ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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扇動と始動

暗く、太陽の光さえも届かない、冷たい冬の風はただでさえ寒い洞窟をより一層寒くする

しかし、洞窟内の熱気は最高潮に達していた

 

「ウオォォォォ!!!」

 

「ルシアーナ様ー!!!」

 

「おい!今はアリシア様とおっしゃるらしいぞ!」

 

≪アリシア様ーーー!!!≫

 

 

 

 

ここはフランディール・ルシアーナが生前、全魔法界に対し宣戦布告した反撃の城≪フランディール城≫、洞窟の中に作られたこの城は、一度も見付かること無く世界を平定した名城

あの時代、この城は魔王が住む不可視にして不落の城≪魔王城≫と呼ばれていた

 

 

 

 

 

 

アリシアはコツンコツンと石で出来た階段を上がっている、後ろからは巨鬼族・族長・デューク、ケンタウロス族・族長・デンホルム七世、人狼族・族長・アレクシアが二歩ほど遅れてやってくる

その服は黒に統一され、背中に背負うローブには紛れもなくフランディール・ルシアーナの紋章が描かれていた

 

デュークはその長い黒ひげを弄びながらニコニコと嬉しそうにアリシアの後を歩いている、デンホルムもその威厳溢れる四肢で誇らしそうに後に続く

アレクシアも当たり前と言わんばかりに、何時もは見せないような笑顔で赤髪を揺らしている

 

当人のアリシアは、少しめんどくさそうにダラダラと、しかししっかりとした足取りで長い階段を登りきった

目の前には赤と黒で彩られた絢爛豪華な造りの扉がある

 

「ガァハハ!行きましょうぞルシアーナ様!!!」

 

「だからデューク様、ルシアーナ様じゃなくてアリシア様です、次間違えたら首から上を咬みきりますよ?」

 

「これだから力馬鹿の巨鬼族は、高貴に気高く、アリシア様の軍の将軍としての責任を感じて行動したまえ」

 

「これはすまんかったアレクシア殿、アリシア様も申し訳御座いませぬ

じゃがデンホルム!お主に馬鹿呼ばわりされる覚えは無いわ!」

 

「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い、何度でも言ってやろうぞ馬鹿力の巨鬼族が」

 

「なんじゃとデンホルム!!!」

 

「殺る気かデューク!」

 

デュークは背に背負っていた異常なほどに大きい深紅の大太刀に手を掛けた、同じくデンホルムも馬の腹に備えていた青蒼の大強弓を握り締める

 

地が震える程の両者の気迫に並みのものならば気絶するほどだろう

 

「止めんか!」

 

アリシアが言うと同時に雷光が二人目掛けて飛来する

デンホルムは素早く矢をつがえ撃ち抜く、デュークもその大太刀を異常すぎるスピードで引き抜き切り裂いた

 

「あぁ~、やはりお二人には無駄ですね分かりました」

 

魔法の発生源はアレクシアだった

 

「まったく馬鹿者め、今から新しい門出だと言うのに争う者共が居るか、アレクシアも今の出力は危ないぞ!この二人ですら並みの怪我ではすまなかったぞ」

 

「「「済みませんでした」」」

 

「まぁ良い、では行こうか」

 

軽く笑みを浮かべながらアリシアは両手で扉を開けた、同時に洞窟内を歓声と喜声が包み込む

バルコニーに出たアリシア達は前に出て洞窟内を見渡した、下には埋め尽くすほどの種族が集まっており熱気はスゴいものだ

 

「わぁー、凄いですねアリシア様」

 

「うむ、昔のアリシア様こんなものではなかったぞ」

 

「くそ、私が後千年早く生まれておれば」

 

唯一アリシアの前世の頃を知っているデュークがどや顔でデンホルムとアレクシアに昔話をしている

私は拡声の呪文を使い声を張った

 

「静まれ!」

 

怒声が洞窟内の騒音を蹴散らす、静まり返った空間にアリシアは語りだした

 

「皆のもの!よくぞ集まってくれた、私が元フランディール・ルシアーナ、お前達の王であったものだ!」

 

また歓声が巻き起こる

 

「しかし、今は私が生きていたあの戦乱の世ではない、私が皆に生前言った通り、お前達は最早私の家臣ではない!好きに生き好きに死んでいく、そんな人生を歩んで欲しい」

 

ざわめく洞窟内、俺達は見捨てられたのか?そんな声が所々から聞こえてくる

 

「しかし、私は一つ残念なことがある!それはこの世界の身分格差だ、ケンタウロスと巨人族は魔法使いからは半獣等と呼ばれ忌み嫌われ、巨鬼族は森を守っているのにかかわらず森の支配者等と呼ばれる

人狼族も自分達の意思とは裏腹に人を襲ってしまう、そんな自分が一番嫌いだと分かっている、それなのに助けて貰えないこの世界が私は間違っていると思う」

 

アリシアの発言に先程まで騒いでいた種族も静かに聞き入って居る

 

「そこで私は新しく一つの組織を作ることにした、それが」

 

アリシアがエンペラーを洞窟の天井にかざす、天井は巨大なスクリーンのように一つの組織名とフランディール家の紋章を写し出した

 

「…特別魔獣管理省」

 

「その通り、 特別魔獣管理省、略して特魔省だ」

 

聞きなれない言葉、そして組織名に何かざわつき始めるのを尻目にアリシアはなおも話を続けた

 

「この組織ではここにいる種族は勿論、他の魔法生物を守り育み、人との共存を目指す、私はお前達を蔑んだり侮ったりはしない

もしも、この世界に不満を持ち確変を求めるならば今一度私の元に集え…お前達に未来を見せてやる」

 

静まり返る洞窟、バルコニーで手を天井に向けてかざすアリシア、その姿は光も松明しかない暗い洞窟の中を照らす太陽の様だった

 

「…アリシア様」

 

「アリシア様!!!」

 

「ウオォォォォ!!!我らが王が帰られた!アリシア・ボスフェルト様!」

 

巨鬼族は民族武器である大太刀を地面に叩きつけ音を鳴らす、巨人族は棍棒で地を叩く、ケンタウロスもその四足を弾ませ、人狼族はアリシア目掛けて遠吠えをする

 

「ここに私、アリシア・ボスフェルトを代表とする特別魔獣管理省を設立する!」

 

その後代表補佐として三種族、巨鬼族のデューク、ケンタウロス族のデンホルム、人狼族のアレクシアが就任、認証を受け幕を閉じた

 

最初の指令としてケンタウロス族に≪抗銀薬≫≪真理の涙≫の素材となる物の確保を、巨鬼族に各薬品の製錬に取り組んでもらい、人狼族、巨人族には勢力の拡大と賛同種族の確保を頼んだ

 

薬品の素材と錬成方法さえ教えれば何でも作る事が出来る巨鬼族は本当に助けになる、約1200名の巨鬼族が一斉に薬品の製作に取りかかった

 

人狼族はその持ち前の速さと体力に身を任せ、世界各国に散る同士にフランディールが舞い戻った事と、特魔省への賛同を求めに駆けてくれた

 

巨人族とアレクシアは引き続きイギリスに散る人狼の確保に向かった、我々の本部はここフランディール城として同士達の編成はデンホルムがやってくれるとの事だった

 

私も何かやろうと思い手を出した所デンホルムが、直ぐに休暇が終わるので家族との時間を大切にしてください

と言ってくれたので何かあれば直ぐに使いを寄越す事と言って、私は言葉に甘え家に戻った

 

「ご苦労だった」

 

家に姿消しを使い帰ると、目の前にはアリシアにそっくりの少女が立っていた

少女はアリシアにお辞儀をするとフワフワと霧のように消えた

創造魔法、昔ロウェナ・レイブンクローに教えた魔法の最上位魔法だ

まぁあの学校を見る限り、ロウェナもここの極地辿り着いた様だ

 

何より、これで母の事を少し騙していた訳だが…

私は階段を下りてリビングでロッキングチェアに腰掛けTVを見ていた

 

「母よ、今日のご飯は何だと言ったかな?」

 

「へぇ?お昼ご飯食べたばっかりじゃない」

 

…しまった

 

「そ、そうだったなぁ…母の料理はとても美味しいから何度も食べたいから」

 

その時母の座っていたロッキングチェアが止まった

 

「今…何て?」

 

「だから、母の料理は美味しいから」

 

スッとイスから立ち上がると母は何も言わずにキッチンへ向かった

 

「んんんッッッ!もおぉぉ~~、ちょっと待っててねアリシアちゃん、今すぐ作るからぁ!!!」

 

コンロに火を入れ、フライパンに向かい様々な食材を放り込み豪快なフライパン捌きを見せている

 

私はまた一つ、フランディール城から持ってきた魔導書を読み返した

 

「あぁ、だったらここをこうすれば…うん、10%は短縮出来るな」

 

暫くして母は息を切らしながら料理をテーブルに並べてくれた…迷惑を掛けたな母よ

その料理はとても美味しく、一切手抜きをしていないことが分かる

 

後一週間でクリスマス休暇も終わる…さぁ、学校の始まりだ!!!


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