ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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王たる者

 静かな夜だった。

 

 辺りは漆黒に包まれ、微かに聞こえる風の音が私を安心させる。

 

「あの方に会ったのもこんな夜だったな‥。」

 

 あの頃の私は1人だった、生まれついて同胞達と大きくかけ離れた力を持っていた。

 周りよりも力が強く、大人達が悩むことも私には何故そんなことも分からないのか?逆に分からなかった。

 襲われる同胞を助け、知識の無い者には知識を与えた。

 彼らは私を姫と呼び始め、同胞達だけの国が出来た。

 しかし、何時しか一部の同胞は私を恐れ始め、あの日に全てが壊れた。

 

 私は何時もの様に、侍女となった者達から寝酒を貰い趣味の読書をし、疲れて来た為眠りにつこうかと、ベットに入り夢の中に落ちかけた時、それは起こった。

 

《バアァァァン!!!》

 

 突然の爆発音、私は何事かと飛び起きた。

 窓の外を見ると、剣や槍、杖を掲げた謎の集団が私達の城に雪崩れ込んでくる様が見えた。

 

《バンッ!!》

 

 寝室の扉が開かれた、目の前には血だらけの者が息を切らしながらこちらへ歩いてくるのが分かった。

 

「グ、グレイ‥?」

 

 それは何時もの黒のタキシードに身を包み、黒髪をオールバックに纏める眼鏡の紳士ではなかった。

 

「‥ひ‥姫さま、お逃げ下さい、反乱です。

 敵は我々の兵を大きく‥上回る軍勢、流石の姫さまでも勝ち目はございません」

 身体中に傷を負い胸元は更に大きく切り裂かれていた、髪は所々焼け、トレードマークのメガネは無いボロボロの従者。

 

「な、何で‥?

 そんな、みんなで仲良くしてたじゃ無い‥、何が‥どうして‥?」

 

「‥どうやら複数の氏族が秘密裏に同盟を組んでいた様です、城内部にも内通者がおり、さらに施された防衛魔法を無力化されました。

 奴らの狙いは、姫さまの真相たる血かと‥グアッ!!!」

 

 突然グレイの腹部から鋭利な槍が突き出した。

 同時に、何人もの兵士が部屋に雪崩れ込む。

 グレイを刺した男が槍を引き抜き、私の前へ出てきて吼えた。

 

「真祖ティーナ!貴方の時代は終わったのだ!!

 この国は大きくなった、どこの国にも負けない吸血鬼の為の国となった。

 しかし、貴方は人間を襲うな、誰とも争うな等と腑抜けた事ばかりをおっしゃる、我等は吸血鬼、夜を支配する王だ!

 誰と争おうとを負ける道理など有りはせぬ!」

 

 よく顔を見れば、私達の国の近衛隊長だった。

 彼はニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべながら、未だ尚吼え続けている。

 私の頭は真っ白になり、何も入ってはこない、ただ一つだけ分かったことがある。

 

「私は‥裏切られたのね‥。」

 

 ポツリと幼い少女の声がやけに部屋に響いた。

 

「グッ‥グオォォォォーー!!!!」

 

 死に体になっていたグレイが起き上がり、真紅の光を近衛隊長へ浴びせる、直ぐ様身を翻し、近くにいた兵士4人を吹き飛ばす。

 

「グレイ!!」

 

 ティーナは瞳に喜色を滲ませた。

 しかし、グレイは振り向かず静かに何時もの調子でティーナへ語り掛けた。

 

「姫さま、私を暗い夜から暖かな火が灯る夜へ導いて下さったのは貴方です。

 貴方は何も間違っておりません、私が貴方の頑張りを見ていました。

 後悔しないでください、ご自身をお責めにならないで下さい。」

 

 ゆっくりとした口調だが、力強くティーナへ語りかける。

 

「死に損ないが!貴様一人に何ができると言うのか!

 いつも邪魔ばかりしおって!」

 

「確かに私では貴方には勝てないでしょう、正直立っているのもキツイところではあります。

 しかし、執事とは‥主人を守り!支え!時に導き!

 いかなる時に置いても主人の道を妨げる者を許さない!!!!」

 

 グレイの背から黒い羽根が生え、それがティーナの姿を正面から隠す。

 ゆっくりと後ろを振り向き、小さな主人と同じ目線になる為跪き、主人の顔を見て優しく微笑む。

 

「ティーナ様、我が愛しき主人よ、ここは執事の仕事です。

 私の仕事を取らないで頂けますか?」

 

 何時ものふざけている様な口調で、そう話すとグレイは立ち上がり近衛隊長へと向き直った。

 髪を手早く自身の血でオールバックに纏め、焦げたタキシードの襟を正す。

 

「何人たりともここを通ることは許されません。

 我が主の目通り叶いたくば、私の屍超えてゆけ!!」

 

「グレイ!ダメだよ!

 死んじゃう、私は大丈夫だから!」

 

「貴方はいつもお優しい、今回だけはそのご命令はお聞きすることは出来ません、ご理解下さい。

 さぁ、姫様は行ってください。

 私は少し‥掃除が残っておりますので、また‥お会いしましょう。」

 

 グレイは手早く主人を抱くと、失礼しますと一言言い割れた窓から漆黒が支配する外へ投げた。

 ティーナは翼を広げ、飛び上がり、後ろを振り返る。

 

 そこには崩壊していく、炎に包まれ崩壊していく自身の城が見えた。

 一つの部屋では、未だ、時折真紅の閃光が迸っていた。

 

 ティーナは溢れ出る涙をそのままに、未だ漆黒の夜空へ飛び立った。

 暫く、城の崩壊の音と共に魔力の波動を感じていたが、城が見えなくなる頃、その気配は消えて行った‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからは地獄だった、近くの町に潜り込んだ時は魔導板にティーナの顔がお尋ね者として載っていた。

 長くはいれないと町を転々とし、獣の血で生き延びた。

 2ヶ月は経っただろうか、とうとう限界が来た。

 森の中で一歩も動けなくなった。

 ティーナは分かってしまった、ここで終わりなんだと、死にかけの獲物の匂いを嗅ぎ付けたのか、辺りには獣の気配がして来ている。

 周りを囲み、ゆっくりと輪を縮めて来ているのがわかる。

 

「グレイ‥ごめんね‥。」

 

 獣の姿が見えた、地面に倒れ伏す少女を見て、獣達は唸りをあげ、飛び掛かった。

 少女はゆっくりと目を閉じ、その時を待った‥が、訪れなかった。

 

「大丈夫か?」

 

 目を恐る恐る開ける、そこには神がいた。

 月の光に反射する美しい銀髪、見る物を魅了する吸い込まんばかりの青い瞳。

 

「‥だ、れ?」

 

「ふむ、至極当然の質問だな、我が名はフランディール•ルシアーナ世界の王だ」

 

「世界の‥王?」

 

「うむ!まぁまだなってはあらぬがな‥。」

 

 軽く微笑み、自信満々に言ったその瞳は当然の事を言っただけだと物語る。

 その時、森の奥から果てしないプレッシャーを感じる。

 

「何か‥、来る」

 

 震える声でティーナが呟くと、ソレは姿を現した。

 フワフワとした漆黒の二対の翼とは裏腹は凶悪な爪、口元からは他の様なものが垂れ、その口には3メートルはあろうかと言う巨大な魔牛が力無く咥えられていた。

 

「龍王種‥」

 

「ほぉ‥、知っているか」

 

 昔にグレイから聞いたことがある、遥か昔龍が多く存在した時代にその中でも抜けた力を持った種があったと。

 それが龍王種。

 

「だけど、もう絶滅したんじゃ‥」

 

「絶滅したのではない、一匹を除いて絶滅させたのだ」

 

 黒龍は大地が震える様な声で、そう告げた。

 

「この私と同格というのがどんなものか試したくてな、まぁそれなりには楽しめたわ」

 

 その言葉を最後にティーナの意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目が覚めたのは、美味しそうな匂いを感じてだった。

 

 木製の簡易なベットから身を起こすと、キッチンの様な所で料理をするあの女性が見えた。

 

「やぁ、起きたんだな、もう少しで食事ができるからまだ寝ていなさい。」

 

 こちらに気づいた女性、ルシアーナ様はそう言って鼻歌混じりに料理を作ってくれた。

 

「さぁ、大したものではないが食べてくれ!」

 

 ‥うん、確かに大したものではなかった。

 

「い、頂きます‥。」

 

 スープを口に運ぶ、普通のごくありふれたスープの味がした。

 何故だか涙が止まらなかった。

 

「何があったかは無理に聞こうとは思わない、ただあの状況でよく頑張ったな」

 優しく頭を撫でるルシアーナ様、それだけで私の心は軽くなった気がした。

それから2.3日して、不思議と私はあったことを話してしまった。

安心してしまったのだろうか、不用心にも全て‥。

話ししている間、ルシアーナ様はただ無言で話を聞いてくれた。

時折頷き、話終わった私を優しく抱きしめた。

 

「ありがとう、辛いことを話させてしまったな」

 

 また涙が出て来た、グレイと離れ2ヶ月半、彼はどうなったのか、城の民たちは無事なのか、ずっと考えて来た思いが溢れて来たのだ。

 

「お前はどうしたい?復讐したいか?裏切った者達へ制裁という名の死を与えるか?」

 

 ティーナは瞳に力を宿した。

 

「そんな事は思わないです。

ただ‥私の、大切な人達を救いたい‥」

 

 ルシアーナ様はゆっくりと頷いた。

 

「ギルバート、全軍に招集の通達をしろ!仲間を救いにいくぞ!」

 

「ハッ!!」

 

 状況をよく飲み込めてない私を他所に、ルシアーナ様は微笑んだ。

 

「お前の望み聞き届けた、後は私に任せなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 そこからは早かった、2日と立たずに目の前には数万の多種族が集結した。

森林の王巨鬼族、森の護人ケンタウロス族、怪力無双巨人族

数々の強者たちが続々と集ったのだ。

 

「一体何が起こってるの?」

 

 チンケな森のボロボロな小屋を囲むその軍勢はただ静かに、命令を待っていた。

ティーナが自分の後ろを見ると、黒いローブに見たことのない紋章を付けたルシアーナ様がいた。

軽くティーナの頭を撫でると、しっかりとした足取りで小屋を出て行った。

同時に、軍勢が跪く。

 

「みな、よく集まってくれた。」

 

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 森が震える。

強力な種族が一人の魔法使いの前に跪く、異様な光景だった。

ルシアーナだけは堂々とした足取りで中央に佇む。

 

「我らの仲間が、苦しんでいる。

私は助けに行くことを決めた!異論はあるか!!」

 

()()()()()()()()()()()

 

「全軍出撃!!!!」

 

 ルシアーナ様の号令と共にドラゴン族が空へと舞い上がる。大地を揺らし、すべての種族が私の城へと足を進めた。

 

「ティーナ、お前も来い!共に救うぞ!」

 

 私は震えた、この人はなんて明るいのだろう。私は差し出された手を取り共に、彼方へと向かった。

 

 風が吹き荒れる夜、戦いはギルバートの宣戦布告にて始まった。突如空に現れた、巨大な黒龍は布告と同時に巨炎を持って敵に大きな被害を与えた。

 

 クーデターを起こしたのは近衛隊長だった様だ、修復したばかりの城門を、力ずくで粉砕した巨人族の後を、巨鬼族が我先にと殺到する。

驚異的な回復力を持つ吸血鬼だったが、圧倒的な破壊力を誇るフランディール軍にはなすすべなく崩壊した、そう思われたとき。

 

「軍を引けーーーーーい!!!!」

 

 篝火の灯された城のベランダには、近衛隊長がボロボロになった、赤い何かを掴んで叫んだ。

 

「フランディール•ルシアーナ殿とお見受けする!何ゆえ我が国を侵略した!まぁ何となく理由は分かっておるが!」

 

「分かっているなら是非もない!即刻武装を解除し、投降せよ!さすれば命は助けよう!」

 

「フンッ!そこの元王の甘言に騙され軍を率いるなど、かの有名な強王とは思えぬな!」

 

「投稿するつもりがないというなら、攻め滅ぼすのみよ!」

 

 ルシアーナ様が再度軍を進めようとしたそのとき

 

「これが何がわかるか!?」

 

 近衛隊長は赤い何かに剣を突き刺した。

 

「グァ‥!」

 

 小さいながら確かな声が聞こえた。

 ‥グレイ。

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ティーナは我を忘れ飛び出した。

しかし、そんな私の腕をルシアーナ様は掴んだ。

 

「離して!!グレイが!!グレイがぁぁ‥!!!」

 

「静まれ馬鹿者が!!王たる者何事にも動じてはならない!それが血を分けた家族であろうとも王は王たらねばならない!それが宿命だ!」

 

「離せぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 ティーナの魔力が高まるが、ルシアーナは軽くそれを散らした。

 

「お前が熱くなってどうする、それが狙いと気づけ馬鹿者め、私は何と言った、お前の願いを聞き届けたのは誰だ!私を誰だと思っている!」

 

 そう話し、ルシアーナ様は私の目をしっかりと見つめた。

 

「私はフランディール•ルシアーナ、お前の願いを聞き届けた、それは何があろうとも誰が相手でも違えぬ‥」

 

 そっと頭を撫で、私に言った。

 

「デンホルムよ!私の言葉を嘘にするなよ!」

 

「お任せください我が王よ、我が蒼弓にて必ずや‥‥!」

 

 ゆっくりと歩みを進めるケンタウロス族の長、腹部にある巨大な弓を引き絞る。

 

「嘘、まさか‥ここから?」

 

 ざっと見ても700メートルはある、しかも相手は30メートルはあるベランダの上、周囲は嵐、こんな悪条件で狙撃など‥。

 

「青蒼の大強弓《パラディン》よ、その力を王に示せ!」

 デンホルムが持つ弓が蒼い光を放つ

 

「蒼雷魔法《雷雪》」

 

 静かに放たれた矢はその挙動とは裏腹に周囲に轟音を響かせた。

 

 ガアァァァァァン!!!!

 

 放たれた矢は城を中部を覆う防衛障壁に衝突、しかしそれを容易く貫き近衛隊長の喉元へ突き刺した。

 

「ばか‥なぁ‥‥」

 

 近衛隊長はビクビクと痙攣し、動きを止めた。

 

「殺ったのか?」

 

 ルシアーナ様の言葉にデンホルムは

 

「いえ、峰打ちでございます」

 

 と、恭しく跪き答えた

峰打ちって‥刺さってるんだけど‥。

 

「よくやったデンホルム、褒美を使わす」

 

「なれば、これからもお側に置いて下さりますれば、何よりの褒美でございます。」

 

「うむ、頼むぞ」

 

「ありがたき幸せ!」

 

「さて、ティーナ、忠臣を迎えに行くぞ」

 

 なんて凄い人なんだろう、私も、こんな方になりたい。

「はい!!!」

 

 ルシアーナの後を追い、私は城へと向かった、途中の城下町ではティーナの顔を見た民たちが歓喜をの声を上げていた。

 

「ティーナ様万歳!ルシアーナ様万歳!魔王様に栄光あれ!!!」

 

 民たちはティーナの帰りを待っていてくれた様だ、聞こえて来た話によると、何度も民たちの暴動が起こり、この国は回らなくなっていた様だ。

 

 私にまだ居場所はあったのだ。

 

 ベランダへと駆けると、そこには横たわったグレイがいた

 

「グレイ!!!」

 

 私はそっと抱き上げる、最後にあった時より全身に傷が増えていた、吸血鬼なら回復力でも癒しきれない肌の傷、どれほどの苦痛を味わったのだろう。

 

「ごめんね‥ごめんねグレイ‥私が、弱いばかりに‥。」

 

 そう言い、涙を流す私。

すると頭に何かを感じた。

 

「ティ‥ナ‥様、ご無事‥で、何よりです、また‥お会いできて、良かった」

 

 グレイは血まみれの顔で優しく微笑んだ。

 

「また‥泣いて‥おられるのですね、‥お一人にして‥申し訳ございませんでした‥」

 

「ううん!ルシアーナ様が!皆さんが助けてくれたから!」

 

 グレイはティーナに抱かれたまま、頭だけ動かし周りを見た。

 

「動くな、今癒してやる守癒魔法≪極癒光≫」

 

 温かな光に包まれ、グレイの傷は治って行った。

 しかし、ルシアーナの魔法をして、深い呪い傷は残ってしまった。

 

「これは‥!ありがとうございます。貴方様は?」

 

「我が名はフランディール•ルシアーナ、この世の王だ」

 

 グレイは立ち上がり、魔法を使い服と身なりを直ぐ様整えた。

 

「私は、こちらにいらっしゃいますティーナ様の執事のグレイと申します。この度は我が主人へのご助力感謝申し上げます。」

 

 美しい礼と共に感謝を述べるグレイ。

 しかし、周りは少しピリついた雰囲気を醸し出した。

 

「我らが王の前で立って礼をするなど不快なり‥」

 

 デンホルムは蒼弓に手を伸ばす。

 

「控えろデンホルム!」

 

 ギルバートは自身の王の意を読み取り、デンホルムへ吼えた。

 

「それで良い」

 

 ルシアーナも満足そうに頷く。

 

「さて、今回の戦だが、成功の報酬を決めていなかったなティーナ‥」

 

「ふぇっ‥あ、そうですよね‥申し訳ありません、勿論です‥お望みとあらば私の命でも‥」

 

「馬鹿者が!何度言わせる王たる者周りに常に気を張れ!王同士の話だ、お前が死ねばその民はどうなる!」

 

 また、怒られた‥

しかし、その通りだった。

 

「申し訳ございません‥」

 

「それに後ろを見てみろ、お前の番犬が今にも飛び掛かって来そうだぞ?」

 

「え?」

 

 後ろにはいつもと同じ様な顔をしながら、魔力を爆発させているグレイの姿があった。

 

「失礼しました。」

 

 スッと魔力を引っ込めると、いつも通りの表情へと変わった。

 

「フフッ、我を前にその魔力を出せるなど中々の忠臣ではないか、見事だ!」

 

 この人はなんで、殺気を当てられて喜んでいるのだろう‥?

 

「で、報酬の件だが‥私達と同盟を結ばないか?吸血姫ティーナ殿」

 

「同盟‥ですか?」

 

「その通り!我々は‥‥〜」

 

 それから私と、ルシアーナ様は未来について語り合った。

これからどんな国を作りたいのか、その為になすべき事、障害について。

 

「分かりました、吸血姫ティーナの名において、ルシアーナ様の夢を共に追わせていただきます!」

 

 こうして、私達吸血鬼族と、ルシアーナ軍は同盟を結んだ。

 

「そう言えば、お前の国の名は何なのだ?それだけはまだ聞いていなかったな‥‥。」

 

「あ、そう言えば‥私たちの国は‥黒夜国《ナイトメア》です!」

 

 そこから私とルシアーナ様は何度も共に戦った。

ルシアーナ様から魔法を教わり、持ち前の才能を遺憾なく発揮しギルバート《黒トカゲ》には後一歩の所まで迫った事もある。

 

 そして、少しでもルシアーナ様に近づく為口調も似せてみたり、態度も似せたりした、笑った体力バカとデンホルム、デュークとは大喧嘩した。

 

 それから、グレイは私に親しげに話しかける様になった‥時々口が悪くなる‥。

 腹いせに、寝起きに様々な罠を張るようにしたりもしてやった。

とても充実し、楽しく忙しい毎日だった。

 

 等々、ルシアーナ様は世界の魔法界を統一され、望んだ世界になった、私はイギリス魔法界を陰から支える国として君臨し続けた、我らが王、ルシアーナ様な為に。

 

 しかし、突然ルシアーナ様は姿を消された。

私に、あとは頼むと言われ‥‥どこに行くのか勿論尋ねた‥しかし帰って来たのは、

 

「私の時代は終わりだ‥」

 

 そう言って、いつもと変わらない微笑みを浮かべ、消えてしまった。

黒トカゲの全力飛行されれば私に追う術は無かった、それから私はルシアーナ様の影を追う様になった。

 周りをルシアーナ様の肖像画で飾り、ルシアーナ様が使われたペンを集め、ルシアーナ様の御髪を探し出し、ルシアーナ様の読んだ本を擦り切れるほど読み漁り、ルシアーナ様の歩かれた場所を巡り、ルシアーナ様のルシアーナ様のルシアーナ様のルシアーナ様のルシアーナ様のルシアーナ様の‥‥〜〜!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日、私の支えるべきイギリス魔法界の秩序を乱す者が現れた。

 さぁ、私とルシアーナ様の思い出の場所を汚す者に、血の制裁を加えよう。

 

「吸血鬼族の姫長《喑血姫ティーナ》その役目果たさせて貰う、散れ!」

 ティーナの後ろで控える者達は、直ぐ様闇夜へ消えていった。

 その内の一人の首には何かで貫かれた様な深い傷があった‥。


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