レイナーレ編はもうそろそろ終わる筈なのに、回収し切れていない事に気づいて頭を抱えている今日この頃です。
それでは、どうぞ。
「普通、亜光速なんて見えるモンじゃねーダロ!」
ミッテルトが自分の右肩を押さえながら俺に怒りをぶちまける。まあ、亜光速の戦闘は普通の戦い方じゃないから見える奴なんて限られるよな。
「私でさえ集中力を切らすと見失う程だからな、気配が追えるだけ何とかなってはいるが」
「見えるだけでもスゲーよ」
3人の中でも戦闘力の高い方だろうドーナシークでも司令達の動きが追い切れないらしい。かく言う俺は最初の音速突入で既に見失ってる。しかも気配は途切れ途切れで追い切れないと来てる。簡単に言えばドロップフレーム状態だ。亜光速で動く物体のコマ落ちとなると何十メートルも離れてるから追いかけるのにも苦労する。
副司令は目で2人の動きを追いかけているのか、その目はせわしなく動いている。音速でも意外と距離が無いと追い切れないのに凄いもんだ。
「司令の動きが幾分悪いのは見えているが、どういう事だ?」
「動きが悪いんですか?」
副司令の独り言を耳にして俺は思わず問いかけた。見れば彼の表情が険しい。現場の2人の戦闘スタイルを言うと、司令は結構素早い動きで翻弄するテクニカルスプリンター、隊長は容赦ない圧力と腕力ですべてをねじ伏せるヘビーパワードだから司令が攻撃に走らないと互角には戦い切れない筈だと思う。
「ああ、司令は防戦一辺倒に傾いている。隊長が攻め込んでいるのは十分に判るんだけどな」
「司令が防戦?」
「もっとも、実力を発揮するのはマズイとは思うが」
副司令の呟いた妙な言葉に俺も顔を顰めてしまう。そんな時に他所から賑やかな声が耳に届いた。視線を向けると、アーシアを中心にして喜びの声が上がっている様だった。
だが、リアスの表情が妙に曇っているのが気にかかる。アーシアが自分の眷属になったのだからと喜んでると思ったけど。それにイッセーのはしゃぎっぷりがオーバーな気がしないでもない。
「副司令、ちょっとスンマセン」
俺は傍に居る副司令に席を外す事を伝えると、彼も付いて行くと言ってきた。2人の事が気になっただけなんだけどな。
「お前の事だ、変に気遣うかもしれないからな」
「スンマセン」
俺は思わず謝ってしまった。リアスのヤツが何を思い詰めているのかは分からないが、副司令はその辺のエキスパートだから何とかなるだろう。ありがたい話に感謝してます。
「あの少女の微妙な表情は結構見た事が有るからな、あまり放置できない表情だ」
「してその結末は?」
「私を殺して貴方も死ぬぅ!」
「逆じゃねえのかよ!」
「……即座に突っ込める分、問題はなさそうだな」
副司令はそう言ってその貌に苦笑を浮かべる。俺を試したのかと言いたいが、それよりも別のベクトルで気になった。
「……慣れないギャグは大変っすね」
「……ああ、まったくだ」
俺達は今、虚無ってる。どう反応したものか困ってるんだよ。
「イッセーの方も妙な空気だから、何とかするか」
副司令は場の空気を振り切る様に話を切り替える。ただ、その時の目つきが妙に鋭かったのが俺には異様なものに見えた。この場の重い空気に耐えられなかったのかはともかくとして。