もしも八幡とあーしさんが運命の赤い糸で結ばれていたら   作:しゃけ式

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After 4月

 桜並木が花見の人だかりで埋め尽くされる頃。4月1日、俺は花見など目もくれず家でダラダラしていた。机を挟んで正面にはいつものように三浦がおり、机に突っ伏していた。要は2人とも春の陽気にやられている真っ最中というわけである。

 

 そんな緩い空気の中、不意に鳴り出したスマホを俺は何気なく取った。発信者は雪ノ下だった。珍しいこともあるもんだ。

 

 

「もしもし」

 

 

『冬眠明けにしては早い反応ね』

 

 

「カエル扱いは変わってねえのな」

 

 

 電話越しでもいつもの雪ノ下で、罵倒にも関わらず俺はどことなく安らぎを感じていた。

 

 

「ねえヒキオ、それ誰?」

 

 

 机に上半身を預けながら訊いてくる。雪ノ下と答えると面倒臭くなりそうな予感はしたが、誤魔化すとさらに面倒なことになりそうだったのですぐに答えた。

 

 

「雪ノ下」

 

 

「……ふーん」

 

 

 ジト目を向ける三浦。俺はそれを受け流しつつ、本題を訊ねる。

 

 

「で、お前は何もないのに電話かけてくるわけねえよな。何があった?」

 

 

『……それは信頼と受け取っていいのかしらね。皮肉も半分くらいは含まれてそうだけど』

 

 

「好きに受け取って構わん。それで?」

 

 

『言っても笑わないでくれる?』

 

 

 雪ノ下らしからぬ念押しに、俺は少し怪訝に感じつつも了承する。こんなことを言うタイプではなかったはずで、どこか違和感を覚えながらも先を促した。

 

 

 

 

 

『実は由比ヶ浜さんのことが好きなの』

 

 

 

 

 

「…………へ?」

 

 

『何度も言わせないでちょうだい。……私は由比ヶ浜さんに好意を抱いている。それも恋愛感情のね』

 

 

 …………んん? 確かに高校時代は幾度となくこいつら百合じゃね? 俺がいること忘れてね? となったことはあった。しかしそれは友人同士のコミュニケーションの延長であり、間違っても同性愛のそれには見えなかった。

 

 

「……ああ、エイプリルフールか」

 

 

『違うわ。……確かに今日相談すると嘘みたいに聞こえてしまうのは納得できるけど、これでも私本気なのよ』

 

 

 え、マジで? というか半年くらい前までは一応俺のことが好きだったんじゃないのか? 俺がダメだったから由比ヶ浜に、なんてことが本当に有り得るのか?

 

 

『多分今あなたは半年前までは俺に好意を抱いていたのに、そんなことが有り得るのかと考えているのでしょうね』

 

 

「エスパーかよ」

 

 

『長い付き合いだもの。それくらいはわかるわ』

 

 

 何気ない雪ノ下の言葉。場違いとは思えど、少し心に温度が宿った。

 

 

『ちょうどあなたに振られた頃かしら。というかその後ね。由比ヶ浜さんとやけ酒みたいなことをしたのよ。勿論家で』

 

 

 俺にはそれがどんな感じだったのか予想もつかないが、そこを問いただすのも違うと思い口を開かず続きを待った。

 

 

『それで、その……。いわゆる情事を致してしまったのよね』

 

 

「ええ……」

 

 

『翌日私達はそれを無かったことにした』

 

 

 だろうな。というかそんなこと知りたくなかったなあ……。なんか親の情事を想像してしまった気分だ。ほんの少し興奮してしまったのは置いといて。

 

 

『でも忘れようとしても忘れなくて。それで告白しようと思うのだけれど、どうかしら』

 

 

 正直なところ、まさか雪ノ下からこんな相談を持ちかけられるとは思っていなかった。それこそこんな状況なら由比ヶ浜に相談するものだとばかり(今回はその(くだん)の由比ヶ浜が当事者なわけだが)思っていたので、もし場違いにも誇らしさなんてものを感じていたとしても、それは不可抗力というものだ。

 

 雪ノ下の声からは嘘が見えない。なので、ここで俺に言えることは。

 

 

「……経験則だが、後悔はしない方がいい。それがやらずにであれやってであれ、そういうシチュエーションのやつは一生付きまとうと思う。もし本当に好きなら、タイミングに任せて告白するのも手かもな。慎重にするだけがその思いを大切に考えているとは……って、なんか臭いな」

 

 

『臭いけど真理よ。ありがとう。じゃあ切るわ』

 

 

 俺の返事も待たずに通話を切る。目敏くそれを悟った三浦はすぐに何の話か訊ねてきた。過敏にも見えるそれの原動力を考えると、頬が緩みそうになる。

 

 

「訊いても驚くなよ?」

 

 

「……何、もしかしてやましいこと的な? 場合によったらシてる最中に噛み千切るからね」

 

 

「雪ノ下から恋愛相談を受けた」

 

 

 そこまで聞いた三浦は目を丸くしたことはしたが、驚いたと言えるほど大きな反応を見せたわけではなかった。

 

 

「なんだ、雪ノ下さんも新しい恋見つけたんじゃん。でも確かに意外。そういうのは結衣にするもんだと思ってたし」

 

 

「そりゃ由比ヶ浜は当事者だからな。したくても出来ないだろ」

 

 

「当事者?」

 

 

 俺の示すことがどういうことか理解できなかったのか、三浦はオウム返しをする。すでに三浦は机から体を起こして普通に座って俺と会話していた。

 

 

「好きな相手に直接相談なんか出来るかってことだ。それはもう相談じゃなくて告白になる」

 

 

「は、はああ?! 嘘でしょ!?」

 

 

「俺もそう思ったんだけどなあ……」

 

 

 さっき聞いた話を三浦に大まかに説明する。聞き終えた三浦は思いっきり眉をひそめていた。

 

 

「まだ半分くらいは信じれてないけど、とりあえずわかったし。ね、これ結衣の方をそれとなく探ったらどうかな」

 

 

「なるほどな。ならそっちの電話は任せた」

 

 

 俺の言葉に三浦は行動で返事し、自身のスマホをスピーカーにして机の上に置いた。無論表示された名前は由比ヶ浜のものである。

 丁度3コールした後、由比ヶ浜は電話に出た。

 

 

『もしもし、優美子?』

 

 

「久しぶり。特に用はないんだけどさ、最近どう?」

 

 

 下手くそか。そう突っ込みたくともスピーカーのため言葉を飲み込む。

 

 

『うん、最近はゆきのんとばっか……、てか優美子スピーカー? 音悪いよ?』

 

 

「今手離せないから。というかやっぱ雪ノ下さんなんだ」

 

 

『本当ならヒッキーも入れて奉仕部で、とかも考えるんだけどそれは優美子に悪いからね。3人は大切なときにとっとこってゆきのんと言ってるんだ。あっ、そういえばゆきのんってマッサージ超得意って知ってた?』

 

 

 マッサージ? そんな話は聞いたことがないし、勿論されたこともなかった。俺と三浦は互いに顔を見合わせ、首をかしげた。

 

 

『いやさー、前に土砂降りあったじゃん? あの時雨宿りでラブホ入ったんだけど、ゆきのんめっちゃ上手いの!』

 

 

「うぐぅ!!」

 

 

「……それで? 何されたの?」

 

 

 机の下から金的をやられ、その場でうずくまる。三浦の蔑んだ視線は雪ノ下を彷彿とさせるような眼力で、通話の状態がスピーカーと言うこともありその場で文句は言えなかった。

 

 

『……あんまり人に言わないでね?』

 

 

 ゴクリ、と喉を鳴らす。話の流れからして本当に俺も聞いて良いのかと考えたが、俺が行動に移る前に由比ヶ浜は口を開いていた。

 

 

 

 

 

『そういうとこ触られてないのに、なんかすっごい気持ち良くなっちゃった』

 

 

 

 

 

「ごめん、急用出来たから切るし。じゃ」

 

 

 スマホに表示された受話器のマークを押し、由比ヶ浜との通話を切る。三浦はまた怒っているのかと思えば、予想に反してどこか焦っているようにも感じた。

 

 

「……」

 

 

 prrrr。

 

 

『もしもし? 私12時から由比ヶ浜さんと遊ぶ予定があるのだけれど』

 

 

「行動がはええな。会う前にちょっとだけ……つっても今11時過ぎだからギリギリになるか。どこで待ち合わせだ?」

 

 

『あなたの家の最寄り駅』

 

 

「好都合だ。面と向かって確認しときたいから会いたいんだが、どうだ?」

 

 

『なら11時半に駅前ね。柱のところでいいかしら?』

 

 

「それで頼む」

 

 

 通話を切り、三浦へ目をやる。予想通り三浦はふーんとでも言いたげな顔をしていた。

 

 

「それあーしもついて行っていいんだよね」

 

 

「ここで行かせないつってもどうせ来るだろ」

 

 

「あーしのことよくわかってるし」

 

 

 俺と三浦は殆ど同時に立ち上がり、雪ノ下の言った場所へと向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「あら、三浦さんも一緒なのね」

 

 

 指定されたところへ向かうと、雪ノ下はすでに待っていた。ともすれば服に着られてしまいそうな白のワンピースをしっかりと着こなすあたり、見てくれだけは本当にレベルの高いやつなんだと再認識する。口を開けば罵倒や皮肉と見た目に対してのアンバランスさが一層人を寄せ付けない雰囲気を醸しているのかもしれない。

 口を開かずとも人を寄せ付けない三浦とは似て非なる存在だな。もっとも三浦の場合はそれが逆に作用する場合もあり、クラスでのカーストなんてまさにそれの最たる例だろう。

 

 

「単刀直入に訊くが、本気なのか? 正直今も信じきれていないんだが」

 

 

「……こんなことをでっち上げると思う?」

 

 

「……それもそうか」

 

 

 たったそれだけしか言葉を交わさなかった。しかしこれ以上訊くことはないなという確信があり、雪ノ下は服屋に行くからと言ってこの場を離れた。

 

 

「で、どうする? やっぱつけるよな?」

 

 

「当然だし」

 

 

 俺と三浦は躊躇うこともなく雪ノ下の後を追う。

 

 

 雪ノ下が最初に入ったのはブティックだった。小さな店舗のそこには控えめに並べられた服が置いてあり、商品だらけでごちゃごちゃしているというよりも、店の雰囲気のために商品数を減らしているようだった。

 後に続いてこっそりとその店へ入る。狭さゆえに正面から見たら確実にバレてしまいそうなので、雪ノ下とは反対の方向の商品を手に取りつつ横目で確認をする。

 

 

「雪ノ下さんってあんなピンクの服とか持ってんの? なんかイメージと違うし」

 

 

 見ると雪ノ下は確かにいつも着ているような服とは経路が異なったデザインのものを手に取っており、心なしか大きさも普段のものより大きいような気がする。

 

 

「……確認するまでもなく由比ヶ浜への贈り物なんだろうな。もしくはここに2人で来る時用の下見か」

 

 

 なるほど、と三浦が反応するや否や雪ノ下はここを出て行った。俺達は一定の距離を保ちながら後を追い、障害物に身を隠しながら様子を見ていた。時刻は11時42分。約束まで後20分弱なので、そろそろ由比ヶ浜との約束場所へ向かったのかと思えば、またしても女性用の店に入って行った。

 しかし先ほどとは違い、俺はその店に入ることを激しく躊躇していた。

 

 

「ちょっとヒキオ、早く入るし」

 

 

「いやでも、だってなあ……」

 

 

 端的に言うとそこはランジェリーショップである。先ほどのブティックとは異なり割と広めの店舗であり尾行には適しているが、いくら彼女同伴とはいえこんなところにずかずかと入れるほど俺の神経は太くなかった。てかここにガンガン入れるやつがいたらそれはそれで問題だろう。これが葉山だったとしても躊躇ったはずだ。やりかねなさそうなのは戸部だな。別にやったからといって評価が下がることはなさそうだが。

 業を煮やしたのか、三浦は俺の背中をぐいぐいと押してきた。俺は俺で抵抗すること自体にも抵抗があったので、恐らく三浦が思っているよりもスムーズに入ったことだろう。

 件の雪ノ下はやはりピンクのものを物色しており、そのサイズは雪ノ下には到底及ばない大きさのもノばかりだ。

 

 

(もしかしてあれプレゼントする気なのか……?)

 

 

 当然だが口には出さない。本気で引いてしまうレベルかつ三浦自身今はあまり興味がなさそうだったからだ。

 当の三浦は自分のものを見たかったのか、雪ノ下そっちのけで自分も探していた。

 

 

「どういうのが好き?」

 

 

 突然の三浦の問い。何に対しての質問なのかわからず、何がとだけぞんざいに返した。

 

 

「いや、だから下着」

 

 

「お前は何を聞いてるんだよ……」

 

 

 たまたま近くを通った店員さんが微笑ましそうに笑う。俺はたまらなく恥ずかしくなり、殆ど確認もせずに手に取った一式のものを見せた。

 

 

「ほら、こういう感じのやつ」

 

 

「…………ごめん、流石にそれはあーしが……」

 

 

 珍しく歯切れの悪い三浦の台詞に意外感を覚え、見せたブツを確認する。

 

 

 一言で言えばベージュのババ臭い下着。それから連想する年代は誰に聞いても40代以降を答えるだろう。間違えても花の女子大生が身に付けるようなものではない。

 

 

「そんなガチっぽく謝るな。こっちが悪いんだし。ちゃんと選ぶから待ってろ」

 

 

 恥や外聞などそっちのけ。俺はここが女性用専門店だということも忘れ、商品を物色しだした。

 サイズはある程度覚えているため、それに合うサイズのものを見る。大きいサイズはあまり種類が無く良いデザインのものも少ないと聞くが、なるほど確かにどれも似たような見た目で変化に乏しい。この白いのなんか装飾が殆ど無く、まさにシンプルという言葉を体現しているかのようだった。

 

 

「ん……」

 

 

 いくつか見ている中で、1つ気になるものを見つけた。色は白がベースのオーソドックスなものだが、上も下も極端に面積が狭い。さらに驚くべきところは、どちらも局部のところに切れ込みが入っているということだ。縦に入った穴はともすれば容易に秘部を晒し、その見た目だけで興奮を覚えるのは仕方の無いことだった。

 

 

「あ、それ? ……って、ヒキオエロっ。てかよくそんなの見つけたし」

 

 

 三浦は俺の視線が向いているそれを手に取り、まじまじと眺めだした。見ている最中うわあやヤバイなど好意的な印象を持たないような独り言を呟いていたが、1人で小さく頷くとそれをレジへと持っていった。会計を済ませると、また俺のもとへ戻ってくる。

 

 

「なんで買ってんだよ。それがいいとか言ってねえだろ」

 

 

「目が言ってたし」

 

 

「なんか音だけだとヤバイやつみたいじゃねえか……」

 

 

 飽くまで平静を保つ三浦。その裏にどんな感情があるかは読み取れなかったが、少なくとも不満があるようには見えなかった。いつかそれを身に付けて行為をする時に思いを馳せ、振り払うように雪ノ下を探す。

 

 

「あれ、あいつどこ行った」

 

 

「ん? 雪ノ下さんならあそこ……え、いないじゃん」

 

 

 腕時計で時間が11時50分であることを確認し、俺と三浦は急いで駅へ走る。

 ふと我に返り、別にあいつらを追っても意味ないんじゃないか? と考える。恋愛なんざ当人の勝手であり、LGBTを咎めるような資格は俺にはない。むしろこの世の誰にもあるとは思えない。ならなぜ俺はあいつを、あいつらを追いかけている? 走りながら答えのない問答を繰り返し、駅へと辿り着く。何気なく三浦を見るが、三浦には俺のような迷いは見えない。俺だけが感じる疑問に、その正体の影を見ながら雪ノ下を見つけた。

 雪ノ下はこれといった紙袋を持っておらず、店では何も買わなかったのだと理解する。つまりは下見か。15m程離れた柱から雪ノ下を覗くが、別にこれといった違いはない。表情までは判別できないが、目の良い三浦から何も言葉がでないところを見るに面持ちも冷静なままなのだろう。

 

 

「ゆきのん!」

 

 

 それから数分、現れた由比ヶ浜は雪ノ下のもとへと駆けて行き、抱きついた。

 

 

 ……抱きついた?

 

 

「え、ええ?! 結衣!?」

 

 

「ガチじゃねえか……」

 

 

 え、こいつら両想いだったの? 同性愛で勝ち戦を勝ち取るとか雪ノ下やばくね? これ下手したら某スクールアイドルのI love you事件より事件だぞ?

 

 

 昼間にも関わらずこの駅はあまり賑わっていないので人目は少ないが、誰に聞いても熱い包容だと形容できる2人の抱き締め合いは本当に恋人同士のようで、俺と三浦は完全に瞠目していた。

 少しして、2人は離れた。距離を取った雪ノ下と由比ヶ浜の間には大きな紙がたなびいており、この距離の俺にも読める大きな字で『ドッキリ大成功!』と書かれていた。その瞬間駅の大きな時計が12時を知らせるために音楽を奏で始める。

 

 

「え、え。ドッキリ? どういうこと?」

 

 

「エイプリルフールだよ……、たく、あれも嘘かよ」

 

 

 とりあえず三浦の手を引き2人のもとへ歩く。会話できる距離になると、由比ヶ浜の嬉しそうな顔とやれやれ顔の雪ノ下が口を開いた。

 

 

「ねえねえヒッキー、どう? あたし演技上手かったでしょ?」

 

 

「嘘を吐いていいのは正午まで。時間でバレるかと思ったのだけれど、杞憂だったようね。というかこんな嘘に騙されるってどういうことなのよ、比企谷君」

 

 

「いや、まあ……」

 

 

 高校生の頃にあれだけ百合百合してたらな、という言葉は寸前で飲み込んだ。事実であれ揶揄であれ、間違いなく雪ノ下が面倒なことになるのは明白なので言わないに越したことはない。

 

 

「比企谷君。あなた今とんでもないことを考えたでしょ」

 

 

 怖い怖い。なんでお前はそう読心能力を持ってるんだよ。ちなみに平塚先生もこれを持っているな。読心ならぬ独身能力……、おっと背筋が凍ったぞ? これはあれか、あの人に対する恐怖が染み付いているのか、あるいは距離を無視して威圧したのか。この思考を続けるのは危険だな。呪われたらかなわん。

 

 

「というかあなたたち、尾行が杜撰すぎるわ。……まったく、なんで私があなたたちのデートを手伝わなきゃいけないのかしら」

 

 

 バレてたのかよ。それ込みでの物色だったって訳か。つくづく雪ノ下は能力オバケだな。

 

 

「……で? つまり結衣と雪ノ下さんはあーしらを騙したってことで良いわけ?」

 

 

「穏やかじゃない表現だな……」

 

 

「いやいや、別に怒ってる訳じゃないし。ただこのことは来年まで覚えておきなよって話」

 

 

 いつもと変わらない、しかしどこか凄みのある脅迫に雪ノ下と由比ヶ浜は笑いを浮かべ(由比ヶ浜だけは額に軽い汗をにじませていたが)、俺はポケットから煙草を取り出した。

 

 

 一服しながら見る3人は、一切の軋轢を感じさせない微笑ましい光景に見えた。

 

 

 

 

「ちょっとヒキオ、何1人で落ち着いてるし。あんたも覚えときなよ」

 

 

「俺何もしてねえじゃねえか」

 

 

「……覚えとかないとあのブラとパンツ履いてあげないし」

 

 

「いやそれは違えだろ。それは許さんぞ」

 

 

「「ちょっと」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イライラママってイラマ〇〇を噛みまくったみたいな言葉ですよね。


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