『宝箱』
「でも、もうこれしかない。我々にこれを護る力はもう存在しないのだから」
~
ディルムッド「まだ大人しくしていろ。問題はここからだ、ここからだぞ。・・・支配するのはわれわれだ。忌々しい乱入者の一族にあたえるものなど塵一つとしてない。儀式が終わり次第皆殺しだ・・・!」
~
燕青「──クカカッ。高慢ちきの老人が吼えたてているな。伊達男らしからぬ壊れっぷりだ。二十年経ってもまだ俺達を後から来たと罵るなら、二百年掛けてでも同化してやるさ。この街は俺達の支配を望んでいるのさ。より過激に、より絢爛に・・・な」
~
以蔵「わしらは海に生き、海で死ぬ。この街の生命線を握っちゅう以上、どんだけ小そうてもわしらが最強じゃ。・・・この戦いが終われば、組織としても最大になる。這いつくばって許しを乞わんなら構うこたない。──皆殺しじゃ!」
~
アナスタシア「ハフッ、ハフッ、ハフッ」
カドック「辛いなら落ち着いて食べればいいだろ・・・」
「分かってないのね。熱いラーメンにかっこむのがおいしいの。ラーメンマイスターの道は遠いわよ、カドック」
カドック「別に目指してない・・・それより、カルデアのマスターの事をだな・・・」
「・・・そうね・・・一言で言うなら・・・」
「人間、なんだよな?」
「ドラゴンよ」
カドック「!?」
カルデアのマスターの印象→詐欺師サンタ・動く核エンジン搭載ドラゴン
「おい、酒をもっと寄越せ!」
「こっちにもだ!ほら、早くしろ!」
蒼く落ち着いた雰囲気のバー『ライヘンバッハ』。上品でお洒落な雰囲気のバーに似つかわしくない怒号と下品な笑い声が響き渡る。そう、今宵は客人でごった返しているのだ。歓迎するには些か品の無い方々・・・ギャングの部下と手下達が酒を求めてやって来ているのである
「了解しました、暫く御待ちください・・・!」
「ちゃっちゃとしろ、ガキ!見習いだからって甘くされると思うなよ!」
其処でバーテンダーとして懸命に働き右往左往するカドックの姿がある。注文を取り、カクテルを運び酒を配りながら店を忙しなく歩き回っているのだ
(くそっ、立場と暴力にすがるしか無い連中に何で僕がヘコヘコしなくちゃならないんだ・・・)
客人という立場である以上もてなさなくてはならない。頭では理解してはいるがどうにも納得しきれないところはあり、それでもきっとこれが為すべき事だと信じ打ち込む。アナスタシアは念のため後ろの部屋にて待機させている。『下品な方々は嫌い』と言い残して引っ込んでいったのだ
「チッ、下品な連中だ・・・」
「──おい、今なんつった」
カドックではない。口に出して客人を馬鹿にする事がどのような事かは分かっている。ギャングチーム、ディルムッド陣営が余所者である他チームに悪態をついたのだ。アルコールが回ったギャングが、それを聞き逃す訳もなく。
「老いぼれどもが調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「おい、待て・・・!暴れるなら店の外でやってくれ・・・!」
せっかくアナスタシアと掃除したバーを踏み荒らされては敵わない。三者の中央に割って入り、制止を試みるカドックであったが・・・
「引っ込んでろ、クソガキ!」
「うわっ・・・!」
頭に血が上ったギャングが止まる理性を備える筈もなく。あわや暴力沙汰といった瞬間──
「!?なんだ!?」
「停電──ぎゃあぁあぁあぁ!!?」
一瞬でバーの照明が落ち、何も見えなくなった刹那にギャング達の悲鳴が響き渡る。慌ててカドックが勘を頼りに照明のブレーカーをつけると・・・
「あら、どうやら先程床にかけたワックスで転んでしまったようね。怖い怖い・・・」
『まるで誰かに鎮圧された』かのように重なり合い気を失うギャング達に、心のこもらぬ声音を呟きカウンターにてグラスを拭うアイリーン。カドックは身震いした。彼女が何かしたのかが気になったのではない、それもあるが・・・『異様に部屋の中が寒くなってきたのだ』
「後で運んでおこう。いやー酒はヤバイね。閉店にしておくべきかなアイリーン」
「ギャングの部下を出禁にすれば良いのでは?大丈夫かしら、カドック」
「・・・あぁ、まぁ・・・何が起きたんだ・・・?」
「酔っぱらって転んだのよ。そういう事にしておきなさい」
・・・どうやら此方もギャングなんかより余程恐ろしい連中らしい。見られなければ、バレなければ何でもいいといった様だ。適任だったみたいだ、今回のミッションに
「すまないな。ここに来れる権利を持つのは組織のトップ、そして『もうすぐ訪れる』彼等だけにしておいてくれ。・・・では、後は頼む。いよいよ明日だ」
「明日・・・?」
「あぁ。・・・明日、我が家に千年受け継がれてきた聖遺物を売り払うんだ」
聖遺物。英雄達の縁の品であり、有名な英雄の召喚の触媒になるマジックアイテム。ギルガメッシュならば最古に脱皮した原初の蛇、宝物庫の鍵、イスカンダルならばマントの切れ端、アーサーならば聖剣、或いは鞘。そういった魔術的な遺産をそう呼ぶのだ。・・・無論、強力な英雄のものであれば在るほど価値は高い。売り払うだけで傾いた家柄の借金の三代分を返済し建て直せるものも存在するほどに。
「魔術師に俺の手元にあると知られた以上、街まで争奪戦に巻き込まれる可能性がある。・・・だから高く売り、その資金でこの街を発展させるんだ」
「御立派ですナ。我等も全力でサポート致しましょう。ね、カドック君?」
「・・・気持ちは分からなくもない。だが、そう決めたんなら・・・何も言わないし、言えないな」
チャンスを、護ってきたものを手放す。その無念さはすこしは分かるつもりだ。だが・・・最善を目指すなら、割り切らなくてはならない時もあるのだろう。凡人には、それが中々出来ないのだが
「ありがとう。・・・それじゃあ、よろしく頼むよ」
ジークがバーから出ると同時に、アナスタシアが奥の部屋からやって来る。心なしかイライラしているように、カドックはなんとなく感じ取れた・・・
「カドック。何を情けない。あそこは私のパートナーとして威光を示す所でしょう?アイリーンに助けられるなんて・・・もう」
感じ取るまでも無かった。凄くイライラしていた。シャドーボクシングを行い始めるアナスタシアに、息を吐きながらカドックは立ち上がる。不機嫌な皇女に油を注ぎかねないからだ
「やっぱり君じゃないか、オルガマリー」
「さて、私は此処でグラスを拭いているだけだったけれど」
「危なかったネ・・・アイリーンに危害が及んでいたら初手で血の華を咲かせていた・・・」
「危ないってそっちか・・・頼もしいバーだな、全く」
「(むすっ)・・・ジェームズ、組織の関係の更なる講義を御願いするわ」
席に座り、頬杖をつくアナスタシア。どうやら情けない姿を見せたカドックに憤慨しているようだが・・・気にかけている相手が、自分以外に助けられるのもなんだか面白くない複雑な皇女の気持ちを知ってか知らずか・・・
「・・・ほら、機嫌を直してくれ、アナスタシア」
そっと、手作りカクテルを渡すカドック。分配も配合もまだまだな、粗削りなものであったが・・・
「・・・ふんだ。皇女も安く見られたものね。こんなカクテルで御機嫌取り?もっと飲まないと味もわからないわ。もう一杯」
「はいはい、どうぞ」
専用カクテルというのがお気に召したのか、言葉とは裏腹に・・・とても楽しげで嬉しげなアナスタシアであった。そして機嫌が直ったタイミングで、ジェームズとアイリーンの講義が始める
「それでは授業を始めよう。紙とペンは持ったかな?」
「これから、三組織が支配権を手にするために最適な行動とその弊害を説明するわ。質問はいつでも受け付けているわ、よろしいかしら?」
「あぁ、退屈で寝ないくらいには気を利かせてくれ」
「(ごくごく)」
組織の取り巻く状況は完全な膠着。此度の講義はその実態を紐解く──
ジェームズ「まずディルムッドの組織が行うべきは、以蔵君と組んで燕青を潰すことだ」
オルガマリー「潰した後に、弱小たる組織を合併吸収すれば最終的なシェアは全てディルムッドのモノとなります。ベター、と言えるでしょう。しかし以蔵さんからしてみればそれは詰みとなります」
アナスタシア「はい、それは何故?」
カドック「・・・小が大に勝てるわけ無いだろ。中を潰したらどう足掻いても戦力差は覆せない。袋小路だ」
ジェームズ「まさしく。しかし、以蔵君が燕青と組めばいいと思うかもしれないがそうでもない。彼らもまた、地元に密着している組織だからネ!」
アナスタシア「では、ディルムッドと燕青が組んでイゾーを潰したらどうなるのかしら」
カドック「潰すのは簡単だけど・・・港湾労働者が皆殺しにでもされたらこの街の経済が終わる。街の根幹が潰れてしまうんだ」
アイリーン「組む必要もメリットも何もないもの。打算で組まれた組織が望むのは二つ。敵対者の殲滅と、同盟者の損害よ」
カドック「・・・つまりどうしようもない。組んでもダメだし敵対してもダメ・・・」
アナスタシア「今唐突に袋小路のことをカドックと呼びたくなったわ」
カドック「ほっといてくれ!・・・じゃあ、僕たちやジークがプラスアルファになるってことか?」
ジェームズ「そう。──それはきっと、君に馴染み深い言葉だ」
カドック「・・・?」
アイリーン「『聖杯戦争』・・・あなたなら、当然御存じよね?」
カドック「・・・!」
アナスタシア「あぁ、手頃な聖は──」
ジェームズ「しー!」
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