それで補佐官、その低身長には抗えないんですか?」
「ムカッ!」
ズドン!
俺が補佐官の身長の低さを遠まわしに災難というと、即座に金蹴りが飛んできた。天使で145も無いのは切ないのではと思っていたのに。
「うるさい、うるさい、バカァッ!」
「お、う、げ、お、お……」
正面からの直撃に俺は呻き、その場に崩れ落ちる。補佐官はそんな俺を捨て置いてリビングを出て行った。
「……後で謝るんすよ?」
「お、おふこーすぅ……」
俺は廊下と俺を交互に見やるミッテルトの言葉に賛同する。
「ちゃんと謝っとかないと、怖い旦那さんが出てきちゃうからね」
「「「「えっ?」」」」
トリーの台詞に俺達4人が硬直した。
「あれ、補佐官って人妻だよ? 聞いてない?」
「「「「聞いてないよぉ~っ!」」」」
俺達はトリーのはてなマークに向かって絶叫してしまった。
旦那って、誰の女なんだよ、補佐官!
ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ!
俺が疑問に思って悩んでいる時に通信機から呼び出し音が鳴った。
「はい、時渡です」
『呼ばれてないのにジャ、ジャ~ンッ! って呼んでた?』
通信回線を開くと指令が顔を出す。
「呼んでません」
『呼べよぉ~ッ!』
俺がきっぱりと否定すると司令がなれなれしい声で訴えてきた。
まったく司令は何の用で通信してきたのか……。
『とにかく妻の泣く声が聞こえたので、旦那の登場だ』
司令はそう言って指を揃えた左手の甲を俺達に向けて見せ付けてきた。その薬指には金色のリングが嵌められている。ただ、金というには妙に違和感のある色彩を放つ金属で作られたリングだった。
俺達はそのリングを見て絶句した。
『君の誠意を見せてくれるね? 時渡君』
俺は言われるがままに土下座した。