ハイスクールD×D 2人の竜戦騎   作:バグパイプ

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どうもバグパイプですm(__)m
話が山場を迎えました。
あと少しで新章に移ります。
それではどうぞm(__)m


第32話 事態は深刻なようです

 通信を終えて朝食を取った後、俺達はドーナシークとカラワーナの生命維持装置を確認してから休憩に入った。朝御飯が食べられない2人なだけに栄養剤の点滴も用意する。

 

「生命維持装置に栄養剤の点滴まであるだなんて、どういう仕事をしてるんすか、あんた等は」

 

「生態調査?」

 

「お笑い芸人?」

 

 ミッテルトの質問に俺達は顔を見合わせながら答える。

 

「何で疑問形なんすか!?」

 

「いや、まあ、何となく?」

 

 俺は思わずその場を濁しに掛かる。

 

「はぁ、もうイイっす」

 

 ミッテルトは追求を諦めたのか、大きなため息をついて肩を落とす。

 

 本来ならこの後、仕事として調査に出かけるのだがあいにくと患者を放り出して仕事に出れるほど酷い男ではない。

 

「一応、峠は越えたんすよね?」

 

「まぁ、命の危機というのは大げさだけどな。後の問題は本人達の問題だ」

 

 俺は命の他にある1つの危機を仄めかす。戦うものにとって死は2つある。肉体的な死と、戦う事から逃げる精神的な死だ。

 

「その辺りはおいおい考えるとして、一先ずは何とかなったでしょ?」

 

 トリーが俺達の話に割り込んでくる。

 

 トリーが俺を背中から抱きしめるように腕を回してくる。その光景にミッテルトが見とれている。

 

「はあぁ、なかなか絵になるっすねえ」

 

「だろ? これで下が付いて無けりゃあ最高なんだけどな、付いてるんだよ」

 

「えっ!?」

 

 あっ、やっぱり硬直したか。

 

 ミッテルトはトリーが女だと思い込んでいたらしく、真実を知って愕然としている。

 

 そんな所に、俺の携帯電話にチャリィ~ンッという音と共にメールが届く。メールは本部からで、増援物資は1時間後に届くとの事だった。

 

「トリー、追加の物資が1時間後に届くから、届いたら再生培養を始めるぞ」

 

「了解♪」

 

 追加物資が届くという知らせに俺達2人は浮かれ始めたところに、

 

 ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ!

 

 不意に通信機から受信コールが鳴り響いた。俺はそれを受けて通信回線を開く。

 

「はい、時渡です」

 

『時渡か? 不味い事が見つかった。神界からの緊急呼び出しで聞いたんだが、魔界からの流刑囚がお前等の次元に来てるそうだ』

 

 通信に出てきたのは副司令で、早口に事の次第をまくし立てる。

 

『流刑囚は数日前から潜伏して何か起こすかもしれない。詳しい資料はデータでそっちに送る』

 

「誰が居るって言うんですか、副司令」

 

『そいつは『罪悪の爪痕』ゾル・ヅェベルだ。奈落からの流刑だそうだ』

 

「ゾルですって!?」

 

 副司令の言葉にトリーが目を剥いた。

 

 ゾル・ヅェベル、魔界において魔界貴族50人殺害の罪状で司法庁の1つ『奈落』に収監されて流刑、次元の狭間へ追放された囚人である。また、その際の余罪調査には裏でトリーが借り出されたのは機密事項である。

 

 なお、流刑は魔界では死刑と同等に重く、流刑囚は単独で一国を脅かすほどの能力を有すると言われている。

 

『気をつけてくれ、神界のアガスティア様もお前達とゾルが衝突する可能性を示唆した。増援を送りたいが転送システムの調整が長引いてる状態だ』

 

 副司令は増援を口にするが、派遣のための転送装置の調整が難航しているとも言う。また、神界でも数少ない予知能力者の1人、アガスティアが問題との衝突を示唆したことも。

 

『調整後に即実動は不安だが、それでも予測日終日に間に合うかどうかだ』

 

「それはマズいですね。俺達も事態を警戒しますけど、空振ってほしい所ですよ」

 

『念のため、司令がお前達にオーバーランク決戦装備の許可を出した。気休めだがそれで凌いでくれ』

 

 不幸中の幸い、俺達の竜鎧の装着許可が下りていた。俺達竜戦騎にとって竜鎧という鎧はまさに皮膚、体内を暴れまわる竜気を制御するための安全弁だ。それ故に竜の頭蓋骨が鎧の一部として使われているのだ。

 

 しかしそれを気休めと言ってきた事で俺達は事態の深刻さを思い知らされた。

 

 だが幸いはまだ続くようだ。

 

『それともう1つ、転送する助っ人は強襲部隊ダークネスの幹部以上を最低でも1人は送る。これは俺の権限での決定事項だ。安心してくれ』

 

 俺は副司令の言葉に涙が出そうになった。ダークネスの幹部といえば、神に近い戦闘能力を有する消滅刑を待つ囚人にして、スタッフ・ド・RBの頂点と誇る最強戦力だ。その幹部の人数は6名、その上にそれらを束ねるダークネスの隊長が存在する。

 

 俺の知る限り、戦場で司令達以外で頼れるのはダークネスの幹部達しか居ない。その頼みの綱が1人でも必ず来てくれるというのだから副司令様々だ。

 

『状況は深刻だが、悲観するほどじゃないことを留意してくれ』

 

「了解しました」

 

 通信を終え、俺達は今の状況の整理を始めた。

 

「じゃあ、一旦整理するぞ」

 

 俺はそう言って情報の整理を始めた。

 

「まず問題なのはゾルとかいう危険人物がこの世界に来ている。もしかしたらレイナーレとか言う堕天使と合流した可能性がある訳だ」

 

「でもその分の埋め合わせとして追加の物資やミッテルトたちの離反、そして」

 

「ダークネスからの増援だ」

 

 状況は悪い方へと転がっているのは否めないが、悲観しないで済むだけの要素も存在している。副司令が権限を発動させてまで増援を出すということはそれだけ心配しているということだ。

 


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