人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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AIエレちゃん『えーと、小紙片の大まかな場所は・・・』

シドゥリ『大変お疲れ様です、エレシュキガル様。楽園の極秘任務なる大役、所長を支える大任をよくぞ・・・』

『友達として、出来ることはすべてやる!それが友情の報い方なのだわ!あ、シドゥリ。これ、築いた縁を形にしたものだから。保管してもらえるかしら?』

シドゥリ『はい、お任せください』



カドック「くしゅ!」

アナスタシア「なに、風邪?季節の変わり目だからかしら」

「おかしいな、不衛生なんてポカは犯さないつもりだったのに・・・走り込みでもするか」

「案外、あなたの事を噂しているのかもしれないわね?」

「──暇なヤツもいたものだな。アナスタシア、タオルを頼む」

アナスタシア「えぇ、いいわよ。──あなたの噂、広まるといいわね?」

「他人の評価なんてどうでもいいよ。大事なのは、自分が自分であることだけだ──」


偽りの安らぎと聖なる槍

突如として顕現した、時計塔に認識を被せていた巨大な槍。それは紛れもなく星の楔にして聖槍、世界の果てに存在すると言う人理のテクスチャを張り付ける役割を持つ騎士王のもう一つの武装、ロンゴミニアドと結論付けられた。第六特異点にて獅子王が変わらぬ人間の善性を保管するために使用した槍。それが、藤丸の記憶を辿って現れたのだと言う。

 

「ひとまずあれを、フェイク・ロンゴミニアドと呼称しよう。槍の内側から、大量のオートマタや亡霊が排出されているのも確認した」

 

「どうやら形振り構う気は無くした様ね。エルメロイ二世の慧眼で、水面下も隠れ蓑も暴かれた事による実力行使にフェイズを移行した・・・といった所かしら」

 

「気軽に相手の秘密を暴露して、ついでにアニムスフィアの功績を横取りして怒らせるのは悪い癖にして悪手だな、兄上」

 

「二重の意味で弁明させてくれ、緊急時だったんだから仕方ないだろう!それにケイネス程の秀才を納得させるにはアニムスフィアの成し遂げた事業クラスでなければ天狗になりはしなかった!」

 

「私は赦すわ。生きてそれぞれの場所に帰れたら、この件はもう忘れます。そろそろ見ている側が不快の領域に至りそうだし」

 

ぶっちゃけ、ライネスやグレイをイスカンダル王に紹介する方が面白そうなので。使い古されたネタはさっさと捨てる決断を彼女は下す。イビるネタは新鮮かつ鮮烈な方がいい。怒ってはいない。ただきっちりと恨みは晴らしておくに限る。再発防止の為に。

 

「ともあれ八割方はこの蒸気絢爛のパッチワークを目指している。おそらく、どうしても藤丸を捕らえ、確保したいのだろうよ」

 

「随分と観想されておりますのね、藤丸さん?」

 

「恨み辛みじゃないといいんだけどな・・・いや、ないか。恨み辛みを言う人達はもういないんだし・・・」

 

漂白、或いは剪定で。物申してほしい人間はとっくに消えている。そんな壮絶な理由で、藤丸は恨みの線を打ち切った。

 

「首魁の隠れ家もまた判明した。言うまでもないがあの槍の内部だ。我々の認識は阻害されており、あの時計塔を疑いもしなかった。しかしあの時計塔から手勢を出してしまえば認識の阻害にも無理がある。黒幕としても、最後の手段だったのだろう」

 

最上の悪事とは、気付く頃には全てが終わっていることだ。黒幕は今回、それを目指したのだろう。しかし手法を暴かれ、短絡的な実力行使に移行した。──逆に言えば、其処まで追い詰めたと言える。

 

「此処まで来て今更我が弟子をくれてやるものか。やるぞオルガマリー!全て蹴散らし、あるべき場所に帰るんだ!」

 

「イエス、マム」

 

ハイタッチを行い闘争本能を垣間見せる二人のロード。数や量では圧倒的に劣っていても、この二人ならたちどころになんとかしてしまうような凄みを感じ取り、男性陣は肩を竦める。

 

「・・・ますます意気投合しているな。敵対する相手が哀れに感じてならないほどだ」

 

「味方で良かったですね・・・」

 

「まったくだ。そして紙片の分析も終わった。今回はトリムマウにも協力してもらった」

 

「助かったわ。トリムマウという万能礼装は、戦闘以外においても対応してくれる。機能美、至純の傑作と言えるエルメロイの至宝ね」

 

「もっと褒めろもっと褒めろ!美辞麗句や世辞は聞き飽きたが、盟友の賛辞ならばそれは家督の栄誉に直結するからな!」

 

胸を張るライネスに微笑みつつ、オルガマリーは目を細めた。キーワードはいくつか揃っている。それらを纏めて、ホワイダニットさえ掴めれば・・・

 

「データを開帳する。まず、カルデアという名前が出た」

 

「・・・やはり、カルデアの関係者か」

 

オルガマリーは頷いた。エルメロイ二世の言う通り、これは予測出来た線だ。どれだけ賢く聡明だとしても、人は知らないものを再現出来ない。マシュの人となりを知らなくば、欺く演技も芝居も出来はすまい。

 

「マシュになりすました以上、なんらかの形で楽園から離反した存在・・・という事ね」

 

冷静に判断していたオルガマリーだが・・・次の結果に、目を見開き比類なき衝撃を叩き付けられる事となる。

 

「うむ、そして抽出された名前はこうだ。『自律観測型存在証明システム・ムネーモシュネー』」

 

「・・・──!!」

 

そんな、馬鹿な。ムネーモシュネーとは、楽園で師匠が開発した記憶と記録を観測し、楽園の日々を色褪せる事なく護る証人として開発された仲間の一人だ。そんな彼女が、今回の黒幕・・・?

 

「・・・・・・」

 

 

『今回の黒幕からは、『憐憫』の感情を感じた。あくまで、そういった印象だがね』

 

エルメロイ二世が感じた、決して悪意ではない印象と手段・・・

 

 

『オレ、全てが終わったら伝えたい事があります。オレ達が、どんな戦いをしているのかを、全部』

 

藤丸君が懐いた、悲壮なまでの決意と覚悟。それらから推測されるものは、ロストベルトと呼ばれる世界との戦い。そして──

 

 

『あぁ、何故だ?何故自分がエルメロイ二世だと思い込んでいられた?』

 

『どうして、忘れていた?忘れていられた?』

 

『どんなに強い想いや感情も忘れられる』。それがこの特異点。そして其処に、捏造した記憶を藤丸君に教え込ませれば。

 

 

それは──全ての悲劇と苦痛の忘却という『救い』。そして──

 

 

「・・・成る程。そういう事ね」

 

理解した。把握した。正しく黒幕・・・恐らく藤丸の世界のムネーモシュネーがどの様な考えに至ったか・・・『何故この特異点を作ったか』を、オルガマリーは理解した。

 

「?どうした?何かを掴んだのか?」

 

ライネスがオルガマリーの変調を感じ、声をかける。だが、これはあまりにも個人に向けられたものであり、それらを此処で明かすのは、藤丸君への要らぬ重圧にしかならないのだ。

 

そう、この特異点は記憶を観測するシステムが考え付いた『楽園』にして『救済』なのだ。──否定の有無は、正しく藤丸君にしか叶わない。

 

「えぇ。──でも、これは黒幕の口から直接聞きましょう。何故やったかは解ったけれど、あくまで証拠から導いた客観的なもの。・・・この動機に大切なものは、主観の是非よ」

 

そう。──このムネーモシュネーの企みに藤丸君がどう応えるのか、どう答えを出すのか。それを、前情報なく、事前の覚悟なく藤丸君はまず受け取らなくちゃいけない。ムネーモシュネーの『慈悲』と『救い』を。

 

「ライネス、どうか私を信じて。必ず、この真実の前にはあなたが必要よ」

 

「・・・。──君がそこまで言うとはな。・・・解ったよ。開帳は最後までとっておこう。『まだ不確定な要素が多いから話せない』などともったいぶるどこぞの名探偵よりはずっとずっと誠実な君の答えに免じて、ね」

 

『ふふっ。あなたは友達にはとても甘いのよね。アキレウス師匠があなたを好むのはそういうところよ、きっと』

 

そう、本当は御茶会の際に、アイリーンとオルガマリーの同一視を諌めなければならなかった。そうしなければ、要らぬ所からオルガマリーは別途の派遣と感付かれる可能性があった。だが、オルガマリーは友人や信頼できる相手にはどうしても悪辣になれない、或いは成りきれない。

 

「・・・どうか、藤丸君を御願いね」

 

「?・・・オルガマリー?」

 

すっと、目を細め、グレイ達を見つめるオルガマリー。・・・其処に宿る目は、今までとは全く違う感情。

 

「──これもまた、私が呼ばれた理由なのかもしれないわね」

 

・・・安寧に身を沈め。歩みを止め、未来を諦める選択をするのならば。

 

(成る程。これは確かに・・・リッカには似合わない戦いね)

 

藤丸の【命を断つ事】。──諦めた彼の代わりに、この特異点に幕を下ろす事。それが、この特異点にて自分が招かれた理由の『一つ』なのだと。

 

 

──オルガマリーは【黒き銃】の擊鉄を下ろす。




ライネス「よぉし!シンプルな解決策は一つ!乗り込み、制圧するのみ!」

アストライア「同感ですわ。私が召喚されたのはこの為でしょう。逆に内側に入れたならいくらでもやりようはありますわ」

バベッジ「アストライアの力でも、真正面から打ち破るのはいささか数が多い。確実を求むなら・・・」

グレイ「・・・はい!はいっ!拙!拙に妙案があります!」

藤丸(かわいい)

「ですが!足りません!魔力が足りないので、拙とアッドだけでは・・・」

ライネス「兄上!供給の時間だ!」

エルメロイ二世「シャラップ!・・・ならば簡単だ。魔力が足りないのならば、このパッチワーク・ロンドンには無数の魔力の源が散らばっている」

藤丸「──確か!小紙片!」

「正解!小紙片に罠は仕掛けていないだろう。だが、対策の礼装をお願いしたい、蒸気王」

バベッジ「すぐに用意できるとも。紙片はエネルギーに使っていたぐらいだ」

ライネス「よし決まりだな!オルガマリー!最短ルートで回収するぞ!」

オルガマリー「了解。(お願いね、エレちゃん)」

『ナビ・エレちゃん!』

『もう地点は解っているのだわ、ついてきて!』

アイリーン『やだ・・・冥界の女神様すごい・・・』

オルガマリー(ふふっ。私の強さは、あなたたちの惜しみ無い協力だもの)

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