前話の続き。
短いフレーバーテキスト的な話です。
「──で、なんで連絡しなかった?」
「うぅ、だってぇ、携帯とか知らんしー……」
俺私ことアンリちゃんは絶賛エグエグ泣いてます。
褒めてと言わんばかりに事務所に帰ると、レミは血塗れの格好に淡々と怒り、場所バレがうんぬんと淡々と怒り、信用問題がと淡々と怒り、報告が遅いと淡々と怒られた。鬱だ。鬱だぞー!!! 理責めやめろおおおお、頭がばくはつする。
「……(そういえば話すの忘れてたような)ま、いいわ。腕は見込んだ通りだし。はいこれ。報酬」
「わーい、お金だー、百万円! ……あれ束多い?」
「えん? ジェニーよ。そ、クライアントが増額してくれたわ。+400万J。お手柄ね」
「おおおお、どうして! どうして二倍! ……あれ三? 四? そんなに良かったか!?」
「結果を鑑みて、でしょうね。中々すごいわ、あの人物は誰だって大騒ぎ。マフィアの面前であれだけ動けるんだもの、500万J受け取っておけば?」
「多い分には文句なし!! ひゃー、飯くおー」
「増額の理由聞かないのね」
「ん? 増えるなら何でもよい」
「そ、じゃあ、言わないでおくわ。(ガキだからって舐めて減額して、結果を見て焦って増額なんて、ね)」
「じゃ、ねるっす」
「これ、持ってて」
ぽいっと放られたのはゴツくて黒い端末だった。
数字がついており、その上にパネルがある。
「それが携帯。使い方も教えるから、こっちいらっしゃい」
「ういーーっす」
てとてと向かって、操作方法を習う。
ふむ、前世と変わらんな。大体わかった。
「ぷるるるる、もしもし、レミさんですか」
「はいはい、そう使うの」
「名前は言ってもいい?」
「偽名よ、構わないわ」
「あ、そうなんだ。私は本名っす」
「……あ、そう。まぁ呼ぶけど」
「かまわないっす」
連絡先の登録はダメ。
発着信履歴も残らないから、電話する時は手打ちせんといかん。
めんどくせー。
あ、でもプロっぽいかも。悪くない。
むふふふふ。
「仕事したくなったらおいで。電話で依頼内容は伝えられない」
「ういっす。じゃ、ねるっす」
「はいはい、場所忘れないでね」
「殺しの事はわすれないっすー」
あー、眠たい。寝よう。どこで寝ようか。
ホテル? 泊まれんのか?
ネカフェ? そもそもあるのか?
路地裏……。嫌だ。
早速電話した。
『……はい、こちら斡旋所』
「れみ、ホテル教えておくれ」
『その声、アンリね。どういう場所がお好み? フカフカのベッド? 安さ? 安全面?』
「うーー、安全面?」
『高くつくわよ、最低一月100万Jなら紹介できるわ』
「うげ、高すぎー、とりあえず近く?」
『……なら安いとこね。まだ近くにいるんでしょ』
「うん、アパートの下」
『なら、メインストリートに一回出て──」
無難に場末の雰囲気漂う、身分問わずのホテルを紹介してもらった。
『じゃ、手数料は次の仕事で引いておくから』
「……え、いくら?」
聞く前に、ツーツーと電子音が虚しく響いた。
悲しくなったので宿に泊まって寝た。元気になった。
けど、ダルかったのでまた寝た。起きて、お腹すいたのでご飯食べた。割高料金のルームサービスうまうま。暇つぶしに『念』で遊んだ。眠くなったので寝た。起きてまた食べた。『念』で遊んだ。寝た。
そんなこんなで2ヶ月過ぎた。お金がなくなったので、レミのところへ。
廃墟のアパートを上る。前と変わらない事務所でレミがパソコンを触っていた。
「れみ、お金がなくなった」
「へえ、何買ったの」
「……食べ過ぎた」
「あ、そう。それとあんたにお知らせがあるわ。通り名がついた」
「おー? いいことか?」
「人それぞれね。仕事は受け易くなるけど、命を狙われやすくなるから」
「なら、いい事」
「『赤頭巾』、かわいい名前ね。赤いパーカーを用意してるわ」
「ん、使う」
「次から、仕事着は片付けてから帰っておいで。面倒だから」
「ういっす、きをつけるっす」
「──じゃ、仕事の話をしましょ」