将門公『新年、再び新たな年を迎えた事に祝辞と感謝を述べる。我が子達よ、よくぞ懸命に生きた』
「ワフン、ワフ、ゥー」
『友と抱負を語るも良し、家族と過ごすも良し、はたまた寝るも良し。思うがままに過ごすが良かろう』
「ワンワン!アォーン!」
『これよりも、日ノ本を紡ぐそなたらの健勝を祈っている。誇らしく愛しき我が日ノ本の子孫よ、息災であれ』
「ワッフ。ワフン」
『翻訳完了。確かに伝えたぞ、慈母。・・・む?我からも一言、か』
『・・・・・・』
『──あけおめ』
「ファッ!?」
『五月よりめぇるが来た故な。最近の者はこう返すらしい。言霊も変転の相を見せる・・・良き事だ』
「ワ、フ・・・ワフゥ」
『
「ワフ!?」
「新しき年を迎えるにあたって、めでたき事を求むるは人の業にして性。ならばめでたさの化身たる我が一肌脱ぐは当然の帰結であろう!故に!!」
──新年キャストオフという喜ばしさのあまり放送規制コードに引っ掛かる儀式はどうぞお控えいただければと。
「ふはははははは初ツッコミ御苦労!だが今はそうではない!宣告通り!!召喚の儀と行こうではないか!此処に福袋型召喚機能装置『メデタシ』を用意した!時代の到来!そろそろ我にも最高の御年玉をくれてやっても良かろう!」
自分達の時空とはなんら関係無い新年の御祝いに全力で便乗する王様に、エアは○を眼に、×を頬に書かれた羽子板惨敗スタイルで寄り添う。式と羽子板をやったところのほほんと惨敗し、はしゃぎながら落書きをされたのである。そう、今回は新年元旦時空を迎えた部員諸兄を祝ってやろうと王が張り切ったスペシャル企画の一環なのだ。こっそりと時空違いの御祝いである。
(信用できるのかソレ。『福袋とは聞こえがいいが、大半は店の処分に困った商品の詰め合わせだ。大抵は苦笑い以上の成果はもたらさないものだ』なんて購買部の店長が言ってたけど)
《発想が貧困だぞ珍獣。福かどうかを決めるのは結局のところ己の在り方よ。知人達と笑い飛ばすもよし、そもそも期待などせず騙されたと腹を括るも良し、或いは自身の醜態を酒の肴にさせるもよし。幸か不幸かは相対的にいくらでも変わると覚えておけ》
──そう!つまり、ワタシ達が幸福でハッピーなら既に幸せな結果しか用意されていないということだよフォウ!
(エア・・・!そうだね!肉球スタンプほっぺにていっ)
──あふんっ。さぁギル!参りましょう!王の約束されたガチャ(勝利とは言ってない)結果にて!部員の皆様を笑顔に!ひっく!
《さては白酒を飲んだなエア!エルキドゥめ、エアは酒に弱いと言うに!まぁ良い、介抱は後で我が存分にしてやる!さぁ開けるぞ!福袋!解放 せよ!!》
(おうっ!さーて何が出るかなー?)
いつもの召喚・・・というには小規模かつアナログな召喚風景。ごそごそとお尻をふりながらフォウが福袋を漁っていく。
《福袋はこれから出逢うであろう縁も含めた限定のサーヴァントを引き当てられる触媒と聞く。部員どももこぞって引いていたとの報告が上がっている故、我が遅れをとるわけにもいくまい。セイバーめのモーション改修も来た事だしな。いやはやまさか2カットインとは我の眼を持ってしても見ぬけなかったわ。ハハハこのドル箱ヒロインめが!》
(年末特番に刺激が足りなかったよな~。初詣とか楽園困らないよね。将門公にあまこーいるから実質神田明神だし)
──なんらか大吉っしかでないれっすお!
《ふはは!存在自体がハッピーエンドフラグゆえ致し方あるまい!さてどうだ珍獣、豪華絢爛のラインナップであろう?うん?》
(出たぞ!・・・これだ!)
フォウが引き当てたラインナップ。福袋の一部の内容は以下の通りである。
(麻婆豆腐のもと!)
《うむ、エレシュキガルめに作らせるか》
(コンプリートセレクションアゾット剣!)
《うむ、ジャックめにくれてやるとするか》
(優雅たれ参考書!)
《うむ、盛大に破いてやるとしよう》
(原始呪術の手引き!)
《うむ、メディアめの枕元にそっと置いてやろう》
(目覚めた意志ロザリオ!)
《うむ、ナイアめにありがたい十字架としてくれてやるとするか》
(コードキャスト入門!)
《うむ、月の新王にくれてやるか》
(焼きそばパン!プレミアムロールケーキ!)
《うむ、後でエアと食べよ珍獣──大半ががらくたではないか!!》
其処は外さぬかたわけ!!と誰かにあげるものは丁寧にラッピングする御機嫌王。僅かに懐いていたセイバー召喚確定チケットを狙う心は粉々に打ち砕かれ、アヴァロン旅行ツアーチケットが入っているかもという誘いに釣られた自身の浅はかさを存分に嘆く王様である。
「チィ、やはり自分自身の御年玉になどというたわけた甘ったれの考えが墓穴だったと言うのか!年末特番でも台詞が二つしか無かったこの我!ヘブンズフィール推進年は我の厄年と言っても良かろう!」
(川澄さんのイギリス旅行良かったよね~。アルトリアも言ってたよな『ギル、良かったら案内してあげますよ?今度色んな場所に行ってみたりします?』って)
《我がアヴァロンに辿り着く為の前準備として欠かせぬ行事になる故、スケジュールは空けておかねばな。しかしあやつめ、こたつに入るなり冷えた脚をくっつけてきおって。嫌がらせの報いはみかん没収と心得よ!》
──むにゃむにゃ・・・おやすみなひゃい・・・
エア、(白酒により)撃沈。年末はアルトリア、エルキドゥ、エア、フォウ、ロイヤルズと年末特番を見ていたノリで深夜一時という前代未聞の夜更かしも祟り英雄姫は脱落する。そのまま朝御雑煮を皆で作りあまこーと将門公に挨拶しに行き遊び今に至る。「イギリス良いですよね~。行ってみたいですよね~。旅費や食費全部負担してくれる太っ腹な人と行きたいですよね~」等と年越し蕎麦を食べまくるアルトリアと見る年末特番を経て其処からのテンション継続な為、いつもよりテンションとノリが明後日、スペシャルなのである。御年玉を受け取りに老若男女が行列を作る王は伊達ではない。基本小切手とアンケート用紙が入った封を叩き付けるのが王の御年玉だ。
《はやくも後二つではないか・・・空のゲームではあれほど大盤振る舞いというにこちらは侘しいものよな・・・》
(三が日聖杯)
《ふはははははは!アレは傑作であったな!手頃な聖杯も極まったわ!!寝ているだけで手に入る聖杯などふはははははは!!》
色んな衝撃と共に、主題が先の番組の振り返りとなっていた際・・・それは、現れた。
『ブモー』
「む・・・?」
ブモー、と丑の一鳴き。怪訝に聞き返し、福袋に目をやる王と獣。すると、福袋より現れし『ソレ』に目を見張る事となる。
「こんにちは。えっと、丑年より先んじてやって来ました、エウロペです。こちらの牡牛共々、よろしくお願いいたします~」
『ゥモ~』
現れしは、エウロペと名乗る神妃。ゼウスの妃として深く愛されし、ヘラすらも認めている穏やかな女神である。彼女の報復が下らなかったと聞けばその凄まじさが解ると言うものだろう。
「大神ゼウスより『私の信頼する素晴らしき妃をそちらに託す』と言われたわ~。おばあちゃまだけど、よろしくお願いね~」
「うむ、ピックアップされたは良いが影も形も無かった者よ、歓迎してやろう。しかし貴様らの旬は来年であろう。それまで羽根を伸ばすがよい」
「ありがとうございますね。リッカちゃんはどこかしら~」
『モー』
白き牡牛に乗り、ふわふわと行ってしまうエウロぺ。雄々しき牛、そして穏やかな姫の登場に、獣と王は顔を見合わせる。
(謎が多いよね、彼女・・・何故アトランティスで影も形も無かったんだろう・・・)
《何、来る山脈で招けて良かったと言う日が来よう。さて、最後の福袋にて来るか!セイ──!!》
輝く福袋。煌めく粒子。最後に詰まっていた夢と希望のパンドラめいた福袋の底に在ったものは──
《・・・・・・なんだ、これは?》
(・・・コスプレセット、かな?)
大人の女性用のウサギのつけ耳とつけ尻尾・・・そして、古今東西のカードセット。そのいまいち用途不明なアイテムに、二人は面食らい・・・
──むにゃ・・・賢王・・・もうすぐ参ります・・・
エアは変わらず微睡んでいましたとさ。
アルトリア「あははははなんですかそれ!ド○キにでも行ったんですか!?でもなんでウサギなんです?大分後ですよ?」
ギル「我に問うな。福袋に入っていたのだ。しかし牛に兎とは。ますます残り物の風味が強いではないか店主め・・・」
アルトリア「なんなら付けてあげても良いですよ?だってそれ男の人用じゃないですし!」
ギル「たわけ、メディアでもあるまいにお前を玩具になぞするか。これ以上貴様が増える事態になれば我も貴様もうまくあるまい。貴様は貴様でよいのだ。いつであろうとな」
アルトリア「・・・ふ、ふーん?私は私ですか。レパートリーが増えるなか、私は私で・・・ふーん・・・」
騎士王「・・・カードゲーム・・・」
──むにゃむにゃ・・・
(・・・いつか、プリンセス達が遊興に耽るだけの息抜きめいた特異点を・・・用意したいものですね──)
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