ガチャと戦争とシンデレラ
巧翔「あー、終わったー!」
課題が終わり全身で伸びをする。めんどくさいか事から開放されるのはいつだって気持ちがいい。
巧翔「デレマスしなきゃ!」
一年ほど前に始めたこのゲーム、アイドルマスターシンデレラガールズ、通称デレマス、モバゲーのアイマスなのでモバマスとも呼ばれてたりする。
巧翔「あ、ログボでガチャチケ10枚貯まったわ引こ」
やっぱりというかなんというかソシャゲである以上ガチャはあるわけで、非課金勢である俺はガチャチケが10枚ためて引くのが楽しみのひとつでもあった。
巧翔「そういえば、今まゆの新SRきてたな!これ引かなきゃ!」
佐久間まゆ、俺がデレマス中で一番好きなキャラである。
それが新規SR追加は引かずにはいられない。ガチャ画面にいき引こうとする、が何故かボタンが押せない。
巧翔「どうした?不調か?」
試しに色々なとこをタッチしてみる、何故かガチャを引くボタンだけが押せない。
巧翔「変なバグだな」
気にしててもしょうがないし妖精さんが今引くべきではないと言ってるものだと思い後にしようと思う。
巧翔「飯買いにコンビニにでも行くかな」
この時の俺は知らなかった。この考えがほとんど当たっていることを。そして、これからおかしな戦いに巻き込まれていくことを。
巧翔「今日のご飯はハンバーグ~」
コンビニでお気に入りのハンバーグ弁当を買いゴキゲンに歌なんか歌っていた。すると、
バン!
何かが思いっきり壁に激突したような音が聞こえた。
巧翔「なんだ?」
人通りの少ない路地からさらに細い道。先ほどの音はそこから聞こえてきたようだ。そこに何があるのか、少しの不安と非日常への期待を込め道を進んでいく。そこには、
巧翔「え?」
二人の少女が戦っていた。
幻かと思い目をこするが消えない。そしてその二人の少女には見覚えがあった。
巧翔「小日向美穂と多田李衣菜?」
そう、その2人はまるでゲームの中から飛び出てきたかのような姿をしていた。その二人の後ろ、そこには知らない男と女の子がたっている。
男「もうそっちに勝ち目ないっしょ?諦めなよ」
男が煽るようにいう。
美穂「美夜さん!私はまだ行けます!」
少女「だめ!それ以上美穂ちゃんが傷ついてる姿みたくないよ!」
それを聞き、小日向美穂のような少女とその後の女の子が話している。
李衣菜「甲斐斗さんもう終わらせてもいい?」
男「そうだな、終わらせるか 」
李衣菜「OK!ロックに行くよ!【Twilight Sky】!!」
李衣菜のような少女がそう言うと、周りの建物が消え、すっかり暗くなっていた空が夕暮れのような明るさになっていた。
巧翔「な、なんだよこれ」
あまりの衝撃に口から言葉が漏れてしまった。
男「あっちゃー、人に見られてたかー、ミスったな」
李衣菜「あっちの方が処理は先かな?」
男「そうだな」
李衣菜のような少女と、その後の男はこちらへ向き直る。
美穂「逃げてください!」
そう言われてもどこに逃げればいいんだこれ。逃げ場なんかありませんよ?
だんだんと近づいてくる2人。あぁ、短い人生だったな、こんな良く分からない終わり方すんのか。
まゆ「まだ、終わりませんよ」
まゆの声でそんな幻聴まで聞こえてきた。死に際って好きなキャラの幻聴聞こえるんだな。
まゆ「まゆに会いたくないですか?」
会えるんだったら会いたいなぁ。
まゆ「うふ、それじゃあ会いましょうか」
え?
その瞬間ズボンのポケットが光だした。
正確にはポケットの中のスマホだ。
男「新規プレイヤー………」
男が何か言っているが頭に入ってこない。
まゆ「ガチャを引いてください」
ポケットからスマホを取り出し画面を見るとそこはガチャ画面だった。
声に導かれるままにスマホをタップする。
巧翔「これって……」
確定演出。スマホの光がどんどん明るくなっていく。そして目を開けられないほどに明るくなった。
まゆ「やっと会えましたねぇ」
光が収束し目を開けるとそこには
巧翔「ま…ゆ…?」
まゆ「はい、あなたのまゆですよぉ」
佐久間まゆが立っていた。
男「李衣菜、俺らもしかしてすごく運良くない?」
李衣菜「新規プレイヤー誕生の瞬間に立ち会えるとは思ってもいなかったかなー」
なんなんだこの状況は、一体何がどうなってるんだ。
まゆ「プロデューサーさんを攻撃しようとしてるのはそこの2人みたいですねぇ、うふ、うふふ」
男「新規プレイヤーに負けるわけがない、行くぞ李衣菜!」
李衣菜「OK!」
全くピンチを抜け出せている気がしない。
まゆ「大丈夫ですよプロデューサーさん、何があってもまゆが指一本触れさせませんから」
そう言ってまゆはどこからか赤いリボンを取り出す。
李衣菜「リボンだけで何が出来るってのさ!」
李衣菜のような、いや彼女は李衣菜なのだろう、彼女はこちらへと走ってくる。
しかしそのスピードは正常ではない。人間の出せるようなスピードを超えている。
まゆ「プロデューサーさんと話がしたいのでここはすぐに終わらせますね?」
そういってまゆは動き出す。
刹那―――
「え?」
李衣菜の至る所にリボンが巻きついていた。
男「なにをした!?」
まゆ「まだ何も、リボンをまいてあげただけですよぉ」
驚愕に満ちた顔をしている男に、まゆは言い放つ。
まゆ「やっとプロデューサーさんに会えたんです。邪魔、しないでもらえますか?」
今まで平和な暮らしを送ってきた俺にでもわかるほどの殺気、少し敵がかわいそうなレベルだな。
まゆ「もう、終わらせますね?……【エブリデイドリーム】」
まゆの声とともに李衣菜に巻きついてリボンが動き出す。体をはうように伸びていき全身を包んだかと思うと大きなまゆ......蛹のようになって静止した。
まゆ「さぁプロデューサーさん、プロデューサーさんのお家にいきましょう?」
巧翔「え?アレほっといていいの?」
まゆ「はい、そういうものですので」
そういうものと言われるとそうするしかない
巧翔「まゆ」
まゆ「どうしましたか?」
巧翔「あのふたり連れていってもいいかな」
そうして俺は美穂と少女を指さす。
まゆ「むぅ、本来なら二人っきりがいいですがあのままにしておくのは抵抗がありますし今回だけですよ?」
巧翔「あぁ、ありがとう。というわけで、この状況についての説明も兼ねてうちに来ませんか?」
美穂「はい、お願いします!」
少女「美穂ちゃん!」
美穂「大丈夫です、美夜さん。あの人はいい人です、多分」
多分かぁ、まあ初対面だしなぁ
まゆ「どちらにせよ放置はできませんので連れていきますからね?」
女の子は渋々と言った様子で立ち上がった。
美穂「わたしは小日向 美穂です。こちらがわたしの契約者(プロデューサー)の桜 美夜さんです」
巧翔「俺の名前は…ムぐぅ」
不意に口を塞がれる
まゆ「プロデューサーさん、自己紹介はまゆに先にしてください、ね?」
そういえば美穂も李衣菜も名前で呼んでいたのに、まゆだけプロデューサーさんとしか言っていない。こんな状況にだったとはいえ失敗だったな。
巧翔「そうだな、俺は赤詰 巧翔だ。」
まゆ「佐久間まゆです。よろしくお願いしますねぇ、巧翔さん」
巧翔「あぁ、よろしくなまゆ」
平和な生活を送っていた主人公に訪れた非日常
彼は一体何に巻き込まれこれからどうなっていくのか
Fin 第1章『ガチャと戦争とシンデレラ』
Next 第2章『ルールと偶像と契約者』