あべこべポケモン(仮) 作:ユーキ
仕事も終わり買い物にでも行こうかとジムを出た。デパートまでの道を歩いていると、路地裏の入口や影になる場所に怪しげな少女達が屯しているのが見える。
10年前、あの二人組によって半壊し、警察やポケモン協会によって大勢の構成員が捕まったロケット団。その残党達が未だにコソコソと動いているらしく、不良少女を始めとしたはみ出し者達を取り込み組織を再建しようとしていると、協会のお偉いさん方から教えられたのは新しい。視界の端に映る彼女達ももしかしたらロケット団の団員なのかもしれないと思えてしまう。
この街にあるシルフカンパニーはロケット団に占領されたという過去があった。解決したと言うが会社の内部に残党が残っているかもしれないと、調査の為にエスパー使いである私が出向いた事もあった。エスパー能力が便利とはいえ、毎度毎度色んな所に連れて行かれるこちらの身にもなってほしい。
そんな事を考えていると、デパートの近くでチャラチャラとした二人組に絡まれている一人の少年を見つけた。二人組は少年をどこかへと誘おうとしており、少年は二人組を拒絶している。二人組の思考を読み取れば、汚らしく下劣な考えが伝わって来て、愚かな考えを読み取り不快感で肌が粟立った。彼女らに連れて行かれれば彼に待っているのは……。
「そこの貴方達、その少年は拒絶しているでしょ。離してあげなさい」
ジムリーダーとしての義務感か、それとも一人の女としてか。少年を助ける為に足は三人へと向かい、少年の肩に手を置きながら声を掛けていた。
「あぁん? 何だぁテメェ?」
「お前、人のモノを……!」
少年を後ろに隠す様に前に出ると、ベルトに付けているボールを手に取る二人。
「ヘイ、構わん。ぶっ飛ばすぞ」
「ハッ、怖くないねwww」
二人が出してきたのはラッタとオニドリル、二匹とも進化しているポケモン。ただのガラの悪い不良だと思っていたが、ポケモンを進化させており懐いている様子を見て、そこそこ腕の立つトレーナーであったが挫折しドロップアウトしたのだろうと当たりを付ける。
まぁどんな過去があろうと倒すのだけれど。
「行きなさい、メタグロス」
地面を揺らしながら現れた鋼の巨体、それに慄く二人と二匹。
「ラ、ラッタ! 噛み付く!」
「オニドリルは乱れ突き!」
トレーナーの指示により空と地上から挟み込む様に攻撃を加えてくる。だが……。
「ラダァ!」
「オギョェ!」
「「!?」」
その程度の攻撃、この子を倒すどころか傷一つ付けられはしない。逆に硬さによって歯や嘴を痛めている始末。
「私は弱い者いじめは好きじゃないの。一撃で終わらせるわ」
こちらの意思を汲んだメタグロスは、サイコパワーで二匹を浮かばせると地面へと叩きつけた。
「さっさとその子達を連れて消えなさい。もう二度と馬鹿な事はしないようにね」
「どういう事なの……」
「あぁん、ひどぅい!」
逃げ帰る二人、その後ろ姿にため息を吐いてメタグロスをボールに戻す。後ろを振り返ると少年が唖然とした顔で、走り去る二人を見ていた。
「大丈夫だった?」
「あ、はい。助けていただきありがとあございます」
そう感謝の言葉を口に出し頭を下げる少年。ん? んん?
「あぁ、君はもしかしてユーキ・トレニウスなのかな?」
「……何故自分の名前を?」
一歩後ろに下がる少年。名前と顔を知っていた事で警戒させてしまった。君は有名だからと伝えると、小首を傾げる。
「……うん、君は何というか」
「?」
再度首を傾げる少年。その姿を見て一つの思いが胸を過ぎる。
先程絡まれて困っている姿、警戒し身を縮こませる姿、分からない事に首を傾げる姿。
生まれたてのポニータを見る様な、庇護欲を掻き立てる。
「ごほん、それは置いておくとして。君はマサラタウンの出身よね? 来た事がないのなら知らなくとも仕方ないけど、この街は治安が悪いのよ。男の子一人で出歩くのは辞めた方が良いわ」
「分かりました」
話を聞くに日用品や服を買いに来たのだと言う。正直言うのならこんな無警戒な子を一人で買い物に行かせるのは見過ごせない。
今日は早い内に仕事が終わっていて良かったと言わざるを得ない。
「でもそれじゃあ買い物が出来ない。だから私が一緒に行くわ」
「……え?」
「君が腕の立つトレーナーなのは知っているよ? しかしそれでも何が起こるか分からない。だから買い物に私も同行する」
「いや、態々自分の買い物のために……」
そう言う少年だがこのまま一人で送り出して何かあったらどうするのか、そう言い聞かせ続けた。数分後、無理矢理ではあるが何とか同行する事を許可してもらいデパートへと足を踏み入れていた。
少年とはいえ男性だ、男性の買い物は女のそれとは違いかなりの時間を掛けると聞いていた。聞いていたのだが……。
「うーん、これとこれとこれで。後こっちのシャツを数枚で良いかなぁ」
「……」
衣類の大型専門店として有名な『ラ・ブリッツェル』、通称『しままら』。名前こそカロス地方を意識し、店の外観もカロス建築を模しているが評判はそこそこであり中の下。しかしそれでも全国展開してるのだから不思議なものだ。それ故に平凡とした芋っぽい渾名を付けられ『しままら』と呼ばれている。
デパート内のしままらへと真っ直ぐ向かった彼はスマホ片手に店内を周り、籠の中へと服やら下着やらを放り込むとさっさと会計を済ませてしまった。
異性との衣類の買い物。こういった時には「男性の下着売り場で周りの男性の目が気になって居辛くなったり」とか「男性の買い物に掛かる時間の長さに辟易したり」等といった事が起こるらしいのだが、そんな事はなく淡々と終わってしまった。いや、別に可笑しな考えなどはない。そんな事を夢に見ていた訳ではない。ただ、何というか……こう、女男で買い物に来たのだから……。
「いや、これ以上は止そう」
「?」
一つ大きく息を吐き、視線を店の外へと向ける。ガラス張りの向こう側から落ち始めた陽の光が差している。一旦落ち着いてみるとこの少年と出会ってから少しだけだが気分というか気持ちが可笑しい。いつも冷静である自分では考えない様な事を考えてしまっている。
自分と同じ様に光に眩しく目を細める少年を横目に眺めながら考える。次はどこに向かうのかと。
二ヶ月ぶりの投稿です。
前回前々回で色違いUBを粘った結果、前回投稿後から数時間後に手に入れました。アクジキング×2テッカグヤ×2。それからデンジュモクを粘ってるけれど二ヶ月出ない。ライダー助けて!
恋や愛について皆さんはどう考えていますか?自分は人が他者に好意を抱く過程にはある程度の「何か」が無ければならないと考えています。色々なssを見ているとキャラクター達が大した事もなくオリ主に対して大きく深い好意を抱いている、その事に違和感を感じてしまいます。
その逆に「恋なんて大した理由もなくする。愛なんてちょっとした事で抱く」とも考えています。
何が言いたいかというと、ぼかぁあべこべ世界での恋愛を書きたいんだ。でもそんな二つの考えが渦巻いてなかなか書けないんだ(クソザコ予防線)
「あく恋愛しろよ」と思うかもしれないけどおじさん許しちくり〜。