宇宙世紀と言う激動の中で。   作:吹雪型

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MS-06CザクⅡ

「う……はっ!こ、此処は?」

 

目の前には漆黒の宇宙と煌めく多数の星が見えた。だが、其処には連邦軍はおろかジオン軍も居ない。

 

「かなり流されたみたいだな。機体の状況は」

 

モニターで確認すると第2.4エンジンが機能停止。目視で確認するとエンジンそのものが無い。多分エンジンが丸ごと無くなったお陰で誘爆しなかったのだろう。

 

「此方、地球連邦軍第1連合艦隊第27機動戦隊所属シュウ・コートニー一等兵!誰か応答願います!」

 

しかし、返信は無い。ミノフスキー粒子の影響も有るだろう。だが、目に見える範囲に味方の艦隊は見えない。それに、セイバーフィッシュも被弾した結果推進力を半分失った。更に燃料も第2.4エンジン分が無い。取り敢えず救難信号を出しておく。空気残量を確認すると3時間も無い。

 

「死ぬのか……俺は」

 

漆黒の宇宙を見る。正直恐怖しか湧かない。この宇宙の中で独立を宣言したジオン公国は怖く無いのだろうか?いや、その恐怖心より地球連邦から離れたかったのだろう。

 

「結局、自分達で蒔いた種なんだな」

 

暫く漆黒の宇宙を眺める。最早絶望感しか湧かない。何となくモニターを操作して周辺をチェックする。すると反応があった。

 

「っ!?何の反応だ!」

 

急いでチェックする。すると、何かの残骸を確認した。

 

「兎に角近付いて見るしか無いな」

 

そしてセイバーフィッシュを動かし近付く。そして、残骸が何なのか確認出来た。

 

「アレはジオン軍の輸送艦パプアか」

 

半壊したパプアを発見。しかし、贅沢言ってる余裕は無い。それどころか、敵が居る可能性だって有るんだ。そのままセイバーフィッシュを近付けて行く。パプアから攻撃は無く、無事に近付く事が出来た。

 

「戦闘機でも脱出艇でも有れば助かる」

 

そして、輸送艦パプアの格納庫に入る。

 

「コレは…まさか」

 

其処で忌まわしき兵器と出会う。仲間達を殺し、地球連邦艦隊を壊滅状態にまで持ち込んだ人型兵器。そしてこの人型兵器ザクⅡと呼ばれるモビルスーツとの出会いが、俺の人生を大きく揺るがす事になった。

この後、先ずは空気を確保する事にした。輸送艦パプアにはまだ、生きてる区画があった。其処で空気を確保。艦内は死体しか無かったが、生きてる人間より安心した。その感情が間違ってるのかは如何かは、この時は理解出来なかった。

 

「さて、この人型兵器…ザクⅡか。マニュアルとか無いのか?」

 

ザクⅡのコクピットを探すとメモ帳があった。其処には起動方法や操作方法、更にザクⅡの機動等も書かれていた。だが、このメモ帳はかなり奥に仕舞われていた。多分、このザクⅡは様々なパイロットを乗せて来たのだろう。その内の誰かが忘れいった物だろう。

 

「機体チェック。油圧、バッテリー、各部異常無し。操作方法も多分イケる筈だ」

 

ザクⅡを起動。モニターから外の状況を確認。武器もザクマシンガンを一挺確保。但し弾はザクマシンガンに付いてる分しか無い。セイバーフィッシュの戦場から流れて来た際のルートデータを、なんとかザクⅡにダウンロードするのに成功した。

 

「ありがとう」

 

俺はセイバーフィッシュに対して感謝と共に敬礼をする。あの機体が無ければ死んでただろう。そのままザクⅡを発進させる。ザクⅡの出力、推力はかなり高い。セイバーフィッシュなんかとは比べ物になら無い位高性能だ。

 

「然も装甲はセイバーフィッシュ以上か。確かに負ける要素が無いな」

 

ミノフスキー粒子戦闘を主眼としているモビルスーツと通常戦闘を主眼にしてる戦艦と戦闘機。最初から戦う土台が違い過ぎたんだ。

 

「兎に角、今は連邦艦隊を探さないと。先ずはルウム付近に行くしか無い」

 

そのままザクⅡを加速させる。ルウム付近に近付くが残骸しか見当たらない。しかし、何処に撤退したのかは予想出来る。と言うか、ルナツーしか無いのだ。他に撤退出来る場所なんて無いからな。そして、ルナツーに進路を向ける。この近辺もジオン軍の占領下になるだろう。

そして、ルナツーに向かう途中で閃光を確認した。更に味方の通信も傍受する。

 

『……ら……攻撃を…ザザ……救……』

 

「味方の通信!サラミスかマゼランからか!」

 

ザクⅡを加速させる。しかし、その間にサラミス級が一隻爆沈する。残りのサラミスとマゼランにも敵が纏わり付いてる。後方にはムサイ級が3隻いる。

 

「味方を見捨てる訳無いだろ!」

 

一気にザクⅡをサラミスとマゼランに近付ける。

 

『其処のザク!何処の……だ!答え…』

 

ムサイから通信が来るが無視する。そのまま敵のザクに照準を向ける。

 

(まだだ、まだ……まだ……)

 

確実に当てる距離まで近付くんだ。

 

side 地球連邦軍マゼラン級パラマウン バリス艦長

 

「ノリルバーゲン撃沈!」

「敵モビルスーツ振り切れません!」

「左舷銃座大破!後部メガ粒子砲大破!」

 

「くっ…まさか此処までやられるとは。急いで振り切るんだ!」

 

私はジオン軍の戦力を侮っていた。ミノフスキー粒子、そしてモビルスーツ。この二つによって我々地球連邦艦隊は大敗北を被った。我々も傷付いた艦隊を率いてルナツーに撤退する途中だった。だが、ジオン軍は見逃すつもりは無い様だ。

 

「艦長!上方より敵接近!来ます!更にうわあああ!」

 

「此処までか……ジオンめ」

 

上方と目の前にモビルスーツ。機銃座は殆どか機能停止状態。私はジオンに屈するつもりは無い。最後まで敵を睨み付ける。その時だった。

目の前のモビルスーツが被弾。そして爆発。

 

「何が起きた!」

 

「不明です!あっ、先程の上方のモビルスーツが!」

 

そう、1機のモビルスーツが艦隊の周りに居るモビルスーツに攻撃を仕掛けていたのだ。

 

『此方……連邦軍第……艦隊第27機動……所属シュウ・コートニー一等兵!応答願います!』

 

「アレは…味方なのか?っ!何を呆然としている!援護しろ!」

 

「り、了解!」

 

アレが味方は分からない。だが、今助かるにはあのモビルスーツを援護するしか無い。他のサラミスも援護射撃を開始する。

 

「生きてる機銃座は敵モビルスーツに攻撃!あのモビルスーツに当てるなよ!返信も急ぐんだ!」

 

私は1機のモビルスーツを見つめたのだった。

 

side out

 

side シュウ・コートニー

 

『此方第1連合艦隊所属マゼラン級パラマウンの艦長バリスだ』

 

漸く繋がった。良かった。

 

『御覧の通り、現在戦闘中だ。よって周辺の敵を排除してくれ』

 

「了解です」

 

周辺を見るが味方のセイバーフィッシュは居ない。居るのはサラミス級3隻、マゼラン級1隻だけだ。だが、機銃とミサイルの援護は有る。

 

「やるだけやるさ!」

 

ザクⅡを加速させる。

 

『この裏切り野郎!よくもジャックを!』

 

『許さねえぞ!覚悟しやがれ!』

 

4機のザクⅡが迫って来る。そのままムサイに向けて加速させる。ムサイも味方に向けて発砲は出来無いだろう。

 

「さあ、付いて来い。もっとだ、もっと加速して来い!」

 

このモビルスーツには戦闘機では無い。そう、戦闘機とは違う機動性が出来るのだ。

 

「行くぞ。AMBAC、そして一気に急停止!」

 

ザクⅡの脚部を前に出し、一気に全力噴射して停止する。途轍も無いGが掛かるが、視界は失わ無い。

 

『何!後ろだと!か、回避し』

 

「貰った!」

 

ザクマシンガンでザクⅡの背後のバックパックを撃ち抜く。一気に3機撃破する事に成功する。だが、弾切れになり1機を取り逃がす。

 

「さて、逃げるぞ。ムサイからの砲撃が!やっぱり来た!」

 

ザクⅡの近くに艦砲射撃が来る。しかし、連邦軍艦隊も負けてはいない。元々高い対艦能力があるのだから。ムサイ相手も充分対処出来る。そのまま味方の艦隊に近付く。

 

「何とかなったな。しかし、モビルスーツ。これ程の物なんてな」

 

特にAMBAC機動は凄いとしか思えない。確かにGはかなり掛かるが、耐えてしまえば背後を取れる。連邦軍のセイバーフィッシュなんて簡単に背後を取られてしまうだろう。そんな事を考えながらマゼラン級に近付くのだった。


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