ロマン「いいや、君らしくないなレオナルド。創造主が最後の締めを誰かに任せきりかい?」
ダ・ヴィンチちゃん「ロマニ・・・」
「あちらのムネーモシュネーは、君の死を無意味だとしたくないが為に活動したんだ。君への献身と想いを胸に懐いて頑張ったんだ。そんな彼女が一人寂しく朽ちていくのをよしとするほど、君は薄情だったかな?」
ダ・ヴィンチちゃん「──ムカつく!ロマニに人の心を説かれた!」
ロマン「もうボクは妻帯者ですぅー!」
クソァー!!!
ダ・ヴィンチちゃん「・・・そうだね。見て見ぬふりとか神様じゃあるまいし。あちらのムネーモシュネーは、この私が造ってはいないけど」
─最後の労いくらいは、受け取ってくれるかい?優しく、誠実な私の傑作よ──
『・・・あぁ。消えていく。失われていく。私が、集めた記憶が。すべて・・・』
「失われてはいないわ。記憶も、貴女の奮闘も、きちんと此処にある。きちんと、私が覚えている」
ムネーモシュネーの嘆きに、そう返答するオルガマリー。彼女は決して悪ではない。決して悪意の下に動いていた訳ではない。手段は何処かで狂ってしまったのだとしても・・・其処には、優しさと慈しみ。そして心からの献身があった。
「ありがとう、ムネーモシュネー。世話をかけてごめんなさい。・・・私は、もう大丈夫よ」
『・・・・・・良かった。独りよがりであり、何も成せないと思っていましたが・・・最期に、あなたのお役にくらいは。立てたみたいですね・・・』
礼を告げるオルガマリーと同じくして、フェイク・ロンゴミニアドがゆっくりと、静かに崩壊していく。この槍は、ムネーモシュネーと融合した彼女そのものだからだ。
「撤退しましょう、皆さん!」
「あぁ。事件は終わった。長居は無用だ!」
ライネス、グレイがオルガマリーと藤丸に駆け寄り撤退を促す。そう、勝利を瓦礫の下に埋めないためだ。だが・・・まだ、あちらのカルデアにやることが残っている。
『ねぇ、ムネーモシュネー。前の私は完璧だったけれど、どうも一つだけ伝え損ねたらしい』
ダ・ヴィンチちゃんに造られた、あちらのロリンチと呼ばれる個体が彼女に投げ掛ける。此方のオルガマリーの言葉は、あちらに聞かせないためのレイラインによるものなので、誰にも聞かれていないが故の最後の問いだ。
『いいかい?彼の第二の生は、『最後の瞬間まで完璧だったんだ』。君は、彼の喪失を正しく運用しなければと言ったが、そんな必要は無かった』
そう。後悔はなかった。後悔は無かったのだ。万能の天才は、自身の生に不満など持っていなかった。最後まで彼は彼らしく、思うがままに才能を振るい今を生きる命を助けた。だからこそ・・・藤丸がここにいるのだから。
『あぁ、それでも。それでも。それでも君はレオナルド・ダ・ヴィンチを悼んでくれた。だから言おう。・・・ありがとう』
彼女は、忘却を救いと言いながらも。自身にそれを課すことをしなかった。忘れなかった。諦めなかった。
無念に果てた天才の死を無駄にしまいと奮起した。
嘆きの内に果てた少女の願いを叶えようと奮闘した。
彼女は決して、自分を救おうとはしなかった。手段は間違えてしまったかもしれない。でも彼女は誰よりも・・・仕えると決めた相手に誠実で、純粋だった。だから、彼女を誰も破棄しようとはしなかった。彼女を拒絶し、破壊しようとはしなかったのだ。
『・・・お礼など、私には勿体無い。私は機械、ムネーモシュネー・・・私の役割は、観測。喜びも、悲しみも、ただ見つめ。抱えていく為に作られた機械・・・』
最後の独白を告げ、ゆっくりと活動を停止したムネーモシュネー。もう彼女は休む事が出来る。胸に空いた穴も、空虚に吹き荒ぶ心の風に凍えることも、もう無い。
「・・・さようなら。あの人が作った、優しい心を懐いた
オルガマリーはそっと、その喪失を悼み。脱出を始めたライネス達に続き、その場を後にする。──その献身に、心からの敬意を表し。
・・・そして。グレイが作り上げた黄金の階段に集い、フェイク・ロンゴミニアドの最期を一同は見届ける。この事件の、終わりの時がやってきたのだ。
「・・・ムネーモシュネーが死んだ事により、この特異点も終わるようね。ライネス、あなたたちも元の場所へ戻されるみたい」
「え、あ・・・本当だ!?私も、グレイも身体が消えかけているぞ!?」
そう。この不思議な特異点の、終わりの時がやってきたのだ。アストライアも静かに剣を下ろし、天秤の結果を受け入れる。
「フェイク・ロンゴミニアドが崩壊した事により、特異点が更生されるのです。あるべきものをあるべき場所に。裁定として、これ以上ない結果でしょう。・・・藤丸」
「は、はい!」
「上に立つものとして、不明を恥じます。あなたはけして傑物や英雄ではない。ただの──健全な男の子でしたわ。だからこその愛、だからこその情熱をもって、困難を乗り越えた」
「・・・それだけが、オレの誇れる魂ですから」
「この特異点に来たマスターが、あなたで良かった。──もしも縁があったなら、またお逢いしましょう。それと、アイリーン?」
「何かしら」
「あなたの固有結界・・・私が凍えなかったのは、本当にあなたの細やかな調整だったのかしら」
「・・・嘘よ。そんな調整していないわ。『仲間にそんな必要、ないでしょう』?」
「──ふふっ。まさか、善や正義に寄り添う悪があるなんて。私の見識も、まだまだと言った所ですわね──」
満足げに、アストライアは消滅していった。成すべき事を、成すべきように行えた戦いに感謝を込めて。共に戦った、輝く魂に祝福を込めて。そして──
「・・・縁があれば、カルデアでも召喚されるのか。こんな私でも。うん、だったらいいな。あるかないかも分からないが、私はもうそれでいい」
ライネスもまた、別れを告げる。初めて出来た弟子に。そして・・・人生で出逢えた、対等なる盟友に。
「新しい私だろうが、そうでなかろうが、一度弟子になったならずっと弟子だし、盟友だって・・・ずっと盟友だ。生まれ変わっても。えーと、東洋ではこういうの・・・」
「縁と言うのよ、可愛らしい未来のロード・エルメロイ?」
「───っ」
もう、こんな気安い会話が出来ることは無いかもしれない。アイリーンは、オルガマリーは。藤丸と違い、疑似サーヴァントだ。座に行けば、記録としてしかこの戦いは登録されない。・・・だけど、それでも。それでもだ。
「──『さよなら』じゃない!『いつかまた会おう』!私のはじめての弟子よ!そして、生涯忘れることの無い──素晴らしき、素晴らしき盟友!」
「────」
「『
万感の想いを込めて、ライネスが叫ぶ。その言葉に、深く頷くオルガマリー。・・・別れが哀しいのは、こちらも一緒だ。だが、別れは、次なる再会に繋がる大事な儀式だから。
「また会いましょう。ライネス・・・私の、大切な盟友」
仮面を外し、心からの敬意と友情を示す。──この事件簿を締めくくる別れが、此処に示される。
・・・──しかし、アイリーン・・・オルガマリーはちょっと忘れていた。カルデアの通信は復活しており、そして藤丸はすぐ傍にいる。
『──オルガ、マリー・・・所長・・・?』
『?前任所長がなんだと言うのだね?其処にいるサーヴァントがどうかしたのか、キリエライト』
「──あっ」
しまった──思い切り仮面外してしまった。思い切りオルガマリーという呼び掛けに頷いてしまった。思い切り盟友と呼び合ってしまった・・・。
「やっぱり所長としての意識があるんですか!?あるんですね!?オルガマリー所長!?」
「落ち着きなさい。こんな美人でしなやかでスタイリッシュでガンアクションが似合って常にクールなビューティーはあなたたちの知るオルガマリーとは一ミリも合致しないでしょう?」
『全力で褒めてるの!?貶してるの!?』
「『確かに!!』」
「いい子ね、張り倒したいくらいに。──さぁ、報酬をいただこうかしら藤丸君」
そう。最後の仕上げが残っている。楽園の所長として、これからの備えとして。
「貴方達が挑んでいる戦いの全てを、教えてもらいましょうか。あなたたちの地球に、何が起きたというの?」
「──はい。全て、お話しします」
藤丸が語るは──歴史を懸けた生存競争。多くの未来に打ち克つ物語──
ムネーモシュネー『・・・オルガマリー。あなたは優しすぎる。私はただ、観測しただけなのに。・・・あぁ、そうか。ただの行為に、意味を付与し暖かいものにするのが、人間なのか・・・』
(・・・暗い・・・静かだ・・・観測が出来ない、見当たらない未来・・・みんな、こんな暗さの中で生きているのか・・・)
『・・・みんな・・・独りぼっちで・・・』
声「──いいや。独りぼっちなんかじゃないさ。暗がりに灯を灯すように、人は寄り添い互いを照らす」
『・・・!』
「お疲れ様、ムネーモシュネー。私の、かけがえのない愛弟子を見捨てないでくれて、ありがとう──」
『あな、たは・・・あなたは・・・!』
『本当に、本当に。お疲れ様でした。異なる世界の私。あなたの哀しみや苦しみを、私は観測します。あなたが、いた事の証として』
『・・・そうか。これが、オルガマリーが彼女に見せた記憶の時空。其処には、私も、あなたも。・・・ならば、ならば私は・・・私の意義は・・・確かに──』
「あぁ、そうだ。ムネーモシュネー」
・・・──オルガマリーが見出だした様に。
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