ハリー・ポッターと古王の帰還   作:ハリムラ

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古王

西暦500年この世は戦乱の中にあった、魔術師は手に杖を持ち互いに殺し合い、今だ魔法界を統治するものは現れない。

そんな暗い世に一人の天才が生まれた、その者の名はフランディール・ルシアーナこの話は太古の昔、魔王と呼ばれた天才が千数百年の時を越え1991年イギリスの貴族に生まれ変わる話

先ずは彼女の生きた一つ目の人生、戦乱の世について語ろう

 

 

 

 

 

 

 

~西暦500年~

「頑張ったなシェリー、女の子だそうだよ」

 

純白のベッドの上で医師や看護師に囲まれ肩で息をする美しい女性に優しく声を掛ける男性、シェリーは軽く微笑むと頷いた

 

「アル、私達の天使を見せて」

 

アルドヘルムは笑顔で頷き返し赤子をシェリーへと抱き渡した

 

「あぁ私達の天使なんてかわいいの、あなたの名はルシアーナ、フランディール・ルシアーナよどんな人にも優しくでき、導くような存在になってね」

 

シェリーはルシアーナの額に軽くキスをするとアルドヘルムは二人を抱えるように抱き合った、雪が舞う冬の出来事だった

 

 

 

 

 

~5年後~ルシアーナ5歳

 

ルシアーナは間違いなく天才だった、ルシアーナの家フランディール家はベネディクト王に仕える由緒正しい貴族の家庭だった

 

父フランディール・アルドヘルムはそのベネディクト王から千人の精鋭魔術師を預かる千人隊長をしていた、それゆえ家には多くの魔導書が置いてありさながら魔導図書館の様だった

 

ルシアーナは絵本よりも魔導書を好み自分で本を読みふけることが日々の日課に成りつつあった

たまには運動をさせた方が良いと魔剣士の父アルドヘルムが修練場に連れていけば教えたことをすべて吸収しみるみる剣の腕も上達していった

 

 

 

 

~13年後~ルシアーナ13歳

 

ルシアーナは13歳になった、父と母から受け継いだ美しい銀髪と氷のように透き通った青い瞳は見るものの心を掴んで離さなかった

最近のお気に入りは近くの森へ本を持ち木陰で涼みながら本を読むことだ、今日も何時ものようにお気に入りの魔導書を抱いて森へと向かった

 

しかし今日は森の様子がおかしかった、木々はざわめき花畑には舞い踊る蝶の姿もない…しかしルシアーナは気にしなかった、こんな日もあると軽やかな足取りで森の奥深くへ足を伸ばす

 

≪ガチャン!!!≫

 

どこからか金属がぶつかるような音が聞こえてきた、ルシアーナは興味が湧きその音のする方向へと駆け出した

 

「止めろ止めろ!!!」

 

「クソがぁ、バーンハードの魔獣サイクロプスここで止めなければベネディクト王の支配域に入られるぞ!!!」

 

そこには体長8メートル、手には金属の金棒そして全身を鎧で固めた巨大な一つ目の怪物サイクロプスがいた、回りにはベネディクト王国軍の兵士が約15人ほどでサイクロプスを囲み戦っている

ルシアーナは森の木陰からその様子を眺めていた、その時

 

≪ドガッ!≫

 

ルシアーナの隠れていた木に一人の兵士がサイクロプスに吹き飛ばされぶつかった

ルシアーナが駆け寄る、その兵士の両手はあらぬ方向へと曲がり左足は千切れかけ溢れだした鮮血で周囲に血溜まりを作り出す

そんな兵士はルシアーナを見付けると鬼のような形相で一言

 

「…逃げ…なさい」

 

その兵士はまだ15歳ほどだったと思う、兵士はそう言うと力なく地に伏した

ルシアーナは兵士の言う通り家へと逃げ帰り父へとこの事を話した

 

「良いかいルシアーナ、今ベネディクト王国は隣国のバーンハード王国と戦争をしている、そしてバーンハード王国は錬成魔法を得意とし次々新しい魔獣を造り出しこちらの国へと解き放っている、それを倒すためにルシアーナがみた人達がいるんだ、ルシアーナ、我々はその子達に生かされている事を忘れてはいけないよ」

 

ルシアーナは頷くと自室へ帰りその日は部屋を出てこなかった

二日後、ルシアーナはある決心を胸に部屋から飛び出した

 

 

 

 

~17年後~ルシアーナ17歳

 

戦争はより一層激しさを増していた、父アルドヘルムもほとんど家には帰らず戦争の指揮に駆り出されていた

母は二年ほど前から病を患っておりもう長くは無いようだ、しかし父の足手まといにはなりたくないと父が戦争から帰ることを拒んだ

 

ルシアーナはある研究に全力を注いでいた、それは不老不死の薬だ、様々な魔法薬学の本を読みその全てを頭に叩き込んだ、しかし今だ完成には至らない

だがシアーナには自信があった

 

どんなものでも絶対に完成させる、そのために持って生まれたこの完全記憶能力、そして魔法に関する天性の勘を総動員すれば作れるという自信が…

 

それから半年後、母フランディール・シェリーは息を引き取った、父アルドヘルムも急ぎ家に戻ったが死に目には会えなかった、父は戦争に勝つことがシェリーへの手向けだとまた戦場へと向かった

 

聞いた話だとその後の父の働きは凄まじかったらしい、向かうところ敵無し全戦全勝、強気な戦闘を繰返し何と自軍千名でバーンハード王国から奪われた支配域を半分以上の奪還に成功させたと

 

しかし、それから二年後、父アルドヘルムの軍はバーンハード王国軍の主力軍とぶつかり全滅、アルドヘルムは最後自爆の魔法を使い主力軍の戦力を大きく削るも名誉の戦死を遂げた

 

その後ベネディクト王から直接手紙が送られてきた、そこには父アルドヘルムの働きを認め≪大戦将軍≫の地位を授ける、尚これ以上の戦争の参加は認めないとの事だった

≪大戦将軍≫と言えばベネディクト王国の中で二番目に偉い称号だ、父は死んでなおそんな栄誉ある称号を頂いたのだ

 

戦争の参加を認めないとのいうのはこの家には最早ルシアーナしか居ないことを知り、ベネディクト王がこれ以上戦争で私達の家族を死なす訳にはいかないとくれた恩情だ、

それから私はすべての時間を不老不死の薬製作に打ち込んだ、一刻も早く完成させる為に…

 

 

 

 

 

 

~40年後~ルシアーナ40歳≪体20歳≫

 

父が死んでから21年の月日がたちルシアーナはこの広い屋敷の中で今なお研究に取り組んでいる、父が死んだ翌年私はある液体を作り出すことに成功した、それは歳を取らなくなる薬だ

 

しかしこの薬は見た目は歳を取らなくなるが体の中の細胞などは歳を刻む完全に失敗作だった…

だがその薬に改良を加え遂に私は完成させた、見た目は只の石だが不老不死を手にすることが出来る石≪賢者の石≫を

 

ルシアーナが賢者の石を使うと体の細胞はみるみる若返り本当に20歳の肉体を手に入れた、後ルシアーナがやらなければいけないことはただ一つ、今だ続いているこの魔法界の戦争を終結させること

私は強い決心を胸に新たな本を開いた…

 

 

 

 

~100年後~ルシアーナ100歳≪体20歳≫

 

ルシアーナは旅に出ていた、魔法界中の魔導書を求め只ひたすらに、各戦争地帯に赴き潜入を繰返しほぼ全ての魔導書をたった60年で読破した

 

ルシアーナは60年間の旅で一つの結論に至ったこの世界を一つにするためには強大な力が在れば良い、誰にも負けない、そして誰も勝てないそんな力がここでルシアーナの心は決まった

 

「私が魔法界を統べる王になる、誰もが争う事が無くなるそんな王に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから130年後の西暦730年、世界はただ一人の女性によって平定された彼女の名はフランディール・ルシアーナしかし人々は彼女をこう呼んだ≪魔王≫と

 

その後彼女は120年間魔法界を統治、その後は突然王の地位を降り世界を民主主義の世界へと変える事を宣言し姿を消した、ただ風の噂を聞くと四人の弟子を取り世界を回っているとの事だった

 

 

 

 

 

西暦850年

「ルシアーナ様!こんな感じですか?」

 

笑顔で魔法を放つのはゴドリック・グリフィンドール、私がある国に視察に訪れたとき死にかけていたところを助けた子供だ

 

「あぁ、上手くなったなフィンだーけど…」

 

≪ドゴオォォン!≫

 

「これぐらい出来なくてはな?」

 

ルシアーナが無詠唱で放つ魔法は白銀の閃光を放ちながら遠くの大山を一つ吹き飛ばした

グリフィンドールも負けじと練習しているがまだまだ足りなそうだ

 

「おいフィン!今日の飯炊きはお前の担当だろ!何で俺とハッフルパフとレイブンクローがやってんだよ!」

 

怒りながらグリフィンドールに近づいて来るのはサラザール・スリザリン同じく拾った子供の一人だ他の二人もヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー

 

「いやぁ、良いよ良いよ私料理好きだから~、ルシアーナ様は今日はなに食べたいですか~?」

 

「ちょっとハッフルパフ!あなたがそんなんだからフィンは調子に乗るんでしょ!それにフィンだけルシアーナ様から魔法のご指導なんてズルい!」

 

「分かった悪かったよ!すまなかったスリザリン!」

 

頭を下げるグリフィンドールに納得したのかスリザリンも直ぐに許し仲良く魔法について話している、やはり今日もハッフルパフが料理をするようだ

 

「ルシアーナ様、私も何か凄い魔法を使いたいです!」

 

キラキラと言うよりはギラギラした目でこちらを見つめてくるレイブンクロー

 

「う、う~ん、レイブンクローは手先が器用だし発想力がある、そうだ!錬成魔法を教えてあげよう、この魔法は想像力がとても重要で今となっては使える者は居ない失われた魔法だよ」

 

ルシアーナが微笑みながら教えるとレイブンクローは喜びの余り飛び付いてきた

ルシアーナの美しい銀髪が風になびきその眼には知識を求める美しい少女が映る

 

「なに!強力な魔法だと…ルシアーナ様!是非このスリザリンにもご教授を!」

 

「俺も俺も!ルシアーナ様!」

 

「えぇ~、じゃあ私も良いですかぁ~?」

 

「もぉ!私だけ教えてもらおうも思ったのに!」

 

みんなのギラギラした目が非常に怖いね

 

「分かった、ただご飯を食べてからだぞ?」

 

≪≪≪≪はーーーーい!!!!≫≫≫≫

 

その日は夜遅くまで指導をした、レイブンクローには錬成魔法を、スリザリンとグリフィンドールには攻撃魔法と防衛魔法を、ハッフルパフには植物を扱う魔法を

 

それぞれ類い稀なる才能をもつ彼等だ、いずれはこの世界を引っ張って行くような素晴らしい弟子になるだろう

 

それから私は四人を連れてある森へ訪れていた、この森はかつて魔獣と恐れられたサイクロプスやその原種たる巨人族、そしてケンタウロス等様々な種族が生きている森だ、生半可な魔法使いならば半日で骨さえ残らず消え失せるだろう

 

そんな立ち入り禁止の森をルシアーナは全力で駆け抜けた、まさに全力で…

 

「ルシアーナ様ーーー!!!!」

 

完全にルシアーナを見失った四人、四人は一つにまとまり全方向に気を張り続けた

 

「いきなりこういう事をするからな~ルシアーナ様は!」

 

「うわぁ~、ルシアーナ様ぁ~!」

 

「う、うむ…中々良い訓練に成りそうだな、流石はルシアーナ様」

 

「な、なに言ってるのよスリザリン!」

 

四人は何とか探索の呪文やサイクロプス等と戦い四日後ルシアーナの元へとたどり着いた、命からがら全員ボロボロに成りながら

 

「やぁ、みんな良くここまで来たね」

 

ツカツカとこちらに迫ってくるレイブンクロー

 

「ルシアーナ様!死ぬかと思いましたよ!」

 

「いや、生きてるから大丈夫!」

 

「全然大丈夫じゃ…所でここは?」

 

ハッとした様子で辺りを見回すレイブンクロー、何やら民族の村のようだが

するとわらぶき屋根の中から一人の男が出てきた、男?

 

「ガッハッハッハ!主は誠に面白い弟子をお持ちじゃ、ほれほれこっちに来なさい」

 

そこに現れたのは体長二メートルを越える大男、その頭には二本の角が生え筋骨隆々のその肉体は全身を赤く染め上げ黒髪は邪悪に森の魔風になびく

 

「ここは私の配下、巨鬼族≪オーガ族≫の村だ」

 

「ガッハッハッハ!昔この戦乱の世で暴れまわっておったらお主らの師匠のルシアーナ様から全滅させられての、今は全巨鬼族全員ルシアーナ様だけに忠誠を誓っている」

 

「まぁ、こいつらは半端じゃなくヤバかったけどな…」

 

「あぁそうそう、頼まれていた品は全て出来上がってございます」

 

そう言うと族長らしきオーガはひときは大きな小屋へ向かっていった

 

「こちらがルシアーナ様に頼まれていた品、十五年を費やし鍛え続けた我々が誇りをもって言える名剣です名をオーガソード、そして我らが祖先鬼神の角から作り出した杖にございます本体に鬼神の角、芯にヒュドラの首骨を、長さ41㎝硬くけして折れず曲がらず」

 

「あぁ良い出来だ…名はフランディールの剣に代えるとして杖の方はそうだな≪エンペラー≫とでも呼ぶか」

 

白銀の刀身に波打つ紅蓮の波紋、約一メートル程の反り返る刀身…まるで綿のように軽い剣だ、しかし持っていて巨鬼族が本気で打ってくれた物だと良くわかる正に超業物の品だ

 

試しに近くにあった直径二メートルはある大木を軽く撫でるように刃を当てる、剣は吸い込まれるように大木を一刀の内に切り捨てた

 

今度は杖を見る、赤い波模様が持ち手から先端まで続いている、取っ手には鬼の顔が彫られておりとても豪華かつ繊細そしてシンプルなデザインだ

 

「丁度いま使っていた杖が壊れかけてきたからな、これならば私の全力にも耐えうるだろう」

 

「凄い!ルシアーナ様俺もそんな剣が欲しいです!」

 

グリフィンドールがそんなことを言うとルシアーナは真剣な顔でこう言った

 

「良いですかグリフィンドール、コイツらは武器を作るために生きている訳ではない、そして私の弟子だからといって作らせるつもりもない…本当に欲しいのならコイツらに自分の強さを認めさせ自分に忠誠を誓わせれば良いんです、つまり私を越えればね」

 

そう言うとグリフィンドールは強く頷いた、試しにグリフィンドールがこの剣を持とうとすると

 

≪バチン!≫

 

激しい炸裂音と共に遠くの木に激突した

 

「私の魔力を感知しない限り持つことも出来ない」

 

それから私達は一年ほど村に滞在した、そして子供達が森へ修行に出たとき

 

「本当に行かれるので?」

 

「あぁ…お前たちも自由に生きろ、あと悪いが全種族に私の時代は終わった自由に生きろと伝えてくれるか?」

 

「何を仰いますか、我々巨鬼族はフランディール・ルシアーナ様に忠誠を誓っております、どこに居ようと種族の命運尽きるまで、他種族も同じ思いです」

 

ルシアーナは笑いかけると一人村を出る、最後に一つのお喋り帽子を餞別として置いていった、子供達が立派な偉人になることを祈り追跡を妨害するため全力で妨害呪文をかけて

 

 

 

西暦910年

 

「賢者の石を使わなくなってもう50年か、ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリン、それぞれ立派に人生を生きているね。

私の仕事は終わり…後はこの無駄に大きくなった魔力をこの家に閉じ込めて終わりにしよう、あなたもこんな老いぼれから離れてこの大空へ羽ばたきなさい

ただもしまた、新たな人生を歩めるならばこの魂に呼応しまた私の体へ…」

 

そう言うとルシアーナはあの生まれ育った屋敷に強力な人払いの呪文をかけた、そして魔方陣の中心にフランディールの剣を突き刺し、一人世界の移り変わりに思いを馳せながら深い眠りへと落ちた、頑張りなさい子供達。

こうして魔王≪フランディール・ルシアーナ≫はこの世を去った、ついで黒い影がその四翼をはためかせ空へと消えて行った。


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