ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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久しぶりの投稿です


魔獣の末裔我が名は…

「…で後はここを…出来た!」

 

 ホグワーツ、グリフィンドール女性寮の一室。今ここで過去ホグワーツで起こった事の無い程、大きな事件が巻き起こっていた。

 

「ね、ねぇアリシア…忘れているみたいだから一応言っておくけど、ここの部屋一応私も居るんですけど?」

 

 頭にねじった白い布を巻き付け、裾が広がり足首で縮まって居る服を身につけて魔方陣の製作に取り組むアリシア。彼女曰く、東洋の国日本のDAIKUと言う人達のユニフォームらしい。

 

「そんなことは分かっているぞハーマイオニー、だからわざわざ部屋に拡張呪文の掛かったテントを置いているんじゃないか?」

 

「そ、そうね」

 

 ハーマイオニーは考えるのを止めた…扉から出ていくハーマイオニーの背には悲壮感が漂っていた。

 

「しかしこれを作っておいて良かったな…」

 

 今私が取り出した物は、目的地とこの場所を繋ぐ夢の扉≪イリュージョンドア≫。いちいち何かの指示を出すとき≪姿消し≫を使って外に出るのは正直めんどくさい、ならいっその事こことフランディール城を繋げてしまえば?と思ったって製作しておいたのだ。

 

「確か姿をくらますキャビネット棚と言うものがあった筈だな、現代の者達が作れて私が作れない訳が無い」

 

 現段階で私、ギルバート、アレクシア、デューク、デンホルムの五人の魔力に反応するようにしておいた。

 一応設置して動作確認したが問題はなく動きフランディール城の外にある練武場の直ぐ側に出た、扉を開けた瞬間デンホルムの魔矢をデュークが大太刀で切り裂いていた。

 

 私を見つけるとデューク、デンホルム、審判をしていたアレクシアがこちらへ向かって駆けてくる、余りの怖さに爆撃魔法を三発ほど見舞い扉を閉めた

 

「主よ何かありましたか?」

 

「い、いや少し鬼退治をしたくなっただけだ、後うまも」

 

「そうですか…」

 

 ギルバートも何となく察して視線を扉の見えない向こう側に向けた、恐らく起こっているであろう爆撃に思いを馳せながら。

 

「さてと、一先ずテントの設置とイリュージョンドアの設置は完了だな、ギルバートの部屋はテントの中になるから確認しておきなさい」

 

「おぉ!私にも部屋を用意して頂けるとは!」

 

 ギルバートはフワフワの尻尾を振りながらテントの中へ入っていった、中は40メートル四方は在ろうかと言うほど大きく、ギルバートが変身を解いてもくつろぐ事が出来る広さだった。

 

「これは良いですな!主よ感謝します」

 

 床にはフカフカの絨毯を敷き詰め、脇には体を持たれかける丈夫な壁を設置しておいた。

 

「気に入ってくれたようで良かった、ではそろそろ向かうとするか?」

 

 私はギルバートを連れて大広間へ向かう、これからクリスマス休暇空けの全校集会があるのだ。私はローブに袖を通し部屋を後にする、暫く歩くと中庭でたそがれていたハーマイオニーを見付け一緒に向かった。

 

「全く…あなたはどこまで行くのか…」

 

 ブツブツと何か言っている気がするが、気にしない方向で。直ぐに大広間に着いた、どうやら私達が最後のようだな…

 私はあえて両手で重厚な大扉を開け放った

 

「おぉ、やっと来たか皆が待っておる早く席へ」

 

 ダンブルドア校長が正面の台の上から話し掛けてきた、ハーマイオニーは足早に席へと向かう。私とギルバートもその後に続くが、決して遅い速度ではないのに周りの生徒の目線はゆっくりとスローモーションの様に見えた。

 

「あれが学年一位のアリシア・ボスフェルトか…美しいな」

 

「流石はアリシアお姉様、輝いていらっしゃる…」

 

「あぁ…アリシア、また美しくなったな」

 

「見ろよあの使い魔、何て魔法生物だ?ドラゴンじゃないだろうな」

 

「何でも飛びネズミって言うらしいぞ」

 

 何か周りが騒がしいが気にせず椅子に座る、何故かダンブルドアが苦笑いだが…何かしたか?

 直ぐに校長先生の話が始まった、今回も何時もとは変わらない校内での所注意とクリスマス休暇の思いで話だった。

 

 しかし少し変わっていたのは、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が行った三階のあの部屋だった。やはり生徒が行かないよう、恐ろしい脅し文句を言って話を締めた。

 

 私とハーマイオニーは、全校集会後にハリー、ロンと合流した。ここで面白い話を聞いた

 

「クィレル先生とスネイプ先生が争ってた?」

 

 ハーマイオニーは興味深そうに話を聞いていた、何でもハリーが誰かから送られてきた〈透明マント〉なる物で賢者の石について調べるため禁書の棚に行った際、下手をしてフィルチに見付かり逃げたさきで争ってたらしい。

 

「これでますますスネイプが怪しくなってきたわ!」

 

「今夜ハグリットの小屋に行こう、スネイプに見つからない様に」

 

「こ、今夜?見付かったらどうするんだ?」

 

 ハリーの言葉に少しどもるロン、しかし直ぐに諦め首を縦に振った。

 

「アリシアも来るよね?」

 

 ハーマイオニーが私に訊ねてきた、しかし私はどうしてもやらなければならないことが有る。

 

「すまない、私は今回はパスだ…やらなければならないことがある」

 

 あからさまにハリーは残念そうな顔をして居る、ハグリットの小屋は離れているとは言え学校の敷地内だ、そこまで危険は無いだろう。

 私とハーマイオニーは別れ各自今夜に備えての準備に取り掛かった

 

 さて、私が今夜何をするかと言うと…下見だ!

 確かにスネイプ先生は怪しい、しかし私はどうしてもスネイプ先生が悪い人には見えないのだ。むしろ影からハリーを守っている存在ではないかとすら思えてくる、だが残念ながらハリー達はスネイプ先生が賢者の石を狙う者だと確信している。

 

 このままでは最悪、自分達で賢者の石を守ろうなんて考えを持つかもしれない。だから先にあの部屋に隠されている賢者の石、並びにトラップを理解しておこう(危なかったら壊しておこう)と言う訳だ。

 

「んー、まぁ必要なものはこの巾着袋に入れておこうかな」

 

 私は手早く必需品等を拡張呪文が施されている巾着に放り込む、そんなこんなしている内に夜になってしまった。

 ハリー達は一足先にハグリットの元へ向かったらしい、私もギルバートを連れ禁じられた部屋に向かう。

 

「主よ、この先に獣の匂いが有ります」

 

 そこはハリー達が言っていた三頭犬がいた扉の前だった、もしもハリー達が再びこの扉の前にたったとするなら。前回の恐怖や自身の身の安全を考え部屋に踏み込むのを躊躇うだろう…しかし

 

「ふむ、では行こうか?」

 

 この人は違う、恐れ?初めて聞く言葉だ、恐怖?そんなものは過去に腐るほどに体験した、私の道を立ちはだかるものは何であろうと容赦はしない。

 

 アリシアは一つの恐れも抱かず木製の明らかに年期の入った扉を開いた、視界をおおったのは黒い毛に覆われた三頭犬、ゆっくりとアリシアの方を向くと伏せていた足をゆっくりと持ち上げ天井ギリギリの高さまで立ち上がった。

 

「成る程、確かに頭が三つに別れている。面白いな…」

 

 そんな寝ぼけた感想を呟くと同時に三頭犬はアリシアに襲い掛かってきた、しかしそれが三頭犬の最後の光景となる、次の瞬間には先程まで捉えていた自分よりも明らかに小さき存在であると感じていた者の足元に頭を垂れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名はフラッフィー、偉大なる地獄の番犬≪ケルベロス≫の末裔である。

 私の真価は何かを護るときに発揮される、私は生まれて直ぐにここホグワーツに連れてこられた。どうやら何かを守るのに私の力が必要だと言う、私を育てたのは森番のハグリットと言う男だ。

 

 こいつは中々良い奴だ、餌は一日五食キチンと用意するし私にもブラシをかける。今はここ隠し扉の守護をしているため中々会えないがまぁ仕方がないな。

 しかしこの所侵入者が多い、今日もまた通路より今まで嗅いだことの無い匂いを持つものが近付いて来ている。

 

 扉が開いた、うん?只の少女じゃないか…そう言えば、ダンブルドアとハグリットから学生が来た場合は追い返す程度にしてくれと言われていたなぁ~

 

 めんどくさいが一吠えすれば逃げ帰るだろう、私は何時もの様に噛み付く振りと同時に大声で吠えてやるつもりで一気に近付いた。

 …それが悪かった。後一メートルでぶつかる距離で私は顔を止めた、いや…止めざるを得なかった。

 

「犬が私の道を阻むか!」

 

 少女の肉体から溢れでる止めどない魔力が私に死を予感させた、ケルベロスの末裔たる私の全細胞が今までに無いほどの警告を発した。

 

 同時に私は感じたのだ、彼女こそが魔を治める方なのだと。逆らってはいけない、逆らうことさえ許されない絶対の強者。そんな目の前に居る純粋な恐怖が私にはどこか懐かしく彼女を受け入させたのだ。

 

「身の程は弁えている様ですなアリシア様」

 

「おい犬、頭を上げよ」

 

 アリシアに頭を上げる許可を得たフラッフィーはオズオズと頭を上げる、アリシアの後ろにはギルバートが待機し何か行動を起こせば直ぐ様消し炭になるだろう、フラッフィーも後の生物が自身の敵う生物ではないと本能的に察した。

 

「多少高位の獣の様だな、まぁ察して神獣の子孫と言った所か、人語は理解できる様だが…まだ話せないようだな」

 

 アリシアが呟くと同時にギルバートも同意した

 

「はい、恐らくケルベロスかフェンリルの末裔かと存じます、中々に骨のある者達でしたな…」

 

 ギルバートは遠くを見ながら舌舐めずりをしている、一体≪骨のある≫とはどのような意味で骨があったのか…まぁ聞かないで置こう。

 

 そんなギルバートを見て余計に恐怖し三頭犬は耳を垂れ下げ尻尾も力なく地面に沿っていた、体は小刻みに震えている。

 

「干渉魔法」

 

 アリシアがフラッフィーの頭に手を乗せて唱える、それと同時に淡い白銀の光が溢れる。光はフラッフィーの頭に溶け込むようにやがて消えた

 

「さぁ、話してみろ」

 

 フラッフィーは体内に満ちる今までとは比べ物に成らないほどの力を感じた、体が熱く今にも燃え上がりそうな程だった。

 

「こ、これは?」

 

「ふむ、問題無さそうだな…。お前のような神獣や精霊、聖獣に魔獣等この世の獣の上位種に当たる者達は自身の成長と共に魔力が増え、人語を理解するようになる。それが進むとやがて自身も人語を話すようになるのだ」

 

「そう、我のようにな」

 

 ギルバートは胸を張りふんぞり返っている

 

「だがお前はまだほんの少し成長が足りなかった、その為私の魔力をお前の体内に流し入れ眠っていた魔力を無理矢理叩き起こしたのだ。

 今はその魔力が体内を駆け巡り血が熱くたぎり最高の気分だと思う、しかしこれから暫く体調が急激に悪くなるだろう」

 

 フラッフィーは少しビクッと体を震わせた

 

「な、何故でしょうか…?」

 

「当たり前だろう?普通は自身の成長と共に学び培う魔力を無理矢理叩き起こしたのだ、その魔力に耐えうる体を急速に作り直す必要がある、その時の激痛と言ったらなぁ~」

 

 ギルバートは溜め息混じりにニヤニヤと言った

 

「しかしだ、その先にあるのは今までとは違う森羅を操る力の奔流だ…まぁ我までとは言わぬが彼のケルベロスの末裔と言えばそれ相応の力を持つことが出来るだろう」

 

「そ、そうですか…しかし何故私にそれほどのお力を下さったのですか?」

 

 アリシアはフッと顔を綻ばせると一言

 

「お前が欲しい、それだけだが?」

 

 フラッフィーは明らかに口を開けて呆けている、ギルバートはやはりかとこれまたやれやれといった表情をしている。

 

「私は今、特別魔獣管理省と言う組織の長をやっている。お前のような人外、魔獣等様々な人々から嫌われる生物の保護と権利を主張する組織だ。

 今は少しでも力が欲しい、もしもお前が自分自身で自由を手にしたいと言うのなら…」

 

 アリシアはふてぶてしくもフラッフィーを見下ろし、手を出した。

 

「私と来い、さすればお前にも光をやろう」

 

「まぁ…この方の隣の座は我ギルバートで埋まっているがな」

 

 何なんだ…この方は、私の言葉なんて一切無視じゃないか。何て理不尽、なんと言う横暴…

 しかし、何て言う充実感なんだ。私の先祖の血が騒ぐ、この人が…この方こそが私の生涯を込めて仕えるべき方なのだと

 

「…こんなまだまだ若造な私ですが、微力ながらあなた様の夢に生涯を掛け助力させて頂きます」

 

 フラッフィーは三頭を下げ手をアリシアの前へ差し出した、アリシアもその手を取り直ちに主従契約を交わし部屋には白銀の光が溢れ、一人と二匹を包み込んだ。




危険生物はどんどん受け入れます
特別魔獣管理省

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