ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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眠れるドラゴンをくすぐるべからず

目を開けるとやっと見慣れた天井、外はまだ日も昇らず闇が支配している 

隣のベットに視線をずらせば安らかな寝息をたてるハーマイオニーの姿があった

 

「全くまた布団が、さてと…」

 

私はハーマイオニーのずれた布団を直すとまだ冷たい床へと足を下ろし軽く身支度を整える、短い銀髪をとかし腰にフランディールの剣を差してエンペラーを胸元にしまう

 

アリシアの最近の日課である散歩、今日は禁じられた森にでも入ろうか魔法の鍛練と気分転換を兼ねた散歩は実に面白い。

前回はホグワーツの前にある大きな湖に行ってきた、中々興味深い生物や水人等懐かしい生物にも会えて嬉しい限りだった。

 

自分に不可視不音の魔法≪サイレント≫を掛ける、昔はこの魔法で何人もの暗殺者が私を殺しに来たものだ

だが今となってはこんな中級魔法も使えない…痛ましいな

 

「じゃあ行ってくるハーマイオニー」

 

ハーマイオニーが起きない小さな声で言うとアリシアは闇に消えていった

 

「あぁ…この魔力の流れそしてこの環境、ここは私の生きたあの太古の森にそっくりだ」

 

私はサイレントを解く、その瞬間森の奥から何かが走ってくる音がした、その音は次第に大きくなってくる

 

「そこの者!止まれ!」

 

あっと言う間にアリシアは囲まれた、その体は上半身は人間、下半身は馬そしてこの索敵能力…

 

「私の名はフィレンツェ、君はホグワーツの生徒だね?こんなところで何をしている?」

 

思わず笑みが溢れる

 

「あぁ…懐かしい、今度はケンタウロスか」

 

「なに?」

 

「私はアリシア・ボスフェルト、ホグワーツ魔法魔術学校のグリフィンドール生だ」

 

「そんな君が何故こんな朝早くに森へ?生徒が入るのは禁じられているだろう」

 

「フフっ、懐かしくてついな」

 

「さっきから何を言っている?ケンタウロスに会ったのは今回が初めてでは無いのか?ここに来るのも」

 

フィレンツェはそろそろ混乱してきた様だ

 

「そうだな…あぁ所で今のケンタウロス族の族長は誰だ?」

 

あの時代のケンタウロス族の王は…あぁ、確かデンホルムだったな

 

「この部族の長は私だ、しかし全ケンタウロス族の長はデンホルム七世だが何か?」

 

そうか、当たり前だが初代デンホルムは死んだか、アイツも私の配下で良く尽くしてくれたのだが…だがデンホルム一族は滅んで無かったか良かった、本当に!

 

「そうか、なぁフィレンツェ申し訳ないがデンホルム七世に手紙を届けてくれないか?」

 

私は持っていた羊皮紙に一つの紋様を印す、それをフィレンツェに渡す

 

「こ、これは!!!どこかで見たような?」

 

フィレンツェは首を傾げながらその紋様を眺めた、眠るドラゴンに巻き付く薔薇のトゲ傍らには剣が刺さっている

 

「後もう一つ聞きたいのだが、巨鬼族はまだ生き延びているか?」

 

ずっと気になっていた、私の手足となり各地方の情報を集め紛争が起きれば矛となり無類の強さを誇った巨鬼族、そんな彼らが今何をしているのか

 

「あぁ、と言うよりこの森の長は彼等だからね」

 

…と言うことは、私がアイツに渡したアレを使ったと言うことか?

私はもう一枚羊皮紙にサインを施しフィレンツェへと渡した、巨鬼族へと渡すことを頼んで

 

「じゃあ、そろそろ帰るとしよう…無理だとは思うがこの事はホグワーツに黙っていて貰えるか?」

 

「う~む、立場上厳しいと言わざるを得ないだろう」

 

「そうか、後大丈夫だとは思うがもしその紙でわからなかった場合≪魔王≫と伝えてくれるか?」

 

「よかろう、ではな」

 

そう言うとフィレンツェは森の奥へと消えていった、が、私がホグワーツへと戻るまでの間ずっとフィレンツェの気配は消えなかった、常に私の回りで警護してくれたようだな

 

私は森へとお辞儀すると城へと戻った、今日の授業は確か飛行訓練だったな

マダム・フーチの訓練は厳しいと聞く…だが本当に人は飛ぶことなど出来るのか?

以前はアイツが居たから飛ぶ必要が無かったからなぁ

 

「アリシアどこに行ってたの?」

 

「あぁハーマイオニー、ちょっとな」

 

私はハーマイオニーに朝の挨拶をして朝食へと向かった、この瞬間が私のなかで上位に来るほどの嬉しい時間だ、愛弟子の料理に舌鼓を打ちつつ昔の出来事を思い出す

 

「何て美味しいんだ…」

 

「アリシアってご飯食べるといっつも感動してるよね」

 

「何だ悪いか?」

 

「ううん、いいと思うわ」

 

二人で笑いながら朝食を済ませる、それにしてももこの階段なんとかなら無いかな~?

ロウェナ・レイブンクローが作り出した動く階段、確かに天才だとは思ったが錬成術をここまで駆使するとは…

 

私達は校庭へ出ると並べられた箒の脇に立った、目の前にはあのマルフォイが立っていた、そして他のスリザリン生は私達グリフィンドール生に対して挑発ばかりしている

 

その時、スリザリン生の一人がこちらを向いた

 

「見ろよ、マグルからの魔法使いハーマイオニーだぜ!」

 

「あぁ、何て穢らわしい!」

 

スリザリン生は皆こちらを見て笑っている、しかしこいつらは何も考えていなかった決して怒らせてはいけない人物を怒らせたことを

 

「おい貴様ら…誰を言っているんだ?」

 

この時、ホグワーツに生きる生物は全てこれから起きるであろう最悪の結末を考えた

 

「おいお前ら!何をしている!」

 

マルフォイがやっとアリシアに気が付きこちらへと向かってくる、ハーマイオニーをバカにした奴等はマルフォイに色々言われている

 

「すまないアリシア、コイツらにはしっかり言ってお…」

 

「そこを退いてもらえるかマルフォイ…そいつらはハーマイオニーを…!」

 

私の怒りは収まらない、マグル生まれなら何だ?それがどうした!貴様らは何故そうやって差別化を図る、だからあんな戦争が起こるんだ!

 

「アリシア!!!私は大丈夫だから…ね?」

 

ハーマイオニーはアリシアの手を掴むとそっと自分の方へと引き寄せた

私の怒りも次第に収まりハーマイオニーをバカにしたスリザリン生は恐怖の余り小便を漏らし失神していた

 

「ふぅ…マルフォイ、私はこのようにマグル生まれだからと他人を見下す輩を好まん、くれぐれも伝えてくれ…次はない」

 

マルフォイは真剣な顔つきで頷く、すると丁度マダム・フーチがやって来た…何でダンブルドア校長も一緒なんだ?

 

「アリシア・ボスフェルト、授業後校長室まで来なさい」

 

そして授業は始まった、しかし始まって直ぐにネビル・ロングボトムが失敗した

ネビルはフワリと浮かぶと空高くへと舞い上がった

 

「おぉ!あんなに高く上がるんだなぁ~!!!」

 

私が感激しているとネビルが急降下、こちらへと突っ込んでくる、マダム・フーチが杖を取りだし構えた…魔法を使い止めるのか!

 

…いや!逃げるのか!

私はエンペラーを取り出すと一言≪止まれ!≫

その瞬間箒は急停止ネビルは城壁へぶつかり地面へと倒れ込んだ

 

「失敗した…今の時代受け身も取れないのか」

 

フーチ先生が駆け寄ると何やら騒いでいる、どうやら手首が折れている様だ

私は近付きネビルを見る

 

「すまないネビル、私の助け方が悪かった」

 

「ううん、助けてくれてありがとうアリシア」

 

「直ぐに治してやるからな」

 

私はエンペラーをネビルの手首の上で一振りする、すると先程まで痛がっていたネビルが手首を曲げた

 

「あれ?痛くない…ありがとうアリシア!!!」

 

「どういたしまして」

 

アリシアは片方の目を閉じてネビルへと目配せする、ネビルは顔を赤くして一応フーチ先生と医務室に向かった。

 

「すごいわアリシア!一体どんな魔法?」

 

「う~ん、まぁ色々とね?」

 

古代魔法の事を軽々しく話すことは出来ない、上手く言葉をはぐらかすとネビルの落とし物を見つけた

 

「なぁハーマイオニーこれは?」

 

「あぁ、それは思い出し玉よ、自分が何かを忘れていると中の煙が赤くなるの」

 

「ほぉ、便利なものだなぁ」

 

ん?中の煙が赤くなっているぞ?何か忘れているのか?

私は思い出そうとするが何の事だろうか…飛行訓練、飛行、飛ぶ?

 

「ああぁぁぁ!!!」

 

≪何だ何だ?≫

 

≪誰だ?≫

 

≪何があった?≫

 

「ちょっとアリシア、いきなり大声出して何したの?」

 

いつも冷静でおしとやかなアリシアがいきなり大声を出すのだ、そりゃあ周りの生徒もただ事ではないと驚く

 

忘れていた、私が作り出した賢者の石を与えた奴らの事を一つ目はルシアーナ邸、二つ目は巨鬼族の村、そして最後の三つ目…

 

「…ギルバート、何で忘れていたんだ!私の大切な相棒の事を!」

 

私は授業後言われた通り校長室へと向かった、しかし廊下を歩いていて直ぐに感じた

 

「これは、居るのはダンブルドア校長だけではないな」

 

ガーゴイルの石像は横にピョンと飛び退きアリシアを校長室へと迎え入れる、階段を上がり校長室へと入るとダンブルドア校長を含む三人の男がいた

 

「校長先生、この方々は?」

 

分かりきった質問をする、馬の胴体に人間の上半身、何よりあの腕に彫られた紋章

そして燃える炎のような深紅に体を染める身長二メートルを越える大男、その頭には二本の角そして背には同じく紋章がある

 

「いやいや、ワシも困っておるのだよミス・アリシア、いきなりホグワーツにいらしたのじゃ」

 

「そんなことはどうでも良かろうアルバス、早く我らが主を出さぬか!

先祖との約定やっと果たせる…あぁルシアーナ様!!!」

 

「デンホルムの言う通りじゃ、ワシらはこの時を幾千年も待ちわびたのだ、約束は守りましたルシアーナ様…巨鬼族は永遠にあなた様の臣下ですぞぉぉぉ!!!」

 

成る程、フィレンツェが渡してくれたんだな…だからって学校まで押し掛けてくるか普通?

まぁいい、おかげで久しい顔を見れた…全く変わらない顔つきだなお前は

 

「で、何故私を呼んだのですか?」

 

ダンブルドアは真剣な顔をして語りだした

 

「のぉアリシア嬢、今からワシが話すのは途方もない仮説の話じゃが…お主フランディール・ルシアーナじゃなかろうの?」

 

…おっとぉ~!!!

ヤバイなバレてる

 

「い、嫌だなぁ先生、私がルシアーナな訳無いじゃないですか」

 

しかしダンブルドアは軽く微笑むだけで何もしゃべらない

あー、これは完璧にバレてるな

 

「何故そう思ったんですか?」

 

「そうじゃの、では答え合わせと行こうかの」

 

それからダンブルドアは語りだした、ゆっくりとこちらに歩を進めながら

 

「先ず最初におかしいと思ったのはその剣じゃ、ワシが知る守護魔法の中でも特に古く強力な術じゃった」

 

「成る程、しかしそれは私の家にある魔法を使っただけかも」

 

これまた頷くダンブルドア

 

「次に組分け帽子が言った言葉を思い出した真の持ち主と言う人をな、アレは元々ゴドリック・グリフィンドールの所持していた物ではない、ホグワーツを作り上げた四人の魔法使いの師、フランディール・ルシアーナ所有していた物だと言うことをな」

 

「それが私と何の関係が?」

 

「いやいや、君が組分けをした際に何故かは知らんが組分け帽子がその名を口にしたのじゃよ、いやぁ~不思議じゃな」

 

もうこれ確信しているだろ…後で組分け帽子はシメよう

 

「そ、そうですねぇ~」

 

「まだあるぞ、この紋章に見覚えはあるかの?」

 

ダンブルドアが手に持つ軍旗

何でこんなものが残っているんだ…これは私が使っていた軍旗じゃないか

ご丁寧に新品同様に綺麗にされちゃってまた…

 

「これはそのルシアーナが戦いのとき使ったとされる軍旗じゃ、今となってはこの紋章を知るのはごく少数となった、だが…何故か君は、この紋章を書き上げた」

 

今度はフィレンツェか、これは仕方がないことだな

 

「そうですね、確かに書いたのは私です」

 

「何故これを書けたのじゃ?それにこの紋章を何故この方々に送ったのじゃ?」

 

はぁ~、これ以上は無理だな…仕方がないか

私は一つため息を吐くと同時に魔力を解放した

 

≪ズンッ!!!≫

 

「な、何じゃ…この強大な力は」

 

「おぉ、懐かしきルシアーナ様の力だ…間違い無い!」

 

「これが…我らが主、魔王≪フランディール・ルシアーナ様≫か」

 

そこには学校指定ではない漆黒のローブを羽織るアリシアの姿があった、ローブの背には深紅で描かれたあの眠るドラゴンに巻き付く薔薇のトゲ、そして傍らにはフランディールの剣が描かれた刺繍が施されている

 

「アルバス・ダンブルドア、その洞察力とこの時代では類い稀なるその魔法術には感服したぞ」

 

アリシアが一つ指を鳴らす、すると何も無かった空間からまさに豪華絢爛な椅子、所々に散りばめられた魔石や椅子の細部まで施された彫刻はシンプルながらその彫り上げた職人たちの腕が良く現れる素晴らしい逸品が現れた

 

アリシアは座りなれたその椅子に深く腰かけると、ひじ掛けに肘を乗せ新雪のような透き通った白い足をローブから出し足を組んだ

 

「さて、このフランディール・ルシアーナを呼んだんだ…つまらない話はするなよ?」

 

うっすらと微笑を浮かべるアリシア・ボスフェルト、その表情はダンブルドアを始め巨鬼族・デューク、ケンタウロス族・デンホルム七世をも魅了した…。


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