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「何だよ、アンタら」
目の前のゴスロリ少女が見た目を裏切る口調で俺に問いかけてくる。なんだろう、この胸に去来するむなしい切なさは。
「アタシが至高の堕天使を目指してるミッテルト様だって判って言ってるのかよ」
「何だろう、物凄い残念臭が漂っている」
「主にお許しいただけるのなら、彼女に情操教育を施して、正しい道に導きたいわね」
ミッテルトと名乗るゴスロリ堕天使に対して俺とトリーは残念なものを見る目で彼女を見てしまう。彼女の言う『至高』という単語にトリーが僅かに反応していたのが気に掛かるが。
「そんなことしてて大丈夫かよ?」
「大丈夫だイッセー、俺達があんなのに遅れをとるとでも思うか」
俺は一誠の動揺を鎮めるために確認を取る。だがそこにトリーが居たら話が反れる。
「ええ、遅れをとって背後から羽交い絞めにしてえっちらおっちら……まぁヤラシイ」
「あのなあ、俺ならあのくらいは押さえ込めるんだよ」
「そう、押さえ込んで上からたっぷりとえっちらおっちら……まぁヤラシイ」
トリーは自分の口元を押さえてニタニタ笑っている。
「アンタら、アタシを無視して何駄弁ってんだよ! むかつく!」
俺とトリーの夫婦漫才に御立腹の様で、ミッテルトがじたばたとわめきだした。
「だいたい何なんだよ、もうっ! あのドーナシークが散歩から帰ってきたら変になってるし」
「ドーナシークっ!?」
ミッテルトの言うドーナシークという単語に俺達は反応し、思わず問いかけてしまった。
「ソイツが、どうかしたのか?」
「どうかしたかも何もさ、帰ってくるなりファッション雑誌を読みふけってるしさ。挙句にあの渋い格好が好みだったおっさんがさわやかな中性ファッションを決め込むようになっちまったんだよ! アンタ等、何か知らな……いっ!?」
俺達を問い詰めようと顔を向けてきたミッテルトが、トリーが手にしてる大きな化粧カバンとハンガーに吊るされた一着のゴスロリ服を見て仰天した。
「……ゴスロリの真髄が分かっていない様ね、お嬢ちゃん。ちょっとお兄さんに任せてみない?」
「……ぜっ、全力で、遠慮しちゃう……かな?」
圧倒的な黒いオーラを放つトリーに臆し、ミッテルトがじりじりとたじろぐ。
ファッションセンスに一言あるトリーが未完成のゴスロリを見逃すのも妙な話ではある。俺としてはあれはあれで良いと思うのだが、あいつには許せないものが有るようだ。
「何なんだよ、この展開」
「イッセー、この先は専門業界だ、俺達スケベが居る世界じゃない」
俺はうろたえているイッセーに、世界が違うと言って引き止めた。あそこは、間違いなく俺達の居る世界じゃない。
「たぁーすけてぇーっ!」
「お~っほっほっほっ! この程度のセンスでゴスロリ服を着こなしたつもりだなんて大した至高ねぇ! お兄さんが本格派の至高の頂を教えてあげるわ! 感謝なさい!」
トリーの目がギラギラと輝き、ミッテルトを竦みあがらせる。強さに目覚めたトリーがここまで豹変するとは、俺でも予測出来なかった。何が遭ってこうなってしまったのか。
「ひいいぃーっ!」
ミッテルトの悲鳴とトリーの汗が飛び散る中、俺達2人はそれを見守ることしか出来なかった。
あっ、ミッテルトが服を脱がされて下着姿になった。
次の瞬間には黒地に銀糸がふんだんかつ上品に使われたゴスロリ服が被せられた。しかもその足には所々に赤いバラのあしらわれた黒の網タイツが履かせられ、赤いエナメルパンプスが履かせられた。
そしてミッテルトの顔をしっかりとナチュラルメイクで仕上げていく。しかし口紅は濃いルージュを決め込んでいる。
「……フッ」
トリーが小さな吐息と共にその動きを落とした時、その場に立っていたのは先ほどとは雲泥の上品さを放つミッテルトだった。
トリーの顔は恐ろしいほどの満足感と達成感に包まれてて神々しかった。
「これが、貴方の届かなかった至高の片鱗よ。いかがかしら?」
そこらの一流モデルが泣いて逃げ出すほどの美に包まれ、ミッテルトはその口から声も出せずに居る。トリーの変装術は一級品とは聞かされていたけど、同僚の俺でも驚きを隠せない。
トリーを評価した人物? その人は一流デザイナーですよ? トリーのセンスに打ちのめされて廃業したけど。
「……すっ、すっげーっすっ!」
その顔に満面の笑みと興奮を浮かべながらミッテルトが喜びに打ち震えている。
俺は思わずイッセーにポツリと内心を漏らしてしまった。
「……イッセー、堕天使の事、トリーに押し付けても良いかもしれないな」
「……そっすね」
イッセーも俺に賛同してくれた。