物語は1巻の半分くらいまで来ました。
そして今回から緊急事態へと加速して行きますのでよろしくお願いしますm(__)m
それではどうぞm(__)m
翌日、俺とトリーはオカルト研究部部室に行き、昨日に遭遇した若い神父の件で情報を求めることにした。
「……貴方はどうしてこうも騒ぎを持ち込んでくるのよ」
「持ち込みOKにした覚えはねぇんだけどよ、相手が勝手に持ってくるんだ、摘んでくれってさ」
「何処のお店よ、それ」
呆れ顔のリアスに対して困った顔で肩を竦めて見せる俺。
「あらあら、困ったお話ですわね」
「朱乃、他人事の様に言わないでちょうだい」
困った顔を見せながら紅茶を入れてくる朱乃に対してリアスが口を尖らせる。
「……それで時渡さんは相手の様に、摘む物を持ってきてはいないのですか?」
「……妙に鼻の利く子猫ですね。尊敬します」
「私の声と口調を真似しないでください」
俺はお菓子を遠まわしにねだってくる小猫に対してその声を真似しながら懐からチーズケーキを1ホール取り出す。
「お見事です」
無表情のようで微かに頬を上気させている小猫に、俺はほほえましいものを感じてしまう。
「物騒な神父が出てきた以上は何らかの問題に発展する可能性が出てきたわけだが、そっちの方で何か情報を掴んでないか?」
「教会にシスターと神父、何かが行われようとしているのは確かだけど、それだけじゃあ何とも言えないわ。もう少し情報がほしいけど」
俺の問いかけに対してリアスは情報不足を悔やんでいる。この程度で指揮官とは先が思いやられる。
俺はトリーに話を振ることにした。
「トリー、現状から推測の範囲で構わない。何か予測できるものは無いか?」
「あのねえ、堕天使が先回りでこの町に入り込んでること、忘れてないかしら?」
流石トリー。その一言でパズルのピースが大幅に組み合わさった。
「そうか! 堕天使が二人を呼び寄せて大掛かりな儀式を計画しているという事か」
「そういうことよ。後、神器がなんらかの関係を持っているのは間違いないけど、その辺りは要調査ね」
現状を理解した俺にトリーはパズルの残りのピースとして神器の存在を提示してくる。確かに堕天使達は至高の堕天使を目指していると公言していたから、それが関係しているのは明白だ。ただどんな神器がどう関係しているのかが不明と言ったところだろう。
「そうね、イッセーが神器のおかげで殺されたことを考えると、また神器を巡ってイッセーが狙われることも考えられるわ」
「えっ、マジっすか!?」
「だから心配なのよ」
リアスはそう言ってイッセーを引き寄せてその胸に抱きしめる。
「私は私の大事な下僕が害されることが堪えられないわ」
「部長……」
リアスの大きい母性に顔を埋め、どう答えていいのか分からないイッセーはたどたどしく呟く。
「そこを何とかするためにも基礎鍛錬は急務なんだろ。現状ではイッセーと木場、搭城のスリーマンセルを完成させなければ互角な戦い方までしか出来ないからな」
「そうね。時渡さん、悪いのだけれど今日の訓練は」
「分かっているさ。俺達だってこの件で調査したい事が見つかったんだ。ここの鍛錬に期待するよ」
俺はリアスが言い難そうにしているのを見て自分達も用事が出来たと伝えておく。妙に心がざわついて落ち着かないぐらいだからな。
正直な話、これ以上あの巨乳に顔を埋めてとろけているイッセーを見ていると茶々を入れたくて仕方が無いのだ。いや、突っ込みとしてゲンコツも有りか。
オカルト研究部からの帰り道、俺達は話を整理するために公園に立ち寄った。
「ほらよ」
「サンキュ♪」
俺は俺の奢りの紅茶の缶をトリーに放り、アイツはそれを受け取る。
「それで、さっき言いそびれていた事が有るんだろ?」
「さっすがカケカケ、冴えてるぅ」
「茶々はいらねえよ」
「はいはい。確かに至高の堕天使になりたいなら神器に手を出すのは必然ね。人間にしか渡されない絶大な道具なら、どんなものでもお宝よ」
トリーはそう言って紅茶の缶のプルトップを起こし、口をつける。
「だがそこで問題だ。イッセーは悪魔として転生しているが、神器を保有したままだ」
「でもそこに別の神器を持った誰かさんがやってきたらどうかしら?」
「そういう方向もあったか」
「あらゆる可能性を予測して調査する、それが私達シーカーのはずよ? 違うかしら」
トリーが俺に思わせぶりな視線を向けてくる。恋人同士ならここからキスの1つにでももって行きそうな場面だ。
ガサッ……
俺達は近くの植込みから音が鳴るのを耳にしてその方向に振り向く。
「あ、アンタら……」
そこには植込みから這い出たばかりの、ボロボロで満身創痍なミッテルトと、血だらけになって気絶しているカラワーナ、そして右腕を失っているドーナシークが居た。
「た……たすかっ……たっす……」
ミッテルトはそう言って倒れると、その場で意識を失った。
何がどうなってやがる!
俺は悪い方向へと駆け抜けていく事態に怒りをかみ締めることしか出来なかった。