ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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運命の歯車

気持ちの良い朝の光を全身に浴びて私は目を覚ました、今日は終業式、楽しかったホグワーツ一年生が終わる。

あの事件の翌日ハリーは目を覚ましたらしい、直ぐに見舞いに行き皆んな無事なことを伝えると心の底から安堵していた。

 

「アリシア、僕が倒れた後君が僕を助けてくれたの?」

 

私は、ダンブルドア校長が直ぐに来てくれたと伝えて病室を出た、途中ダンブルドア校長とあった為口裏合わせをして置いたのは秘密だ。

どうやら校長はハリーに力のことを話したらしい、愛の守護魔法、自分の命と引き換えに使うことが出来る正に最強の魔法だろう。

 

それからは残された学校生活を楽しく過ごした、ロンはテスト返却の際今にも死にそうな顔をしていたが結果は合格、ポロポロと涙を流していた。

 

ハリー、ロン、ハーマイオニーはスネイプ先生が教える魔法薬学の授業の時は、少し気まずくて集中できなかったようだ、勿論私はそんな事気にせず発言していたが。

そしてそれから数日が流れとうとう終業式が始まった、最初は上級生が入場して行く、最後が一年生だ

 

「何だ?上級生が騒がしいな…」

 

何やら最初に入って行った上級生達が声を上げている、私達も何か分からず入って行ってその理由に気付いた

 

「…スリザリンか」

 

食堂内の天井に浮かぶ蛇が象徴の緑の旗、ニヤニヤとこちらを蔑んだ目で見てくるスリザリン生の者達、中にはこちらを見て大笑いしている者もいる。

 

「くそッ、なんなんだアイツらの態度は」

 

グリフィンドール生も少しピリついて来ている、しかし私はそんな中全く違う事を考えていた。

 

…はぁー、あの子達互いに切磋琢磨して成長しなさいとは言ったけどわざわざ生徒同士がいがみ合うような仕組みを作らなくてもねぇ。

 

恐らくこの仕組みを作ったであろう四人の弟子たちを思い深いため息をついた。

 

「しかし…確かにスリザリン生の態度は不快が過ぎるな」

 

流石の私もあの態度は気にくわないな、時間が経つにつれスリザリン生の態度はより一層酷いものへと変化して行った

 

「ハーマイオニー、一回だけなら良いんじゃ無いか?な?一回で終わらせるから…」

 

そう呟くアリシアを必死のディフェンスで抑え込むハーマイオニー、今にも魔杖エンペラーを振り下ろそうとするその手に縋り付き、アリシアを宥め続けてる。

 

「もう少し!もう少しだからぁぁぁ!アリシアァァァ!!!」

 

「何なのだアイツらは!離せハーマイオニー!うがぁぁぁ!!!」

 

アリシアの昂りが限界に達するその瞬間、ダンブルドアが声を張った。

 

「それでは、今年一番優秀だった寮の発表を行おうかの第4位…」

 

それからはダラダラと発表が続いた、スリザリン生はグリフィンドールが最下位だった事でよりテンションが上がっているようだ。

 

そしてなんと言っても、スリザリンが一位だった事でスリザリンのボルテージは最高潮に達した。

 

「ハッハッハッ!やはりスリザリンの方が優秀だった様だな!」

 

それがスリザリン生の総意だった、いや、一人だけマルフォイだけは何の意見にも賛同していなかった。

 

そんなスリザリン生の鼻を折る出来事がダンブルドアから発せられた、そう、今回の賢者の石騒動だ。

今回の騒動をこれ幸いと、ハリー、ロン、ハーマイオニー、この私に立ち向かって来たネビル・ロングボトム、そして私を全てグリフィンドールの加点対象にしたのだ。結果グリフィンドールがスリザリンを追い越し逆転勝利、まんまとタヌキ親父に騙されたのだった。

 

食事の際にこちらに視線を送って来たが知らんぷりをしておいた、代わりにハリーが何か反応していたがそれは知らん。

 

終業式も終わり私は一つやらなければいけない事がある、フラッフィーの移動だ。私はフラッフィーのいる隠し扉へ向かった。

 

「フラッフィーよ用意は出来たか?」

 

扉を開けるとそこには黒い犬が尻尾を振り待っていた。

その体は前の様に大きくは無くせいぜい3メートル程に小さくなっている、しかしその体は身体中の無駄を省いた様に引き締まり、頭には2本づつ湾曲した角が生えていた。

 

「ほぅ、中々良い成長をした様だな」

 

「うむ、以前の様に魔力を抑えるために大きかった体も上手くコントロールしておるな、アリシア様コヤツは私の配下に加えても?」

 

ギルバートも満足する様な進化の様だな

 

「アリシア様、私は成長し以前の様に傲慢な殻は破り捨てまして御座います、新参者の私ですがお願いしたいことがありまして…」

 

フラッフィーは少しもじもじしたようにこちらを見て来る

 

「何だ?言ってみろ」

 

「ハッ!恐れながら新しい名前を頂きたく!」

 

どうやらこの私の配下に加わるため、以前の様に弱い自分と決別の意味を込めて、私に名を付けて欲しいとの事らしい。

 

「ふむ、まぁ良いだろう」

 

私はエンペラーを一振りした、同時にフラッフィーの首には銀と金で飾られた豪華な首輪が嵌められる。

その首輪には《歩千》と彫られている

 

「おぉ、ありがとうございますアリシア様、して、この文字は?」

 

「これは東洋の島国、日本の文字で漢字と言う、元は中国から伝わった物だが」

 

実はアリシアは日本が結構好きなのである、部屋にはかの有名な富嶽三十六景の絵巻や五重塔の模型もある程だ。

 

「これは《ポチ》と読む、私と千の道を共に歩め」

 

アリシアの覇道を共に歩め、歩千は頭を床に着くほど下げて名を受け取った。

さて、次はとうとうハグリッドだな、まぁ荒れるって事だけは分かるが…。

 

 

 

 

 

「ダメだ!俺のフラッフィーを持って行くことは許さんぞ!」

 

案の定荒れた

 

「そこを何とかしてくれないかハグリッド?私と歩千はもう離れられる様な関係じゃ無いんだ」

 

「ダメだダメだダメだ!!!フ、フラッフィーは俺が小せぇ頃から大事に大事に育てたんだ!

ダンブルドア校長の頼みだったからこそあんな部屋に入れたが、本当は俺は大事なフラッフィーをあんな薄暗い部屋に入れたくなんか無かったんだ!」

 

「でもなぁー…」

 

ハグリッドの攻略に攻めあぐねる、どんな城や敵さえも瞬時に攻め落として来た私を困らせるとは、ハグリッド侮れん。

そんな事を考えていると、私のローブから何かが飛び出した

 

「あ、おいフィー」

 

それはまだ小さなヒッポグリフの子供だった、私の配下に入りたいと飛んで来たヒッポグリフの群れにいた子供だったが、羽を怪我しており私が引き取ったのだ。

親のヒッポグリフはもう昔に魔獣狩にあってこの世を去っていた。

 

「あ、アリシア、それはヒッポグリフじゃねぇか!」

 

ヒッポグリフのフィーはハグリッドのヒゲに飛びつき中へ潜って行った、どうやらあのヒゲが気に入ったらしい。

 

「何だお前、あ、おいグフフ、止めろ」

 

ハグリッドもフィーと戯れている

 

 

…30分後…

 

「アリシア、もし、もしもだけどこのヒッポグリフをワシに預けてくれるならフラッフィーはお前に任せる、その方がフラッフィーも幸せそうだしな」

 

「分かった、フィーお前もそれで良いのだな?」

 

フィーは羽をパタパタとしてハグリッドの周りを飛び回る

 

「よし、ではハグリッド、フィーを宜しく頼んだぞ、もしもフィーに何かあったら私は決して許さんからな」

 

ハグリッドはドンッと自分の胸を叩き任せとけ!と言ってフィーとの遊びを再開させた。

 

「では行くぞ歩千」

 

歩千は一吠えすると私の後に続いて来る、決して後ろは振り向かない、私の主人はアリシア様だけだと言う意思を込めて。

 

「フラッフィー!幸せになるんだぞ」

 

ハグリッドの言葉に背を向けただひたすらに歩む、この人、アリシア様の後ろを。

それから歩千にギルバートと同じく収縮呪文を掛け、手のりサイズのティーカップケルベロスに変えた。

ギルバートは全力で掛けて超大型犬サイズなのだから、歩千の成長が楽しみだ。

 

それからは電車に揺られ地元ロンドンに到着した。ハーマイオニーとは休みの間に会う事を約束し、その場を離れた。

私とギルバートは駅を抜け路地裏へ入った、今日は大事な手術があるから迎えには来られないらしい。

 

だったらギルバートに乗って帰れば直ぐに着くなーと思ったのが理由だった、それがこんな事になるとは。

 

 

 

 

 

俺の名前は紫藤 涼、室ヶ丘中学の二年生だ。

今日は修学旅行、今は亡き僕の父と母が出会った国イギリス・ロンドンに来ている。

 

俺は少しだけ、ほんの少しだけだがこの旅行を楽しみにしていた、父の付けていた日記にある母との思い出の場所、それらを見て回る事で父と母の事を思い出すことが出来るからだ。

 

「さてと、案の定スラれたな〜」

 

さて困った地図の入ったバッグを引ったくられた、友人には個人行動すると言って来たから誰も居ない、ついでに財布もバックの中だった。

 

「あー、これは困ったぞ」

 

取り敢えずどこか有名な場所に行ってみよう、誰かしら同級生がいるかも知れないし。

 

 

 

 

…20分後…

 

「そりゃそうだよな、地図も無くて知らない国を歩けばこうなるよな」

 

完全に道に迷った…。

おかしいなぁ〜、大通りを歩いてた筈なのにいつの間にか路地裏にいる、ここまで来ると自分の方向音痴加減を褒めたくすらなる。

 

「…!…?…!!!」

 

ん…?誰かの話し声が聞こえる。

こんな薄暗い路地裏にいる奴なんて絶対ロクでも無い奴に決まってる、ここは…三十六計逃げるに如かず!!!

 

俺は全力で反対方向に走った、そして前に明るい開けている場所を見つけた

 

「よし、助かった!」

 

先ほどまで薄暗いところにいたためか、激しく目が眩む。

 

「〜〜?」

 

何だ?誰か居たのか?

何か声を掛けられた気がする、日本語じゃないのは仕方がないがやはり分からないな。

 

「あー、えくすきゅーずみー、あいどんとすぴーく、えっとーいんぐりっしゅ」

 

「〜?〜〜!!」

 

目が慣れて来た、その声の主を見る。

太陽の光を反射しキラキラと光る銀髪、青く美しい瞳、触ればその瞬間に溶けてしまいそうな程白い肌、そして桜の様な薄紅色の唇は妖艶さを感じさせた。

 

「…美しい」

 

率直な感想が漏れてしまう、この人は何だ?神か天使か?

 

「ん?何だ日本人か…道理で英語も中国語も通じないわけだ」

 

突然聞き慣れた言葉が聞こえた、その声音は透き通り声だけで天にも登る聖歌にすら聞こえてくる。

 

「どうした?迷ってしまったのか?」

 

天使に声を掛けられた、明らかに年下の子にこんなにドキドキするなんて…。

 

「おい!」

 

「へ?あ、うん!そうなんだ!」

 

「そうか、確かにこの辺りは道が入り組んでいるからな」

 

少女は少し思案した顔になりつつ僕に手を差し伸べた。

 

「え?」

 

「道に迷ったなら仲間の元に連れて行ってやろう、それが日本人のココロイキだろ?」

 

悪戯っぽく笑うと彼女の表情はただ俺の心を撃ち抜いた、それからの事は良く覚えて居ない、きっと俺は相当惚けた顔で彼女と共に同級生に会ったのだろう。

 

同級生曰く、俺を同級生に預けると足早に去って行ったらしい。

 

「でもよー、なんなのあの子メッチャ可愛くね?」

 

「そうだよな、おいリョーあんな子とどこで会ったんだよ!」

 

同級生達からのからかいを他所にただ彼女の事を思い出す。

あぁ、もう一度会いたい、それだけが頭を駆け巡る。

 

その時彼女と出てきた路地の入り口に光るものが見えた、近づいて見るとそれはチェーンに繋がれた学生証だった。

 

「ボグワーツ魔法魔術学校

一年 グリフィンドール寮

アリシア・ボスフェルト」

 

「おいリョー!何見てんの?」

 

同級生の一人が横から覗き込む

 

「うわ!何て書いてんのかサッパリ読めねーわ」

 

え?何て書いてあるのか読めない?

俺はもう一度学生証を見る、そこには文字化けし始めている学生証の姿があった。

 

俺は急いで住所と必要事項をメモ帳に書き出した、書き終わると同時に学生証に書かれている文字は読めなくなってしまった。

 

「アリシア・ボスフェルト」

 

メモ帳に書かれた名前と住所を見て俺はある決意をした。

 

 

 

 

 

…その頃…

 

「あれ?おかしいぞ学生証がない」

 

「どこかに落とされたのでは?」

 

「多分な…まぁ認識阻害呪文が施されているから、マグルに拾われてもゴミにしか見えんだろ」

 

「そうですな」

 

ギルバートとアリシアはボスフェルト家の居城《テオボルト城》へと帰っていった。


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