人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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年末の忙しい時期ですので、ストーリーや大きなイベントは年始まで停止することに致します。

単発エピソードの更新で、皆様のスケジュールを阻害しない程度のサクッとした物語を御届け致します。

年始はご機嫌王召喚スペシャル福袋編を計画しておりますので、初笑いと美味しい飲み物を御用意ください!

それでは皆様、よい御年を!


怪物と友情の意味

「うぉお、おぉお・・・!から、身体中が軋む様だ、というかバラバラになっただろう・・・!オレ死んだんじゃないか!?」

 

「生きてるよ。メディアに愛されたお前が真っ当に死ねる訳無いだろう常識的に考えて。メロンパン(意味深)になっても生かされること請け合いだ」

 

「全然羨ましくない祝福だなソレ。いやまぁ、ギリシャの祝福なんて皆そんなもんか・・・」

 

楽園カルデアの一室、ケイローンの有する川辺とリングの特訓場にてヘラクレスに全身の関節を入れてもらいつつ治癒されている者がいる。金髪になんだか小物臭そうな言動の男が治癒されている側、筋骨隆々の武人が治癒している側、入念にストレッチを行いながらその様子を見ている青年の三人が集っている様子だ。それぞれ、イアソン。ヘラクレス。アキレウスのギリシャ組である。

 

『ヘラクレスの教えを無駄にしていないか試してやる!かかってこい!』とリッカに余裕ぶっこきでスパーリングを挑んだら人体を破壊しないギリギリの力の見極めの実験台にされ(尚指示したのはヘラクレス)、見るも無惨な半殺しの憂き目に遭い失神していたところを治療されている、といった様子が今の光景である。ヘラクレスは最初は止めたが、こういう場合のイアソンは痛い目見た方がいいんだよなぁと認可した結果のフルボッコであった。

 

「エグい仕込みしやがって・・・!それにこの船長にしてヘラクレスの友人のこのオレに何の加減もしないとは!礼儀作法の仕方も叩き込んでおかないかヘラクレス!」

 

「止めたぞ私は。リッカも仲間内で本気を出した戦いなどしたくないと断ったというに。しつこく粘ったお前の自業自得だろう」

 

「あーあー聞こえない!だがまぁ認めてやろう!ヘラクレスの弟子を名乗るに相応しい研鑽を重ねていることはな!最近デカい戦いがない、たるんでいられたら困るしな!」

 

イアソン的には、マスターと交流の一つもしておくべきかといった様子で声をかけたのだろうが、その内容が女の子相手にスパーリングというなんともなもので、それも強引に行った末のフルボッコなので怒るやら呆れるやらの状態である。動けるようになったイアソンは不機嫌のまま歩き出す。

 

「マスターに言っておけ!そのまま鍛えるのを止めるなよとな!あとオレとやるときは両腕使うの禁止と強く!つよーく言っておけ!頼むからな!!」

 

「うむ、解った。お大事にな」

 

フン!とズカズカ歩いて行くイアソンの背中を見たアキレウスは、ポツリと思ったままを呟くのを止める事が出来なかった。

 

「よくあんなのと友達できてるな、アンタ」

 

「よく言われるし、よく思う」

 

思うのかよ・・・!?そんな突っ込みをそっとしまい、アキレウスは頷く。イアソンは確かにカリスマと統率力は尋常ではないのは解るが、人格がすぐ調子に乗るタイプの者なので。カルデアにいる間はずっとあんな調子である。付き合い方は解ってきたが、初対面で誤解されない事を期待するのは無理だろう。ヘラクレスも、その点はよく解っている様だ。

 

「楽園カルデアにいる限り、アイツは調子に乗ったままのいつものイアソンだろう。あの日のアルゴー以上の精鋭達が集い、苦戦になど無縁の布陣であるが故に。アイツが命を投げ出すような局面は有り得ぬが故にな」

 

「先生も姉さんもメディアも、アンタも口を揃えて言うよな。「イアソンが本気を出すことは楽園では無いだろう」って」

 

「やる気はあるんで、運転は確実にこなせる筈だが。そうだな・・・アイツが本気を出す場合といえば、私がいなくなることが最低条件か」

 

自身がいなくなり、頼れる仲間がいなくなり、絶望に屈する暇すらない窮地で漸く、といったものだとヘラクレスは笑う。だが逆を言えば、イアソンが愉快な時はまだいくらでも逆転は可能な局面であるのだと言える、生ける危機管理メーターだと彼は言う。

 

「アイツとは長い付き合いだからな。・・・そうだ、何故友達をやっていられるか、と問うたのだったな」

 

「あぁ。オレが見る限り、どうも釣り合ってないような気がするんだよな。色々と」

 

「・・・友情の芽は劇的でなくても芽生えるものだ。私の場合は単純だよ。・・・『怪物』と言われたのが、きっかけと言えるだろうな」

 

怪物・・・?アキレウスは形容に聞きなれぬ言葉に首を捻った。ヘラクレスと言えば知らぬ者はいないであろう最強の大英雄であり、無双の武力を持つ英雄の中の英雄だ。武力の一点で見れば、楽園の覇者たるギルガメッシュすら自身より上と認めるほどの無二の存在に、怪物とは?そしてその罵倒が、どう友情と結び付く?

 

「・・・人は自身と異なる存在を恐れ、また排斥しようとする。個体の一つ一つは弱いが故の当然の防衛反応だ。そしてそれには、私も対象に含まれていた時期があってな」

 

「アンタも?」

 

「育ちにとても恵まれたお前には縁遠き事だろうが・・・畏怖と恐怖というもの、そこから来る排他に理由は無いものなのだ、これがな」

 

齢若き身で、大人ですら到達できないような頑強極まる肉体。誰も並ぶものなき無敵の怪力。数多無数の怪物を蹴散らす勇猛さ。それらを総て兼ね備えたヘラクレスもまた、無力なる人間の眼には同じ存在として受け入れられなかった。

 

『あれは人間ではない、化け物だ』

 

『怪物を怪物が殺しているようなものだ、恐ろしい』

 

『目を合わせるな、何が怒りに触れて殺されるか解らん』

 

そう恐怖、或いは疎んじられ続けた。彼の武勇は称賛ではなく、いつ自身らに向けられるかという恐れとなり、化け物と蔑れ続けた。彼に近付こうとする者は、一人もいなかった。

 

「まぁ、仕方無いと割り切ったさ。ゼウスが卑劣な手段で母と交わった際に産まれた子供の私だ、そういった評価も無理もないと諦めていた。・・・そんな折だったか」

 

そう、そんな時だった。自身に聞き慣れた言葉を、聞き慣れぬ様子で告げてきた者がいた。

 

『いや全く素晴らしい!その強さ、その武勇!まさに怪物だな、君は!』

 

いつもの調子で、物怖じする事なく・・・ヤツはそう言った。そしてそのまま、ヤツは愉快な事を口にした。

 

『大丈夫。私といる時・・・いいや、オレといる時だけは!お前は怪物でも化け物でもなくなる!──未来の王を守護する、大英雄となるんだ!』

 

そんな、誰もが笑ってしまうような世迷い言を、自分とは比べるべくもないちっぽけさで、微塵の揺るぎない自信を以て言うものだから。

 

『ついてこい、ヘラクレス!いつかお前に見せてやる!──オレの国を!』

 

コイツは危なっかしいな。支えてやらないと。──そう、最初に思ったのが始まりと、彼は言う。

 

「終わりは酷いものだったが、それでも積み上げた栄光が消え去る事は決してない。アルゴーを組み上げた事、数多の英雄が集った事、ヤツがそれを纏め上げた事、私がヤツに救われた事・・・どれも、色褪せぬ想い出だ」

 

例え、終わりが虚しく凄惨なものだとしても。かつての輝きや栄光はけして翳る事はない。自身が自身である限り、それは絶対だと彼は語る。

 

「・・・成る程ね。どこまで言ってもひねくれもんだが、アイツの英雄としての側面が確かに、アンタを救ったって事か」

 

「そうなるな。・・・例え私が理性を失おうとも、下劣な復讐者に堕そうとも。ヤツの不遜で上から目線な救済は、永劫忘れないだろうよ」

 

それが、自身の始まりであるが故に。彼はどんな状態でも、傲慢で愚かな船長の傍らを離れはしないだろう。

 

「だが、理性ある内に一目くらいは見たいものだ。──ヤツが真に英雄としての輝きを魅せるその瞬間を。・・・楽園の磐石さからして、望み薄かもしれんがな──」

 

王を目指した船長を守護する・・・──大英雄として。




アキレウス「へぇ・・・腐っても船長ってことか。ギルガメッシュ王に頼りがいのあるマスターがいるんで無理かもだが、オレもアレの本気が見たくなったな」

ヘラクレス「だろう?他人をその気にさせるのが上手いんだ、ヤツは。だが、調子に乗りやすすぎるのが致命的でな・・・」

アキレウス「そこも英雄らしいっちゃらしいけどなぁ。・・・でもなんでリッカに突っ掛かるんだ・・・?」

イアソン「知りたいか、ペーレウスのガキ!」

アキレウス「うわっ戻ってきた」

「ったく、恥ずかしい話をベラベラと!お前の口はいつからそんなに軽くなった!」

ヘラクレス「反省してまーす」

「知りたいのなら教えてやる!ヘラクレスの弟子はリッカ!アキレウス、お前の弟子は!」

アキレウス「オルガマリーだぞ。オレなんかにゃもったいねぇ、最高の弟子だ。カワイイしな!」

イアソン「其処だ!!」

「はっ?」

イアソン「リッカもオルガマリーも、見てくれだけは口が避けても平凡とは無縁だ!そんなアイツらに手取り足取り教えられるお前らはさぞ気分がいいだろう・・・!だが!オレが教える運転テクを学ぶのは誰だ言ってみろ!」

「・・・ゴルドルフの」

「おっさん・・・」

「かわいくありませぇえぇぇん!!」


「・・・やっかみかよ!?」

「フン!弟子が大活躍だからっていい気になるなよ!オレのドライビングテク!リッカやオルガマリーにはぜったい教えてやらないからな!!」

アキレウス「しょうもねぇえぇ・・・」

ケイローン「おやおや・・・ですがゴルドルフさんの愛嬌ある振る舞いから、ヒロインに抜粋する声もあるようですよ?」

アキレウス「マジかよ先生ェ!?」

ヘラクレス「ぬっ。ヒロイン対決ではまだリッカは仕上がっていない。今のうちに女装で培ったおめかし技術をリッカに伝授しなくては」

アキレウス「女装!?・・・オルガマリーは普通にいい娘でよかった、うん」


スイーツじゃんぬ

リッカ「ファッ!?(サラァ)」

オルガマリー「あ、またリッカが誉められたわね・・・」

ゴッフ「冷静すぎないかね!?そして弱すぎないかね!?」

じゃんぬ「可愛いからいいのよ」

オルガマリー「ふふっ、誉められる事に耐性がなさす(カラァン)」

ゴッフ「君も!?」

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