ギル「邪魔をするぞ、魔導師」
ラヴィニア「あ・・・王様・・・!」
「そのままでよい。子にまで王への礼儀は求めぬ。お前に一つ、訪ねたい事があったのだ」
「訪ねたい、こと・・・?」
「うむ。心して答えよ。セイレムにて──」
「さて・・・今さら目をそらし逃げおおせようとしても結果は変わるまい。よく考えたならば、そもそもヤツの事で頭を悩ませる事自体が不健康と不効率の極みと思い至った。さっさと終わらせるとするか」
召喚の際とは思えぬほどの沈んだトーン。己が裁定を待つがごとき眼差し。出来れば全てを終わらせ中断しさっさと部屋に戻りたいと言う本音をぐっと堪え王が声をかける。ここまで露骨にしてローテンションならば王が誰の事を口にしているかなど愚者でも察するだろう。いよいよ、イシュタル女神を召喚する腹積もりを決めたのである。脚を組み頬杖をつき、深く深く溜め息を吐く王の姿に、深き苦悩と嘆きを垣間見た職員達は安易な元気付けや気遣いの言葉を無くしてしまう程である。嫌なら召喚しなければいい。そういった逃げ道は、自分自身の旅路が塞いでいるわけで。
『覚悟をお決めになさってください。イシュタル女神はきっと恐らく楽園に新しい風、おもしろ・・・いえ、全く予想もつかない試練を持ち込み財の皆様をより高みに導いてくださるでしょう』
「ここぞとばかりに推しおって・・・ありとあらゆるヤツの嫌がらせや癇癪に我を初めとしたウルクの民はオリンピック感覚で滅びの運命に直面して来たのだ。何度メソポタミアの河が干上がり作物は枯れ、家畜は死に宝石は巻き上げられてきたと心得る。ヤツの行う善行など、全て枕詞に『結果的に』がつくものばかりよ」
ウルクを襲撃された事幾万回。滅亡したこと数百回。立ち直った事数千回。女神討伐や神殺しなど飽き飽きしたと吐き捨てるくらいにはイシュタルに振り回されてきた王。沈痛なる姿にそっとエアがプレシャス飴を献上し労る。それを口に運び、覚悟を決めて顔を上げる。
「だがまぁ良い。『イナンナ』を喚ぶよりマシと考えれば済む話よな。逆に考えれば、あれほど愉快で貧相なイシュタルを捕獲しておかねば、より悪質かつ本来の残虐な女神が喚ばれかねん。そちらの方が面倒と言うものだ」
「イナンナ・・・?」
「イシュタルの古い名だよ、リッカ。イシュタルという呼び名は案外新しいものでね。僕達の時代、自由自在な害悪だった頃には天の女主人・・・イナンナとして振る舞っていたのさ。目障りな事にね」
損切り、ロスカット概念として今の縁にて生まれたイシュタルをさっさと招いておき最悪の事態を防ぐ事を試みる。下手をすれば全盛期にまで自分自身で力を蓄え強引に楽園を破壊しながら襲撃しかねない嵐がイシュタルなので、鎮圧するに容易な内に確保しておくのは決して悪い選択ではない。幸い、依代の父親とはかつて共に(笑)戦った(爆)縁があるので恐らく問題は無いだろう。
「正直このまま召喚システムが爆発しても構わんが・・・」
「いや構うよ!?これから僕らが挑む困難的に、戦力はあればあるほどいいからね。契約サーヴァントを絶やしちゃいけないと思うな、ボクは」
「解っている。さて、こうと決めたならば迷うは愚か。王に二言は無きものよ。──ほんっっっっっっとに苦渋の決断だが!我が楽園に参ずるがいい!」
そうして回り出す召喚サークル。もう結果は分かりきっているのでぼんやりと虚空を見つめる御機嫌王。笑いを堪えているニャルに心中お察しする職員。やがて──
「──ふふ、ふふふ・・・!あーっはっはっはっ!どうやら本格的に年貢の納め時のようねギルガメッシュ!えぇ、漸くよ漸く!ウルクの大冒険からどれ程時間が経っていると思ってるのかしら!セイレムの活劇を経て!ようやくやって来たわ!女神!真なるゴージャス☆イシュタルがね!!」
【はははははははははははははは!!!】
「誰よ笑うのは!?え、何アンタなんで此処にいるの!?メインチャンネルアカウントBANされてたじゃない!?」
そんなこんなでやって来てしまったイシュタル。楽園の召喚を拒否されてきたが故かテンション高めのイシュタルとしてけたたまし・・・かしましくやって来たのである。もうこの状況が面白すぎて笑いだしてしまうニャルに困惑する中、ギルはそっと手紙を手に取った。
「え、何よ金ぴかその手紙?何する気?」
「貴様と語る舌など持たぬ故、事務的に祝辞を述べてやる。心して聞くがいい、シドゥリとエアが考えた祝いの言葉をな」
額に青筋を浮かべながら、ギルは朗読を開始する。なんかもう色々面倒くさくなったので、口を開くことさえ信頼できる者達に任せたのだ。そして生まれた祝辞がこちらである。
「『おぉイシュタル神、綺麗で愉快な両津勘吉の女体化よ。やらかしと、きまぐれで出来ているイシュタル神。優しさは何処に?まぁなんかいろいろやらかすけれど、盛大な自爆ぶりにて皆ニッコリ。身を張って皆を笑顔にできるよすごいぞイシュタルカッコいい。差し引き最終リザルトでいつの間にかプラスになってるイシュタル女神が楽園に。あぁなんと喜ばしい。招くメリット特に無い。その奔放ぶりが、どうか楽園の皆の恵みに繋がるように祈りましょう。すごいぞイシュタルカッコいい』──以上だ!!!」
「待ちなさいそれどことどこが誰担当か詳しく知りたいんだけど!?称えてるの!?敬ってるの!?」
──入魂の作詩でした・・・(ムフ)
『黙秘権を行使します。どうかその威光を我等にお与えくださいませ、イシュタル女神』
「なんかいい感じに纏められた・・・!まぁいいわ、招かれた以上はやってあげる。大船、マアンナに乗ったつもりで任せなさい!ね?リッカ!」
「グガランナを後ろからは勘弁してください!」
「それはもう赦してくれてもいいんじゃない!?」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ女神を見、一息ついた御機嫌王は玉座から立つ。少し、かなりらしくない事を述べたためどっと疲れたが為だ
「少し我は休む!ランダム召喚にセイバー召喚は三時間後だ!各々休息をとっておけ!以上だ!」
「どんだけ疲れたのよ!?」
「貴様の存在自体が得難きストレスだバカめ!歓迎の麻婆で腹を下すがいい!」
足取り荒く部屋を出る御機嫌王を見送る職員。ムニエルがニャルにそっと耳打ちする。
「よっぽど嫌だったんだな、王・・・あそこまで拒否るとかちょっと記憶にないし・・・」
【そうかな?確かに嫌かも知れないが、彼はとっくに解っているし覚悟を決め、招くのに異論は無かったと思うがね】
「?マジで?」
【嫌いなものは嫌いでも、色眼鏡は死んでも掛けないということさ。一度決めた決定を、やっぱ無しとはできないんだよ。ゴージャスはね】
それはそれとして面白いので、ニャルは対イシュタルプログラムを起動させる準備を行う。そう、彼の言葉は間違っていない。御機嫌王が向かったのはスイーツじゃんぬであり・・・
「お、おうさま。どうだったかしら。イシュタリンは、来てくれたかしら」
「──問題無い。案ずるな、お前の自慢の召し使いは招かれた。縁は出来ているのだ、扱い方はお前が決めるがいい」
「そ、そう・・・良かった・・・色々、御世話になったから・・・来てほしかったの」
「・・・、フン。いっそ本当に邪神ならば、問答無用で始末したものを」
気まぐれだとしても、彼女は確かに善なる女神。こうして財に恩義を託したならば、王として報いねば王の名折れ。──セイレムでの働きをラヴィニアから聞いた時から、招くのは半ば決めていた事なのである。
──ギル、スペシャルゴージャスモンブランをいただきましょうか?
それを知っていたエアも、異論を唱えることは無かった。自分という異物も受け入れた王なのだ、遥か昔からの付き合いの彼女を受け入れられない筈は無いと確信していたのだから。
《フッ、ヤケ食いには快適よな。よし!霊基に支障が出ぬ範囲で食らい尽くすぞ、エア!珍獣!》
(仕方ない、今回ばかりは付き合ってやるよ!エルも呼んでこよう!)
ヒロインX、アビゲイルも招き・・・王は傷心をおやつにて癒していきましたとさ。
NG召喚 ウルトラマンベリアル
【此処が楽園・・・ウルトラマンゼロが認めたマスターとやらがいる場所か・・・】
ニャル【あ、来たんだベリアル。トレギアに任せて隠居したんじゃなかったのか?】
【ゼロに認められたという大層な人間・・・俺様のリハビリの相手としちゃちょうどいい。そいつは何処にいる?】
リッカ「はい!ベリアル様!リッカです!」
【小娘じゃねぇか・・・確かお前は対話が得意なんだってな。俺様に試してみろ・・・】
数分後
ベリアル【お前・・・苦労してるんだな・・・(ズズッ)俺の息子と歳もそう変わらねぇのに、世界を背負って戦い抜いたのか・・・】
リッカ「皆がいてくれたから。運命を変えられたのは、楽園の皆が・・・仲間がいてくれたからだよ」
【そうか・・・親父もお袋からも酷い扱い受けたってのに、よくこんな立派に育ちやがって・・・】
「アウチッ!?」
【あぁすまん。・・・そうだな・・・俺様もウルトラマンの端くれだ。何か世界を救った褒美くらいはくれてやらなくちゃな】
「えっ!?」
【アトロシアスって俺様リスペクトだろ?じゃあくれてやる。本家の力ってヤツをな】
『ベリアルアトロシアスカプセル』
「ベリアル閣下・・・!」
【お前なら大丈夫だろ。ゼロカプセルなんかより使え、めっちゃ使え。・・・帰る】
「もう!?」
【気分が変わっちまった。また出直す。・・・リッカよ】
「は、はい」
【寂しくなったら・・・俺様のこと、父ちゃんって呼んでもいいぞ】
「べ・・・ベリアル父ちゃん──!!」
『ベリアル、涙こらえて退去』
ニャル【息子の事、思い出した?】
【アイツはキングに認められた・・・なら俺様も認めるヤツがいたっていいだろ】
【まぁね、なんにせよ・・・相性のいい力が増えて、何よりだとも】
【お前のチャンネル止まってんぞ、そういえば】
【新しくアカウント作んなきゃなぁ・・・】
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