『レシピ集』
『秘訣メモ帳×10』
『リクエスト用紙』
「材料は大丈夫、タルトにモンブランにチーズケーキ。一人一人に合わせたカスタムスイーツもやってみたいわね。キャラスイーツってやつ?私ならやれるわ。絶対ね。味だけじゃなく、見た目も楽しませてこその一流スイーツ職人よね」
『リクエスト。マスター『?』マシュ『?』うざったい成金金ぴかバカギルガメッシュ『?』
「・・・はやく帰ってきなさいよ・・・バカ」
「――勇ましき者よ」
声が響き渡る。荘厳にして威厳溢れる男の声が
『その近くにサーヴァント反応だ!近いぞ!』
首都の入り口に、巨漢なりし男が一人
「――あ、あぁ・・・まさか、そんな」
声を聞き入れ、耳を傾けしネロが動揺――いや、狼狽する
「――お前が、ネロか。勇ましい、勇ましいな。当代なりしローマを支えし皇帝。その細腕、その身体でローマを背負いし者よ」
「――ほう。節穴め、節穴にしてはよい愉悦を思い付くではないか」
――魂に響き渡るような声だ。こちらに直接、優しく語りかけるような
「私(ローマ)だ。――私(ローマ)こそ、ローマだ」
「ローマが、ローマ?へ?」
『――むぅ・・・やはり、もしやとは薄々感じてはいたが・・・本当に、サーヴァントはままならぬ・・・』
「あなた、だけは・・・あなただけは違うと、信じていた。信じたかったのだ・・・」
黒き身体、器のギルガメッシュと同じ、真紅の瞳
「私(ローマ)こそ、連合帝国なる者の首魁。私(ローマ)こそ、七つの丘に帝国を築きし、建国者」
「違えるはずがない、違える筈もない・・・そなたは、――あなたは・・・――」
「――さぁ、おいで。私(ローマ)の愛し子よ。過去、現在、未来。総てのローマがお前を愛しているとも」
いよいよもって身体が震えだすネロ。慈愛と威厳の声が告げる
「全てのローマがお前を愛そう。私(ローマ)がお前を愛そう。お前の内なる獣を、私(ローマ)が愛そう」
「――建国王!ロムルス!!貴方までもが、我が前に立ち塞がるのか――!!」
――今、ネロの前に
「そう――私(ローマ)が」
――真なるローマが立ち塞がる――!
「――ローマだ」
――
「ふははははははは!!愛!愛である!!圧政者よ!此処に潰えし時だ!!」
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!(傾国間近なり!!倒壊せり、皇帝の首級は間近なり!) 」
帝国に侵入し、本陣へと雪崩れ込む一同
「ローマ、万歳」
「神祖、万歳――」
兵と民が自らを省みず襲い掛かる風景を見定めながら、不気味さに背筋が寒くなる
「ふん。呪いにも至るカリスマとはこういうものか。どの雑種も死んだような面をして奴めを称えておるわ」
誰も彼もがこちらに襲い掛かってくる。丸腰であろうと無かろうと
『無理もない・・・それが神祖のカリスマなのだ。彼等はなんの躊躇いもなく、その命をロムルスの為に捨てるであろう』
――それが連合帝国ローマ。それが建国王ロムルスの治めしローマ
――1つの生き物となりし、究極の都市国家――
「元気ないね、ネロ」
ネロをみやり呟くマスター。指揮を執り、奮戦してはいるが――やはり、いつもと比べて覇気があまりにも少ない
「無理もあるまい。自らがすがっていた神、自らの信仰の土台を担っていた神が敵対していたのだ。動揺もしようさ」
「例えるならどんな感じ?」
「貴様らの親が悪の秘密結社の親玉であった」
「超ショック!!」
――ネロの困惑と絶望、そして動揺は痛いほど伝わっている。自らが取り返さんとしていたローマそのものが、自らを受け入れんとしているのだ
帰っておいでと
お前を愛していると
――ネロが未だに剣を振るっているのが不思議なほどだ。――恐らく、彼女は
「――よし!励ましにいこう!」
「ほう?」
マスターが提案する
「とりあえず、決戦だし!ネロが暗いと負けちゃいそう!」
「確かにな。上に立つものは常に雄々しく、凛々しくなければならん。奴には、それを教授せねばなるまい」
「よーし!じゃあ行こう!」
「我から離れるなよ。マシュめは別部隊を護っているからな。暫く帰っては来ぬだろうさ」
「――そなたたちか」
ネロがこちらに気付く
「やはり、な。声の張りが見る影もないわ。冥界の悪鬼に出くわしたか、はたまた裁定を待つ罪人か。どちらにしても悲惨に尽きる」
「・・・」
器の皮肉に項垂れるネロ。――やはり、ショックなのだろう
「ネロ・・・」
「――叔父上やカエサルの時も、情けない姿を見せはしたが・・・此度は特別だ」
「であろうな。貴様の誓いを受けていた神は貴様に仇なしていたわけだ。さぞかし堪えようさ」
「・・・お見通しか。そうだ。彼はロムルス。我等ローマの始まり。ローマに産まれしものからすれば、英雄王。そなた以上に眩しき者かもしれん」
「ふむ、今はどちらが偉大かなどと語る場面ではないな。――それで、どうだ」
器が意志を問う
「『ヤツに下りたい』のであろう?第五皇帝よ」
「えっ!?」
「・・・何から何までお見通しか」
力なく、ネロが笑う
「ネロ・・・」
「・・・弱音を許せ、リッカ・・・建国王、建国王だぞ?我が父であり、母であり、神である存在だ」
力なく、目を伏せる。薔薇のかがやきは見る影もない
「ローマに、彼より偉大な方などおらぬ・・・そんな彼が、余の敵となったのだ。迷いもしよう、惑いもしよう・・・もしや」
「――」
「もしや・・・間違っているのは、余なのかも知れぬと・・・思い始めているのかもしれぬ・・・いや、白状するぞ・・・」
――それは、ローマを愛するがゆえの吐露であった
「下ってしまいたい・・・余も、ロムルスの懐に飛び込んでしまいたい。出来ることなら、連合ローマに参列してしまいたい・・・許されぬとは解っている。解っているのだが・・・」
「――ネロ、貴様は」
――こちらが口を開く前に
『――ぐぉあ~!!!この、馬鹿者――――――――――――ッッッッッ!!!!!』
「!?」
「フアッ!?」
「――――花嫁ェ!!耳元で咆哮するとはどんな了見か!?」
声をあげたのは、カルデアに降臨せし皇帝、ネロ・クラウディウスであったのだ
「よ、余もいたのか!?なんでもありなのか!?」
『ありだとも!!それより、先程から黙って聞いていれば弱音ばかりはきおって!もう余は我慢の限界だ!もう自重はせぬ!!相手が余でも言わせてもらうぞっ!!』
「――ほう、腑抜けの激を自ら入れるか」
『マスターもきけっ!!――よいか!!神祖ロムルスは間違っているっ!!正しいのは余たちだ!!自信と確信をもって余が保証する!!』
「な――」
花嫁たるネロは断言した。義はこちらにあり、と
「貴様、何を言う!?それでも余か!?そんな――」
『間違っているとも!!見よ!!連合ローマの民や兵の顔を!!』
ズビシ、と指差す
『誰も笑っておらぬではないか!!兵も、民も、葬儀の参列のような顔で虚ろにロムルスの賛美を口にするばかり!よくみよ!貴様はそれが正しいと言うのかっ!!答えよ!ネロ・クラウディウス!!』
「それは、それは――だが・・・」
『そなたのローマには笑顔が溢れていた!誰も彼もが笑顔を絶やさなかった!何故か!決まっていよう!!』
『――貴様の愛を信じていたからだ!!』
「――!!」
『陛下、陛下!声を抑えて抑えて!』
『貴様を信じ、貴様を愛した民を、兵を、マスターを、マシュを、英雄王を捨ててまで貴様はロムルスに下ると言うのか!?貴様はなんだ!!』
「よ、余は・・・余は・・・」
『答えよ!!貴様は――なんだあっ!!!』
「――えぇい!!やかましいヤツよ!決まっている!!余はネロ・クラウディウス!!余のローマを信じ、余のローマを愛し!!」
「フッ」
「うん!」
「――ローマを取り戻すと!!ロムルスに誓った者だ!!」
『――うむっ!それでよい!ならばローマを取り戻すために戦うがよい!例え相手が、建国王ロムルスであろうともだ!』
――凄まじい気迫と激に、思わず硬直する
「うん!私も、味方するならネロのローマがいい!」
「リッカ・・・」
「だって、楽しかったもん!ネロのローマ!」
「――うむ!ならば、余は間違ってはおらぬな!」
「そも、正しきものが残るのではない。我が価値を認めたものが残るのだ」
――そうとも。自分も、ネロのローマがいい
「そうさな。どちらかと言えば。――リンゴ一個分は、貴様のローマがましであろうさ」
――あのリンゴは、とっても美味しかった
「――うむ!!英雄王も認めし、ローマであるからな!――心配をかけた!」
再び、情熱の薔薇が咲き誇る!
「余にもはや迷いなし!皇宮にてロムルスを討ち取り、余はローマを取り戻す!!」
「うん!!」
「既に荊軻の偵察にて位置はつかんでいる!覚悟を決めたなら――進むのみだ!」
「おー!!」
「来てくれるな!英雄王!」
「良かろう。乗り掛かった船だ。ローマの行く末、見届けてやろうではないか」
「マシュ・キリエライト戻りました!・・・何か、ありましたか?」
「ん?馬鹿者が馬鹿者に激を入れただけの話よ。案ずるな、マシュ」
「『誰が馬鹿か!!』」
「ふはは・・・ん?」
『すみません、英雄王!!後れ馳せながら、私もオペレーターに復帰します!』
「オルガー!!」
「所長・・・!」
『お待たせ、リッカ、マシュ!・・・戦線復帰を、許可願えますか?』
「無論赦す!!ふはは!役者は揃ったな!!では行くぞ!節穴めが潰える時だ!!」
――迷いは晴れ、情熱の焔は偽りの首都を焼く
さぁ行こう――決戦だ!!
「もうすぐ帰宅も近いですね!沢山料理を作らなくては!」
「いいかね、麻婆は君が作りたまえ。料理は私が作る。アーラシュ氏に味見をまずは頼み、他人に振る舞うときは辛味を抑えたものも拵えたまえ」
「はい!」
「私も協力します。町娘の時に、沢山用意しましたからね」
「頼む、聖マルタ」
「食える辛さなら請け負うぜ。どんと来いや」
「お願いします!アーラシュさん!よーし作りますよー!」
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