ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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ホグワーツ入城

湿った空気に美しい月明かり、湖面に映る月と船のかがり火は城へと続く一筋の線となって進んでいく

 

「さぁさぁ新入生の皆さんはここにならんで、直ぐに上級生と対面ですよ」

 

パンパンと手を鳴らす年を取った魔女は私たちに伝える、それよりも先程少し事件を起こしてしまった

汽車を降りて直ぐの事、私とハーマイオニーは二人で船へと向かっていた、新入生の先導をするのは立派な髭をたくわえた大男、名前はハグリットと言うらしい

 

「おいおい嬢ちゃん、ホグワーツへの武器の持ち込みは禁止だ」

 

「待て、ホグワーツの校則には武器の持ち込みを禁じる事は書かれていない、つまり持ち込むのは何の問題も無い筈だが?」

 

私が言うとハグリットは何か口をモゴモゴさせていたが特に言い返す言葉を見つけられなかった様だ

 

こうして無事にフランディールの剣を持ち込めたわけだが…あのマクゴナガルと言う先生、明らかにこっちを睨んでいる

 

「ミス・アリシア、前に出なさい」

 

アリシアは呼ばれたからには出ざるを得ない、精々勇ましく出ていこうじゃないか

私は堂々とした足取りかつ洗練された足裁きで階段を上りマクゴナガル先生の前へ出た

 

「お呼びでしょうかマクゴナガル先生」

 

「え、えぇ…そうよ、ミス・アリシア何故あなたは腰に剣などを差しているのですか、危険ですので直ぐに外しなさい」

 

「先程も申し上げましたが校則には書かれてません、それにこの剣は大切な品なので肌身離さず持っていたいのです」

 

「そうですか、仕方がありませんね」

 

するとマクゴナガル先生はおもむろに私の剣へと手を伸ばした、あぁ~あ

 

≪バチン!≫

 

突然の炸裂にマクゴナガル先生はハグリット目掛けて吹き飛ぶ、ハグリットは飛んできたマクゴナガル先生を優しく包み込んだ

 

「後、この剣には強力な防衛術が掛かっているので無理に離そうとするとこうなります」

 

マクゴナガル先生は驚愕した表情を浮かべているが、直ぐ様立て直しまた私の前へ出た

 

「分かりました、後程校長先生と協議し結論を出します」

 

そう言うとマクゴナガル先生は私たちを連れ食堂へと続く扉を開けた

 

「アリシア!」

 

後ろから声を掛けられ振り向くとそこにはあのマルフォイが追いかけて来ていた、さっき変な眼鏡君と喧嘩していた気がするが…

 

「あぁマルフォイ、久し振り」

 

「君も元気そうで、さっきは大変だったな」

 

「まぁね、でもこの剣は離さないよ」

 

「それよりもあれが組分け帽子だよ」

 

マルフォイが指差す先には三角のトンガリ帽子が木の椅子の上に置かれている

…ちょっと待て何か見覚えあるぞ?

最初にダンブルドア校長から注意事項などを軽く説明され直ぐに組分けが始まった、次々生徒が振り分けられ直ぐに私の番が来てしまった

 

「アリシア・ボスフェルト!」

 

マクゴナガル先生に呼ばれ私は壇上へと上がる、そして直ぐにその銀髪の髪へ帽子を被せられる

 

「緊張しているのか、大丈夫だよワシがそなたに相応しい寮を選んでしんぜよう」

 

組分け帽子はそんなことを言いながら悩んでいる、間違いないこの被り心地そしてこの声

私は静かに語りかけた

 

「お前ごときがこの私を導くだと?」

 

「む、何を言っておるか」

 

「逆に誰に口を聞いている、長く組分け帽子等ともてはやされ自分の主人を忘れたかこのお喋り帽子が」

 

アリシアは軽く魔力を帽子へと流し込む

 

「あ、あ、あ、この魔力まさか…フランディール・ルシアーナ様ぁぁぁ!!!」

 

突如大絶叫する組分け帽子

 

「うるさい黙れ」

 

私が言うと組分け帽子は一瞬で口をつぐんだ

 

「さぁて?私を導くとは偉くなったものだなぁお喋り帽子」

 

「は、はは、あなた様が去った後、私はゴドリック・グリフィンドールの所有物となりこの仕事を仰せつかりました」

 

「で、私はどこに行くべきだ?ほら言ってみろ」

 

「いえ、その、私ごときが魔王と恐れられたあなた様に指図するなど恐れ多く…」

 

「早くしろ!」

 

≪グリフィンドール!!!≫

 

「ふむ、悪くない選択だな…古き友に会えて嬉しく思うぞお喋り帽子」

 

「うあぁぁ、勿体無いお言葉でぇぇ!!!」

 

組分け帽子は泣きながら喜びを噛み締めている

 

「何だ何だ?組分け帽子が泣いている」

 

ざわつく上級生の尻目にアリシアはグリフィンドール寮の椅子へと腰かける、暫くの沈黙の後静かに拍手が巻き起こる

しかし、そんなアリシアを見つめる一つの老眼があった

 

「ほぉ、この世にもこれ程の魔力を放つ者が居るか面白い…奴がアルバス・ダンブルドアか」

 

「フランディール・ルシアーナ、何処かで聞いた名じゃ…何故今組分け帽子がその名を?」

 

その後順調に組分けは行われハーマイオニーもグリフィンドールとなった、すべての組分けが終わると宴が始まった

 

「なぁハーマイオニー、このご飯は誰が作っているんだ?」

 

私はこの余りにも美味しい料理をどこかで食べた気がした

 

「あぁ、これはヘルガ・ハッフルパフが考案した料理よ、何やら体に良いものを使って健康にも配慮したらしいわ」

 

「そうか…ハッフルパフが、美味しいな」

 

私が食事に満足しているとハーマイオニーが一人の生徒を指差した

 

「アリシア、彼があの有名なハリー・ポッターよ」

 

「ハリー・ポッター?誰だそれは?」

 

「あなた知らないの!例のあの人を唯一退けた謎の子供」

 

全く聞いたことがない例のあの人とは誰だ?だがハーマイオニーがそこまで言うならば相当の実力者なのだろう

 

「そうか、強いんだな?」

 

「ちょっとアリシア」

 

「行ってくる」

 

私は席を立つとハリー・ポッターの横へと立った、ハリーはふとこちらを見上げた

 

「え、なんだい?」

 

「私の名はアリシア・ボスフェルト、ハリー・ポッターと見受ける少し話をしないか?」

 

私が笑顔で申し出ると、ハリーも少しおどおどしながらも頷いた

 

「よし、では夜に談話室で…一人で来てくれよ?」

 

そう言うとアリシアは軽く微笑み踵を返してハーマイオニーの隣へと戻った

 

「なぁハリー、今の人誰だよ!凄い可愛かったな!」

 

「いや、知らない会ったこともないよ」

 

「ねぇアリシア、ハリー・ポッターに何を言ったの?」

 

「ん?なぁに夜に少し話さないかと言っただけだよ」

 

アリシアの妖艶な笑みは回りの男子生徒を一瞬で虜にしたと同時にハリーへの憎悪の種を植え付けた、食事が終わると生徒全員が上級生に連れられ寮へと向かった

 

「アリシア・ボスフェルト、ダンブルドア校長がお呼びです来なさい」

 

あ~あ、マクゴナガル先生からのお呼び出しだ、私はハーマイオニーに別れを告げると足早に付いていく

暫く歩くとガーゴイルの石像の脇を通り校長室へと入った

 

「ようこそミス・アリシア、入学当日にここへ呼ばれる生徒は数える程しかおらんかったよ」

 

「それは光栄ですダンブルドア校長先生」

 

ニコニコと笑いながら声掛けてくるダンブルドアにこれまた笑顔で返すアリシア

成る程、伊達にホグワーツ魔法魔術学校の校長をやっている訳では無さそうだな

 

「さぁ座りなさい、お菓子を出してあげよう」

 

成る程、一見何も構えず無防備に見えるが全神経はこっちに集中している、流石は現魔法界最強と言う称号は伊達では無いようだな

 

「はい、ありがとうございます」

 

ダンブルドアが指を鳴らすとそこにはフカフカのソファと豪華なテーブルが現れた

私がそこに座るとダンブルドアも校長の椅子から降り反対のソファに腰かけた、マクゴナガル先生は入り口の方に立っている

 

「さて何からきこうかの、それでは先ずは組分け帽子から聞こう」

 

ダンブルドアはおもむろに手の平を本棚と一緒に置かれているお喋り帽子へと向けた、するとお喋り帽子は吸い込まれる様にダンブルドアの手に収まった

 

「組分け帽子よ、お主さっきの組分けの時アリシアの事を違う名で呼んでおったの?」

 

組分け帽子は黙り込む、しかしダンブルドアの質問は変わらない

 

「組分け帽子、お主このホグワーツでの役割を忘れたか、組分け帽子はこの学校の持ち主が帽子の持ち主となる、つまりお主はワシの質問に答えねばならぬ」

 

「…その約定は今日を持って終了した」

 

低い声で答える組分け帽子

 

「ワシは表向きはグリフィンドールの持ち物、しかしその本当の持ち主は…」

 

「お喋り帽子!」

 

アリシアの言葉にまた口を閉じる組分け帽子

 

「で、ダンブルドア校長先生は私に何のようですか?」

 

アリシアの冷たい眼光がダンブルドアに突き刺さる

 

「ふむ、ワシの用事は一つだけじゃ」

 

ダンブルドアは立ち上がりテーブルに両手を付け前のめりになった

 

「お主…何者だ?」

 

その質問にはこのホグワーツ魔法魔術学校を守る守護者としての決意と信念が渦巻いていた

アリシアは姿勢を変えず足を組み手を組んで座っている、しかしその蒼眼は外すこと無くダンブルドアの瞳を見据えている

 

「それは答えられない、私はここホグワーツ魔法魔術学校に魔法を学ぶために来た学生だとしかな」

 

暫くダンブルドアと睨み合うアリシア、しかしダンブルドアは一つ溜め息をつくとニコリと笑い頷いた

 

「そうかい、あぁそうじゃ剣は預かっておくよ他の生徒が怖がるといけないからの」

 

ダンブルドアがアリシアの剣に手を伸ばした、ここで少しアリシアの悪い癖のいたずら心が出てしまった

あえて防衛術を解かずにダンブルドアへと差し出した

 

「ダンブルドア校長が取れるのならどうぞ?」

 

アリシアは笑顔で校長先生に言った、しかしマクゴナガル先生がハッとした表情をした

 

「アルバス!」

 

恐らく先程吹き飛んだのを思い出したのだろう、しかし時すでに遅し、ダンブルドアは剣を握り込んだ

 

≪パチッ…ドン!≫

 

瞬間ダンブルドアの手が一瞬弾けた、しかしマクゴナガル先生程吹き飛ぶ等の事は起こらなかった

 

ほぉ、完璧とは言えないがあの防衛術を解呪したか…流石は現最強の魔法使いと言うべきか、よし次回からはもっと強力なのにしておこう!

 

「…なんじゃ今のは」

 

「ダンブルドア校長、取れなかったので私が持ち帰ります」

 

「ちょっと待ちなさいミス・アリシア!」

 

「良いのじゃミネルバ…行きなさい」

 

私は恭しく礼をすると校長室を後にした

 

「何故ですアルバス!剣を持ちながら学校を歩くなど…」

 

マクゴナガルがダンブルドアに対して叱責するとダンブルドアは静かに言った

 

「あの防衛術はもはや失われた術じゃ、昔みた魔導書を思い出し咄嗟に反対呪文をかけたがこのワシでも全ては相殺できんかった、それにあの剣…あれは人間の持っていい代物ではない」

 

深刻な話をするダンブルドアとマクゴナガル先生達の事など露知らずこの後に控えているハリー・ポッターとの対談に心踊らせるアリシアだった

 

さぁ~てと、先ずは部屋に行こうかな…軽く汗も流したいし

アリシアはハーマイオニーと合流しお風呂へ向かった、ハーマイオニーとの話は実に面白い、自分が学んだ事の無い魔法の事や今有名な魔法使いの事そして四人の可愛い弟子達の話そんな事を話す間に私は風呂にのぼせ体が火照ってしまった、そろそろ上がるか

 

「ねぇアリシア、ハリー・ポッターと話すことがあったんじゃないの?」

 

……あっ!!!

私は急いで半袖のシャツと半ズボン形のパジャマを着て談話室へと向かった

 

「すまないポッター、遅れてしまった!」

 

まだ乾ききっていない艶めかしい銀髪、薄紅色にうっすら染まった頬と服から覗く肌に潤んだ蒼眼、ハリーは思わず目線を逸らした

 

「ん?どうしたポッター、まさか怒っているのか…?」

 

「い、いや…その」

 

暖炉の前に置かれたソファに座るハリーの横に座り近づくアリシア、ハリーはより一層目線を逸らした

 

「だったら何故視線を逸らす!」

 

アリシアが顔を近づける、その時ハリーはアリシアの華奢な両肩を掴んだ

 

「あっ…」

 

突然ハリーに捕まれたアリシアは勢い余ってソファの手掛けに押し倒される形になった

 

「アリシア…言いにくいんだけど、服が少し緩いんじゃないかな?」

 

ハリーはアリシアの胸元を指差し言った…

 

「ん?…いやぁ!!!」

 

急いでいた余り第一第二ボタンを掛けてなく胸元がはだけていた、その上パジャマは一回り大きいサイズを買っていたため…

 

「見た?」

 

「ううん!見てないよ!」

 

ハリーは首を横に振った、しかしアリシアは潤んだ瞳でハリーを見つめる

 

「…少しだけ」

 

「見たんじゃない!もぉーーー!!!」

 

アリシアは恥ずかしさに顔を薄紅色から真っ赤に染めてソファの上に足を組んで座っている

 

「あの…で何の用だったの?」

 

恥ずかしくてまだ顔を上げられないアリシアにハリーは訪ねる、アリシアはボソッと言った

 

「ハーマイオニーがね…あなたはスゴいんだって言うから、少しお話ししたいなと思っただけだよ…」

 

「…あれ?アリシアってそんなしゃべり方だった?」

 

「え…ダメかな?」

 

アリシアが膝を抱えたまま首をかしげた

 

「いや!全然イイトオモウヨ!」

 

何故か片言のハリーを見て思わず微笑むアリシア、つられてハリーも笑顔になった

 

「さてと、じゃあ話をしようハリー・ポッター」

 

アリシアが気を取り直してハリーへと投げ掛ける

 

「うん、あと僕の事はハリーって呼んで」

 

「では、私の事はアリシアと」

 

それからアリシアはハリーに様々なことを聞いた、例のあの人とは誰か、どうやって退けたのか、両親の事等

話す内に夜が更けてしまった

 

「あぁ、もう消灯時間か…」

 

「じゃあまた話そうアリシア」

 

「…そうだな、楽しかったぞハリー」

 

そう言うとアリシアは自室へと戻って行った

 

「はぁ~、何であんなに可愛いんだよ…でも何で僕なんかに、それも一人でって…もしかして!」

 

ハリーは何か期待に胸膨らませ寝室へと帰っていった

 

 

 

「う…ぅん…アリシア…?遅かったね?」

 

「あぁハーマイオニー、起こしてしまったかすまない」

 

布団の中からモゾモゾと顔を出すハーマイオニーに微笑みながら返すアリシア、ハーマイオニーはその顔を見て少し不満そうな顔をした

 

「随分楽しかったようね?」

 

「うん?フフっまぁな、実に興味深い話だったなぁ」

 

ベットに入りながら笑うアリシア、ランプも消したためもはや顔が見えないがその雰囲気から楽しいことは分かる

 

「…私との話は面白く無いのかな?」

 

「そんなわけ無いだろ?私に生まれて初めて出来た友達だぞ、ハーマイオニーと一緒にいるととても楽しいよ」

 

「そ、そっか…おやすみアリシア」

 

「あぁ、おやすみハーマイオニー」

 

二人は星空煌めく夜の闇へと溶けていった


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