本編も20話まで続きました。皆さんのおかげですm(__)m
それではどうぞm(__)m
次の日の午後、俺は調査の仕事をトリーに任せてオカルト研究部の部室に来た。
「こうして見ると、珍妙な部屋だよな、ここ」
「部外者が何様のつもり?」
俺の独り言を耳ざとく聞きつけたのか、その顔に引きつった笑みを浮かべているリアスが俺の後ろに立っていた。俺はまだ部室のドアを開けただけなんだが。
「昨日のの話の返事を持ってきた相手に、とんだご挨拶だな」
「そういう貴方は色好い返事を持って来たとでも言うのかしら?」
おどけて見せる俺に対してリアスは答えを求めてくる。
「ああ、仕事は明日からということで引き受けることになった。ちゃんとウチの司令から許可を得てきたぜ」
「そう、それは喜ばしいことね」
俺の快諾にリアスは固い表情をほころばせる。そこで俺は懐からパウンドケーキの包みを取り出した。
「ということでお近づきの印にパウンドケーキを焼いてきた。皆で食べてくれ」
「あら、気が利くのね」
「気が利くから、こんな所にまで気が回るんだ」
俺はリアスのお世辞を合いの手に、懐から紅茶の缶を取り出す。午前中に現地フランスまで飛んで買い付けてきた本場物だ。
「フィレンツェ・オレンジペコの上物を用意してみた」
「……本当に気が利くのね」
あっ、リアスのこめかみに何か浮いてる。
俺は紅茶の缶をリアスに手渡してその場を立ち去ろうと建物の出口へと足を向けた。
「あら、ゆっくりして行かないの?」
「トリーに現場仕事を任せてるんでね、俺は拠点に戻って書類仕事さ」
「あら、それは残念ね」
つれない返事の俺に対して残念そうに呟くリアス。だが俺はこの時、今まで感じられなかった微かな悪魔の気配を感じた。弱々しく、か細い感じの僅かな気配を。
「なあ、グレモリー」
「何かしら?」
「この建物の中に居るのは俺達だけじゃないだろ?」
俺は建物の奥の方に視線を向けながらリアスにその存在を確認する。
リアスはそんな俺に対して感心した表情を見せた。
「あら、気づいたのね」
「流石に、とは言えないな。ここまで微弱だと俺には察知するだけでも一苦労だ」
俺は肩をすくめて自虐してみせる。それにこの気配ってのはどうも結界か何かに包まれているのか、俺には追いかける事が出来ない。トリーでも苦労するだろう事は予想できる。
「そうなのかしら? 貴方なら簡単に出来そうに思えるのだけれど」
「そこまで有能なら今頃組織の幹部様をやってるよ」
リアスの不思議そうな顔を受けつつ俺は自分の能力の限界を口にする。そう、司令ならどこまで暴露するのか解かったものではない。副司令なら種族とかまでは解析できると思う。
「まあ、私に言えるのはここには誰かが住んでいる、それだけよ。それ以上は事情を汲んで頂戴」
「分かってるさ。言える時を静かに待つとしよう」
多少後ろ髪を引かれはするが、俺は多くを聞かずに時を待つことにした。彼女自身、主としてのジレンマがあるのだろう。
楽しみを後回しにすることにした俺はそのまま拠点への岐路に向かって歩き出した。
……そして今、俺は目に付いた遠くの黒い翼のボディコン女を見て後悔している。夕方は逢魔が時と言って魔に出会う時間帯だと誰かが言ってたが、堕天使に会うだなんて誰も言ってない。
あの時、もう少しでもいや、部室でグレモリー眷族を待ってお茶をしてから帰る、という選択肢を選んでも良かったのではないかと。いや、これは未練だ。そう、未練でしかない。
うむ分かった。これから夕飯のための買い物へと商店街へ行こうじゃないか……でも商店街はあの道の先の十字路を越えないと行けない。良し、ここ最近で通いなれた喫茶店にでも……、商店街の中だった。仕方ないからスーパーへ買い物……って、スーパーもあの十字路を右に曲がらないと行けなかった。
あの女に遭遇したくない一心で頭を捻るが、答えはガンガン潰れていく。
俺の願望むなしく、相手は俺の存在に気づいたのか距離をつめてやってきた。
「そこの貴方、ドーナシークとミッテルトという名前に聞き覚えは無いかしら?」
「覚えはありません、知りませんとも全くで」
俺は相手の質問に全力で否定して逃げようとする。でも相手は逃げしてくれる気配を素振りも見せない。
「あら、知っていそうな口ぶりじゃないのさ。お姉さんと、ちょっとそこまで付き合わない?」
「えっちらおっちら突き合う趣味は無いので、他所を当たって下さい」
こういう時のトリーさん、貴方は一体何処ですか!?