人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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温羅「ぱーちーやる!!酒呑む!!」

モモ「しない。退治する」

「えー!!殺し合いなんぞ生きる為に誰もがやってるだろ!理性あるものだけなんだぞ!酒を酌み交わす事が出来るのは!」

リッカ「皆!!寿司があるよ!ウニも!!!」

温羅「皆で食べたくて、アタシ様が握ったんだ特上寿司!アタシの命なんていつでも取れる!だがこの寿司はいましか食えないんだ!!」

お供(((取れてたまるか!!)))

モモ「う・・・・・・でも、でも・・・」

温羅「自分が怖いからって都市攻撃の為にお供暴走させるなんて危ないことをしたなモモ!意識があれば出来ないからと!それを自主的に向かっていった子分達の弔いも兼ねて・・・食べて!!この刺身!ほら、プリプリ!脂たっぷり!お供にもちゃんとあるぞ!えさ!」

『骨・ジャーキー』

イヌヌワン『魅力的な献立だ・・・!!』

『バナナ』

フワイサム『THE・王道』

『パンの耳』

アンク『馬鹿にしてる?ねぇ馬鹿にしてる?』

リッカ「モモ・・・!私、お寿司食べたい・・・!」

モモ「・・・わ、解った。リッちゃんの、人理救ってくれてありがとぱーちー・・・」

温羅「桃太郎の赦しが出たぞ!席につけぇい!!!」

「『『いぇえぇえぇえぇい!!!』』」

アンク『カルデアのマスターって、こんなに豪胆でノリが良くなきゃダメなのね・・・』

モモ「・・・リッちゃんが、楽しいなら、いっか。・・・?」

(・・・あれは・・・)

『鬼門・桃満の間』

(・・・鬼門の方角に、桃の倉庫?・・・どうして・・・?) 


桃太郎と鬼神と乾杯!お供も一切!

「それでは!人理を修復してくれた楽園カルデアの頑張りやさんなマスターと!絶賛ポンコツ中の我が宿命の桃太郎の息災を祝いましてぇ!乾杯ッ!!」

 

「かんぱーい!!!」

 

「ナニコレ」

 

鬼の首領に招かれたリッカらを待ち受けていたもの・・・それは血に飢えた鬼達の殺到ではなく、血の池地獄でも針山でも焦熱地獄でもない。御殿と云うべき豪奢極まる宴会の一室、通称『鬼神の間』と呼ばれる大広間へと招かれていた。10畳は軽く存在する圧巻の広き部屋に、ずらりと並んだ板前もかくやの魚の盛り合わせ。カラオケセットや熊の彫り物、豪華極まる龍や仏像の彫刻といったものが整然と並びし、楽園に通ずる豪華絢爛な本拠地であったのである。一度来たことのあるモモすら、この変革ぶりには困惑しきりである。なんか知ってる基地と違う。

 

「当たり前だろ?ようやく見つけてようやく捉えた大本命に加え、最新の時代を生きる楽園カルデアの一番星マスターをお前は引き当てたと来た!なぁリッちゃんよ!アタシ様は嬉しいんだ、聞けこの胸の高鳴りを!」

 

「むふぉっ!!!むふぉいっ!!!!」

 

「よくぞ困難に挫けず、人間を見捨てず世界を救ってくれた、アタシ様やモモの童話を聞いて笑ってくれる子供達の未来を取り戻してくれたよ。よく頑張ったな、本当によくやってくれた・・・!辛く苦しい事も一つや二つじゃ無かったろうに・・・」

 

温羅はもう出来上がっているのかシラフなのか、100はあるバストにリッカを雄々しく抱擁する。感動しているのだ。人間が世界を救うまでに強くなった事実に、そしてそれを成し遂げた者が女の子という型破りながらも、生き方を生まれに左右されない事そのものに。

 

「ぶぁはっ!皆が、皆が支えてくれたから・・・!こうやって、私は私になれたんです!」

 

「そうだ、そうなんだよなぁ!人間は絆!心を繋げ紡ぐ生き物だ!リッちゃん!アタシ様は嬉しい!世界を救ってくれたマスターがお前さまで本当に良かった!」

 

「え、えへへ。ふへへ・・・」

 

「酒を飲むか!?御祝いの酒を用意するぞ!」

 

「リッちゃんは未成年・・・」

 

「なぁあにぃ!?アタシ様の酒が!飲めないってぇのぉ!?」

 

「ひぇえ!?ごめんなさ──」

 

「そだよね、未成年だもんね。ちゃんと断れて偉い。場や上司にのせられて一気飲みとかダメだぞ。酒はお土産に包むから、付属の容器を使って母上にプレゼントしたげなさい。親孝行は人間ができる最高の善行だからね」

 

「温羅ネキ!!」

 

「リッちゃん!!」

 

「「(ひしっ!!)」」

 

『骨!なんと、なんとジューシーな!ジャーキー・・・ジャーキーも追加で!?』

 

『栄養バランスを導くGIによれば、腹八分目が最適。満腹感は既に許容オーバーである合図。しかしバナナは満腹には含まれない』

 

『・・・言いたい事は解るわ、モモ。冷静に突っ込んで行きましょう』

 

リッちゃんははしゃぐ年頃だからいいとして、部下二人に制裁の嘴が突き刺さると同時に、モモは疑問を提唱する。愉快さに磨きがかかっている、目の前の鬼の大将にだ。

 

「何故、リッちゃんを知っている?」

 

そう、楽園のマスターと何度も温羅は口にした。リッカとは初対面でありながら、まるで活躍を知っているかのような物言いがモモは気になったのだ。私がリッちゃんと先に契約したのに。

 

「ん?・・・あ、すまんすまん言ってなかったか。アタシ様はな、今は閻魔亭の宮大工をやってるんだ。そして同時に、世界の色んな場所にいる、『行き場の無い奴等』を閻魔亭に招く旅の客寄せなんて事もしててな。帰還滞在してる時に色々聞いたよ、えんまちゃんから。だから知ってたって訳だ!」

 

「宮大工!?凄い!何かを作ったり直したりするんですか!?」

 

「おう!御機嫌王サマの仕事はホントに手抜かりがなくて惚れ惚れした!お陰様で帰宅したら仕事無しの温泉三昧よナハハハハ!ま!ヘルズキッチン地獄級を受講して死にかけた自分の治療でもあるけどな!」

 

「はいはいはい!ウラネキ!行き場の無い奴等の客寄せって?」

 

「おう!世界にはな、秘境や人類未踏の地なんかにはまだ魔獣、幻獣の類いがいたりする。そいつらは完全に人類の物理法則に安定した今の世を認められない偏屈もんばかりでよ。そいつらが世界に殺されない様に閻魔亭への移住を勧めたり、或いは消えそうな弱い輩をアタシ様が拾ったり・・・要するに、今に馴染めない連中をアタシ様が拾って回ってるみたいなもんだ!」

 

だからあの時いなかったんだ!合点がいったリッカが頷く通り、温羅はぬえ事件の際には別件を追っていたのだ。鬼門を通り逃げ続ける者の征伐・・・それを平行して世界を巡っていたからなと豪放磊落な鬼は頷いた。

 

「力になってやれなくて済まなかった。ぬえに引導を渡す瞬間、見たかったなぁ~・・・!」

 

「・・・この屋敷、というか、御殿は・・・何事?」

 

気になったところは其処にも、いや其処ら中にも存在している。鬼ヶ島のこの部屋、装飾品、料理、壁、床、間取り・・・これらは総て『手作り』で造られている事をモモは分析を完了している。こんなものを造れるなどと、生前は全く知らなかった。

 

「あぁ、これか?これは人間の技術を再現、再生する際の練習で出来た『副産物』だ」

 

「副産物・・・?ウラネキは何を生業に?」

 

「人間の出来る事全般だよ!人間の織り成す様々な技術や、設計なんてものをアタシ様は猛烈に勉強している!料理もその一環だ!それだけじゃない、歴史の流れの中で喪われ、失伝してしまった数多無数のテクノロジー・・・人類のまだ見ぬ可能性をアタシ様は日々身に付けてるって訳さ!」

 

その言葉は真実だった。温羅は語る。肉体の強さ、存在の強さなどは一過性のもの。即座であれ緩やかであれ、それらは時代に流され、或いは取り残され消え果てていく。だが、人間の素晴らしい所は『受け継ぐ』事なのだと彼女は言った。

 

「短い命が燃え上がらせた炎で、人間は想像もつかないような発明や技術を産み出す。命を育み、自らが生きられぬ未来を子に託し技を重ねる。それらの繰り返しで洗練され、受け継がれていく技が、命がある。それが人間の美徳だって・・・アタシ様は『こっち』に来て、『温羅』を喰らう前に教えてもらったんだよ。・・・あのお握りは旨かったなぁ・・・あ!その時に貰った鶴の折り紙!花代っていう娘がね、アタシに折ってくれた鶴を今でもアタシは宝物にしてるんだ!」

 

目の前に広がる総て、そして鬼ヶ島の内装は総て温羅が造ったという事実に顔を見合わせる一同。温羅は言葉を紡ぐ。

 

「生き物は生きていく最中で歴史を紡ぐ。ならその歴史の中で一番辛いことはなんだと思う?」

 

「・・・。──忘れられる事?」

 

「そうだ。忘れられる事だ。誰の記憶にも残らない事だ。禁忌として、誰の口端にも乗らずいつしか記録からも記憶からも失われてしまう事だ。アタシは『こっち』の鬼どもを見てその危機を感じた訳だ」

 

喰らい、犯し、奪い、殺す。そんなおぞましき『ありのまま』を繰り返す鬼どもの姿を見て、それを束ねる鬼を見て。温羅は天恵を得たという。

 

──これでは、駄目だ。鬼は本当の意味で置き去りにされてしまう。

 

こんな暴虐を尽くしていては、暴力が総てと人を害していればどうなるかなど一目瞭然。・・・必ず、人は鬼を『禁忌』として忌み嫌う。口にすることすら憚られ、忘れ去られ、誰も思い返しはしなくなる。

 

『なんとしてでも、鬼の在り方を変えねば鬼に未来は無い。泣こうが喚こうが粋がろうが既に世界は人の時代。アタシ様ら時代の遺物が為すべき事、それは『脅かす』事じゃ断じて無い!』

 

そうして、温羅は鬼ヶ島を瞬く間に掌握したと言う。暴れる事しか能の無い鬼をブチのめし、人様を楽しんで殺すような外道を死ぬ方がマシと言わしめるまでにブッ飛ばし、そして【人界転覆】を目論見鬼神にまで届こうと画策していた鬼、【温羅】をタイマンで討ち果たし、頭から喰らい魂と名と尊厳を奪った。好き勝手にやる以上、好き勝手にやられることも鬼の常と温羅は笑い──

 

「ま、待って待って!待ってウラネキ!!質問!質問です!」

 

「はいリッちゃん!元気でよろしい!」

 

「えっと、あの、話を聞くに・・・ウラネキの他に、温羅はいたって、事?」

 

「ん?そうだぞ、言ってなかったっけ?アタシ様は人を脅かし、人を家畜にし鬼の天下を築こうとしたこっち・・・『汎人類史』だったかな?の温羅を存在毎呑み込んでこっちの温羅となった、えーと、『剪定世界』から来た鬼、『温羅』って訳だ!ま、こっちの温羅は桃太郎に退治される前にアタシが喰らったから、イブキ以外誰も知らないだろうがな!はっはっはっはっ!」

 

「え、え、・・・えぇえぇえぇえぇ!?」

 

目の前の温羅は、汎人類史の鬼たる温羅を喰らい尽くし新たに汎人類史の温羅となった異世界より漂流せし鬼だと言う。その衝撃極まる事実を耳にしたリッカは仰天し・・・

 

「・・・知らなかった。そんなの・・・」

 

モモは耳から煙を吹くのだった──

 

 




イヌヌワン『しょ、衝撃的過ぎる事実がさらりと・・・!となると!暴虐非道なる鬼たる温羅と、見目麗しき目の前の温羅は元は別人いや、別鬼・・・!?』

温羅「いや、同じだ。喰らった以上は温羅の罪はアタシ様のモノだ。鬼ヶ島に居を構え、人を脅かした鬼の首魁はこのアタシ様よ」

フワイサム『・・・会話よりGIが導き出す。それは前の温羅の思想が、やがて人を滅ぼすからか』

温羅「あぁ。温羅はほざきやがった。【人は美味が詰まった肉袋。引き裂き、殺し、飽きたら捨てるか喰らえばいい。蹴鞠もいい、髑髏は杯にもいい。女は犯し子供は親の前で殺す。鬼はこれだから止められん】。・・・──気が付いたら頭をカチ割ってた。後悔も反省もしてないぞ」

アンク『・・・人を助けたの?鬼のアナタが?』

「当たり前だ。奪い、犯し、壊すだけの鬼が星の覇者となった処で、歴史の何を紡げる?何を産み出せる?人間に成り代わるには鬼という種族は何もかもが足りん。頭も足りん、能たりん。いや角はあるけどな!はっはっはっはっ!──だから仕留めた。真正面から勝負を挑み、正々堂々とな」

イヌヌワン『・・・だが、何故温羅を喰らったのだ?新たな鬼としてではなく、何故温羅に?』

「新たな鬼の群雄割拠を抑えるため、統率を無理なく図る為だ。温羅は強大な大将、それを無名が討ち取ったとあれば他の鬼どもが各地で暴れ出す。頭は必要なんだ、すげ替えるよりくたばった首級を使う方が鬼という単純な生き物は従うのさ」

モモ「鬼達の、反乱は・・・」

「無かった。温羅は自身だけが在ればいい、自身こそを至上とする鬼、弱肉強食の実力主義を徹底していた。他の鬼の数倍の力を持つ温羅に逆らえる鬼はいなかった。奴等は力は強いが成長しない。自由なようでいて、生まれながらに序列は決まっている。アタシ様が温羅になるまで、アイツらは自分の命すら自由に出来ていなかったのさ」

リッカ「──は、はいはい!ウラネキ!はい!」

「はいリッちゃん!」

「えっと、じゃあウラネキは別の世界から流れてきたんでしょ?その想いや考え方に至る出来事があった筈!私、それを知りたい!」

温羅「え、・・・か、過去バナ?ちょっとマジ・・・?え~、シラフだと照れるわ~・・・」

フワイサム『GIも、照れポイントが分からん』

アンク『ネガティブだったらこれメンヘラじゃない?』

モモ「・・・私も、知りたい。温羅のこと、私、知らない」

温羅「~。・・・長くなるけど、いいかい?」

リッカ「是非!!」

「よーし、じゃあ話しちゃおう!未来の奇跡と我が宿命の頼みなら!えーと、何から話したもんかなぁ・・・」


・・・そだな。じゃあ、まずは生い立ちから。

アタシ様・・・まぁウラと呼ぶか。アタシ様が産まれた世界は、どん詰まりの袋小路だった。なぜかって?決まってる。

・・・──神秘が薄まらず、鬼や妖怪が満ちた日本。人間が地球上からいなくなった世界だったのさ。其処で、アタシ様は産まれた。・・・ネジ曲がった角に白い肌、おまけに女の『できそこない』として、な。それが、アタシの生の始まりだった──

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