人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「いいの?アヴェンジャー・・・あなたの人生、劇にしちゃっても」 

アヴェンジャー「構わん。質の悪い小説家が面白おかしく囃し立てたものより、お前の考案した劇であると言うならば溜飲も下がる。路銀に迷ったならば、ペンにて記して出版社にでも叩き売るがいい」

「そんな事しないって!でも、もしやるなら文はオルガマリーに頼んでみようかな?ラノベみたいな感じでさ!」

オルガマリー(えっ!?)

カドック「良かったな、リッカ。歴史に名を残せるぞ。それより・・・これは、リクエストなんだよな?」

「う、うん。カーターさんの・・・」

アヴェンジャー「気付いているか?我が人生は1800年代のもの。そしてこのセイレムは1640年代・・・リクエストなど叶う筈があるまい。驚くべき事に、誰も不思議には思っていないようだが」

リッカ「・・・言われてみれば、確かに・・・!」

カドック「我がいるとやや不都合がある、と言って王はハワイに行った。・・・気をつけろよ、リッカ。カーターは恐らく、ただの一般人じゃない」

リッカ「・・・解った。XXとアルに、あんぱんを支給するね!」





昼 劇演目──モンテ・クリスト伯 フェルナン・モンデゴ──

復讐を決意し、財宝を手にした【モンテ・クリスト】の名を名乗りしダンテスは、数多の虐げられていた奴隷達を買い取り、クリスト島を根城にしていた海賊や山賊を従え、力をじっくりと蓄えてゆきました。全ては入念に、必ずや復讐を完遂するために・・・

 

エデ(演・アナスタシア)「さぁ、クリスト伯爵。参りましょう、私はどこであろうと、どんな事が待っていようと。あなたと運命を共にする覚悟です」

 

中でも、軍人時代のフェルナンの裏切りにより父を殺され、奴隷に貶められていたエデなる娘は、これよりのダンテスを影に日向に支えていく心強き相手となります。彼女をまた、彼はどう思っているのか・・・どうぞ、この一座のみの物語の結末を、お見逃しなきように。

 

そして、彼はパリを訪れ、貴族達を翻弄する聡明さ、何より莫大な資産を誇示し社交界の度肝を抜くのです。パリに現れし素晴らしき貴族、モンテ・クリスト。如何なる者も、彼に、彼の総てに酔いしれました。彼を彼と気付く者は、貴族の中には現れぬ程に

 

クリスト伯爵(演・厳窟王)(小賢しき者共、貴様らが相応の地位にいるのは分かっていたとも。愚者に人は貶められぬ。存分に私腹を肥やしておくがいい・・・!)

 

怒り狂う情念を社交の笑顔に潜ませ、ダンテスはいよいよ復讐を開始します。狙うは仇敵、一人一人に地獄を見せ、絶望に沈ませる暗き戦いが・・・

 

──まず、目をつけたのはフェルナン・モンデゴ。虚為の密告状を提出し、ダンテスを逮捕させた卑怯者。横恋慕にてメルセデスを狙っていた浅ましき男。彼は徴兵され、軍隊へと入り確固たる地位を築いていました。祖国や恩人、エデの父親を初めとしたあらゆるものを裏切り。その果ての勝者の証したる陸軍中将、貴族院議員の立場にまで上り詰めていたのです

 

そして、メルセデスは彼と結婚していました。ダンテスが投獄したあと間もなく、言い寄ってきたフェルナンに、最愛の人を失った心の寂しさにつけ込まれ、子を儲けていたのです。

 

息子のアルベールは、ローマの旅行中にてモンテ・クリスト伯爵と出逢い素晴らしき隣人と彼を紹介します。──そこで、彼女は誰もが到達せぬ真実を掴み取りました。

 

アルベール(演アレキサンダー)「彼は素晴らしい人だ!僕を山賊から救い、聡明さと財は並ぶものはない!」

 

「・・・ダンテス・・・!?そんな・・・!?」

 

【・・・何処かで、御逢いした事がありましたかな?】

 

そんな一夜の出逢い。そんな切なき出逢いの余韻は瞬時に消し飛ぶ事となります。数日後、夫であるモルセール伯爵がギリシャ独立戦争にて行った悪逆非道をモンテ・クリスト伯爵の手により新聞報道にてつまびらかにされてしまうのです。ギリシャ軍部顧問でありながら、敵対せしトルコ軍に取り入り裏切った事。数多の同胞達を自らの食い物にし裏切り、売り飛ばした事・・・然る弁明の地たる貴族院の場にて言い逃れをしようとしたモルセールでありましたが、裏切られ、父を殺された事をエデが高らかに証言するのです。

 

「その男は誇りと矜持、それら全てを売り渡した鬼、外道の極みにして卑怯もの。我が父アリ・パシャはその男に無念のうちに殺された!我が父の無念と怒りと嘆きを、此処に告発致します!」

 

「な、何を・・・で、でたらめだ!でたらめに、そんな小娘の、小娘の・・・!」

 

「ならば我が口を止めてみなさい。我が父を裏切りにて息の根を止めたように。銃で我が胸に孔が空こうとも、命絶えるその瞬間までお前の破滅を言祝ぎ続けましょう・・・!」

 

「うぐ、うぐぐぐぐ・・・!!」

 

・・・そうして、彼は失脚し地位と名誉を完全に喪いました。しかしこれに怒り狂いしは息子のアルベール。彼は父の醜聞を、モンテ・クリストの卑劣な策略と受け取り決闘を伯爵に申し込んだのです。

 

「我が父の名誉と誇りを汚したな!その狼藉、決闘にてお前の血で償わせる!」

 

【・・・残酷な事だ。尋常なる勝負ならば、命を落とす理由に充分・・・】

 

その決闘を受けたモンテ・クリストでしたが、アルベールの母たるメルセデスはそれをとどめ、クリスト・・・否、ダンテスに懇願します。一人息子たる彼を、どうか殺さないでほしいと直接に問い掛けたのです。

 

「エドモン・・・!あなたは優しく快活で、この様な恐ろしい事をする人間ではなかった筈。今更言うのは恥知らずですが、どうか思い止まって・・・我が息子が貴方と殺し合う様など、あまりにも・・・」

 

「・・・ごめんよ、メルセデス。君が知る若き航海士はとうに死んだ。我が神の思し召しは、こう言っているんだ。虎のように吼え、為すべき為に怒りの焔を燃やし尽くせと・・・!」

 

そうして、其処ではじめてメルセデスは夫の愚行を知ります。最愛の彼を貶めたのは、他ならぬ夫であったのだと。月日を奪い、彼を鬼へと変えた三人の男の一人なのだと。

 

「・・・モルセール伯爵の息子ではなく、フェルナン・モンデゴの息子として心から御詫びします。我が母が言うように、あなたの行動は神が許したもうていると、信じる他無い」

 

「母を大切にしなさい、アルベール。貴方を産み、育んだ母は真に麗しく、優しく、どの様な宝石にも勝る女性だ」

 

そうして母、メルセデスは全ての財産を貧しい人々に贈り、アルジェリア陸軍に従軍し一人の男として身を立てる決意をし旅立ったアルベールを待ちながら、二人は夫と父を見捨てて旅に出たのです。

 

そして、息子が決闘を取り下げたと知り、フェルナンは自らモンテ・クリストの屋敷に乗り込みます。そして、其処にて全てを知り、追いやった罪が焔となりて降りかかるのです──

 

【久し振りだな、フェルナン。お前が狂おしく求めたメルセデスは新たな旅路へ出た。息子は男として力強く一歩を踏み出した。さぁ──お前へ告げる最後の一押しを始めよう!】

 

「おま、お前・・・!?お前は、エドモン・ダンテス・・・!?何故、どうして・・・!?」

 

【無論、貴様を地獄に引きずり込む為だ!俺から全てを奪い、そして陥れたように!正しくお前から全てを奪い、陥れに来たのだよ!!】

 

「あ、あぁ・・・、あぁ・・・!」

 

【どうした!?その剣で俺を殺すのだろう!その銃で俺を貫くのだろう!さぁやってみるがいい!貴様が横恋慕にて疎ましく思ったエドモン・ダンテスを再び殺してみせろ!出来るのならば!】

 

「ひぃい・・・!」

 

【俺は貴様らを赦さん。慈悲など与えぬ、免罪は許さぬ!生きる限り貴様から奪い続け、息ある限り貴様を追い立てよう!!この世に安息があると思うなフェルナン・モンデゴ!そう──待つがいい!そして希望せよ!我等が神が、貴様を殺せと審判を下すその日を!!】

 

「う、うわぁぁあぁぁあぁ!!」

 

伯爵の正体が、遥か昔に貶めたエドモン・ダンテスであった事を知ったフェルナンは一目散に逃げ出しました。罪から目を背け、背負うことすらできなかった男。地位を喪い、妻子を喪い、最早何も無くなった人生。空虚になった無人の屋敷にて虚ろに宙を見つめたフェルナンは、やがて・・・

 

「────」

 

モンテ・クリストを殺す。そう決意し懐に忍ばせていた拳銃にて、自らを撃ち抜き自殺しました。・・・あらゆる全てを手にしたフェルナン・モンデゴの、誰も看取らぬ孤独な結末の締め括りとして。

 

【後、二人・・・惰眠を貪り、怠惰に過ごし待ち構えるがいい。虎は吼え、貴様らに向かうだろう。──その喉笛を引き裂くために!ック、クハハッ、クハハハハハハハハハハハハハッ!!!】

 

モンテ・クリスト・・・エドモン・ダンテスの復讐は始まったばかり。・・・残るは、あと二人。




少年「かっこいい・・・!すっげぇかっこいいよ!モンテ・クリスト!」

少女「うん。怖いけど、たくさん笑ってるね。私達も、あんな風に笑えるかな?」

「なんという胸を打つ迫真の劇だ・・・これが、本当に一から考えられた物語なのか?」

カーター「アビゲイル。よく見ておきなさい。嘘や偽りは、いつか必ず断罪される。如何に隠していようと、必ずや白日に晒される。・・・必ずや、隠せし罪は暴かれるだろう」

「・・・はい、おじさま・・・」

ラヴィニア「・・・・・・・・・」

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