人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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楽園カルデア

リッカ「マリー。おーい、オルガマリーやーい。可愛い可愛いあなたの親友のデリバリーですよー。お茶しようよー」

マシュ「可愛い可愛い!?事実ですがそれ本気で言っていますか先輩!高度な自爆では!?」

リッカ「また余計な口を利くこのなすびはぁ!可愛いと思うことが大事なの!なんか姿が見えないから心配でさー。仮眠かなぁ?」

マシュ「そうですね。マリーさんは楽園の参謀にして頭脳!所長ですから!パワーこそ力な先輩とは身体の使う場所が多いから疲れやすひゃあっ!?」

「本当の事を言うのはこのなすびか!このぷりんとしたお尻か!」

マシュ「あっ、先輩!もっと、もっとスナップを利かせて抉るように・・・!あっ、先輩っ・・・!」

(いつでも頼ってね、マリー。私もマシュも、マリーの事親友だって思ってるから!)

ジーク「知っているぞグドーシ。あれはケツドラムだな」

グドーシ「あなたの尻と私の尻で奏でる二重奏。民明書房にも書かれているでござる。善きかな善きかな、天下泰平なりや・・・」

ジーク「・・・楽園や 金に染み入る ケツドラム」

グドーシ「川柳ですかな?」

ジーク「習った(ドヤッ)」

バサスロ【◼️◼️◼️(湿布)】

マシュ「ありがとう・・・ございましゅ・・・」

リッカ「いい張りだった・・・しょうがない。イアソンにスパーリングで呼ばれてるから戦いにいこーっと」

グドーシ(死ぬのでは?)

ジーク(死んだな・・・)



クリティカル・ワード・フィニッシュ

『たくさん、たくさん私は頑張ったの。そして、私の望む記憶が此処に溢れているの。でも・・・なんだか、おかしいの』

 

誰もいない、暗闇の中にポツンと座る一人の少女。背後から眺めているオルガマリーを幼くしたような、瓜二つの少女。彼女は、浮かび上がるいくつもの記憶を・・・映像を眺めていた。

 

オルレアンの記憶。セプテムの記憶。オケアノスの記憶。ロンドンの記憶。アメリカの記憶。キャメロットの記憶。バビロニアの記憶。その後に繋がる記憶に至るまでの旅路が映し出されたモニターを食い入るように、だがどこかぼんやりと、醒めた目で見つめている少女。彼女は──

 

『誰よりも上手く出来ている筈なのに。誰もが褒めてくれている筈なのに。・・・あんまり、嬉しくないの』

 

その記憶で輝いているのは、オルガマリーだ。マスターとなり、令呪を輝かせ、サーヴァントを指揮し率先して戦っている。カルデアスタッフも、レフも、Aチームも。口々にオルガマリーを褒め称えている。

 

『流石は所長だ』

 

『なんでもできるんだね』

 

『君がいれば安心だ』『君がいれば』『君なら大丈夫だ』『君なら──』

 

「・・・・・・」

 

だが、それで終わり。達成した記憶のモニターは落ち、また全く同じ記憶が繰り返される。全く同じ称賛が、全く同じ展開が、全く同じ結末が用意される事の繰り返し。擦りきれた勝利の喜びを、くたびれた称賛の声を、ぼんやりとただ聞いている。たた見ているだけの展開だ。

 

「──あなたは、カルデアスに刻み込まれたオルガマリー・アニムスフィアの残留思念。ムネーモシュネーが行動を開始した際、自身の行動のサンプルケースとして彼女の観測の結果を受けていたのね」

 

あのとき、王と姫に助けられず飲み込まれていたであろう自分自身の、カルデアスに焼き付いてしまった最期の未練にして情念。それをムネーモシュネーが起動した際に回収し、『人間一人に、望むままの観測を行う』というサンプルケースの実験として彼女を選び、今まで彼女が・・・自身が。望んだ未来と映像を選び観測して来たのだろう。

 

同時にそれは、自身の記憶と活動理念の補強となる。彼女が縦横無尽に活躍している記憶を、目の前のオルガマリーは見せられている。彼女に、彼女が望む未来と願いを観測し、安寧を与える。ムネーモシュネーの動機と理念が強固だったのは彼女という存在がいたからだろう。

 

 

自身の活動が、確かに人を救うことが出来るという確信と結果。人間的に言えば、自信。或いは心の支えと言う奴に他ならないだろう。ムネーモシュネーは聖杯に『素晴らしき未来と願いを観測し続ける』と願い、オルガマリーの残留思念に甘く優しい夢を見せ続け、それを成功例としてカルデアの藤丸に実行しようとしたのが今回の動機に違いはない筈だ。・・・だが。

 

『こんなに上手くいっているのに、こんなに頑張っているのに。・・・どうして、私の周りには誰もいないの・・・』

 

彼女は甘い夢に浸り続けられるほど楽観的でも、そして考えるのを止めることが出来るほど愚かではなかった。彼女は疑問に思い、諦め続けてきた。

 

こんなに上手くいく筈はない。

 

こんなに素敵な未来がある筈がない。

 

でも、辛いことばかりの現実に帰りたくない。自身の消滅や、何処にも居場所がない世界が怖い。

 

一歩も動けず、状況の打開もできず。ただ絶望と諦めのまま、示された幸福な記憶を味わい続ける残留思念。それが、ムネーモシュネーの救いを受け入れたオルガマリーの今だった。そして、彼女が在る限り特異点は消え去らない。『救い』こそが聖杯の受理した願い。あの聖杯か、オルガマリーの思念を消し去らない限り決して消えない仕組みになってしまっているのだ。この特異点は。

 

「・・・・・・」

 

カルデアで・・・いや、もっともっと前から味わっていた焦燥感、劣等感。諦め、屈辱。それらを形にしたような自分が目の前で自分を見上げている。虚ろな目で、空しい栄光を味わい続けている。

 

あまり嬉しそうではない?当然だ。哀しいことに、こんな有り様に成り果てて尚、小賢しい知識は捨てられない。分かっているのだ。これが誂えただけの空しいものであることくらい。でも、止められない。自身で自身に、決着がつけられない。そう、だって──

 

「──助けを、求めているんでしょう。誰も誉めてくれなかった。誰も助けてくれなかった。誰か、自分を見てほしい。誰か、自分を助けてほしい。心の中で、私はずっとそう思っていたから」

 

自身に見合わぬ重責や、自身を護るための癇癪を起こし辺りを遠ざけ、拒絶した。その癖、いつか誰かが自分を助けてくれると信じている。誰かが自分に優しくしてくれると信じている。その心の隙間にレフに入り込まれ、依存に依存しきった結末が、あれだ。自業自得に相応しい、カルデアスに取り込まれる結末だ。

 

『誉められたい。認められたい。でも、全部偽物なの。だって──』

 

そう。誰よりも幸福な未来が欲しいくせに、誰よりも素敵な自分になりたいくせに、いつまでもその場から一歩も動けない。その理由、その動機なんて解りきったものだ。

 

『私が、こんなに上手く出来る筈ないじゃない』

 

自身の可能性に、実力に。絶望しきり、諦めてしまっている。だから、誰かの助けを受け入れられない。望んだ未来を見ているくせに、全く満たされないのはそれが理由だ。彼女は、『観測』では決して満たされない。諦めてしまっているから。自身の全てを。彼女が諦める限り、この特異点は消え去らない。何故なら、彼女の今、『納得は出来ていなくとも、彼女は救われている』という状況が、ムネーモシュネーの行動理念の基盤に他ならないからだ。それを打ち砕かなくては、終わらない。

 

「──」

 

──だから、自分が呼ばれたのだ。オルガマリーは理解した。これは、自分にしか出来ないことだ。他者に何を言われても諦めている絶望した自分の目を醒まさせるのは、これだけしか無いからだ。

 

「──終わりにしましょう、オルガマリー。空しくも、私が望んだ希望の記憶にすがるのは」

 

銃は要らない。武器は要らない。彼女を納得させられると確信できる記憶は、一縷も色褪せない想い出は、人ならざる身体であろうと手放していない。

 

『何故?これは救いなの。私には、こんな偽りの幸せしか残っていないの。カルデアに、もう私の居場所はない。ムネーモシュネーの観測にしか、私の居場所は・・・』

 

「あるわ。そんな記憶を何百束ねても勝てない程、頑張ったあなたの記憶は──此処に在るの」

 

そう言って、そっと小さな自分の手を取り。─自身の聖杯に、アクセスする。

 

「これが、あなたに届ける──『事実』の、記憶よ」 

 

『・・・!』

 

彼女に見せるのは、たった一日も忘れた事の無い、楽園に籍を置いた自身の記憶──

 

 

大切な親友が二人もできた。所長として、皆が率先して支えてくれる。

 

サーヴァントの師匠も、たくさん増えた。聖杯になった事で、肉体の不安はなくなり。死んだ事で、大抵の事では動じなくなった。

 

スタッフも沢山増え、カルデアの組織としてのレベルは何倍にも引き上げられた。所長として、彼らを纏め上げられる事が自身の誇りだ。

 

沢山の困難に挑んだ。沢山の人達に支えられた。勇気付けられた。立ち止まっている暇なんて、まるで無かったし考えもしなかった。

 

誰よりも世界を愉しむ王と、輝くばかりに清らかな愉悦を求める姫に救われたあの日から、自分はただひたすらに走って来た。

 

これは偽りじゃない。記憶の捏造でも、記憶の改竄でもない。

 

──事実だ。オルガマリー・アニムスフィアという存在が歩み、重ねてきた『所長』として、世界を救うマスターに寄り添い努力してきた結果だ。

 

あなたの望んだものは此処に在る。あなたの願った記憶は此処にある。・・・解りやすいように、はっきりと口にする。

 

一度しか言わない。よく聞いて。あなたを、其処から救う一言。それは──

 

『それは・・・』

 

──貴女(わたし)は、(あなた)は。ちゃんと出来たのよ。沢山の人に、褒めてもらったのよ。オルガマリー。

 

『──、う、っ・・・うっ・・・』

 

──沢山の人に、認めてもらえたの。

 

『うぅう、~~っ~~!』

 

──あなたは、沢山の人の、役に立てたのよ。オルガマリー・アニムスフィア。本当に・・・

 

『うわぁあぁあぁ~んっ!あぁあぁぁ~っっっ!!』

 

本当に・・・。──良くできました。オルガマリー・アニムスフィア──

 

 

彼女が欲しかったものの全てを、彼女の親友がいつもしているように。言葉を弾丸にして、相手の心に叩き込む。

 

自分自身から、自分自身へ。いつまで経っても、誰かに褒められたいと願うばかりの自分自身に贈る、心からの──

 

『・・・私・・・!やっと・・・褒めてもらえた・・・!一番、褒めてもらいたかった・・・!自分自身に・・・!褒めてもらえた──!』

 

──good job(よくできました)──

 




そして、空間が瓦解していく。黒き閉鎖空間に、光が射し込んでくる。

「もう、いいの?」

オルガマリーは頷いた。

『行って。私はもう、大丈夫』

誰かが、呼んでいる声がする。自分の戻るべき場所が、待っている。

『もう、皆は立派に歩いている。私はもう、いなくても大丈夫。でも、あなたは違う』

「・・・」

『行って。あなたの頑張りを、もっともっと紡いでいって。あなたがいてくれたなら、それでいい。私はもう、大丈夫だから』

背中を押される。もう、彼女に戻る場所はない。だけど、自分を嘆く事はしない。

見れたから。自分は・・・ちゃんと出来るって。

『行ってらっしゃい。ずっとずっと・・・気を付けてね。あの娘に、よろしくね』

「──行って、きます」

もう何も望まない。もう褒められたいと願う事はしない。そんなものは、もう全部叶ったから。

『私を、受け入れてくれて・・・ありがとう──』

立ち止まってしまった自分の、誇らしげな視線を背に受けて──

「──・・・」

・・・少女は、在るべき場所への帰還を果たす。

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