イシュタル「もー何よこの子!?ウインドウでっか!ただでさえ上から来る奴等からセイレムを護るので忙しいんだから邪魔しないでくれないかしら!?」
エルキドゥ『ほらほら頑張って~。僕なら五秒で終わるのに。遅いなぁ。なんで身体は軽そうなのにそんなにどんくさいのかな?スペック間違えてない?死ねば?』
イシュタル「腹立つ!めっっちゃ腹立つ!!見てなさいよ、これ終わったら次はあんたよ!」
『わぁい、引導が渡せるね。マアンナはエアにプレゼントしよう。君の死体は硫酸にでもつけておくね』
『ゾイガーはティガが一生懸命倒したのに、まさかいっぱいいるという展開が衝撃的で・・・!』
「うるさーい!!あぁもう、この怒りぜんっぶあいつらにぶつけてやるわこんちくしょーっ!!」
『かの邪神、ニャルラトホテプが遺したのは絶望ばかりではないニャル!こうしてこっそり、フェアネスな対抗手段も残しておいたニャル!エイボンの書に見出だされし存在、その試練を乗り越えし者にこの書を託すつもりだったニャル~!』
空中に無数の怪獣が飛来する中、最後の希望が集うラヴィニア宅にて愉快げに話す謎の存在。仕草は可愛いのだが顔の部分が黒く不気味な存在がそう告げたのだ。魔女として狂気に落ちたのがアビゲイルなら、深淵の知識を身に付け魔女を討ち果たす魔導師、エイボンが彼女であると。困惑しながらも、その妖精らしき存在が何者であるかを問いかけたならば彼はこう答えた。
『僕はニャル!ニャルラトホテプがいつか自分がデフォルメキャラになったらと密かに期待して作っていたマスコットニャル!エイボンの書と、銀の鍵を持ったまま七日目に辿り着いた持ち主を覚醒させるための手引きに選ばれたニャル!』
「わ、わ、わた、私が、エイボンに・・・!?む、無理よ、私には・・・あんな大魔導師になんて、そんな・・・」
エイボン。深淵と狂気の最中に数多無数の知恵と叡知を手に入れ、ラヴィニアが持つエイボンの書を記した大魔導師。そこには銀の鍵の制作方法すら描かれており、ラヴィニアはそれに従い銀の鍵を生成してきた。それは、決して容易にして簡単なる儀式ではない。想像を絶する負担があった。
『出来るニャル!ヨグと常ににらめっこしながら鍵を作るという儀式、言うなれば四六時中見つめられ続け囁かれるという苦行に耐えたラヴィニアならやれるニャルよ!』
常にヨグ=ソトースの前にてかの邪神と目を合わせ続けるに等しい恐怖。僅かでも目を逸らせば次の瞬間に自己を消失しているやもしれない難関そのものな試練を、ラヴィニアはやりきり銀の鍵を生成したのだ。その容易ならざる発狂して当たり前な試練を、友を罪の意識から救うという一心で。
『魔導書の力は凄いニャル!例えば本来の魔導書の写本の写本、パチモンのパチモンでさえA+のランクを持つ宝具であり、頭のおかしい倒錯殺人鬼をキャスターにだってできるニャル!今リッカに力を貸しているネクロノミコンがその証ニャル!』
「ジルかぁ・・・ていうかあれ写本だったんだ!?」
『知った口で恐ろしき事を教えるな!確かにそのエイボンの書は本物だ、本物であればこそそれが吸い上げる魂の量は尋常ではあるまい!』
そう、本来の魔導書と契約が叶ったならばそれだけでグランドキャスターと呼ばれても相違無い程の力を手に入れられるだろう。しかし代償もまた大きい。アル=アジフ、ネクロノミコンは当代の主に会うまで数多の契約者の魔力と魂を吸い上げ持ち主を結果的に殺しながら戦ってきたのだ。本当にエイボンの書であるならば、ラヴィニアも魂を吸い上げられるやもしれない。アルは否を掲げる。危険すぎると。だが・・・
「いや。それの対策は既にこのセイレムに為されていたよ。何処までも緻密に伏線を張る邪神だ、全く」
「!カーターおじさん・・・」
扉を開け、現れたのはアビゲイル・ウィリアムズの叔父、ランドルフ・カーターであった。先日までの寡黙な雰囲気は、今はどういうわけかぐっと和らいでいる。そして彼は、肩に乗る猫と共に情報を開示した。
「突然にすまない、諸君。私はランドルフ・カーター。様々な時空を渡り歩き旅をする放浪者だ。今回は邪神、ニャルラトホテプが計画するという恐ろしき計画を阻止するために先んじてやって来たのだが・・・」
【お前はつまらん】と一蹴され、力と意志の大半を奪われアビゲイルの叔父という役割に嵌め込まれたという。彼からしてみれば、ゲームを始める前に勝手にストーリーをリプレイされるようなものだ。不興をしこたま買ったが故に無力化された存在だという。
「今でも私の力は戻っていない。だが、私には心強い友がいる。その友の導きにて君達は見つけた筈だ。かの邪神が回収した、『魔神の欠片』を」
「あ!そういえば地下牢で拾いましたね!あのカラスの羽根!」
XX、そしてアルが拾い上げた魔神の欠片を取り出すと、カーターはそれをエイボンと銀の鍵へと取り込ませた。純粋にして高次の精神生命体を構築していた魔神の肉体を、莫大な魔力ソースとして使用したのだ。
「ここではない別の世界、かの魔神は救いを外なる世界へと求めた。そして偽りのセイレムを作る中で、アビゲイルという少女に惹かれ、やがて彼女の救済を願い、果てた。──その欠片を、かつてあの娘を愛した者がいた証として私は持っていた。だが・・・」
「お父さんに没収され、ドロップアイテムとして使用されたと?」
「そうだ。直接在処を教えることは出来なかった。今の今まで、私は無力なアビゲイルの叔父でしか無かったのだ。だが、我が友は不思議な事に制約を受けなかった」
だから、友たる猫を使役し在処を示させたという。これはきっと、ラヴィニアがエイボンとして覚醒するために必要な素材として設置したのだろう。因縁浅からぬ相手すらも、流れるように物語のアドリブとしてかの邪神は組み込んだのだ。
「何処までが計算済みで何処までが想定外なんだろう・・・あの親バカ邪神怖くなってきたんだけど私!」
「私は気に入られなかったようだ。極めて淡々と処理されたよ。【叔父にでもなってろ】とね」
『当たり前ニャル。死ねニャル』
「・・・だが、それは私の望むところでもあった」
そうしてラヴィニアと目線を合わせ、ランドルフ・カーターは願いを告げた。かの娘の、救済を
「いいかね、ラヴィニア。この世に真の意味で絶対的な悪など無い。かの魔女裁判は、かの場所にいた全員が紡いだ狂気だった。彼女はそのきっかけであり、膨張させはしたが。何もかもが彼女の仕業ではない。我々大人にも責任と過失が多大にある。絞首台に送ることを決めたのは、我々なのだから」
「カーターおじさま・・・」
「彼女は優しさと残酷さを併せ持った少女だ。だが、彼女は必死に残酷さを否定し優しき少女として振る舞っていた。それが歪みを生み、極限に達し、魔女となってしまった。罪から目を背けた心が、己以外に罪を求めたのだ。全能の神が、悪の捌け口に悪魔を産み出したように」
どちらか、ではない。どちらも必要なのだ。彼女は罪にとらわれ、自分の一面を忌避し続けた。──彼女の心を再び取り戻すためにはここにいる全員と、何より・・・
「君の力が必要だ、ラヴィニア。加害者や部外者ではなく。対等の友として、彼女は君を選んだ。友とは同じ場に立つもの。かの深淵の魔女を、君のやり方で救うんだ」
選んだのだ。アビゲイルはラヴィニアを友として。それは、罪の意識や前世の出来事とは関係ない、彼女達が選んだ未来なのだ。
「どーんと行きなよ、ラヴィ!なんなら気の済むまで殴りあっちゃってもいいかも!鉄板だよ鉄板!」
「リッカさん・・・」
「此処まで来て何も役割が無いとかあり得ないでしょう!セイレムの護りは私とナイアに任せ、マスターと共にアビゲイルの元へ!」
「友達は、一生の宝物です。今なら解る・・・それを失ったら、どれ程後悔するのかを。だから・・・どうか、友を助けてあげてください」
「XX・・・ナイアさん・・・」
『──えぇい!その瞳を見れば、どれ程硬い決意かなど読み取れる!止めるのならば、始まる前から止めれなかった妾の落ち度だ!』
勝手にせよ!プイッと怒るアルを含めた全員が、ラヴィニアの決意と決断を待っていた。
「・・・私は・・・」
その時、ラヴィニアの脳裏によぎるはかつての約束。『自分が悪い子になったら、裁きに来てね』という願い。『あなただけの魔女裁判を行う』と受け止めた誓い。それは、それだけは・・・
「──なるわ。大魔導師エイボンになってみせる。これだけは、誰にも任せてはいけない事だもの」
それだけは裏切れない。何をしようとも見てみぬふりはしない。その強き意志と決断を行う人物を
、間近で何人も見てきたから。
「私達が、このセイレムと・・・アビーの心に。夜明けをもたらして見せるわ・・・!」
おどおどとした口調と、作られた存在の呪縛にここで訣別する。力強く顔を上げ、まっすぐカーターを見つめ返す。そして・・・
「──いい眼だ。アビゲイルは素敵な友人達を持ったな。・・・彼女の行方は、君が把握できる筈だ。エイボンになるということは──」
かの魔女と並び立つ。・・・アビゲイルの隣に立つことを意味するが故に。ラヴィニア・ウェイトリー。彼女もまた、ニャルラトホテプが招き入れたキーパーソンに他ならないのだ──
ニャルくん『覚悟は決めたニャルか?じゃあ行くニャル!此処に、エイボンは再び甦ったニャルー!』
瞬間、エイボンの書が開かれラヴィニアを無数のページが包み込んだ。本来の意味で、彼女を主として認めたが為だ。
ラヴィニア「あ、ぁ・・・」
そして、ラヴィニアは紙吹雪の中で新生を果たす。病気の証だったアルビノの肌は、降り積もる新雪がごとき肌に。眼は狂気を見ながらも閉じられなかったが故の虹色。紙吹雪が大魔導師が纏っていた厳かなローブとなりラヴィニアに纏われる。額の角らしき突起は引っ込み、うなじから突き出るように変換する。銀の鍵が剣となり、エイボンの書がラヴィニアの左手に収まる
ラヴィニア(フォーリナー)「・・・解る、解るわ。冒涜的な空間、闇・・・それら総てが、私の力になる。そして、それを産み出す元凶と・・・」
~ルルイエ神殿~
アビゲイル『!・・・まさか、そんな。あなたは・・・!』
~
ラヴィニア「──見えたわ。皆、アビゲイルの居場所が見えたの!あの神殿の最奥にいる・・・!」
リッカ「凄い!エイボンってそんなに凄い人だったんだ!じゃあ任せて!私が連れていくよ!」
ナイア「どうか、お気をつけて。このセイレムは私とXXにお任せを!」
XX「これは刑事の勘と言うヤツですが!おそらくアビゲイルをなんとかしたならこちらの勝ちになるはずですよ!だって、この空間を無理やり繋げているのはアビゲイルなのですから!」
カーター「・・・ラヴィニア」
ラヴィニア「はい。──あなたの娘は、私の友達は、必ず」
「・・・頼む」
ニャル『此処にピースは揃ったニャル!未知の理は、今知恵となり人類の手に収まったニャル!さぁ──反撃開始ニャルー!』
エイボン・・・その育成と覚醒は此処に結実する。そしてその成果は、如実にして直ちに現れた。
邪神ガタノゾーア【■■■■!!!】
?『ヘッ、随分と気持ち悪いアンモナイトがいたもんだぜ!お前のことだよ、ガタノゾーア!』
闇の空間を切り裂き、銀色の鎧を纏った巨人がルルイエ神殿の前に降り立つ。その姿は、かつてカルデアに現れた存在でありヒロインXXの知己である──
リッカ「ゼロ!?ウルトラマンゼロだー!!来てくれたんだぁ!!」
『おう!呼ばれたんだよ、地球がピンチだってな。──かつてウルトラマンティガが倒したとされる、邪神、ガタノゾーア・・・!』
【■■■■■■!!!!】
『相手にとって不足はねぇ!此処は任せろリッカ!お前らは友達を助けに行け!』
XX「一人で大丈夫なんですか、ゼロくん!?ビヨンドカプセルはリッカ君に・・・!」
{──いいえ。彼は一人では無いわ。私もいるから・・・きっと大丈夫}
瞬間、夜闇に紅き稲妻が走った。そして目映き輝きと共に、闇を切り裂く純白が羽ばたき──『ソレ』が君臨したのだ
リッカ「・・・ミラ、ルーツ・・・?」
{そう、私。私もNG召喚で呼ばれた者だから資格はあるの。マルドゥー君に頼まれたから、やんちゃなウルトラマン君を援護するわね}
ゼロ『あ、助かります・・・っしゃあ!今度こそぉおぅっ!?』
瞬間、更に大気が鳴動する。海が揺れ、そして圧倒的な咆哮がセイレムを、ルルイエを切り裂いた。
──其は人類の味方と言えずとも。人類の危機には必ず立ち上がる。何故ならば其は自然の怒りにして嘆き。そして人間もまた、天然自然の一部。それを覆す者があるならば・・・
怪獣王ゴジラ【───アンギャアァアァアァアァアァアァアァオ!!!】
それらを滅ぼす為に。それは何度でもやって来るのだ。人の願いを受けし・・・怪獣王ゴジラ。自然を滅ぼす邪神を、焼き尽くす為に。
ガタノゾーア【──■■■■■!!!!】
白き龍{変則的だけど、これなら行けるわね。リッカ、ラヴィニア。あなたたちは行って。此処はゼロくんと私と、ゴジラが引き受けるわ}
ゼロ『これだけ頼れる面子がいるんだ、負ける訳がねぇ!ちゃんと友達、迎えに行けよ!』
リッカ「・・・うん!ありがとう!二人とも!行こう!アル!ラヴィニア!」
アル『・・・これが、大魔導師の力か・・・!』
ラヴィニア「違うわ。・・・ここまでたくさんの縁を紡いできた、楽園の力よ」
【アンギャアァアァアァアァアァアァアァオ!!】
ガタノゾーア【───■■■■■!!!!】
{行くわよ、ゼロくん!ブラックホールが吹き荒れるのよね?}
『全部言わないでくれって!あーっと・・・俺達のビッグバンは!もう止められないぜッ!セエェエァッ!!』
ぶつかり合う光と闇の大決戦。ルルイエへと飛翔するリッカとラヴィニア、アル。──そして。
XX「インスマス、グール、ミ=ゴ・・・全員集合ですね、このセイレムに!」
ナイア「上等です。ただの一匹も通しま──、ッ!?」
人類の歴史が滅ぶと言うことは、【彼】が護り続けた歴史が途絶えるという事。50年もの長き間、その『歴史』を守り続けた【魔王】が、それを認める筈もなかった。
【──継承は終わり、私は消え行くのみであったが。まだ、平成の時代にてやるべきことが残っているようだ】
ナイア「・・・あ、あなたは・・・?」
──それは、哀しき墓守。自らが奪った歴史と、『平成』という時代を護り続けた、最後の仮面ライダー。
【私の名か。──もう、誰にも名乗る事は無いと思っていたが。こうして私は招かれた。ならば・・・答えるとしよう】
そう、彼こそは──20人、最後の仮面ライダー。平成の危機に、現れた【魔王】。
<祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!!>
【私は・・・最高、最善の。魔王】
<オーマ!ジォオォウ!!!>
仮面ライダーの縁を辿り、逢魔ヶ時に現れし平成の歴史そのものが・・・蠢く闇に、名乗りを上げた。
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