遊戯王 Replica   作:レルクス

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二十四話

 リゾート地におけるデュエル合宿。

 とは言うものの、はっちゃけたりふざけたり、たまにはまじめにやったり、刹那をいじったり、色々だ。

 

 リゾート地を維持しているのは誠一郎の関係者と言うこともあり、スタッフもデュエリストとして実力が低いわけではない。

 ちなみに、スタッフは国籍も年齢も関係ない。誠一郎がいろいろなところから引っ張ってきた者達だからだ。

 明らかに義務教育を受けている年齢なのにリゾート地に長いこと居るような話し方をする子もいるが、聖以外は大体事情を察しているし、知らない聖も聞くような性格ではない。別に隠すようなことでもないのだが。

 

 それはそれとして、様々なデュエル評論家が書いた書籍も大量に保管されているので、そう言ったテキストと持ってきたノートを広げて、自分のデッキはもちろん、そのデッキを使ううえで警戒すべき戦術を考察。

 さらに、誠一郎が表と裏を回って集めてきたカードを使ってデッキを考えたりもする。

 

 スタッフも、それぞれの役割としてかなり精錬されている。

 料理はおいしいし、布団はいつでも新品同然にきれいでフカフカ。

 たまにはデュエルから離れてトランプやUNO。ゲームセンターのような場所やカラオケボックスだってある。

 そして何故か設置されている公式で使えそうな本格ゴルフ場をはじめとしたスポーツ施設。ラスベガスの高級カジノにおかれていそうなギャンブルセットなど……まあ、それぞれの専用スタッフがいるうえに、接待プレイもできる。

 とはいえ、長年やっているスタッフたちも、誠一郎と彩里を相手にするとガチでやってもストレート負けするわけだが。

 ちなみに刹那は大体スタッフに負ける。

 

 自由行動もそれなりの時間があった。

 デュエルディスクを装着していれば迷子になることはない。本人が道が分からなくとも、他のスタッフは当然地図の見方くらいは分かる。

 ちなみに迷うのはいいとしても帰ってこられないのは刹那くらいである。

 

 あまりにも広すぎて、全員に専属運転手が付くほどだ。

 ちなみに、専属運転手とは言うが他にもいろいろできるので普段は別のことをしている。

 

 

 とまあそんな感じで、『一体どんだけ金持ってんの?』と言いたくなるような状況だが、充実しているのは事実。

 

 

 ちなみに、一番成長しているのは誠一郎である。

 努力することに長けた才能の持ち主でもあるからだ。

 というか、現時点の強さで言っても、ハイパームテキゲーマーみたいな感じなのだ。どうやって勝てばいいんだコイツ。

 

 ★

 

「……さて、もうそろそろ帰る時間だな。最後に何かやっておくか」

 

 集合写真もしっかり取って、満喫した誠一郎たち。

 

「それなら、私と誠一郎でデュエルしよう」

 

 彩里がそう言った。

 それと同時に、それ以外の全員が驚いた。

 彩里はこの合宿中、一度も誠一郎とデュエルをしていなかったからだ。

 ほかのメンバーが、『するかどうか』と言う話をしていたことはあったのだが、彩里に関してはその話すらなかったのである。

 

 何か意味があるのかと思っていたが、追及しなかった。

 

「ああ。いいぞ」

 

 誠一郎は、即答でそれに答える。

 大体、挑戦に対して断ることを知らないのである。

 

 まあ、そんなこんなでデュエルコートに移動する誠一郎たち。

 誠一郎と彩里が並んで立つ。

 

「さて、始めるか」

「そうね」

 

 お互いにデュエルディスクを構える。

 

「宗達。一度あなたは彼女に勝っていますが、あなたから見てどう思いますか?」

「……」

 

 宗達に向かって聡子が聞いているが、宗達は何も言おうとしない。

 いろいろな意味で、『見ていれば分かる』と言いたいのだろう。

 聡子もそれを察したので、いいと思うことにした。

 

「「デュエル!」」

 

 誠一郎 LP4000

 彩里  LP4000

 

「で、先攻と後攻。どっちにする?」

「私は……後攻を選択する」

 

 その言葉に、ギャラリーのすべてが驚いた。

 

 デュエルにおいて先攻をとるか後攻をとるか。

 デッキに寄って異なる。

 

 彩里のデッキは『クロスロジック』

 展開しやすい光属性モンスターと闇属性モンスターをうまくフィールドに出して、その二体を使ってオーディナルモンスターを出していくデッキ。

 

 誠一郎のデッキは、本当にあえて言うと『星王賢者』

 『星王兵リンク』を軸として、対応する『双星王』をフィールドに並べることで布陣を作る『星王』と、魔法の発動コストを無視する『クリムゾン・ワイズマン』をだして、ライフコストを払うが強力な効果を持つ魔法カードを使って殲滅する『序数賢者』の混合デッキと言えるだろう。

 

 どちらのデッキも、先攻であっても後攻であってもそれなりに動くデッキだ。

 というより、それらを気にしないデッキと言える。

 そのような状態で後攻を選んだ。

 要するに、手札の確保と、最初のバトルフェイズを譲りたくない。ということだろう。

 

 だが、誠一郎は反対しない。

 

「なら、俺の先攻。『星王兵アークゲート』を召喚」

 

 星王兵アークゲート ATK0 ☆1

 

「アークゲートの召喚に成功した時、手札に二枚捨てることで、デッキからレベル4の『星王兵』モンスターを守備表示で特殊召喚できる。俺は『星王兵リンク』を守備表示で特殊召喚」

 

 星王兵リンク DFE1000 ☆4

 

 

 星王兵アークゲート

 レベル1 ATK0 DFE0 闇属性 戦士族

 「星王兵アークゲート」は自分フィールドに一枚しか存在できない。

 ①:このモンスターの召喚に成功した時、手札を二枚捨てて発動できる。デッキからレベル4の「星王兵」モンスター一体を守備表示で特殊召喚する。

 

 

「墓地の『ADチェンジャー』を除外して効果発動。リンクを攻撃表示に変更」

 

 星王兵リンク DFE1000→ATK1700

 

「そして、リンクの効果で、リンクとアークゲートを守備表示に変更。デッキから『クリムゾン・ワイズマン』を手札に加える」

 

 星王兵リンク    ATK1700→DFE1000

 星王兵アークゲート ATK   0→DFE   0

 

「自分フィールドのモンスターが全て守備表示の時、墓地の『オーディナル・サモニウム』の効果発動。このカードを墓地から除外して、このターン、俺は通常の召喚に加えてオーディナル召喚を一度だけ行える」

 

 

 オーディナル・サモニウム

 レベル3 ATK1000 DFE1000 光属性 雷族

 ①:自分メインフェイズ時、自分フィールドのモンスターが全て守備表示の場合、このカードを墓地から除外して発動できる。このターン、自分は通常の召喚に加えて、一度だけオーディナル召喚できる。

 

 

「そして、闇属性のリンクとアークゲートをシンボルリリース。黒き七つの星々よ、閃光の果てに一つとなりて、賢者の宝玉を紅に染めろ。オーディナル召喚!レベル7『クリムゾン・ワイズマン』!」

 

 クリムゾン・ワイズマン ATK2500 ☆7

 誠一郎 SP0→2

 

 出現する紅の賢者。

 このモンスターを超えない限り、彩里に勝機はない。

 

「そして永続魔法。『序数賢者の聖域』を発動。俺が『序数賢者』と名の付いた魔法カードを発動した場合、デッキから『序数賢者』と名の付いた魔法カード一枚をセットすることが出来る」

 

 

 序数賢者の聖域

 永続魔法

 このカードは、自分フィールドにレベル7以上の魔法使い族オーディナルモンスターが存在しない場合、手札から発動出来ない。

 このカード名の①の効果は一ターンに一度しか発動できない。

 ①:自分が「序数賢者」魔法カードを発動した場合に発動する。デッキから「序数賢者」魔法カード一枚をセットする。

 

 

「……少々まずいわね」

 

 永続魔法が発動された瞬間、彩里が呟いた。

 聖が首をひねる。

 

「どういうこと?」

 

 答えたのは刹那。

 

「あのカードの効果のタイミングは『場合』の『強制』。発動タイミングを逃すことが無い」

「なるほどね。必ずサーチができるわけか」

 

 天音もその脅威を認識する。

 だが、宗達は彩里が言った意図を正確に理解していた。

 

「それだけではない。場合の強制と言う以上、『必ず優先的にチェーンが組まれる』ということでもある。言いかえるなら、『一ターンに一度、誠一郎が発動する『序数賢者』魔法カード』の発動に対してチェーンを組めないということになる」

「ということは……」

「当然、いかなるカウンターカードも発動出来ないということになります。聖域の効果に対して効果を発動することは可能でも、本来こちらが無効にしたい効果に対しては、私たちは無力です」

 

 気が付いてきた聖に対してフォルテが補足する。

 

「あまり、初手にひかれたくないカードではありますね……」

 

 聡子はニコニコしながらもどうしたものかを考えているようだ。

 

「続けるぞ。俺はライフコスト1500を踏み倒し、魔法カード『序数賢者の壺』を発動して、その効果に対して聖域の効果を発動する。聖域の効果で、デッキから二枚目の『序数賢者の壺』をセットだ。壺の効果で、デッキからカードを二枚ドローする」

 

 

 序数賢者の壺

 「序数賢者の壺」は一ターンに一度しか発動出来ない。

 ①:ライフポイントを1500払って発動できる。デッキからカードを二枚ドローする。

 

 

「カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

「私のターン。ドロー!」

 

 伏せカードが二枚。

 クリムゾン・ワイズマンがフィールドにいる状況で、これ以上にヤバいこともあまりないだろう。

 それはそれとして、彩里のターンだ。

 

「手札の『クロスロジック・レオパルド』の効果発動。自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる!」

 

 クロスロジック・レオパルド ATK1000 ☆3

 

「さらに、フィールドにクロスロジックモンスターが存在することで、『クロスロジック・クロウ』を特殊召喚!」

 

 クロスロジック・クロウ ATK800 ☆3

 

 ここまでならいつも通りだ。

 だが、今回の彩里は違うだろう。

 

「私は、光属性のレオパルドをシンボルリリース!」

 

 レオパルドが光のシンボルに変わる。

 それと同時に、驚くものが多かった。

 今まで彩里は、属性の違う二体のモンスターを使ってオーディナル召喚していたからだ。

 一体のモンスターをリリースして行う召喚を、彼らは知らない。

 

「オーディナル召喚、レベル6『クロスロジック・ペインレオン』!」

 

 クロスロジック・ペインレオン ATK2000 ☆6

 彩里 SP0→1

 

「そして、クロスロジック・レオンの効果。SPを一つ使い、自分フィールドの闇属性モンスター一体を墓地に送ることで、デッキのレベル6以下の闇属性『クロスロジック』オーディナルモンスター一体を、召喚条件を無視して特殊召喚できる」

 

 

 クロスロジック・ペインレオン

 レベル6 ATK2000 DFE800 光属性 獣族

 オーディナル・効果

 光属性×1 「クロスロジック」モンスター

 ①:このモンスターのオーディナル召喚成功時に発動できる。シンボルポイントを一つ消費し、自分フィールドの闇属性モンスター一体を墓地に送ることで、デッキからレベル6以下、闇属性、「クロスロジック」オーディナルモンスター一体を召喚条件を無視して特殊召喚することが出来る。

 『SP1』

 

 

「クロスロジック・クロウを墓地に送り、現れなさい。『クロスロジック・スカークロウ』!」

 

 クロスロジック・スカークロウ ATK1000 ☆6

 彩里 SP1→0

 

「なるほどな。スカークロウはペインレオンの対になる効果を持っているわけか」

「そういうこと。私は『理論証明』を発動。自分フィールドに、異なる属性を持つ『クロスロジック』モンスターが二体いる時に発動できる。カードを二枚ドローして、さらに、通常の召喚に加えてオーディナル召喚ができる!」

 

 

 理論証明

 通常魔法

 「理論証明」はデュエル中に一度しか発動出来ない。

 ①:自分フィールドに、属性の異なる「クロスロジック」モンスターが二体以上存在する場合に発動できる。デッキからカードを二枚ドローする。このカードを発動後からターン終了時まで、通常の召喚に加えて一度だけオーディナル召喚を行うことができる。

 

 

「私は光属性のペインレオンと、闇属性のスカークロウをシンボルリリース!」

 

 二体のモンスターがシンボルに変わる。

 

「二つの理論が交わりて、さらなる理論の開拓を果たす。全てを貫く雄叫びよ。今、轟け!」

 

 降臨するのは――

 

「オーディナル召喚!レベル10『クロスロジック・オーバードラゴン』!」

 

 クロスロジック・オーバードラゴン ATK3200 ☆10

 彩里 SP0→3

 

「レベル10のオーディナルモンスター」

「素材二体で、増えたポイントが三つだと……」

 

 驚愕するものも多い。

 それほど、インパクトのあるモンスターだ。

 しかし……。

 

「なるほどな。それが今の彩里の切り札って訳か」

「そうよ」

「ただ……この合宿の末に手に入れたものじゃないな」

「!」

 

 彩里は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 そこまでばれているとは思っていなかった要である。

 

「まあいいわ。それより誠一郎。良いのかしら、オーバードラゴンのオーディナル召喚に成功した時点で、相手はこのターン。発動した魔法カードの効果が無効になるわよ?」

「別に構わん」

 

 本来なら、誠一郎のようなデッキを使っていれば驚愕するような状況だ。

 だが、誠一郎は悲観した様子はない。

 

「これくらいじゃ驚かないか」

「勿論だ」

 

 誠一郎は余裕を崩さない。

 というより、崩したところを見たことが無い。

 それは同時に、本気になったところを見たことが無いという意味でもあるが。

 

「なら……オーバードラゴンの効果発動。SPを一つ使って、相手モンスター一体を破壊する!」

 

 彩里 SP3→2

 

 オーバードラゴンがブレスを放出し、クリムゾン・ワイズマンへと向かう。

 だが、誠一郎も、ワイズマンも、慌てた様子はなかった。

 

「罠カード『ウィザーズ・バリア』を発動。このターン終了時まで、俺のフィールドの魔法使い族モンスター一体は、戦闘・効果では一度だけ破壊されない」

 

 バリアが出現して、クリムゾン・ワイズマンは護られた。

 

「む……ならバトルフェイズ、オーバードラゴンで、クリムゾン・ワイズマンを攻撃!」

 

 オーバードラゴンがサイドブレスを放出する。

 

「それも通らない。ウィザーズ・バリアを墓地から除外することで、俺に発生するダメージを一度だけ0にできる」

「む……」

「一枚で二度おいしいのさ」

 

 

 ウィザーズ・バリア

 通常罠

 ①:自分フィールドに魔法使い族モンスター一体を対象にして発動できる。このターン終了時まで、一ターンに一度、対象にしたモンスターは戦闘・効果では破壊されない。

 ②:自分がダメージを受ける時、代わりにこのカードを墓地から除外することが出来る。この効果は、このカードの①の効果でオーディナルモンスターを対象にした場合のみ、墓地に送られたターンでも発動できる。

 

 

「私はカードを一枚セットして、ターンエンド」

「俺のターン。ドロー」

 

 誠一郎はオーバードラゴンを見る。

 おそらく、久しぶりに誠一郎たちに顔を見せた段階で所有していたであろうドラゴンだ。

 

(あの段階でこのドラゴンを持っていたとすれば……今の彩里は……)

 

 そしてその上で、誠一郎は判断する。

 微笑んだ。

 

「セットしておいた『序数賢者の壺』を発動だ。デッキからカードを二枚ドローする」

 

 インチキ効果も甚だしいが、クリムゾン・ワイズマン。もしくは『魔力倹約術』がなければ使うのは確実にためらわされる効果だ。

 星王というデッキを使っていたとしても、なかなか使いたいと思うカードでは本来ないだろう。

 

「それにしても……帰って来た段階で、その力を手に入れていたわけか」

「あ。そこまで分かるのね」

「彩里のことだからな。さて、悪いがそろそろ決めようか」

「!」

 

 誠一郎が宣言するファイナルターン。

 これ以上に、恐れるものはない。

 

「2000ポイントのコストを踏み倒して、魔法カード『序数賢者の黒魔術』を発動し、それにチェーンして『序数賢者の聖域』の効果を発動。チェーン処理で、デッキから『序数賢者のナイフスキル』をセットして、黒魔術の効果で、魔法・罠を破壊する」

「な……」

「まだだ。手札から『星王次元』を発動。墓地から星王兵を二体除外することで、相手モンスター一体の効果を無効にする。墓地のアークゲートとリンクを除外、オーバードラゴンの効果を無効にする」

 

 この段階で、完全に無力化されたといっても過言ではない。

 

「オーバードラゴンだが……彩里のことだ。破壊耐性はあっても、対象をとらないという効果を持つモンスターは入りにくいだろうからな」

「む……」

 

 『破壊されない』『対象に取れない』

 デュエルモンスターズにおける二大耐性と言っても過言ではない。

 無論、その上に『効果を受けない』だとか、局所的に機能する『リリースできない』と言ったモンスターもいるが、数を考えると微妙だ。

 

 両立するモンスターはそこまで多くはいない。

 だからこそ、どちらを持っているのかを見極める必要がある。

 カードは選ばれるものであると同時に、デュエリストが選ぶものである。

 彩里のことを良く知っている誠一郎は、その読みを外さない。

 

「ナイフスキルを発動。オーバードラゴンを破壊する」

 

 簡単に破壊されるドラゴン。

 魔術師というより、暗殺者と言えるべきものだ。

 派手と言うものではない。

 ただ、鮮やかなものだ。

 

「『一騎加勢』で攻撃力を上昇させる。バトルだ。ワイズマンで、ダイレクトアタック」

 

 クリムゾン・ワイズマン ATK2500→4000

 彩里 LP4000→0

 

 ワイズマンの魔術で散っていく彩里のライフ。

 どこまでも効率化された誠一郎のデュエルに対抗できるのは、まだまだ先の話だ。


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