ジーク「・・・うん。そうだな。彼女は彼女、あなたはあなただ。気に病まなくてもいい。楽園の貴女が、誰を愛そうと祝福を──」
ジャンヌ「そこでです!私はリッカさんやジーク君、オルタのお姉ちゃんになろうと決めました!!」
「ホワイ?」
「えぇ、恋人は、運命の人は別の私なら!楽園の私は皆のお姉ちゃんになろうと決めたのです!!楽園の皆様はみんな私の弟ないし妹です!」
ジーク「落ち着け、落ち着いてくれ深呼吸だ素数を数えろ。それはつまり、楽園の皆や俺と家族になりたいと・・・」
ジャンヌ「あなたも家族です!!」
ジーク(これが人間城塞か──)
ジークは考えるのをやめ、弟になった──
「うそ、そんな、まさか──」
「大丈夫、大丈夫でござるよリッカ殿。ラスボスだとか、復活するために生け贄が必要だとかそのようなどんでん返しはござらぬ。正真正銘──」
華が舞う花畑、風が優しく吹き抜け月が静かに照らす世界の裏側にて。狂おしい程待ちわびた、でも。それでも、絶対に会えるはずが無いと思っていた存在との予期せぬ再会に、リッカの思考と言語はまとまらず困惑し続ける。そんな彼女をただ優しく諭すように、それでいて最早隠すことは無いと言うように・・・
「──貴女の友にして、永遠の真理を追い求めし者。救世主たるセイヴァー、覚者の疑似サーヴァントとなりし、『グドーシ』でござるよ。いやはや今まで黙っていて申し訳ない。本当はもっとサラリと伝えるべきであったのでござるが・・・」
「ぐ、ぐ、ぐど、グドーシ・・・!?疑似さば、え、鯖!?だって、全然、だってイケメン、臭くないし、太ってもない・・・!?なんで、なんで・・・!?」
金魚みたいに口をパクパクさせ、へたりこむリッカ。もう二度と会えないと思っていた。死んでから会えると自分を鼓舞していた。──それでも、別離の哀しみが心にずっと残っていた。最早思考が限界なリッカに、へたりこむリッカの傍に視線を合わせ座り込む。あくまで、包み込むような穏やかさと一緒に
「心配なさらずとも、疑問には答えるでござるよ。そして私・・・否、拙者と解らぬのも無理は無いでござるな。ちょっと痩せましたので」
「骨格レベルで別人だよ!?整形とかのレベルじゃないよ!?」
「ははは、確かに。今の拙者の姿は本来の正しき鋳型の元に編まれた姿でござる。かつての拙者は御存じの通り出来損ないの失敗作であったが故、醜男であったのでござるよ。いやはや申し訳ない、随分と臭かったでござろう」
そう、そして本来の魂の形。無垢なホムンクルスとして再設計された姿のグドーシは、絶世の美形であった。蒼き瞳に黒髪、すらりとした長身に執事服、白い肌。アインツベルンのホムンクルスと対を成す色合いの、自然の寵児であったのだ
「さて、何処から話したものですかなぁ・・・あ、一から聞くでござるか?何故拙者が覚者などというビッグネームの疑似サーヴァントとなるに至ったか」
「ぜ、全部!全部話して!もうダメ、頭限界・・・!話したいことたくさんあるのに、何を、えっと、その・・・」
「承知いたした。落ち着けるのも含め、ゆるりと話すと致しましょう」
リッカの背中合わせにあぐらにて座り込み、月を眺めながらグドーシ・・・シッダールタは語り始めた。自分の、数奇な不思議な、真理の旅を──
~
どうやら拙者は悟っていた様であり、理念に開眼致した様でござった。ホムンクルスの身であるが故に、人が辿り着けない答えを得たと世界に認められたとかなんとか・・・
最後の手紙を書き上げ、そなたに贈った瞬間、拙者はあらゆる全てから解放されたのでござる。悩みも苦しみも、最早拙者には介在していませんでした。
『ただ、貴女の幸福を祈っている。貴女が生きてくれるなら、存在していてくれるなら、拙者の生命には意味があった。そして、最早無様に生き長らえる必要もなし。速やかに滅びると致しましょう』
そう考え、自らの生命への執着を捨てた拙者が末期に懐いた答え。生命そのものに拘る必要はなく、貴女の救いに費やせたなら最早自らに注ぎ込む道理無し。心残りは、何も無し。滅びることに悔いは無し
そんな風に考え、目を閉じた自分でありましたが・・・そんな拙者に、語りかける声があったのです。暖かく、大きく、優しき光が満ち足りし声でありました。
『全は一、一は全。あなたは己の生命も、生の苦しみも執着も全て手放し彼女を救い上げた。──開眼したのだ。大いなる悟りに。全たる一を救わんとする理念に』
声の主は、人類無二の答えを得た者であるという。涅槃にて人の行く末を見るものであるという。彼は言う。道は一つではない。人は皆、心に神を宿していると
『一を救いし者よ、そなたに資格あり。涅槃にて、総てを見守りましょう。そなたの救いたる少女の明日を、世界のうねりを。それがあなたの重ねるべき功徳であり、輪廻を見つめる者の瞳だ』
・・・恐らく、拙者に慈悲を示してくれたのでしょうなぁ。彼は拙者に力のほぼ総てを託してくださり、世界を漂い見つめる力を授けてくださった。『何処にでもいるし、何処にもいない』という存在として、全てを見通す涅槃に座し者の力を。真なる悟りを開眼するその瞬間まで、疑似サーヴァントとして在る『覚者』としての力を。まぁ拙者畏れ多すぎるので、シッダールタと名乗り、彼の菩提樹の悟りは封印したのでござるが。
『思わぬ救いを得てしまいました。さて、それでは何処に流れ着きましょうか』
はぐれサーヴァントのような、ゴーストのような曖昧な拙者は、この世から離れる事に致した。拙者にはもう、我欲も何もなかったのでござる。流れのまま、うねりのまま。世界と・・・リッカ殿を見守ろうと。
『世界を救う必要は無し。何れ人は己の力で仏となりましょうぞ。──となると、拙者の執着など一つしかありませんなぁ』
更に聴くに、夢に現れたあの幼女はマーラであったとか。マーラの誘惑を退けたという実績も含めて選ばれた様である拙者は、世界の裏側へと流れてみたのです。誰もおらぬ世界にて、座禅でもしながら営みを見つめようと。──皮肉にも気掛かりであったリッカ殿の未来への期待が、拙者をこの世界から弾き出す真なる覚者への目覚めを抑え、疑似サーヴァントとしての形を与えてくださったのです
『素敵な花畑でござる。此処にて・・・おや?』
降り立った花畑、そこには何やら大切そうに杯を抱えた竜がいるではありませんか。先客ならば挨拶をせねばと、拙者は軽く声をかけたのです
『もし、そこの御方。拙者、此処にて世界を俯瞰しようと決めたのですがお隣をよろしいかな?』
『・・・──人、か・・・?』
『拙者?うむ・・・そうですな。グドーシとでも御呼びくだされ。・・・見たところ、誰かをお待ちの様子。よろしければ、拙者と一時語り合いませぬか』
その竜はジークといい、人類から大聖杯なる奇跡を簒奪した邪竜であるというではありませぬか。なんとも数奇な生を送り此処にたどり着いたホムンクルスであるという。・・・生の短き中で、最後に懐いた感情が憎しみであり。何万年も待つと決めた彼の在り方に、我が内の覚者が訴えたのです
『この魂に寄り添いなさい。何れ人が辿り着くまで世を見守りなさい。それが彼の、そして貴方の救いとなるでしょう』
元より拙者は世捨て人。時間も何も無きもの。覚者殿が思し召すならば、それに逆らう道理無し
『ジーク殿、もしよろしければそなたと友となりたいのですが、よろしいですかな?』
『友・・・友達、か』
『然り。人は来ます。必ず来ますとも。その果ての再会に声の出し方を忘れていては一大事。このような男で申し訳ありませぬが、いかがですかな?』
『──此方こそ、よろしく頼みたい。辛くはない、苦しくはない。・・・ただ、誰かの話を聞きたいと、ずっと願っていたんだ』
『よろしい。さて、では話すと致しますかな。拙者が出逢いし文化の極み。オタク文化という無上の経典の数々を・・・』
そしてジーク殿に、アニメの話や漫画の話を説き伏せながら夜空の月を見つめ、彼が退屈しないように、ゆっくりと。何れ来る迎えを待ち続ける竜の、幾ばくかの癒しになるように
そして、拙者のただ一つの執着にして我が救い。──そなたの幸せを祈りながら。のんびりと世界の裏側にて、リッカ殿を見つめていたのでござるよ──
~
「そんな成り立ちと出逢いの中、拙者はそなたを見つめておりました。ずっと、ずっと見守っていたのでござる。──懸命に、輝かしく生きるそなたを、ずっと」
「~~、っ、・・・・・・っ・・・」
背中合わせに静かに語るグドーシ、感極まり、嗚咽を漏らし泣きじゃくるリッカ。・・・彼女が泣くのは、堪えがたい別離に直面した時のみだった。だが、今の涙は違う。感激と・・・喜びの、涙だった
「ずっと、ずっと見ていてくれたんだね、っ・・・グドーシ・・・ずっと・・・」
「えぇ。じゃんぬ殿、頼光殿を始めとして・・・本当に沢山の良縁に恵まれましたな」
「私っ、逢いたくて・・・でも、絶対に生き返らせないって決めててっ、いつか、そっちに行ったときに、沢山思い出話を、って・・・」
「その思い遣りに感謝を。犠牲の果てに蘇った者は嘆きましょう。『何故、私を忘れて強く生きてくれなかったのか』と。拙者はまた、リッカ殿に救われましたなぁ」
「ひっく、えぐっ・・・グドーシ・・・」
「えぇ、リッカ殿」
「これから、これからは・・・私達、また・・・また・・・」
皆まで言わせる間も無く、少女の最期の後悔と悔恨を、吹き散らす。──そう。覚者の力は、一つの悟りは、このために
「えぇ。『これからの善き旅路』に、ずっと一緒ですとも。いつまでも。そなたが、静かに眠るまで、ずっと」
「っっっ・・・!!・・・・・・グドーシぃいぃいぃ~~~!!!」
辛抱たまらず、決壊した感情と共にリッカがグドーシにすがり付き、涙を流す。いままで流すことすら許されなかった弱音と共に、心にしまっていた無念と共に
「逢いたかった・・・!逢いたかったよぉ・・・!忘れた事なんて無かった・・・!もっともっと、お話したいってずっと思ってたよぉ・・・!!」
「拙者もでござる。よく頑張ったと、とても一生懸命で素敵であったと。伝えたかったでござるよ」
「グドーシが生きたかった世界だから・・・皆が生きてる世界だからって・・・!絶対に救うって・・・!私が、やるんだって・・・!」
「えぇ。ですがこれからはリッカ殿だけに背負わせはしませぬ。楽園の仲間たちと共に、拙者もリッカ殿を支えていくでござるよ」
「私、私・・・!グドーシに会えて良かった・・・!皆に出会えて良かった・・・!この旅路を選んで、本当に良かった・・・!」
「えぇ。拙者も。リッカ殿がこの世に生まれてきてくれて、本当に良かったでござるよ」
「私、私ぃ・・・!『生きてて良かった』よぉ──!!うわぁあぁあぁあぁあぁん!!グドーシいぃいぃいぃいぃいぃ・・・!!!」
「よしよし・・・もう離れませぬ。末世の果てまで、共に在りましょう。リッカ殿──」
熱き涙は、喜びと感謝と共に。優しき言葉は、労りの抱擁と共に。
──今度こそ。此処に、一人の少女の心は確かに救われたのだ。楽園の仲間達との出逢いと・・・
一人の、人ならざる救世主、求道師によって。これこそが、彼が見つけた唯一の悟りにして、救いである──。
フォウ(あぁぁあぁあぁ!!あぁあぁあぁ!!プレシャスパワーが満ちるぅう!!!)
エア──ひっく、ぐすっ・・・良かった、本当に良かったね・・・リッカちゃん・・・ありがとう、グドーシさん・・・
ギル《救世主なぞ、この世で最もおぞましい存在と断じていたが・・・訂正せねばなるまい。マスターめの別離の後悔を癒せるのは、ヤツ以外に有り得ぬであろうな》
ジーク「・・・御機嫌王。改めてお願いする。『大聖杯』の、共有管理者になってほしい」
「ほう?その真意は何だ、管理者よ」
ジーク「大聖杯は、誰の手にも渡せない。誰の願いにも使わせない。・・・だけど、楽園になら、安心して預けられるんだ。『皆、自分の手で願いを叶える為に頑張る』、強い人達だから」
「フッ、よく弁えているではないか」
「そして──グドーシと共に、俺も楽園で思い出を沢山作りたい。いつか星を飛び出して向かう愉悦の旅なら、きっと彼女を満足させられる」
ギル「ふはは、大した信頼ではないか!──ただの一歩も、立ち止まらぬぞ?」
「大丈夫さ。必ず会える。だって・・・」
お姉ちゃん(偽)「はい!お姉ちゃんですよ!」
「──どんな形であれ、こうして会いに来てくれたんだから。それに、俺のこだわりでこれ以上、グドーシに迷惑をかけるわけにはいかない」
ギル「──フッ。良かろう!手土産としては上出来だ!王の名の下に──貴様らの参列を認める!!」
──やったぁ!!これでずっと、みんな一緒ですね!
フォウ(ありがとう・・・ありがとう・・・!この世の全てに、ありがとう・・・!)
「ならば夢から覚めるとするぞ!最早此処に用はない!我等の愉悦の旅路は終わらぬ!──続くがいい者共よ!我等の楽園に帰参する時だ──!!」
ジーク「あぁ!・・・──良かったな、グドーシ。リッカ・・・」
「ジーク君!楽園に帰ったら・・・」
「?」
「あなたと、皆に!振る舞いたい料理があるのです──!」
・・・──約束の地にてはためくは、楽園の踏破の証したる黄金の旗──
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