人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「なんでわざわざそんなへったくそな旗を持ってったのよ!また作り直せばいいじゃない!!」

「ダメです!!上手くなった旗はたくさん作れても、この旗はこれしかないのです!私はこれがお気に入りなんです!」

「なんでよりにもよって――!」

「これは貴女が私に字を書いてみなさいと言って、私が初めて書いて作った思い出の品じゃないですか!」

「――・・・」


――旗を?あぁ、どうせ作るんなら字でも書いてみたら?きったない字だろうけどね

――そうですね!かるであの、みなさん・・・完成したら、貴女に真っ先に見せますから!

――ハッ、精々嗤ってやるわ


「汚くても、これは私が手掛けた旗!これを捨てるなんてとんでもない!捨てるくらいなら――主よ、この身を――」

「委ねんな――!!!」


見つけたぞっ!

「唸りをあげろ、ギルギルマシン!朝抜けの疾走だ、慣れたとしても油断するなよ!しっかり掴まれ!」

 

 

 

ローマの荒野、広き土地を黄金の輝きを放つマシンが爆走していく

 

 

 

「やっほ――――――――!!」

 

「な、慣れたとはいえやっぱり速いです英雄王――!!」

 

 

「ふはは、言ったであろう!兵は拙速を尊ぶとな!いや、我は王ではあるが本質は変わらん!」

 

 

「ヴィマーナも優雅でいいけどやっぱりギルギルマシンの風を切る感じが好き――――!!」

 

「わ、私はヴィマーナのほうが穏やかで――!」

 

「ならば帰りはヴィマーナだ!行きは疾走、帰りは優雅!ゴージャスツーリングはそうでなくてはな!」

 

アクセルをフルスロットルで決め込み、ギルギルマシンは総てを置き去り加速する!

 

 

「悪路を踏破するスパイク処理は果たしている!行くぞ!エトナ火山はすぐそこだ――!」

 

――なぜのっけからエトナ火山を目指し、爆走しているかと言うと

 

 

 

 

『エトナ火山に霊脈が感知された。物資や召喚をスムーズに行う為に、是非向かってほしいんだけど・・・』

 

ロマンの言うとおり、火山の位置にサークルを設置する必要ができたので

 

 

「だそうだネロ。野暮用で外すぞ」

「許す!行ってくるがよい!」

 

 

ネロに事情を話し、ツーカー返答であっさりと行進決まったのだ

 

 

『な、なんか仲良くなってる・・・』

 

『余が寝ている間に如何な模様があったのだ!?』

 

「秘密だ。さぁ起きよ!マシュにマスター!出立だ!」

 

 

朝抜けのツーリングはやはりバイク、ということでギルギルマシンを選択。慌ただしく出立したのであった

 

 

 

唸りを上げるギルギルマシンにより、数十分程でエトナ火山の麓にたどり着く

 

「そら、ここでお前たちは降りよ。霊脈を滞りなく起動させ、務めを果たせ」

 

 

「?ギルは何処にいくの?」

 

「少し私用にて、山頂にな」

 

「山頂ですか!?・・・バイクでですか!?」

 

「それ以外の何で行くのだ。なに、少し仕込みをするだけよ。直ぐに終わる」

 

――そう、仕込みだ。この時代を必ず元に戻すと言う確信のもと行う仕込み

 

総てが終わった際に発動する、という点では、あまり意味がないものだが

 

「ロマン、サポートしてやれ。見失うなよ」

 

 

『任せてくれ!僕も仕事するぞぅ!』

 

「気を付けてね、ギル」

 

「先輩は私が護ります」

 

「うむ――ではな!王は独力にして鉄馬で山を登る!駆けよギルギルマシン!!」 

 

ドリフトターンにて旋回、山頂に向けてアクセルを回す!

 

「刮目せよイシュタル!貴様の逸話の御株を奪ってくれるわ――!!」

 

――二人とも、気を付けて

 

 

エーテルを撒き散らし、山を馬が駆け抜けていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「他愛のない。魔獣の一つもいないとは、なんの面白味もないではないか」

 

岩肌を蹴散らし、悪路を走破し、山を蹂躙し

 

噴煙撒き散らすエトナ火山の山頂に、手早くたどり着く

 

 

――高い。そして遠い

 

広がる世界が、遥かな景色が・・・眼下に広がっている

 

後ろには、大口を開けている火口

 

 

――落ちたり、とかは考えちゃいけない気がする

 

 

「さて、仕込みを手早く済ませるか」

 

 

黄金の波紋から、空の聖杯を取りだし

 

「そら」

 

火口に放り込む

 

遥かに下まで落ち、吸い込まれていく聖杯の受容器

 

「あれに中身が入るか、無駄に終わるか。さて、見物よな」

 

・・・どのみち、時代を直さなければ、あの火口に落ちた聖杯は手に入らない

 

あの器を再び手にするのは――総てが終わってからだ

 

――見えない未来への、確かな備蓄の為に

 

 

「――――」

 

向き直り、世界を真紅の瞳が見定める

 

 

「さて、我の宝を所持し粋がる無礼者を観てやるか」

 

 

視界が広がり、広がり、遥か遠くに在るものを捉える

 

 

やがて狭まり、狭まり。黄金の杯の在処を、器の眼が捉える

 

 

「――やはり貴様であったな。節穴の雑種め」

 

 

⬛⬛⬛に居を構え、聖杯を手にし玉座の近くにて侍る緑の服の男

 

「フラウロス、といったか。先の特異点の責を問われ神殿から追い出されたか?憐れなモノよ」

 

 

――あれが、自分の下すべき敵。その元凶

 

 

レフ・ライノール・・・その姿を、確かに捉えた

 

 

「盗人猛々しいとはまさにこの事。――汚れた手でわが財に触れた罪、余すことなく償ってもらうとしようではないか」

 

 

黄金の王が嘲笑う。杯を手にし、人類を裏切りし雑種へ向けて

 

 

「首を洗って待っておけよ?マスターとマシュめが我を貴様に相対させた瞬間が、貴様の処断の時だ」

 

――お前には、容赦も情けもかけはしない

 

「精々散り際で我を楽しませるのだな。――クッ、ははははは!ハーッハハハハハハハッ!!」

 

 

オルガマリーの受けた苦痛と絶望を、利子をつけて返させてもらう

 

 

――沸き上がるこの熱の、赴くままに

 

王の哄笑と無銘の決意が、火山の頂にて定められた

 

 

 

 

 

「・・・ん?」

 

 

聖杯を握りし男、レフ・ライノールが声を上げる

 

「――如何にした」

 

威厳ある声が響き渡る

 

「・・・いや、何もない。視線を感じたような気がしてね。――有り得るはずもない。我等の居を見抜くものなど」

 

右手に輝かせし聖杯を掲げる

 

「さぁ滅ぼせ、侵攻しろ、思うがままに蹂躙するがいい。奇跡は此処に、我等が使命の成就は確約されている」

 

「・・・・・・」

 

「そう――万能の願望器たる聖杯は、私が所持しているのだから!」

 

人類を裏切りしモノが、高らかに声を上げるのであった

 

「――ネロ。――我が子よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぞ。――何を疲れている」

 

 

「あ、はい!霊脈に群がっていたエネミーを倒していたので!」

 

「幽霊いっぱいだった。マルタさんが片っ端から蹴散らしたけど・・・」

 

――もちろん彼女は奮闘したのだろう。拳で

 

「アレの教義的に、幽霊など存在を認めまい。そらローマに戻るぞ。そろそろネロめの方針が定まろうさ」

 

『何故余が擬きでそちらが名前なのだ!贔屓か!?』

 

「多少は見所があっただけの話よ。ヴィマーナ、始動!乗れ!30分もせずたどり着こう!蜻蛉返りならぬヴィマーナ返りというヤツよな!ははははは!」

 

「なんか機嫌いいね、ギル!」

 

「愉快な道化を見つけたのでな!――ヴィマーナ、浮上!ローマに凱旋せよ!」

 

――人理に向き合う一行を乗せ、天を飛来せし玉座は駆けていった――




「さぁジャック、ナーサリー。おいで。服をプレゼントしよう」

「私とアタランテの合作よ?絶対に似合うわ」


「わぁい!」
「嬉しいわ、嬉しいわ嬉しいわ!」

「では早速着替えて――」
「じゃあ早速私が着替えさせて――」

「ん?」
「え?」

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