人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「よう、噂の麻婆、俺にも食わせてくれや」


「いらっしゃいませ、アーラシュさん!」

「あの、ルチフェロなりし・・・ってやつをくれ。うんと辛くしてな」


「解りました!」


ジメジメだっ!

「この時代には存在しないとっておきを用意しましたの。きっと気に入っていただけると思いますわ――」

 

 

 

女神ステンノが残したと言う財宝を求め、洞窟にやってきた一行

 

 

『女神の宝とはどのようなものであろうな?金銀か?それともソレ以上か?余は楽しみだ!うん!』

 

シークレット通信のネロの声が響いてくる

 

「さて、な。宝であるならば赴かざるを得んが――まぁ女神の本質を図るにはいい経験であろうよ」

 

――ソレにしても、大変にじめじめした場所だ。薄暗く狭苦しい

 

 

「ヌメヌメするぅ・・・じめじめしてるぅ」

 

「先輩、気を付けてください」

 

 

「ぬうぅ・・・皇帝がくるような場所ではないぞ、確実に・・・宝への期待を持たせるしかないではないか・・・」

 

 

口々に感想を漏らす

 

――嫌な予感がする・・・

 

 

 

『あっ』

 

すっとんきょうな声をあげるロマン

 

 

「どしたの?ロマン」

 

 

『あ、いや。まぁ――うん。えっと』

 

 

やけにいいよどんでいる。何があったのだろうか?

 

「報告せよ。何があった」

 

『――うん。僕たち、騙されたっぽい』

 

瞬間辺りを囲まれる一行

 

 

「ぬっ!?」

 

ケタケタと音を立てる骸骨兵だ。強くはないが数が多い

 

 

「これもお宝!?」

 

「そんなわけなかろう!?あの女神がけしかけた雑兵であるに違いない!」

 

「こんな狭い中で・・・!!」

 

 

『不自然なくらいぎっしり敷き詰められているぞ!確実に人為的なモノを感じる!恐らくあの女神さまの仕業だな!』

 

「ふむ。まぁこれくらいは序の口よ。何かの間違い、という言葉もある。そら、早々に蹴散らすがいい、マスター」

 

――一応財の選別はしているが、こう狭いと洞窟自体を粉砕しかねない。小回りの利くマスターやマシュやネロに頼るしかない!

 

 

「よい機会だ。闇に潜む者共の扱いを心得ておけ。いずれ役に立とうよ」

 

「解った!マシュ、ガードお願い!」

「はい!」

 

「来て!『ジャック』『ハサン先生』『エミヤ』!」

 

右手が光り、三騎のアサシンが呼び出される

 

 

「よんだ?おかあさん」

 

「御呼びで」

 

「仕事かい?」

 

 

「骸骨!バラバラにしちゃって!」

 

 

「うんっ」

 

「承知」

 

「解った」

 

 

指示を受け、瞬時に散開する。

 

 

「解体するよ」

 

振るわれるジャックのナイフの金属音。骸骨をバラバラに解体していく。次々と残骸が飛び散っていく

 

 

「闇に潜むは我等が得手なり――シャアッ!!」

 

放たれる黒塗りの短刀。暗闇に潜み、影を切り裂き、骸骨の頭蓋を粉砕、的確に処理していく

 

 

「そこだ」

 

超高速にて翻るナイフ、そして銃弾。火花と金属音が雑魚を皆殺しにしてゆく

 

 

『うわぁ・・・凄いなアサシン!狭い場所、暗い場所はお手のものだ!』

 

「む、む?何が起こっているのだ?」

 

 

「闇に隠れ潜むという点で奴等に相応しい戦場よ。不利な地形で無駄に汗を流す必要もあるまい」 

 

「いけー!アサシンズ!」

 

着実に、迅速に。雑兵は蹴散らされ数を減らしていく。暗殺者の本懐だ

 

 

『・・・もしかして君、アサシンの運用を教えるために?』

 

「当然であろう。我が神の言い種を鵜呑みにするはずが無かろうが、たわけめ」 

 

――確かに、ここ以外にアサシンを使役できる場所など思い当たらない。やはり、来る以外に思惑が器にあったのか

 

「ま、理由は他にもあるがな。雑兵を小間遣いに任せ、悠々と進軍する。王の行軍とはこうあるべきよ。・・・洞窟なのが惜しいが」

 

――つくづく、面倒見の良い英雄王だ

 

 

「おわったよ、おかあさん」

 

仕事を終え、三騎が帰還する。辺り一帯に散らばる骸骨の残骸

 

「ありがとうジャックちゃん!よーしよしよし!」

 

 

「えへへ・・・」

 

 

「容易き仕事であった。――またいつでも声をかけられよ」

 

「・・・それじゃあ、また」

 

 

「またね、おかあさん」

 

役目を終え、帰還していくアサシンたち

 

 

「よいかマスター。このような僻地に関しては、長々と時間をかけるより速攻をかけた方がよい場合もある。その場合マシュめの守護をあてにし迅速に片を付けよ。場合に依れば、宝具の使用も躊躇わぬ事だ。よいな?」

 

「はいっ!的確に、迅速にだね!」

 

「む、むぅっ。何が何やらさっぱりな内に終わったのが残念だが・・・道は開けたのだな?では、進むぞ!宝は近そうだ!」

 

 

『あははっ、まるきり引率の先生だね』

 

「仕方あるまい。それを教える係は仕事に取り掛かっているのだからな」

 

――オルガマリー。あの冷静かつ、ちょっとハプニングに弱いオペレートが無いことに寂しさを覚える。――彼女も、奮闘しているのだろう

 

 

「ならば代わりに教授してやるも良かろうさ。――そら。果ては見えたぞ」

 

 

「よーし!レッツゴー!」

 

 

「・・・随分と大人しいではないか、花嫁擬き」

 

『・・・』

 

「・・・花嫁擬き?」

 

『スヤァ・・・』

 

 

「・・・ジャンヌ。麻婆を手配せよ」

 

『はい!』

 

 

 

 

 

「グォアァアアアァアァ!!!」

 

 

 

洞窟の最奥。その果てにあったのは財宝――ではなく、獅子、山羊、蛇を掛け合わせたおぞましき獣

 

 

『キメラだ!魔術で造られたモノじゃない、神話の幻獣がそこにいる!!』

 

――あぁ、この時代にいないとっておきってそういう・・・

 

「えっ!?お宝は!?」

 

「目の前にあるではないか」

 

「これ!?お宝ってこれ!?」

 

「理解したか?これが女神よ。美しさで人を惑わし。死地に勇者を送り込み、宝と称してけしかける」

 

『もしかして、君がここに来たのって!』

 

 

「それ以外にあるまい。――要するに」

 

「余達は!」

 

「私達!」

 

「「――騙された――――!?」」

 

 

「ガァアァアァアァアァア!!!」

 

 

キメラが咆哮し、迫り来る――!!

 

 

「うわぁぁあ来たぁ!!」

 

「先輩!私の後ろに!!」

 

 

キメラの突進をマシュが寸でのところで防ぐ!

 

「ぐぅううっ!!」

 

「なるほど――あの女神に言わなければならぬことが出来たな!」

 

 

原初の火を振るい、キメラを吹き飛ばす!

 

 

「――女神の性根を教授するつもりで来てみれば、手の込んだ歓待よな・・・」

 

 

「ギル!いいんだよね!?あれ倒していいんだよね!?」

 

「無論だ。――よし、よい手土産を思い付いたぞ」

 

ニヤリ、と口を歪ませる

 

「マスター。注文だ。アレはなるべく小綺麗に倒せ」

 

「小綺麗に!?」

 

「女神の賜り物だ。丁重に扱ってやらねばな――そら、心当たりはあろうよ」

 

 

「心当たり――心・・・――心臓!?」

 

『なんの連想ゲームだい!?』

 

 

心臓、――なるほど。それなら、彼しかいない!

 

「おっけ、解った!!――来て!!」

 

光輝く右手、現れしは――

 

 

「『クー・フーリン』!!」

 

 

「――あいよ!」

 

疾風のごとき、速さで闇を切り裂く蒼き槍兵――!

 

「!?」

「いい面構えじゃねぇか――穿ち甲斐があるぜ!」

 

紅き槍を反転させ、一息に突き刺す!

 

「まずは一つッ!!」

 

突き刺された山羊の頭が悶え狂い、鮮血が吹き出す!

 

「嬢ちゃん!その二人から離れんじゃねぇぞ!」

 

「は、はい!」

 

――懐かしい。右も左もわからなかった頃、自分達を導いてくれたのは――

 

「ガァアァアァアァアァア!!」

 

キメラが吠え猛り、爪を振りかざしクー・フーリンに迫る!

 

「――次いで二つッ!!」

 

槍を振り回しいなし薙ぎ払い、返す一撃で蛇の尻尾を切り落とす!

 

「グォアァアアアァアァ!!?」

 

激痛と苦痛に悶え、大きく体勢を崩すキメラ

 

 

――因果の槍は心を穿つ

 

「締めの三つ――」

 

――放ちし呪いは逆しまとなりて

 

 

「食らっていきな!!『刺し穿つ』――」

 

――過たず、臓を抉り抜く――!!

 

 

「――『死棘の槍』――!!」

 

真紅、閃光となりて獣を屠る――!!

 

 

 

 

「――見た目はえげつねぇが、中身までは鍛えられなかったか」

 

――槍の穂先にくくられしは、キメラの心臓

 

 

「――その心臓、確かに貰い受けた」

 

倒れ伏す、キメラの亡骸

 

 

「勝負あったな。――どうだい。俺の槍は英霊随一だろ?」

 

快活に笑うクー・フーリン

 

「やった!やった!!」

 

 

「――随分と、珍しい光景を見たものよ。よもや貴様の槍が当たるとはな」

 

「抜かしやがれ!本来はバスバスあたんだよ!」

 

 

――女神の気まぐれの洞窟の、攻略は終わった




「うっ、ぐ――こいつは、かれぇ、な。涙まで出てきやがった・・・――っ、ふぅうぅうぅうぅう――」

「だ、大丈夫ですか?」


「いや――ごちそうさん。うまかったぜ。そんで安心した。エミヤの兄ちゃんの教えの賜物か。こいつはちゃんと『食える』品だ」

「はい!」

「――今度から、辛めのやつをつくったらまずは俺に食わせてくれや。俺は頑丈でな。俺が食えなかったら、そいつは失敗作だと思ってくれ」

「味見役ですね!よろしくお願いします!」


「――これで、ちっとは被害者が減ればいいんだが。しかし麻婆か。ビールに合うかね・・・?」



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