宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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決着

コロニーがかなり接近していた時、艦隊による砲撃戦とモビルスーツ隊による戦いが始まっていた。

 

「コロニーが目と鼻の先で戦う事になるなんてな!」

 

ジム・カスタムFbでザクやリック・ドムⅡに対し機動戦を仕掛けながら呟く。その機動戦に食い付き襲い掛かる2機のザクと1機リック・ドムⅡ。

 

『ガルム2援護します!』

 

ガルム3からのビームキャノンから放たれたビームはザクに直撃。ザクはビームに吹き飛ばされながら爆散して行く。そして此方も反転しながらロング・ライフルでリック・ドムⅡを狙う。リック・ドムⅡは此方の攻撃を避けながらもジャイアント・バズで反撃する。

 

「高機動型を舐めんなよ」

 

バズーカの弾頭を避ける。そんな中、もう1機のザクがリック・ドムⅡの援護に入ろうとする。だが次の瞬間90㎜弾の弾幕により爆散する。

仲間が立て続けに死んだのを見たリック・ドムⅡのパイロットは後退し様と試みる。しかしジム・カスタムFbを振り切る事が出来無い。逃げれないと悟ったのか反転してヒートサーベルを抜き此方に反転。しかしロング・ライフルの攻撃によりリック・ドムⅡは近づく事が出来ず撃墜された。

 

「ガルム1、援護感謝です」

 

『大丈夫よ。それより次来るわよ!』

 

敵のモビルスーツ隊とムサイ級巡洋艦が纏めて接近して来る。しかし此処は第1地球軌道艦隊が居る場所。彼等の上からジム改が襲い掛かる。

 

『各機、残党共をソーラー・システムに近付かせるな』

 

『了解です。残党共め。コンペイトウでは好きにやってくれたな。一人足りとも生かしては帰さんぞ!』

 

『所詮は旧式の集まりだ。纏めて殲滅するぞ!』

 

ジム改の部隊は次々とデラーズ・フリートに襲い掛かる。しかしデラーズ・フリートの部隊は歴戦の戦士が多数居る。

 

『新手が来たぞ。鏡何ぞにコロニーを止めさせるな!』

 

『後少し何だ。此処か死に場所だぞ!ジオンに栄光有れえええ!』

 

『数だけで我々を止められると思うな!』

 

味方と敵が入り混じる。そして幾つもの光が瞬く。その時、ルイス少尉から通信が来る。

 

『皆さん!前方より巨大モビルアーマー接近!かなりの速度で接近して来ます!』

 

そして奴は現れる。巨大な揚羽蝶の様な見た目。それはジオンの精神を具現化したかの様な存在。アナベル・ガトー少佐が操るノイエ・ジールは連邦軍の攻撃を物ともせず接近して来る。

 

『邪魔だああああああ!!!!!!』

 

サラミス改のメガ粒子砲をIフィールドで防ぎながら腹部のメガ・カノンを放つ。放たれたメガ粒子はサラミス改の正面を貫く。そしてサラミス改は内部で誘爆が発生して宇宙に散って行く。

 

「あの野郎!これ以上近付かせて堪るかよ!」

 

ジム・カスタムFbをノイエ・ジールの前に移動させ正面からロング・ライフルを撃ちまくる。だが、此方の攻撃を物ともせず接近して来る。

 

『私の邪魔をするなあああ!!!!!!』

 

ノイエ・ジール両肩のメガ粒子砲を放つ。其れを回避しながら攻撃を続ける。だがノイエ・ジールは此方を無視してソーラー・システムⅡに向かう。

 

「逃す訳無いだろうッ!?新手か!」

 

アラーム警報により機体を回避機動を取る。そして別方向からの攻撃を回避。其方に視線を向けると奴が此方に接近して来ていた。

 

『貴様の相手はこの私ベルガー・ディードリッヒだ!!!』

 

ザクマシンガンを放ちながら左手でビームナギナタを展開。此方もロング・ライフルを撃ちながらシールドをパージ。そしてビームサーベルを展開する。

 

「邪魔だあああ!!!」

 

『行かせん!!! 』

 

ビームサーベルとビームナギナタが打つかる。

 

「何でこんな事をする!これ以上地球に被害を出して何になる!」

 

『貴様等連邦軍がスペースノイドの完全なる独立を認めれば済む話だ!!!』

 

お互い一歩も譲らず打つかり合う。

 

「地球に居る人々は関係無いだろうが!民間人を虐殺して何になる!」

 

『地球に住む者達の欲によって私達は虐げられて来た!今更関係無い等と世迷言を言うとはな』

 

その言葉と同時に機体を押し返される。そしてザクマシンガンの銃口が此方に向く。

 

『笑止千万とはこの事だあああ!!!』

 

ザクマシンガンの攻撃を回避しながらロング・ライフルで反撃する。しかし、お互いの攻撃は当たらない。そして再び機動戦に入ろうとした時だった。光が宇宙を照らす。この時、第1地球軌道艦隊旗艦マダガスカル内ではバスク・オム大佐がソーラー・システムⅡの照射を命令していた。

 

「スペースコロニー距離4000!ソーラー・システムⅡ照射70秒前!」

 

「おおぉ…コロニーが肉眼で見えるぞ!もう良い!照射!」

 

コロニーは最早最後の防波堤の所まで来ていた。更にソーラー・システムⅡ周辺では戦闘が起こっており、バスク大佐の焦りを誘う。

 

「あ、後30秒」

 

「構わん!やれ!」

 

副官がもう少し待つ様に言うが、それを無視して照射を命令。そしてソーラー・システムⅡから光の濁流が放たれコロニーを包み込む。コロニー周辺に居たデラーズ・フリートの艦やモビルスーツが消えて行く。

誰もが戦闘を一時的に止めてコロニーを見つめる。大量の煙を上げてコロニーは光の中を突き進む。コロニーがソーラー・システムⅡの照射を浴びた時、バスク大佐は勝利を確信。口元に笑みを浮かる。

 

「大佐!コントロール艦が!」

 

「何っ!?」

 

それは最悪の知らせだった。そう、アナベル・ガトーはソーラー・システムⅡのコントロール艦の攻撃に成功。被弾しダメージを受けたコントロール艦はそれでも必死にソーラー・システムⅡを制御していた。

 

「これ以上艦が持ちません!」

 

「後少し保たせろ!」

 

「ダメです!誘爆止まりうわあああ!?!?」

 

コントロール艦の乗務員達は最後まで任務を遂行しようと戦い続けた。だが、保たなかった。コントロール艦の誘爆は止められず爆沈してしまう。それと同時にソーラー・システムⅡの制御不能になり光が止まる。そして大量の黒煙の中からスペースコロニーが姿を現わす。

 

「生きて…いたのか。ッ!何をしている!回避だ!緊急回避!」

 

バスク大佐は慌てて回避を命じる。そして第218パトロール艦隊も同じ状況に陥っていた。

 

「上に回避しろ!急げ!それから周辺の味方艦にも気を付けるんだ!対空監視を厳にせよ!」

 

ロイヤルとレオニードはまだ空間に余裕の有る上に回避して行く。しかし中央付近に居た艦隊は最悪だった。僚艦との接触が多発。それにより身動きが取れなくなる。そしてコロニーは勢いを止める事なく突っ込んで来る。

 

『コロニーが突っ込んで来るぞ!回避急げ!』

 

『クソクソ!?貴様等其処を退けえええ!!!』

 

『うわ、うわあああ!?!?』

 

何隻かのサラミス改とムサイ級巡洋艦がコロニーの接触に巻き込まれて爆沈。

 

「そんな…コロニーを止められなかったのか」

 

そしてコロニーはソーラー・システムⅡも破壊して行く。そしてコロニーの衝突により宇宙に散って行くソーラー・システムⅡの鏡。だが不思議とその光景は幻想的だった。散って行く鏡の中を突き進むコロニー。それは確固たる信念を持つ者達を象徴するかの様に見えたのだった。

 

……

 

「艦長、コロニーの地球落着時間が150分を切りました」

 

「そうか。僕達の負け…か」

 

ルイス少尉の言葉にアーヴィント少佐は帽子のツバを下げながら項垂れる。

 

「一度味方艦隊と合流する。レオニードとモビルスーツ隊にも伝えろ」

 

「了解です」

 

アーヴィント少佐はモニターで見るコロニーを見つめる。

 

「父上、申し訳有りません。ですが仇は必ず取ります」

 

誰に言うまでも無く呟く。そして戦況の確認を急ぐのだった。

 

宇宙世紀0083.11月12日22時41分。ガンダム試作3号機との戦闘によりシーマ・ガラハウ中佐戦死。また、シーマ艦隊も壊滅的な被害を受ける。

 

此処に一年戦争の呪縛から逃れられなかった者達が忌まわしき宇宙への中に散って行ったのであった。

 

……

 

コロニーがソーラー・システムⅡを破壊した時、俺達地球連邦軍の敗北が決定した。そしてロイヤルとレオニードは味方艦隊との合流をする為戦闘を行いながら航行していた。

ソーラー・システムⅡの照射が止まりコロニーが黒煙から現れた瞬間、ベルガー・ディードリッヒは用は済んだと言わんばかりに撤退して行った。俺は追撃をする暇も無く唯、呆然とコロニーと鏡を見続けていた。

 

「まだ戦い続けるのか。もう、これ以上戦い続ける理由は無いだろうに」

 

ジム・カスタムFbで機動戦を行い味方の囮になる。その隙にロイヤルとレオニードからの艦砲がデラーズ・フリートのモビルスーツを数機破壊する。

 

『私達を忘れては困るわよ!』

 

レイナ大尉の持つ90㎜ガトリングガンの弾幕は容赦無くリック・ドムⅡに襲い掛かりバラバラにして行く。

 

『ガルム2、良くやったわ。此れで味方艦隊と合流出来る。私達も撤退するわよ』

 

「了解です。ガルム3行くぞ」

 

『…了解です』

 

ウィル少尉はコロニー落としを阻止出来なかった事がショックだったのだろう。普段の明るさは鳴りを潜めてしまう。だが仕方無い事だろう。こんな状況で陽気な気分になれる訳が無い。

その時、味方部隊から救援要請が来る。ミノフスキー粒子の影響もあり通信が聞き取り難いが危機的な状況なのは理解出来た。

 

「ガルム2よりガルム1へ。味方部隊の救援に向かいます」

 

『了解よ。私達も追従するわ。ガルム3行くわよ』

 

『分かりました。これ以上犠牲者は出したく有りませんからね』

 

ジム・カスタムFbを味方部隊の居る方へ移動させる。そして徐々に通信が聞こえて来る。

 

『何故落とせん!たかがザク1機に何をしている!』

 

『此奴速いんだよ!何で旧式の癖に!来るなあああ!?』

 

『ダイム3がやられた!敵の間合いに入らせるな!落ち着いて対処がっ!?』

 

次々と状況の悪い通信が聞こえて来る。

 

『落とせ!何をしている!早く落とすんだ!』

 

その通信を最後に目の前で1つの大きな光が瞬く。恐らく味方のサラミス改が爆沈したのだろう。この時、予感はしていた。もしかしたら奴が居るのかと。レーダーに敵機を捉える。識別はMS-06Rと成っていた。

機体の加速をゆっくり止める。そして肉眼でも確認する事が出来た。黒と赤のツートンカラーの高機動型ザク。間違いなかった。ベルガー・ディードリッヒの乗る機体が此方を見ながら停止していた。

お互いに語る事は無かった。だが身体が強張るのは理解していた。その時、レイナ大尉とウィル少尉が此方に追い付く。

 

『ガルム3無事ですか!あ、あの機体は。よし、良く狙って…え?』

 

直ぐ近くに来たガルム1、3。そしてウィル少尉はビームキャノンで狙いを付けようとした時、俺は左腕に装備してるシールドで視界を防ぐ。

 

『シュウ、ダメよ。全員で掛かるのよ。貴方だけが戦ってる訳じゃ』

 

レイナ大尉は通信を繋げて来る。だが俺はその通信を途中で切る。

 

「……」

 

『……』

 

語る事は無い。だが、どちらとも無く機体を一気に加速させる。

 

「ベルガアアアアア!!!」

 

『シュウウウウウウ!!!』

 

お互いの名前を叫びながら突っ込む。そしてロング・ライフルとザクマシンガンの銃口から同時に火が噴く。そのまま接近して行き、左腕に装備してるシールドを突き出す。交差と同時に衝撃が伝わる。だが止まる事は無い。そしてAMBACとブースターを使い反転。そのまま射撃をしながら機動戦に突入して行く。

何方も相容れぬ存在。お互いが憎しみと復讐によって戦場を駆け抜ける。そして、その場に残されたのはジム・カスタムFbのシールドと高機動型ザクが装備していたゲルググのシールドが残されていた。お互いの存在を破壊するかの様に先端部分を抉り合いながら。

 

一年戦争からの因縁の戦いに間も無く決着が付こうとしていた。


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