ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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決着そして師弟

夜もふけてきた頃私はグリフィンドール寮の自分の部屋でハーマイオニーを待っていた。

 

「…遅い、ハーマイオニーは一体どこで何をしているんだ!」

 

そんなことをギルバートに愚痴っていると突然部屋の扉が開かれた。同時にハーマイオニーが私の胸元に飛び込んできた

 

「ま、まてハーマイオニー!私にそんな趣味は…!」

 

「少し…怖かったのアリシア」

 

小刻みに震えるハーマイオニーを見て私はただ事ではないと感じて事情を聞いた。

 

「成る程、その男〈ヴォルデモート〉とやらが生き長らえる為にユニコーンの生き血を飲んでいたと、そしてそのケンタウロスが来なければハリーも危険な所だった、そう言うことだな?」

 

ハーマイオニーは静かに頷いた、ユニコーンが一体殺されたか…ただでさえ生体数が減ってきているのに…これは許されないな。

 

「それで?」

 

「取りあえず今は先生方が賢者の石を守っているし…あの三頭犬もいることだし」

 

つまりは動かないと、だがあのハグリットがどこからドラゴンを手にいれたのか…それにドラゴンの卵の報酬は何だったのか、嫌な予感がするな。

 

「そう言えばアリシアの用事は終わったの?」

 

「ん?あぁ、少しは楽しめたな」

 

「…そう、嫌な予感がするから聞かないでおくわ」

 

それから二人で雑談を交わしその日は眠りについた、ハーマイオニーはいつもアリシアの傍にいる在るものが居ないことに気付く事無く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ギルバート…

 

「全く、我が主は龍使いが荒いわ…フランディール城から帰って少しゆっくり出来ると思ったら今度はドラゴンの生息域を調べてこいとは…」

 

そう愚痴を溢すギルバートの顔には一切の面倒と言う感情はなく、主に頼られていると言う誇りと自信がみなぎっていた。

別に言葉で行けと言われた訳ではない、ハーマイオニーとか言う主の友人の言葉にあった、ドラゴンと聞いて私は気配を極力低くして部屋を後にした。

主も戦力の拡大と魔法生物の生息域の情報は欲しい筈だ。

 

「お任せ下され我が主よ、千年前のドラゴン部隊の再編成私が成し遂げて見せますぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…デンホルム七世…

 

フランディール城内、デンホルムは自室で問答を繰り返していた

 

「私が弱い?ケンタウロス族の王にしてアリシア様の参謀、私は…本当にお役に立てているのだろうか?」

 

デンホルムは初代デンホルムより受け継がれてきた武器、青蒼の大強弓≪パラディン≫この弓の弦を引けるものがケンタウロス族の王、族長と認められる

 

「明日の決闘、負けられぬ…アリシア様に私の強さを示すのだ!」

 

明日の決闘に向け≪パラディン≫の手入れを行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…デューク…

「ガッハッハッァ!!このワシに決闘を申し込むとは!あのデンホルムの小倅も豪気なやつじゃのぉ!!!」

 

そう言いながら満面の笑みで紅大太刀≪デスタクト≫を豪快に振り回す、しかしその太刀筋は美しく一切の無駄が無い、洗練され最早達人の域を超越していた。

 

「じゃが心配じゃのぉ…ワシは戦闘になると手加減出んぞぉ~、まぁその時はギルバート殿が止めてくれるじゃろ!ワシは戦闘を楽しもう!ガッハッハッァ!!!」

 

この男に敗北の二文字は無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…アレクシア…

 

イギリス某山脈、アレクシア人狼軍・将軍アレクシア天幕内

 

「アレクシア様!前方の山脈にはぐれ人狼を発見しました!!!」

 

一人の黒装束を着た兵がアレクシアへ報告に来た、アレクシアは目の前に広げられた山脈の見取り図に印を書き込んでいた。

 

「コロニーはどれ程の規模ですか?」

 

「ハッ!第1斥候隊10名が追跡中であります、現段階で70~90規模と見られております」

 

70~90名ですか…今まで20~35名規模だったですけど多いですね、さすがはイギリス最大のコロニーですねぇ。

 

「我が軍の総数は?」

 

「ハッ!人狼部隊が300名、ケンタウロス族が200名、巨鬼族が100名、総数600名になります」

 

成る程、約6倍ですか…まぁ負ける事は無さそうですね。

 

「斥候部隊に伝令、私たちに戦闘の意思は無いことと我々にはあなた方を救う手立てが有ることを伝えてください」

 

直ぐ様伝令に伝えるため人狼が天幕から出ていった、私はまた地図に向かいにらめっこを始めた

 

「…何だか嫌な予感がしますね」

 

各々が考えを巡らせその夜はふけていった…

 

「これより!特魔省・大幹部≪紅鬼神デューク≫特魔省・大幹部≪デンホルム七世≫の決闘を執り行う!」

 

私は闘技場に集まった者達に声を張った、空にはグリフィンやキメラ、天馬が超高速鬼ごっこをして駆け回っている

 

「これは!今日から行われる特別強化訓練の教官を決めるものである!立会人は我が腹心≪国崩しギルバート≫が務める」

 

ギルバートはゆっくりと闘技場に舞い降りてきた、その体にはちらりほらりと返り血や擦り傷が付いていた

 

「どうしたんだギルバート?」

 

「いやぁ、久しぶりに遊んでしまいました」

 

「支障は無いだろうな?」

 

「お任せ下され」

 

そう言い闘技場の中心に進み出た

 

「両者中央に!!!」

 

ギルバートの掛け声と共にデュークとデンホルムは大円闘技場の中央へ向かった、両者の手には〈デスタクト〉と〈パラディン〉 が握られていた。

 

「おぉおぉ、逃げずに来たかデンホルム」

 

「貴様ごときに何を恐れるか…、貴様をここで倒し私が特魔軍最強という事を教えてやるわ」

 

「若いのぉ、恐れを知らず自身の限界も知らん…故に弱い」

 

「まだ言うか!もう良い、これより先は武勇によって決しよう」

 

そういうとデンホルムはギルバートにお辞儀をすると一番闘技場を見渡せる高座に座る私に礼をして自身の待機地に戻った、デュークもやれやれと言った仕草をしつつも私とギルバートに礼をし戻って行った。

 

「それでは両者正々堂々と、アリシア様の大幹部として恥じない戦いを期待する…始め!!!」

 

ギルバートの咆哮と共にデンホルムは闘技場の縁に沿うようにその四足で駆け出した

 

「我らがケンタウロス族の大強弓撃ち抜けぬ物は無し!!!」

 

デンホルムが弦を絞る、どこからともなく弓には青白い矢がつがえられているた

 

「全てを凍らせ撃ち砕け!〈氷結魔法・アイシングアロー〉」

 

限界まで絞られた矢は放たれると同時にデュークへと向かった、正に高速、目にも留まらぬ速さでデュークに迫る、しかしこの男に一寸の焦りも無かった。

 

「パキィィン…」

 

突如響く甲高い破壊音、デュークの背後、闘技場の障壁には真ん中から綺麗に斬られた矢が二本突き刺さりそこを中心に氷を張っていた。

 

「…な!」

 

「なんじゃいこの腑抜けた矢は…」

 

「フッ!多少は楽しませてくれるようだな!流石はデュー…グハァ!」

 

何か言ったと同時に吹き飛ばされる、その体はデュークと反対障壁にめり込んだ。

 

「ん?何か言ったか?」

 

デュークの飛び蹴りがデンホルムの腹部に炸裂し、吹き飛んだのだ、当のデンホルムは何が起こったのか訳が分からないと言った顔をする。

 

「何だ…一体何が」

 

しかしデンホルムも諦めない、再び闘技場を駆け出す、デュークは先程デンホルムを蹴り飛ばしたため闘技場のほぼ中央に位置する、今度はデュークの周りを周り高速の早撃ちを繰り出した。

 

「オオォォォ!!!」

 

上下左右、全方位から放たれた蒼矢はデュークを包み込む様に肉迫する

 

「洒落臭いわぁぁぁ!!!」

 

〈デスタクト〉を抜き放つとデュークは一振りで全ての矢を撃ち落とす、闘技場に落ちる蒼矢からはまた氷が張った。

 

「なっ!…そんな馬鹿な…」

 

「のぉデンホルム七世よ、お主まだパラディンの力を引き出しておらんな?」

 

「なっ…何を言うか!この大青蒼パラディンは私を主と認めその力を私に与えてくれる!」

 

「あぁ〜、それがもうだめなんじゃよ、力は武器に与えられるものじゃない、武器と共に磨くものだ…お主にはそれが足りんわ」

 

瞬間デュークの体が赤紅色の光を放ち始めた

 

「良いか?これが武器を自身の力にすると言う事だ…鬼神流・魔鬼!」

 

横一文字に振られた剣すじはデンホルムの頭上を通過、客席へと迫った

 

「ギルバート!!!」

 

「御意!!!強鱗化〈バニッシュ〉!!!」

 

私の声に反応し、剣筋の前に躍り出たギルバート、その体は何時ものフワフワな羽毛と変わり鈍く黒光りしていた、その真紅の剣筋をギルバートの強健な鉤爪が受け止め押し返す。

 

「…第三戦術魔法〈神犯の槍〉」

 

アリシアが椅子から立ち上がり空に手をかざす、直ぐにそれはやってきた、眩い黄金の閃光がギルバートが抑えていた真紅の剣筋にぶち当たり消えた、真紅と黄金の光が辺りを埋め尽くした。

 

「そこまで!勝者デューク!!!」

 

私の宣言で一気に会場が湧き上がった、中には自分の族長が負けた事で涙するケンタウロスまでいた。

 

「おいデューク!紅鬼神化するなら先に言え、危なく客席まで届く所だったぞ」

 

アリシアの言葉にデュークは笑顔で

 

「ガッハッハ!!!その割には余裕で止めなさったではないか、いやはやまだまだ修行が足りませんな」

 

「いや、悪くはない攻撃だったぞ…まだ私の体を傷付けるには至らなかった様だがな」

 

まるで埃を払うかの様な仕草をしながらギルバートは呟いた

 

「…さて」

 

私は闘技場の隅でうなだれているデンホルムの元へ向かった

 

「あ、アリシア様…私は…」

 

私の顔を見て何と言えば良いのか分からず口ごもる、しかしこいつは何を恥じているのかが分からない

 

「デンホルム七世よ、お前はまだ若い…あのデューク、あいつも昔はよく私に向かってきたものだ、まぁその度にコテンパンに返り討ちにしてやったがな。

良いか?負けた事を恥じるな、恥じている暇があるなら次の戦いに備え自らを高めろ、自分を知ることが出来ないものはそれ以上の高みは無い、逆に自分を知るものは高みに上がる」

 

「はい…私は自身の強さに驕りを持っていた様です、これからはより精進しあなた様の横に立てる存在になれるよう邁進して参ります!!!」

 

決意と言う名の炎がその目には宿っていた…が

 

「ほぉ、我が主の横に立つ存在を目指すか…つまりこの我を負かすそう言うことと捉えて良いな?」

 

私の背後からヌゥと出てきたのは私の腹心にして右腕ギルバート

 

「うっ…い、いずれは…」

 

「おぉいデンホルム七世、ギルバート殿にはワシも勝った事が無い…ワシに勝てんのに滅多なことは言わんほうが良いぞい」

 

「…え?」

 

「そう言えばギルバート、お前が怪我するとはどんな奴とやり合ったんだ?」

 

私は決闘前にギルバートが怪我していたのを思い出した

 

「あぁ、あれはただ単にこの決闘に間に合いそうになかったので岩山の二、三個をぶち抜いて飛んできたのでその時に、流石に強鱗化するわけにもいかずスピード重視で来たので」

 

あぁ〜つまり防御無しの生身で数個岩山を吹き飛ばして擦り傷を負ったと…デンホルム頑張れ

 

「さて、では約束を守って貰おうかの」

 

「フッ、ここまでやられたんだ認めざるを得まい…これからよろしく頼む〈師匠〉」

 

「おぉ、なんじゃ新鮮で良いもんじゃのう!!!ガッハッハ!!!」

 

デンホルムはその日のうちにデュークから連れられ森へ向かった、これから特訓だと言っていた、デュークの特訓とはキツそうだな

 

私は夕方の特別訓練に間に合うように帰るよう指示しホグワーツへと戻った。

 

森の方からデンホルムの悲痛の叫びが聞こえたのは気のせいにしておこう、多分気のせいだろう…。


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