人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「・・・」

キリシュタリア用礼装開発案

「ストリーム・オロチ」

キリシュタリア専用戦闘アーマー型礼装。
オーマジオウライドウォッチから抽出した歴史である「仮面ライダークローズマグマ」とウルトラマンベリアルから提供された「ミズノエリュウ怪獣カプセル」更にウルトラマンアグルの能力を掛け合わせてベース能力を形成する。

オルガマリー「ここはリッカに各人にお願いしてもらうしかないわね・・・」


クローズマグマの格闘能力での身体能力向上と、ミズノエリュウの要素によって巨大化しての戦闘が可能。
しかし、この礼装の真価はクローズマグマとミズノエリュウの組み合わせによる意図的な八岐大蛇の再現と、ウルトラマンアグルによってもたらされる「抑止力そのものへの代用」にこそ存在する

「コンセプトは、ここが重要ね」

古来より「龍」とは河川を象徴する概念であり、八岐大蛇もまた川の概念を持っている。クローズマグマの溶岩を操る能力も、出雲の製鉄と刀鍛冶の概念を持ち、刀鍛冶には川が必要であるためにオロチもまた溶岩を操ることも可能である。
即ち、それが意味するのは藤丸龍華、「ビーストIF」に対する対抗としての在り方である。
ビーストIFがカルデアの敵となった時オロチがビーストIFへの対抗となり、オロチが敵となるならばビーストIFがオロチへの対抗となる。
その属性が故に両者は相克関係にあり、現状カルデアの最強戦力であるリッカへの、カルデア所属のサーヴァントのトップクラス達を除けばほぼ唯一の対抗策として機能する。サーヴァントはあくまでもサーヴァントである以上、現界を維持できなければ戦う事は出来ないという懸念に対する代案とも言える。

「・・・これは一人じゃ無理ね。師匠に声をかけなくちゃ・・・」

(これくらいは使いこなしてもらわなくちゃ困るわよ、キリシュタリア・・・)


相反を、超克に変える為に

「やったじゃないか、愛弟子!再びまたAチームの皆にコンタクトを取った上に再招集に取り組むとは!ようやく君の中で、踏ん切りがついたと言った所かな?」

 

「えぇ。どうせ困難に挑むなら、全員でやったほうがいいと思いまして。その為にも、これから色々忙しくなりますよ。師匠」

 

無事に交渉を経て、キリシュタリア、オフェリア、そしてペペロンチーノとの再協力体勢を確保したオルガマリー。まずはアーネンエルベからとんぼ返りし、楽園のダ・ヴィンチちゃんの所へと足を運ぶ。迎え入れる様々な準備・・・特にキリシュタリアにおいての専用の武装の開発に着手するための手伝いを行ってもらうためである。

 

「もう既に、彼等の楽園での役割は決めてある・・・そんな感じかい?愛弟子?」

 

「そういう事です。ただ再び招くだけでは進歩と進展がないと思うので・・・色々、特にキリシュタリアには特命を受けてもらうつもりです」

 

オフェリアはマネージャー、そしてペペロンチーノはムードメーカー。カドックはチーフになり、ぐっちゃんはコメディアン。図らずとも色んな役割を楽園にて請け負う事となったAチーム。そういった役割も、キリシュタリアに受け持って貰いたい。対等な仲間としての一つのオーダーを与えたいと、オルガマリーは考え、チェンジリング以来の新規礼装の着手に励んでいるのだ。

 

「ちなみに彼、どんな役職がいいと言ったんだい?まさか所長になりたいだなんて言ってないだろうね?キリシュタリアに限って」

 

「惜しいですね。・・・私の秘書に立候補すると笑顔で言ってきましたよ。申し出は嬉しいのですが、私の身が持ちません」

 

あっはっはっは!と膝を叩いて笑うダ・ヴィンチ。久しく会っていない上にやや対応を巡って軋轢が生まれているかと思っていたが、それは全くの杞憂だったらしい。それどころかずっとずっと愉快に面白い事になっているようだ。

 

「父は彼を弟子に取り、そして君は彼を秘書にする!なんて密接な関係だろう、ちょっと面白すぎないかなソレ!」

 

「笑い事じゃないですよ・・・実際本気なのかどうなのか。まぁどっちみち、彼は敵に回したくないので前向きには考えますけど」

 

未だキリシュタリアの実力は、底を見せていない。Aチーム時代のデータは、ぐっちゃんを見れば全く役に立たないことが一目瞭然だ。だからこそ、先入観は捨てて色眼鏡を外し、彼に相応しい立場と問題を渡さなくてはならない。その為に今、オルガマリーは準備を進めているのだ。

 

「これは・・・流水、水属性に特化した礼装かい?リッカ君の纏う鎧に良く似ているけれど、どういったコンセプトなのかな?」

 

「・・・──私達への抑止力、或いはカウンター。もし私達がリッカを追い詰めてしまい、彼女を再び人類悪に覚醒させてしまった。或いはリッカが完全に行動不能、治療に踏み切るレベルの傷を負ってしまった場合に使用する、キリシュタリア専用礼装・・・『サーヴァントを不要とする戦闘力を発揮する、単独作戦遂行用礼装』といったところでしょうか」

 

そう、リッカは確かに強大であり楽園の中心たるマスターと言っていい。世界を救う難儀な戦いに、真っ正面から挑む力と強さを備えた唯一無二のマスターだ。ゴルドルフが言うには、『整備もパーツもエンジンも何処にも替えが利かないスペシャルマシン』だという。全く同感であり、彼女以上の楽園のメインマスターは有り得ないと確信している。

 

だが、『何処にも替えが利かない』という事は、裏を返せば『何かあった場合何も対応が叶わない』という事だ。並ぶもののない、誰にも頼らない領域というものは強くあれど無敵ではない。彼女だって人間だ。疲れもするし精神的に疲弊もする。弱音だってようやく吐けるようになった。万が一彼女が『ちかれた!』と言った場合、『あなたしかいないのよ』としか言えないようでは所長として、友達として失格である。溜まりに溜まった疲労や不満が、リッカの精神バランスを崩さないとも言い切れない。あらゆる可能性から、物事は見るべきであり。あり得ないということはあり得ないのだ。

 

『リッカを越えるマスター』はいなくてもいい、しかし『リッカの孤高と使命を共有できる対等な存在』は必要だとオルガマリーは考える。そしてそれは、キリシュタリアにしかきっと出来ない事だ。規格外の突然変異の極致がリッカであるのなら、正規品にして正統派の頂点がキリシュタリア。──この二人が、本当の意味で互いを信頼できたのならば、この楽園に最早乗り越えられない障害は無いと信じているのだ。故に、彼女の手掛ける礼装はリッカの泥と対極に位置する『水』。リッカの対話から生まれる絆の対極である『魔術師』個人として戦える武装を開発しているのだ。その想定している相手は誰あろう、リッカ本人である。

 

 

「キリシュタリアにはリッカの対極のマスターとして楽園に籍を置いて貰いたいと考えています。彼女が万が一、何もかもが嫌になるくらい残酷な現実に打ちのめされてしまった時。或いはいつか、日常に戻ると決めた時。或いは──」

 

或いは、彼女がこの世界に絶望してしまった時。彼女の離反にて、楽園の足場が総崩れに陥らないように。キリシュタリアには今の極限まで強くなったリッカのカウンターセーフティーとしての役割を持っていて欲しいのだ。絆と友情を心から信じている。だけどそれが、リッカの重荷にならないように。

 

「・・・私も酷いですね。リッカの負担を減らしたい気持ちは偽りが無いのに、結果的にリッカのメタを張るような役割を用意しようとしている。人の性根は、そう簡単には変わらないのですね」

 

「いいや、愛弟子。君は何処までも友人思いのいいヤツだと私は思うぜ?」

 

オルガマリーの自重を、さらりとダ・ヴィンチちゃんは受け流す。其処には、オルガマリーの祈りがちゃんと籠っていると彼は言うのだ。

 

「君が願っているのは、暴走したリッカ君をキリシュタリアが討ち果たす未来じゃない。リッカ君とキリシュタリアが共に困難に挑む未来だろ?じゃなきゃ、泥に対して水なんて洒落たものは作らないさ。だって、水も泥も同じ属性な事に変わりはないだろ?」

 

「・・・まぁ、確かに・・・」

 

「本当にメタを張りたいなら雷とか光でも良かった筈だ。でも君は、相乗効果が望める水属性を選んだ。──芸術は作者の魂を表現するものだ。楽園でどういった関係になれたら嬉しいのかなんて、それを見たらまるっとお見通しさ。特に、師匠の私の手にかかればね♪」

 

そう。所長として、リッカの独走を抑える機能を作り、キリシュタリアに任せようとしたのは事実だ。だが、オルガマリー本人の意志としては違う。

 

「──成る程。私はキリシュタリアにも、リッカとは仲良くなってもらいたいと願っていたのね・・・」

 

相反するものが、互いを排除するためではなく力を合わせる事が出来たなら。カルデアの全力を背負い立つリッカと、千年の歴史を持つヴォーダイムの力が合わさり、一緒に戦う未来が生まれたなら。

 

それこそ・・・自分が目指すべき『完全無欠』であるのだろう。師匠に指摘され、自分でも気付かない本心を自覚したオルガマリーは再び笑みを浮かべる。そう、考え込むより、誰かに話を聞いて貰った方がいい結果は出るのである。

 

「そうですね。そうでした、彼女を止める役割を誰かに渡そうとしていたのが間違いでした。親友の生殺与奪の権を他人に委ねるなんてとんでもない。もしもの時にリッカを止められるのは・・・」

 

「そう、きっと君だけだぜ。オルガマリー。新宿みたいに、おもいっきりやってあげなよ?」

 

「・・・──はい!」

 

そうして、魔術的な入力と創作を続けるオルガマリーとダ・ヴィンチちゃん。これから迎える未来を、より良くする為に。楽園の裏方にして中枢の二人は切磋琢磨を続けるのだった──




徹夜の後、早朝

キリシュタリア『成る程。それは確かに責任重大だ。そちらの頂点のマスターに並び立て、と』

オルガマリー「賢明なあなたなら、醜い功名心や嫉妬などは無縁でしょう。キリシュタリア・ヴォーダイムという存在を最大限活かす配置は、其処しか無いと考えました」

『いざとなれば一騎討ちで戦う、か・・・──君は本当に友情に篤くなったようだ。これ程まで気を赦せる存在なのだね、リッカ君といつ存在は』

「はい。私の・・・大事な親友ですから」

『よろしい。それは魔術師が不要と切り捨てる人間としての美徳だ。大事に懐いておくといい。では早速礼装のトレーニングに入る。転送してくれるかな?』

「え、いきなりですか?」

『カルデアについてから特訓では遅い。カドックもチーフになったと聞く。中途入社した社員がやる気を見せずどうする?カルデアに脚を運ぶ時には、君の秘書として有能になっていることを期待してくれ』

「まだ諦めて無かったんですか秘書・・・!」

『人の上に立つのは飽きた。君を支える方が楽しそうだからね。それではまた。今度は私も、御茶会に誘ってくれ』

「あっ・・・!・・・本当、臨死体験は人を変えるわね、キリシュタリア・・・」

(・・・礼装を送ったら、一眠りしましょうか。人間は眠るものだしね)

そしてオルガマリーは、仮眠室にて眠りに付く。

(・・・詮のないことだけど。私がマスターであったなら・・・リッカやマシュをもっとサポートできたかしら・・・)

そんな彼女なりの、マスター適性の無いが故の小さな悩みをぼんやりと思いながら。意識をゆっくりと手放し、オルガマリーは寝息を立て──

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