という事で、本編の始まりです。
あれから1週間が過ぎ、調査員として派遣されたこの俺は、到着したこの駒王町にて調査を開始することにした。調査するにあたって町にある図書館や本屋といった文献が見れる施設を中心に確認する。
文献で分かった事としては双方共に世界観としては酷似していて主だった違いは見られない、という所だった。だが、魔界に酷似した冥界や天界があるものの、神界が存在しないのは不思議に思える。俺の居た世界では天使の世界である天界、その上に存在する神々の世界である神界という位置づけで存在しているのだが。
何件目かの本屋を出た俺が得た推測は以上のことだ。
そして休憩とばかりに公園へと向かった俺の目には妙なアベックが映った。男の方は高校生らしい外見で、純朴そうな浮かれ具合を見せている。だが少女の方はなぜかそれを冷笑で交わしている。しかも俺の感覚は彼女を堕天使として認識していた。
「天使にしては神聖が弱いな。だが神聖が混じっているとなると悪魔とは言い切れないし」
俺はアベックのことが妙に気になり、後を付けるように公園へと入り込んだ。
少年は少女の横を歩いているがどこか落ち着きが無くそわそわしている。反対に少女の方は僅かながらその顔に笑みを浮かべながら彼を見つめているが、どこか違う光景を見ているような目つきだ。
「どういうこった?」
俺は物陰から二人を見つめながらもその異様な雰囲気に首をひねる。しかも異様な雰囲気を感じさせているのは彼女の体からかすかに邪気がにじみ出ている事だった。少なくても彼女の方からこの先に何かを起こすというのが見え隠れしている。
(規約第1条、救える命は意地でも救え)
俺は心の中で組織の規約を詠唱する。俺が組織に入って最初に叩き込まれたのがRB規約というルールだ。これは組織が表立って動いてはいけないと厳しく戒められている中でも最重要事項に位置する条文であり、これがあるからこそ俺達が命と誇りをかけて仕事に従事できるお題目である。だが悪魔や天使といえど救えない命というものは存在する。その為に救える命と限定しているのだ。
2人の後を追いかけているうちにどうやら公園の中ほどまで入り込んだのか、人が隠れるのに都合の良い植込みばかりが並ぶ所に来てしまった。
「イカン、イカンですよぉ、未成年がX指定の世界に立ち入ろうなどとは。ましてやザ・ヘンタイズの世界にイクだなんて」
咎め立てる言葉とは裏腹に、俺の心は浮き足立ち、顔はにへらにへらと笑っている。植込みに隠れながらの追跡とはいえ、コレではまるで覗きのおっさんだな。
「えっへへ、えっへへ」
おかしなリズムを刻みながら俺は植込み伝いに移動し、茂みから首を出した俺は事件現場を目の当たりにした。
視線の先にあるのは仰向けに倒れている先ほどの少年、その背中からは地面に広がるように赤いものが染込んでいく。
「いやぁ~っ! 人が死んでるぅ~っ!」
俺の悲鳴を聞いたのか少年の近くに立つ美少女が振り返った。
「誰っ!?」
「緑の妖精マリモン!」
彼女の問いかけに対して、植込みから首だけを出したままの姿で俺は、ギャグの方向で答えてしまった。
俺の台詞を聞いて少女はあからさまに表情を変える。まるで哀れな馬鹿を見ているような雰囲気を纏いながら。
「アンタ、馬鹿?」
「馬鹿にされた!?」
俺は彼女の言葉に思わず驚きながらも植込みから抜け出そうとする。しかし何故か首や肩が枝に押さえ込まれて身動きが取れない。
俺がこの場でもがいている所を見た少女は呆れた顔をそのままに、俺に対して背を向けた。
「馬鹿の相手なんてしたくないわ。そのまま野垂れ死んでなさい」
彼女はそう言うと背中から黒い翼を広げ、俺を置き去りにするように飛翔する。だが妙なことにそれとは入れ替わるように少年のそばに辛苦の輝きを放つ魔方陣が浮かび上がり、その中から紅長髪の美少女が姿を現した。
「あらあら、大変なことになってるわね」
ラストに現れたのは誰か、彼女は少年をどうするのか?次回をお楽しみに。
もちろん、期待に沿えるように頑張ります。