人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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XX『新入りに儀式の制止とかキャリアと腕が釣り合ってないというのに・・・まぁいいです!速やかに止めてボーナスゲット!──そこまでです!私が来たからには・・・』

ナイア【・・・!】

『え・・・なんですか、この惨状・・・もしや、貴女が!?』

【・・・この娘を、よろしくお願いいたします。もう、真っ当に生きていけるかは分かりませんが】

『あ、ちょっと!この後始末はどうするんですか!?ちょっと───!?』



ヒロインXX「・・・事情説明もしないから、こんなに拗れたんですよ。まったくもう・・・」


アビゲイル「愛と希望の物語・・・とても、とても素敵な問い掛けだったわ。ティテュバもそう思うでしょう?」

「はい。素晴らしい劇だったと感じましたよ。お嬢様」

「・・・このセイレムは、どうかしら?そんな愛と希望に、溢れているかしら?」

「?お嬢様?」

「旅は・・・出掛けないと、始まらないわ。セイレムは幸せでも、セイレムから出ないと、旅は始まらない・・・」

(・・・でも・・・私に、本当に。愛や希望が、待っているのでしょうか。神様・・・)


夕 ユゴスよりのもの

「リッカ様、御披露御講演、大変お疲れ様でした。細やかながら講演成功を祝う料理をご用意いたしました。どうぞ夜の狩りに備え、鋭気を養っていただきたく思います」

 

ソロモン王とシバの講演を終えたリッカ。夜に備えラヴィニア邸へ帰ってきてみればそこに拡がっていたのは清貧に中指を立てる和洋中料理の大盤振る舞い。ナイアが腕によりをかけて作った信仰に冒涜を重ねる贅を凝らしたそのフルコースっぷりに、リッカは再び目を丸くせざるを得なかった

 

「え、ナイちゃん全部これ作ったの!?ホントに!?」

 

「はい。私はその場所の信仰の禁忌を犯せるスキルを所持しております。清楚なら淫蕩を、清貧ならば贅沢を。信仰ならば弾圧を。私が禁忌を犯そうと願った瞬間、料理の材料は召喚されるのです。お取り寄せで便利です」

 

むふっ、と大きな胸を張るナイア。逆説的にセイレムにいる限り富と欲望には事欠かないようだ。自前の腕前である料理以外は、暴食の禁忌を犯した、ということなのだろうか。霜がフリフリな肉の輝きは実に蠱惑的で、リッカの喉がゴクリと鳴る。タブーは破ると気持ちがいいのだ

 

「美味しいですねナイア!あなたにこんな特技があるとは知りませんでした!胸をたぷたぷ揺らしてパンチラしながら血塗れで狩りをしているイメージを改めてもいいですよ!」

 

「それは何より。追加のメニューをどうぞ。ウジとゴキブリとカマドウマのグラタンですわ。吐き気を催す見た目を貴女に」

 

「いらないですよそんなの!そこいらの犬にでも食わせてください!」

 

「か、帰ってきたのね。お疲れ様でした。で、では作戦会議といきましょう」

 

「めしー」

 

てんやわんやと騒ぐナイアとXX、エイボンを抱えながら降りてくるラヴィニア。そして・・・目を擦りながら現れる、紫髪の少女。

 

「あ、ラヴィニア!・・・と、誰?」

 

「む、リッカか。・・・妾の声音を聞き忘れたか?アルだ、アル。アル=アジフ。気軽にアルと呼んでよい。めしー」

 

「父が世話になっております。パートナーの殿方はどうしたので?」

 

「ヤツはハワイに行った・・・」

 

むぐむぐとトースターを頬張るアル。どうやら本の人間態がこの姿であるらしい。その事実を・・・

 

「ま、ナーサリータイプって事だよね!」

 

リッカはあっさりと受け入れ、とろとろのピザへとかぶりついた。大抵の事は、楽園で経験したが故に取り乱す事など無いのでしたとさ。

 

 

クトゥルフの定義はガンプラバトル並に自由。神話生物を殴り殺す探索者だっていてもいい 

 

Byニャルラトホテプ

 

 

「というわけで作戦会議です!私有能な楽園所属フォーリナーXXは次の敵に対する重要な手懸かりを発見しました!これを!」

 

食べながら証拠を叩きつけるXX。そこに提出されしは中身が空な筒の物体だ。広く、何かを入れる目的であることが見て取れる

 

「なんだ、ミ=ゴではないか。やったぞリッカ。グールに続いて歯牙にもかからぬ有象無象。楽勝であるな、らくしょー」

 

「えっと・・・アル。ミ=ゴについて何か知ってるの?」

 

「知ってはいるが、只の脆弱な格下どもであり、我等の敵では無いと言う事を覚えておけばよい。詳しい説明は、そこの少女に聞くが良かろう。エイボンの書を持つそやつにな」

 

アイスを頬張りリラックス状態なアルの指名を受け、ラヴィニアがエイボンの書を開く。どうやら、ミ=ゴなる生物も記されているようだ。

 

「ここのページに、詳しい事は乗っているわ。読み上げるわね」

 

 

ミ=ゴ

 

体長は5フィートほどで、一見すると薄赤色の甲殻類のような見た目である。3対の先に鉤爪のついた手足があり、それらの内1対、または複数使用して歩行する。背中には1対の羽があり、宇宙空間を航行するのに使われる。

 

頭は渦巻いたような模様と、多数の触角がある。この頭の色を変えることで会話する。体組織は地球でいうところの菌類に近いものであるが、構成する原子の電子の振動数がこの宇宙のものと違うため、触れたり目視することはできても、化学的に適切な処置を施した写真でなければ、写真には写らない。

 

また、肉眼でも空を飛んでいる最中に一瞬で姿を消すところも目撃されている。

 

宇宙的規模で生息する生物であり、数多くの変種、亜種が存在する。

ただし、宇宙空間をそっくりその身のまま移動できるのは最も発達した種族のみで、退化したその他の変種は機械の助けを借りたり外科的手術で器官を転移させなければならない。その必要となる器官と思われる「エーテルに抵抗する翼」を持ち合わせているのはほんの二、三種だという。だが、翼の生えたもの達は決して最高に発達した種族ではないとも語られた。

 

テレパシーが主な会話手段となっているが、未発達な発声器官を持つので、簡単な手術(ユゴスよりのものにとって)を受ければどのような生き物の言語をもそっくり真似て発音できる。

 死ぬとその肉体は二、三時間の間に蒸発して消える

 

 

「・・・エイリアンみたいなものかな?」

 

リッカの指摘は大体合っている。特定の神の部下ではない宇宙からの来訪者、異端なる旅人をそう呼ぶのなら、このミ=ゴという生物はエイリアンと呼べるのだろう。ナイアもまた、知識を付け加える。

 

「彼等は地球の科学体系とは異なる独自の技術を振るい、地球に潜伏しています。とりわけ地球の鉱物や、人間の感情といった資源を目当てに採掘などを行います。そして・・・」

 

「そして人間の脳を抜き取り星に持ち帰ったりするのです!銀河警察法の異星輸送法にバリバリに違反している犯罪者集団それがミ=ゴ!この缶は脳を入れる缶なのです!」

 

割と御遠慮したい事実をさらりとぶつけられる微笑ましい食卓だが、ミ=ゴという種族がこのセイレムに飛来しているのは間違いが無いようだ。XXが缶に気付かなければ、犠牲が出ていたかもしれない。あの缶に、セイレムの住民の脳が入れられていたかと思うと・・・

 

「一匹残らず駆逐がセオリーなのは変わりませんわ。戦闘データを取り、対策する程度の知性は持ち合わせておりますもの。・・・XX、『基地』は見受けられなかったのですか?」

 

「基地?」

 

「ミ=ゴはニャルラトホテプを初めとした外なる神々を信仰しているのだ。それ故に、この星の資源を獲得し失われた帝国を再建しようという思想犯も存在しておる。活動する拠点がある、ということじゃ」

 

つまり、このセイレムの何処かにもミ=ゴが活動している拠点がある、という話である。・・・もしや、XXが缶を見付けられずに、地表に現れたミ=ゴだけを倒し夜明けを迎えていた場合、状況は悪くなっていたのだろうか?

 

「どちらにせよ、DZNの良い砥石になろう。油断はせず、思いきり暴れてやるがよい、リッカ」

 

「オッケー!じゃあ皆、今日の夜も頑張ろう!」

 

「「「おー!」」」

 

「み、ミ=ゴは気に入った人間の脳を缶に入れて、宇宙の様々な場所を見せてくれるというわ。・・・ありがたいけれど、身体が出られないんじゃ意味が無いわね」

 

方針が定まり、討伐対象を設定したカルデア一行。陽が沈むまで、冒涜的な料理パーティーは続いたのだった──

 

そして、二日目の陽は沈み。新たなる狩りの夜が幕を開ける──

 

 




????

【おい、人間がなんか面白い事やってるぞ】

【芝居に舞台だって?我々ミ=ゴは言葉などという下等なコミュニケーションはとうの昔に忘れた筈だ】

【だがしかし、人間の持つ多彩な感情や文化の研究と解明に労力を惜しまないのが我々ミ=ゴだ】

【そろそろ夜だな?フッフッフ、このセイレムは我々が握ったも同然だ】

【諸君、今から命令をすりゅ。このセイレムを掌握し、我等の信ずる神の神殿、ニャルラトホテプ帝国を作り上げるのだ】

【でも隊長。なんだか人間の中にニャルラトホテプの娘さんらしき影がおりませんでしたか?】

【気にするな!(未確認)しかしマシュー・ホプキンスの来訪はまだか?聞くところによれば、そいつは金のために同胞を殺した極悪人らしい】

【そんな人間は真っ先に我々が脳味噌を引き抜かなくては!】

【ふっふっふ・・・いずれにせよ、このセイレムを手に入れるのは我等ミ=ゴだ!】

【おい!なんだかマシュー・ホプキンスが死んでいたらしいぞ!】

【やった!やったぞ!これでセイレムから魔女狩りの危機は去ったのだ!】

【喜んだなコイツ!だがいい、なんとしても我々がこのセイレムを手にいれるのだ!いってみよー!】

【【【【おー!】】】】

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