人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「ほはぁあぉ!!が、合体!分離!!」

イヌヌワン『先程から我等への反応がリッカ殿は可愛らしい・・・そんなに気に入っていただけるなら、機械の身体も悪くない・・・イヌヌワン!』

フワイサム『勇気あるGIによると、我々の武装は男心をくすぐる様だ。男のロマンというらしい』

イヌヌワン『成る程!・・・いや失礼だ、フワイサム!リッカ様はこのように、桃子様の隣に相応しき美少女!男ではない!訂正せよ!』

リッカ「あぐっ!!!!・・・ふ、ふふふ、ふふふ・・・!」

髀「だい、じょうぶ・・・?」

リッカ「大丈夫・・・致命傷(チーン)」

「しんだ・・・!」

フワイサム『しかし、艦隊を用意しておきながら我等の武装を留めるために費やすとは。一体・・・何を考えている?』

イヌヌワン『恐らく、雉は把握しようとしたのだろう。・・・だが、鬼ヶ島を束ねる鬼など一人しかいない』

フワイサム『・・・導くまでもない。だが今は、雉が先決だ』

髀「・・・・・・・・・あなた、なの・・・?」






お供──きじ

「砲撃開始ぃ!撃て!撃てーっ!!」

 

「あの鳥を落とせ!鬼ヶ島に近づけるなーっ!!」

 

海に展開した、数多無数の鬼の艦隊から号令による一斉砲撃が開始された。海上を覆う無数の船より放たれる大砲、投石。天空に降臨した輝ける鳳を墜落させんとする一斉砲撃。それは紛れもなく、対人に行うに留まらない制圧攻撃。人間大の存在ならば避ける事など望めぬ規模の大砲撃と一目でリッカ達は理解した。

 

「だ、大丈夫!あんなの直撃したら・・・!」

 

『心配ありません。アレはこういった相手を想定したユニットなのですから!』

 

イヌヌワンの言う通り、変化と反撃は同時に行われる。先に天空に咆哮した巨大なる鳳の声に応える様に、戦場に変化が訪れる。──快晴だった筈の戦場が、みるみる内に暗闇に陰っていく。

 

「あ、嵐だ!嵐が来るぞ!てめぇら掴まれーっ!!」

 

『シュアァアーッ!!!』

 

輝く鳳が巻き起こした嵐、呼び寄せた雄々しき雷雨。それらは一つとなりて鬼の艦隊を駆逐する暴威・・・神威と化し襲い掛かる。風がマストをへし折り、雨が全ての火器を奪い去り、降り注ぐ雷が船体の一つ一つを炎上・・・爆発させていく。これらは全て、鳳が巻き起こした恐るべき天変地異。

 

『雉。その役目は要塞攻略の際の天運の掌握、そして艦隊の撃退による上陸の補佐。自らの神威を支援ユニットの補助により増幅させ、一時的な天変地異を巻き起こし軍勢を仕留める大軍撃退担当。現代を生きるリッカ様に合わせたGIの発露によれば・・・マップ兵器担当です』

 

「納得・・・!あの子に吉備団子を食べさせるのは骨が──」

 

「大丈夫」

 

フワイサムの説明に僅かに気後れたリッカを力強く後押し、そして肯定を見せた者。それは、先程までは真っ先に鬼に向かって行った筈の髀、その人だった。じっとリッカを見つめ、力強く頷く。

 

「リッちゃんと、私と、皆が、いれば。・・・出来ない、ことはない。・・・ね、フワ」

 

『えぇ。決意に満ちるGIによれば・・・雉を鎮静させることは、可能です』

 

「モモ・・・」

 

先程の言葉が届いたのか、それとも髀が僅かでも心を解いてくれたのかは解らない。だが、今の彼女はリッカの指示を待っていた。リッカの決断を信じていた。・・・リッカを、人として。真に認識したのだ。

 

「──ッ!そうだね!私達なら出来るよ!えっと、具体的には・・・!」

 

慌てながらも、リッカは対象の鳳を見やる。なんと驚くべき事に、鳳は迫り来る攻撃や砲撃の嵐を完全に避けていた。『分離』そして『再合体』。それらを目まぐるしく繰り返すオープン・ゲット戦法。分離したそれぞれの鳥達が、圧倒的な速度で船を貫く。羽の爆弾を放つ。急降下にて風穴を開ける。鬼達の指揮系統はズタズタにされ、それはさながら蜘蛛を追い立てる鳥の狩人が如くだ。

 

「──!!」

 

だが、その中でリッカは見た。確かに目の当たりにした。雉の合体を、分離を。ロマン溢れるゲッター戦法に目を奪われながら。──この手段ならば、或いは。

 

【イヌヌワン!フワイサム!モモ!私達の全部を使えば、やれる!力を貸して!】

 

リッカの言葉に、素早く頷く一同。マスターの提案する作戦に、イヌヌワンは青ざめフワイサムは頷き、モモは全幅の信頼を含め素早く行動に移す。

 

『・・・現代に生きる女子とは、皆このような猛々しき方々なのか・・・!?』

 

『名誉を護りしGIが導きだした結論は、これはリッカ様だけの美徳だ。──それでは、桃子様』

 

「うん。──リッカ、フワ。・・・行く!」

 

その陣形は異様だった。フワイサムを装着し、剛力無双の形態と変化した髀が、リッカの背後に回り雄々しく右腕を振りかぶる。

 

【思いっきり!行けぇッ!!モモーーッ!!!】

 

自身が産み出した槍【アンリマユ】を握り締め、後方に跳躍する。──髀が振りかぶりし、右腕の拳。インパクト部分に・・・最も勢いがかかる地点。フワイサムが計算した部分にリッカが到達した瞬間──!

 

「ぬぅうぁあぁあぁあああぁあぁあぁ!!!」

 

気迫の雄叫びと共に、リッカの脚が着地した部分の『パイルバンカー』が作動し、猛烈極まりない速度にてリッカを射出する。カタパルトとして作用したその豪腕に打ち出されたリッカが、一つの弾丸として鳳へと突貫していく──!!

 

【うぉおぉあぁあぁぁあぁあぁっ!!!!】

 

『──!!!?、──!!!』

 

突如、猛烈極まりない速度で飛来してきた恐ろしき龍が如き存在を感知し、戦きながらも。鳳は素早く最善の行動を選択した。飛来してきたリッカを、素早く『分離』にて回避する。いくら速くても等速線上の動きしか叶わない存在。自由に翼を持つ存在を捕らえる事など不可能──

 

【──今だッ!!!】

 

──此処に、例外は確かに存在していた。

 

『!!??』

 

分離した五体の鳥を、【黒き龍】達が雄々しく捕らえていた。エキドナ、ファブニール、ケツァルコアトルス、そしてミラボレアス。槍により放たれた龍達が、厳かに合体せんとしていた鳥を捕縛したのだ。

 

「なんだ!?バケモンが鳥を捕まえたぞ!」

 

「チャンスだ!撃て!撃てーっ!!」

 

鬼達の攻撃もリッカは折り込み済みである。動けぬ鳥達を護るため、自衛の為に、リッカは力の全てを込めて。──槍を、海に投げ込んだ。

 

【生成──リヴァイアサンッ!!】

 

高らかな号砲と共に、目を疑う刺客が海に顕現する。海の一部が黒く染まり、波が巻き起こり、渦潮が発生する。全てを巻き込む海の暴虐の中心に──

 

【ギャシャアァアアァアァァアッ!!!】

 

黒き巨大な蛇がごとき龍、無敵の怪物リヴァイアサンの再現体が姿を現す。魔力を注ぎ込み、海の魔力すらも吸収した恐ろしき巨体の龍が片端から船を巻き込み暴れ回り海を支配する。

 

【──今だぁッ!!!】

 

砲撃が止んだ瞬間──視界の端に映った極彩にして高貴なる装飾の鳥、即ち雉を認識し、力の限りに吉備団子をぶん投げる。嵐の最中、全霊で放り投げた吉備団子のコントロールを──

 

「───ガアッ!!」

 

フワイサムからイヌヌワンに形態変化した髀が、更に加速させ勢いよく吉備団子を雉に向けて放り投げる。鬼を殺すよりも、マスターと戦う事を優先した事による行動の変化。それは、確かな形として成果を成し遂げた。

 

『!!──』

 

雉の眼が、吉備団子を摂取した事により鎮静を現す青へと変わる。コントロールを取り戻したのだ。その一瞬の隙を見逃さず、髀はイヌヌワンとの結合を解除し雉へと飛び乗る。

 

「真名封鎖、武装解放──『雉』・・・!!」

 

『──シュアァアーッ!!!』

 

認識を成功し、雉を始めとした鳥達が跳躍した髀へと集結、人間大の武装パーツへと変化していく。全身を覆い、大いなる翼を展開する巨大なる雄々しい鳳。髀の顔面は、アンテナを生やし虹色の眼を懐く所謂ガンダムフェイス・マスクを展開する。

 

「決め、る!」

 

翼を展開し、其処から放たれるフェザー・ビット。無数のファンネルと言われる多面攻撃兵器ユニットが際限無く展開し、艦隊を貫く無数のレーザーとして降り注ぐ。

 

天候もまた思いのままに支配する。雷雨が、艦隊を正確無比に打ち付ける。周囲一帯を掌握し、一人で戦場を破壊する。それがきじ・・・装甲・鳳を纏った髀の最後の形態。無数の鬼を倒すことに特化した『遠距離多段殲滅形態』。きじの役割を果たした事により、鬼を乗せた艦隊は壊滅に陥った。その様子を目の当たりにしたリッカも、ガッツポーズを取り、そして──

 

【──あ、そういえば落下中だった──!!】

 

静かに、ボチャンと。海の沖合いに一人投げ出されたのだった──。

 




海岸

髀「だい、じょう、ぶ・・・?」

リッカ「はぁ、はぁ、はぁ・・・!戦いとは関係無いとこで、死ぬかと思った・・・!ありが、ありがと!モモ・・・!」

「人工、こきゅう・・・!」

「え!?待って大丈夫大丈夫大丈夫だからん~~~~!!!?」

イヌヌワン『無事で何よりだ。リッカ様から名は既に冠されている。名前は『アンク』だそうだ』

アンク『あらやだ素敵。エジプト語で生きる、ヒンドゥー語で眼だなんて。それはともかく、世話をかけてごめんなさいね?桃子さま、素敵な方を見つけたみたいで良かったわ・・・』

フワイサム『喜びのGIが導きだした結果によれば、アンクよ。君は鬼ヶ島周辺を徘徊した筈だ。何かを見出だしたな?』

アンク『えぇ。この特異点の出口は、鬼ヶ島の最奥にある。そして其処に待ち受けている相手も、私達には存じ上げた顔馴染み』

イヌヌワン『それは・・・』

『えぇ。──『温羅(うら)』。私達三匹と、桃子様が退治すべきたった一人の『鬼神』よ』


リッカ「んむむむむ・・・ぶへぁ!!」

髀「よかった、よかった・・・無事で、無事で・・・よかった・・・」

リッカ「モモ・・・」

「いなく、ならないで。死なないで。私、もう、置いていかれるの・・・いや・・・」

リッカ「・・・うん。心配かけてごめんね。大丈夫、大丈夫だから。私は、大丈夫」

髀「(コクコク)」

リッカ「だから──」


───ようやく仲間が集まったか!!遅いぞ!だがいい!!許す!!!

リッカ「!?」

楽園カルデアのマスターよ!!髀の面倒を見てくれてありがとう!!足労だが、そのままそいつらを連れて此処へ来てほしい!!

リッカ「な、な、なにこの声!?」

存分に語り合おう!!このアタシ様──鬼ヶ島の大将!!『温羅』となァ!!

髀「・・・温羅・・・!」

声の主、そして取り戻せし同胞、雉。・・・この特異点の核心に、桃太郎一行は迫る──

舟手配するから待っててくれ!!

リッカ「してくれるんだ・・・!」

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