Re:外道が始めるヤクザ生活   作:タコス13

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第6話『泣いた青鬼と笑う鬼人』

西谷は走りながらレムに呪いを掛けた犯人を整理していた。

 

レムは西谷と違い村人とそれほど接していない。

 

そのため、犯人は消去法であの犬しか考えられなかった。

 

さらに言えば、あの犬に見覚えがあったが、それは図鑑で見たウルガルムだった。

 

西谷は魔獣除けの明かりのところから森に入るとこう囁いた。

 

「...サテラ...うぐっ...はぁ...はぁ...はぁ...」

 

魔女の濃厚な匂いにウルガルムの群れが誘われる様に現れた。

 

「...来よったな。犬っころども。まとめてぶち殺したるわぁ!」

 

ウルガルムの群れにドスを片手に突っ込んでいく西谷。

 

次々に首や銅を切り裂いて殺していくが、ウルガルムも西谷にかぶり付く。

 

「鬱陶しいんじゃ、ボケェェェ!!」

 

噛み付かれようがすぐに引き剥がし駆逐していくもかなりの数に次第に囲まれていく。

 

「良い感じに溜まって来よったな...いくで...人間独楽の極み、とくと味わえやぁぁぁ!!」

 

右足を軸にしてそこを中心にマナを集めて滑らかに動けるようにすれば、

 

独楽の様に高速回転しながらウルガルムをバラバラにしていく。

 

一気にウルガルムを片付けた西谷だが、技の後のインターバルを、

 

ウルガルムのさらなる群れが襲いかかっていきあちこち噛まれる。

 

しかし、引き剥がしては斬り裂き、走り回っては斬り裂き、

 

集まって来たところに人間独楽の極みでバラバラにする。

 

そうして駆逐していくと、あの時の子ウルガルムが現れ変身しその巨体を顕にした。

 

「まっとったでぇ、出て来たところ悪いが...死ねやぁぁ!!」

 

勝負は一瞬で、西谷の勝ちに終わった、なぜならボスウルガルムの首が飛んだからだ。

 

しかし、ウルガルムもボスが倒されるがまだ殺気はやまない。

 

まるで、誰かに操られ戦うことを余儀なくされている様だった。

 

西谷の死闘から時は少し遡り、レムが寝かされている金書庫にて。

 

「レム!レムは一体どうしてしまったの!?」

 

屋敷での騒ぎを聞きつけて走り込んできたラムは西谷と入れ違いになっていた。

 

「...静かにするのよ...妹は呪われてしまったのよ...先ずは落ち着いて小娘を呼んできてほしいかしら...」

 

自身のマナをレムに分け与えながら、少しでも時間を稼ぐためをエミリアを呼ぶように支持する。

 

「呪い!?っ...わかったわ、今すぐ呼んでくる。」

 

ラムが走り去っていき数分でエミリアを連れて戻ってきた。

 

「レムが呪われたって聞いたけどどういう事!?」

 

「話は後にするかしら...早くお前もマナをレムに分け与えるのよ...」

 

エミリアの問い掛けにそう返すベアトリスにはあまり余裕がなさそうだ。

 

「わかった。で、なんでこんな状況になってるの?」

 

「どうやら魔獣に呪われたらしいのよ。今はあのバカが魔獣を狩りに行っているかしら。」

 

「ベホマ一人で!?...エミリア様ベアトリス様ラムはベホマを手伝ってくるわ。」

 

エミリアとベアトリスの会話を聞いたラムがそんな提案をする。

 

「なら、アーラム村の様子も見てきて!魔獣に襲われてるかもしれない。」

 

「わかったわ。エミリア様。ではラムは行ってくるわね。」

 

そう言って飛びしていくラムを尻目にベアトリスとエミリアはレムの延命を試みる。

 

一方走り出したラムは20分程でアーラム村の中までやって来ていた。

 

ラムが村に着くと村では大人達が何やら慌てていた。

 

「貴方達、そんなに慌てて何かあったの?」

 

「あ、ラムさん!実は子供達が何人か行方不明になって...」

 

どうやら、村の子供何人かが行方不明になり慌てていたらしい。

 

「わかったわ、貴方達は村の中を探してちょうだい。ラムは森の方を探してくるわ」

 

「わかりました。ラムさんも気をつけてください。」

 

村の大人達と簡単な意思疎通を図れば森の奥へ向かうラム。

 

さらに30分程すると、子供達を見つける事が出来た。

 

一旦子供達を運びに戻れば、再び森を捜索する。

 

「この濃厚な魔女の匂い...ベホマかしら!?」

 

匂いを辿っていくと徐々に血の匂いが立ち込めてきて

 

むせ返りそうな程その血の匂いと魔女の匂いは濃くなっていった。

 

そこには夥しい数のウルガルムの死体が転がって山になっていた。

 

「ベホマ!?まさか、これ全部あなたが!?」

 

「ん?おう、ラムちゃんか、せやで皆殺しにしたったわ。」

 

ウルガルムの死体の山に座りながらラムの問いに答える西谷。

 

「これで全部の筈だから大丈夫やとは思うんやけど、どうやろうな?」

 

「...ええ、問題無いわ。レムはもう大丈夫。」

 

西谷の独り言とも取れる問いに、ラムは千里眼を使い答える。

 

「なんで、そんな事わかるんや?」

 

「千里眼と言ってラムと波長の合う者の視界を見ることが出来るのだけど、レムの視界がさっきまで見れなかったのが今は見えるから大丈夫と言ったのよ。」

 

「なるほどのう!便利な能力を持っとるんやなぁ!」

 

ラムが西谷の問いに答えれば、西谷は感心したようにそう答えた。

 

「さて、そんなら帰るとするかのう...おっとっと...」

 

西谷がそう言って立ち上がるが、ふらつき片膝をついてしまう。

 

「ベホマ...あなた...大丈夫なの?」

 

「大丈夫や、問題あらへん。それよかはよ屋敷に帰ろうや。」

 

決して少なくない血を流した西谷だが命に別状はないようだ。

 

二人は屋敷に戻ると、西谷が扉渡りを破り禁書庫へと入った。

 

「レム、具合はどうなの?」

 

「レムちゃん、無事やろうな!?」

 

温度差のある二人の心配を一身に受けるレム。

 

「姉様に、ホマレ...君...はい、大丈夫です。...それと...ごめんなさい!...でもどうしてホマレ君は私を...」

 

「当たり前やろ、大切な同僚やで。それに、ワシは強いもんが好きや。レムちゃん強いやん、好きやで?」

 

「ホ、ホマレ君...本当にありがとうございます。」

 

レムの問いに西谷が答えれば、感激したように涙を流すレム。

 

「そんななかんでも...まぁええわ。これで、一件落着や。それにしても腹減ったわ〜。」

 

「蒸かし芋ならすぐ作れるわよ。」

 

西谷が笑いながらそう告げると、ラムが蒸かし芋の準備に取り掛かる。

 

しばらくして、ラムが蒸かし芋を持ってくると食べる西谷。

 

「あつっ...おぉ、おぉぉ!むっちゃ美味いやんけ!!」

 

「当たり前でしょ、ラムの得意料理なのよ?」

 

西谷が蒸かし芋を誉めちぎればラムは気を良くして胸を張った。

 

「それにしても、ホマレは無茶し過ぎよ!心配したんだから...」

 

「そう怒んなや、みんな無事で大団円なんやから。」

 

「それは、まぁ...そうなんだけど...」

 

涙を浮かべながら怒るエミリアを嗜める西谷。

 

「ところであんた呪われすぎなのよ。全部殺したなら問題ないと思うけど、解呪は出来ないかしら。」

 

「たしかにあんだけ噛まれたんや、せやろな。」

 

西谷がみんなとそんな話していると、どうやら朝を迎えたらしい。

 

「たぁだいまぁ。おんやぁ?これはどういう状況なぁのかな?」

 

ロズワールが帰宅するとみんなの様子に首を傾げていた。


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