今回はちょっと迷いましたが、何とか書き上げました。それではどうぞm(__)m
「ふぅん……こんな所に居たの」
少々自意識過剰な雰囲気が見える瑠璃色長髪の女堕天使が目の前までやってきた。
「貴方がミッテルトとドーナシークをあんなにしたヤツかしら?」
「あんなにしたヤツは別に居ます。他を当たってください」
俺はしれっと相手の問いかけをはぐらかして歩き出す。しかしその歩みを光の槍で遮ってくれた。
「通すと思って?」
「通るだけさ」
咎める堕天使に対して俺は其の光の槍を片手で掴み、そのままへし折る。手ごたえは指ぐらいの太さの枝を折ったような感じだった。
「なっ!」
「じゃあな」
俺は驚く相手を放置して帰ろうと歩き出す。
「帰りがけなんだ、邪魔しないでくれよ」
「このカラワーナ様を無視するだなんで、つれないわね」
カラワーナはそう言って両手に光の槍を出現させ、それを握り締める。
そこで俺は背後、数キロ地点から高速で接近してくる覚えの有る気配を感じ取った。そう、あのトリーさんだ。
「カァ~ケカケ~ッ!」
だが、声が聞こえてきた後、数メートルの所で気配が止まった。俺はそれを不思議に思い、振り返ると先日に触発されたのか、エレガント重視のゴシックファッションで滞空しているトリーの姿があった。
「ゴメン、そいつの相手してて。私は帰るから」
俺はあいつの言動と格好に卒倒してしまった。
「堕天使担当のお前は何処行ったっ!」
「いつから私の担当になったの!?」
「堕天使相手にブイブイブイ言わせてたお前はどこ行ったっ!」
「コンバインは一回だけよ!?」
「オラオラ言い放ってたお前は何処行ったんだよ!」
「幽霊なんて背負った覚えはないわよ!」
思わず掛け合い漫才してしまう俺達だが、往年のコンビだけあって息はピッタリだ。
「私を無視してんじゃないわよ!」
すっかり取り残されていたカラワーナが光の槍を投げつけてくる。しかし俺達はそれを難なく避けてしまう。俺達の高速機動は軍隊式で、そのまま両側の塀に取り付いては遮蔽物となる電柱の影へと取り付く。
そして2人一組の織り成す阿吽の呼吸が発動した。
トリーが電柱と塀の間から魔力弾を牽制に打ち出し、俺が電柱に手をかけて電柱の前に躍り出る。
カラワーナが打ち出された魔力弾をその手で弾くと同時に俺は電柱を踏み台にしてロケットダイブで彼女を押し倒し、その場で組み敷いた。
「ぐっ!」
「マウント・ポジション♪」
「やっちゃえ~っ♪」
「なっ、何を……あひゃはははは!」
俺の下でカラワーナがもがきだすが、俺がそれを別の意味へと切り替えさせた。たっぷりと笑えるようにくすぐってやるから、笑ってくれ。
「ふ、むなしい戦いだった」
「そうね、悲しい戦いだったわ」
数分後、俺達は仁王立ちで勝利のむなしさを実感していた。その足元のカラワーナはというと、顔面崩壊も凄まじく、無様な屍と化していた。
「副司令なら、強制絶頂で瞬時に無力化してただろうけど、俺はこれが限界」
「そうよね、あの方は排除となると手加減をなくすから」
俺達は敵性勢力の無力化に対する考え方の違いを話し合い、互いにため息を漏らす。
えっ?カラワーナの事ですか? そのまま放置です。だって関わりたくないから、2人とも。
俺達はそのまま気絶したカラワーナを放置して拠点へと帰っていった。そして……。
『どわははははは! ボディコン女をくすぐって気絶させてから放置だなんて、すげえ下種だな! お前等、気をつけろよ? 後々でその女に後ろから刺されないようにな』
報告の際に、通信機越しに司令に笑われた。もちろん、おまけも付いてきた。
『トリー、お前の調査資料についてはもう少し纏め直せ。このままでは依頼人に報告しづらいだろ。せめて竜脈と地形地図の詳細を添付しろよ』
「すみません」
『次に時渡、報告書の中に参照の文献を載せるのは良いが、その文献を見れるのはそっち側でだけだろ。せめて文章の抜粋を載せて検証させてくれよな』
「すみません」
俺達は報告書の不備を謝罪した。