Re:外道が始めるヤクザ生活   作:タコス13

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第2話『最高の出会い方』

「何を言っているの?貴方にそこまでしてもらう義理はないわ。怪我は犯人扱いしたお詫びにしただけ。だから、もう私と貴方はなんの接点もないただの他人なの。赤の他人にそこまでしてもらういわれはないわ。それに今、お金がないからお礼も出来ないわ。」

 

西谷の発言に少女は小難しく、理由を並べて辛辣な言葉と共に断るが、要はそこまでしてもらうなんて悪いと言っているのだ。

 

「なるほどのぉ...嬢ちゃんの言う事も尤もやし、嬢ちゃんの流儀も大事や。せやけど、どないしよぉ?ワシも嬢ちゃんを手伝わな収まりつかんでぇ?...せや!そしたらこないしよ!嬢ちゃんワシを犯人扱いした事、どない思ぉとる?」

 

「え?いや、まぁ...悪いと思ってるわ...本当にごめんなさい...」

 

少女が西谷の問いを聞けば、伏し目がちに申し訳なさそうな態度をとり頭を深々と下げて謝れば西谷はニヤリと笑った。

 

「今、嬢ちゃんワシに謝ったな?これで、犯人扱いの件はチャラや!...つまり、怪我を治してくれた借りが残っとるのぉ?お礼に嬢ちゃんを手伝うっちゅう理由が出来たわけや。それに、ワシは犯人らしき人物を見とる。金髪の嬢ちゃんやったで。」

 

「あ...いやでも...私...」

 

西谷は言い終わるとドヤ顔を少女に向け、少女は言い返す事が出来ないが、まだ納得しきれない様子だ。

 

「全部取られちゃったもんねー...君の負けだよ。素直に手伝って貰ったら?彼に邪気は感じないしさ。」

 

突如少女の肩の上に掌サイズの猫の様な生き物が現れ、少女を諭す姿を見て西谷は驚く。

 

「な、なんやねん急に!猫が喋りよったで!?あれか!猫又っちゅうやつか!?」

 

「猫又が何か知らないけど、不思議と馬鹿にされた気がするよ...僕の名前はパック!彼女の精霊であり、父親ってところかな?」

 

西谷の言葉に苦笑いしながら、自己紹介をするパックだが、父親という件だけなぜか胸を張って威厳を示してきた。

 

「パック君やな?ワシは西谷誉や!きじ...いや、それはもう意味ないか...あれや、プリチーキュートな迷子の子猫ちゃんっちゅうとこやな!あと、無一文や!ま、よろしゅう頼むわ!」

 

「君のどこをどう見てもプリティーでもキュートでもないし、無一文で迷子とかそれだけ聞くと絶対絶命だよね...ま、よろしくね!」

 

西谷の自己紹介にきっちりと突っ込みを入れながら、西谷の掌に肉球をタッチする。

 

「え?じゃ、じゃあ自分のいる場所がわからなくて、無一文で、頼れる人もいないってこと?...私より危ない立場なんじゃ...」

 

西谷の状況を改めて聞いた少女は、自らの立場よりさらに酷いのではと哀れみの目で西谷をみる。

 

「ま、お互い事情はあるよね。まずはこっちの話を片付けちゃおう。それにしてもホマレって珍しい名前だ。いい響きだね。」

 

「そうね、格好は燕尾服に似てるけど、ちょっと違うし...その喋り方だとホマレはカララギから来たの?」

 

「ん?関西みたいなとこかのぉ...まぁ、そんな感じやな。」

 

カララギがどんな所かは知らないが、おそらく関西みたいなものだろうと当たりをつけて、下手に混乱させても面倒なのでそう答える。

 

「それにしても、見れば見る程鍛え込まれた身体だよね。」

 

「まぁ、極道やし、何度も修羅場は潜っとるし、自然にの。」

 

「その、ゴクドーっていうのがよくわからないのだけれど、ホマレって騎士って感じじゃないし、傭兵か何か?手もゴツゴツして、普通に生活してたらこうはならないだろうし。」

 

不意に西谷の手を掴みまじまじと観察すると、大小様々な古傷が見て取れてそう推測する。

 

「お?うーん...ま、そんなとこやな。ところで、嬢ちゃんの名前聞いてへんかったな。なんていうんや?」

 

「え...私は...サテラ...サテラと呼んで...」

 

「ほー...サテラちゃんやな?わかったわ。」

 

少女がサテラと名乗る時、視線を外し悲しそうにそう答えるのを見て、西谷は何かに勘付くがあえて追求せず胸にしまう。

 

「さて、先ずやるべきは聞き込みやな。サテラちゃんの大事なもんを盗んだのは十中八九金髪の嬢ちゃんやとして、ありゃ貧民街の出やな。格好がこの辺のもんより質素やったわ。盗みもかなり慣れてそうやった。ちゅうことはや。盗んだもんを捌かなあかんわけやけど、馴染みの店っちゅうんがあるはずや。で、あの身なりからして知り合いやないと相手にされんやろうし、貧民街辺りが怪しいと踏んどるんやがどないやろ?ヤサ探すより確実やろ。」

 

西谷は関西一の極道組織、近江連合の直参にまで上り詰めた男であり、その洞察力はずば抜けたものがあった。

 

「す、すごい...ホマレってそんな事までわかるのね...そうね、その線で探しましょう。」

 

それから、街で貧民街の場所を聞き、貧民街へと入って時間をかけて聞き込み...と、思ったが意外な形で道が拓ける。

 

「ん?おぉ!?さっきぶりやなぁ!元気してた?」

 

「あ、あんたはさっきのおっさん!?」

 

先程、西谷にカツアゲされていたチンピラ三人組を見つけ、馴れ馴れしく肩を組んで声をかける。

 

「え?なに、知り合いなの?」

 

「おう、さっきワシが世話してやったんや!...のぉ?せやろ...?」

 

サテラの問いにニッコリとそう答えれば、チンピラ三人組に余計な事を言うなという雰囲気で確認をとる。

 

「は、はい!そ、その通りです!」

 

震えながら話を合わせたチンピラ三人組に盗品蔵という場所を聞き出しついでに犯人である少女の名前も聞き出すことに成功する。

 

「さて、ここがその盗品蔵なわけやけど、取り返すなら暴れてええんか?その方が早いやろ。」

 

「それはやめて。」

 

「なんでや、たとえ暴れて通報されたかて、盗まれた事を伝えれば許してくれるんとちゃうか?」

 

「ごめんなさい...出来れば穏便にすましたいの...それに、あまり衛兵にバレたくない事情があって...」

 

「さよか...せやったら、買い取るしか、方法は無さそうやな...ところで、大事なもんてどんなもんなんや?」

 

「なんで盗まれたものを取り返すだけなのに、お金を払わなきゃいけないのかしら...えっと、記章なんだけど...大きさはこのくらいで...真ん中に小さいけど宝石がついてるわ。」

 

「なるほどのぉ...そら、高く付きそうやな...なんか、あったかいのぉ...」

 

サテラの答えに、それなりの金額になると踏んで懐の中からポケベルやらドスやらアタッシュケースやらプレゼント用に包装してある箱を取り出す。

 

「それ、どうやってしまってたんだい...?もしかしてホマレって何かの加護をもってるの?」

 

加護というのは生まれた時に世界から授かる福音の事であり、分かりやすく例えるなら能力のようなものだ。

 

「加護...せやな、その通りや。これは収納の加護っちゅうてな、36種類の所持品を最大10個ずつまで持つことが出来るんや。手で持ち運べるもんやったら懐に入るで。」

 

西谷が加護という言葉を聞くと、自然にその使い方を理解し説明することが出来た。

 

「すごい!加護をもってるなんてホマレは世界に愛されてるのね。」

 

「まぁ、その加護なんやけど、ワシぁ後3つ持っとるで。」

 

「複数の加護をもってるなんてホマレは英雄かなにかかもね...」

 

西谷がさらっとそんな事を言うと、二人はあんぐりと口を開けて驚嘆していた。

 

「なに、アホ面かましとんねん。さっさと行くで?」

 

「そ、そうね...アホ面っていうのが侵害だけど...」

 

サテラのボソリと言った文句には一切耳を傾けず、独特の符号で扉を叩く。先程チンピラ三人組に聞いた合図なのだ。

「大ネズミに?」

 

「毒。」

 

「スケルトンに?」.

 

「落とし穴。」

 

「我らが貴きドラゴン様に?」

 

「クソったれ。」

 

ついで、野太い声の問い掛けに西谷が合言葉で答えれば、鍵を開ける音が聞こえ扉が開かれる。

 

「邪魔するでぇ!」

 

「なんじゃお主ら。買取か?それとも、何か入り用か?」

 

西谷がドカドカと中に踏み込んで行くと、巨躯の身体に禿げた頭の鍛え上げられた筋肉をした老人が立っていた。

 

「おう!ロム爺さんよ、ここに記章が持ち込まれてへんか?宝石がはめ込まれたやつや。フェルトって嬢ちゃんが持ってくるはずや。」

 

「いや、そんなもんは知らんな......悪いが...」

 

「ロム爺!今日は客入れんなって言ったじゃねぇかよ...ってマジかよっ...」

 

ロム爺はサテラを見て、精霊使いと見抜き誤魔化そうとしていたが運悪くフェルトが帰って来てしまう。

 

「おう!フェルトちゃん!さっきぶりやなぁ!」

 

「盗んだ記章を返してもらえないかしら?」

 

西谷は相変わらずの軽い調子で、サテラはキッと睨めつけながら、それぞれがフェルトに話しかける。

 

「......ロム爺。」

 

「無理じゃ。儂には手に負えん。厄介事を厄介な相手ごと持って来たの、フェルト。」

 

フェルトの静かな呼び掛けに対して、肩を竦ませ観念した様にそう答えるロム爺。

 

「喧嘩する前からあきらめんのかよ?」

 

「ただの魔法使いなら儂も引かんが...精霊使い相手じゃ分が悪るすぎる。それに、そっちの男もかなりやりおるな...タイマンでも骨が折れそうじゃ。」

 

挑発的な態度で煽ってくるフェルトに対して、ロム爺はそれをたしなめると、二人を見やる。

 

「ま、そういうこっちゃ。ここは観念して盗んだ記章を返してくれや。金なら多少は...チェヤァッ!!」

 

西谷が、フェルトにそう伝える途中でドスを抜き、一瞬でサテラの後ろに立つと、何者かの斬撃を弾く。

 

「あら、今のを弾くなんて...ふふ、素敵な殿方だわぁ。」

 

「そういう姉ちゃんも、えらいべっぴんさんやないけぇ。どや?今から一発。」

 

斬撃を弾かれて後ろに下がった襲撃者は、黒髪で黒いマントと黒いドレスを身に纏った、妖艶な雰囲気に危険な香りを漂わせる巨乳の美女だった。

 

「あら、貴方の様な強くて素敵な殿方がそんな魅力的な誘いをかけてくれるなんて。...でも、ごめんなさい。今は仕事中なの。」

 

「あかん、ふられてもうたわ。...せやけど、やり合ってはくれるんやろ?ワシぁなぁ、強いもんみるとアソコが固なってしまうんや...もう、我慢でけへんで...?」

 

お互いに構えて相手の動きを牽制したまま、言葉を交わしてるが、内容はお世辞にも上品とは言えない。

 

「...ますます、私好みの殿方ね...出会い方が違えば、いい仲になっていたかもしれないわぁ...」

 

「殺し合う理由を持って出会えたんや...最高にええ出会い方やでぇ...」

 

会話をしながらも、お互いに仕掛けるタイミングを計りながら、徐々に間合いを詰めていく。

 

「ふふふ、まさしくその通り...『腸狩り』エルザ・グランヒルテ。」

 

「西谷誉や...エルザちゃん...がっかりさせんなやぁぁぁ!!」

 

西谷が早脱ぎの加護で、上着とワイシャツを脱ぎ捨てれば、それをキッカケに両者がぶつかる。




今回オリジナルの加護を入れましたが、
これは基本的に死に戻りしない予定だからです。
ちなみに、加護として使うのは基本的に
龍が如く0内のプレイシステムから選びました。

収納の加護→所持アイテム画面

早脱ぎの加護→龍が如く名物、ボス戦での早脱ぎ

と、なっております。

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