ジーク「ベリーサンクスだ、セミラミス。貴女の庭園は厄介で、頼もしかった」
セミラミス「拙い世辞よ。まぁいい。・・・地上への強制転移術式だ。我はこの庭園と共に最後の一時を過ごす。・・・邪魔立てはするまい?女帝足りうるマスターよ」
【ん!ばいばい、セミラミス!】
「うむ」
モードレッド「カメム」
セミラミス「強制転移!さっさと大地に戻るがいい!」
~
天草「終わった様ですね。あ、私はただの通りすがりです。聖杯を簒奪とかそんなまさか」
セミラミス「・・・・・・」
「金のルーラーですから。お疲れ様でした、赤のアサシン。最後の一時、月見酒などいかがです?」
「・・・・・・八つ裂きにしても飽き足らぬ狼藉でありながら、怒りが沸いてこぬのは。何故であろうな・・・」
「あのカメムシ女め!言わせたんなら最後まで言わせろっつーんだ、バーカ!!」
悪口、不完全燃焼。戦いを終え、黄金の粒子となり退去していくサーヴァントの光が、柱となり天と空を彩りし大地に、聖杯大戦のサーヴァントは無事に転移を成功させた。闘いは終わり、最早敵など肉片すら残っていない。金の陣営は役目を終え、そして消え去った。・・・此度の戦いの主役は、ここにいるサーヴァントの再現体、否・・・『英雄達』であるが故に
【やっぱり言ってたんだ、カメムシって・・・】
「なんかスッゲー言いやすいんだよ、アイツの悪口。・・・父上は、やっぱもういねぇか」
「ウ?」
「いや、いいんだ。確かカルデアは人類の未来を護る楽園だったか?・・・其処に父上がいる。それだけで、オレはいいんだ」
騎士道に邁進し、正しき道を歩んでいるならそれでいい。いずれ、いつか。その騎士道に添える日があるのなら。・・・或いは、もう寄り添っているのなら。
「なぁリッカ、そっちにオレはいたりするか?いたとしたら、まぁアレだ。ガンガンコキ使ってやれ!騎士王と一緒にな!」
【うん!フランちゃんも、モードレッドも!バイバイ!あと男のアルトリア、アーサーもいるよ!】
「ウー!(敬礼)」
「じゃーなー!・・・は?男の父上もいるぅ!?」
爆弾発言を土産に、モードレッド、フランは退去する。自爆でも、無念の敗退でもない。胸のすくような、凱旋を行いながら
「圧制は潰え、魔術師の夢は消えた。黄金の王もまた、次なる愉悦を求めに発ったのだろう。ならば私もいざ往かん!次なる圧制の地へ!!」
「ありがとう、スパルタクス。誇り高きその不屈さを、俺たちは忘れない」
【楽園にも来てよ、スパさん!圧制とか暴虐とか何処にもない、ギルと姫様の愉快な王道がカタチになってる場所だから!】
「それは素晴らしい。いつか目の当たりにするその日まで・・・さらば!!」
スパルタクスもまた、次なる反逆を為すために消え去っていく。圧制を敷かぬ王という奇跡。それを前にした時に、彼は一体何を思うのだろうか。
「やれやれ。・・・アルテミス様の名代たるマスターよ」
【あっ、はい?】
「それだけの神威を託された汝の道は、きっとアルテミス様が照らしてくれている。迷わず、惑わず。駆け抜けるといい。きっと聡明で慈悲深き・・・いや慈悲深くはないか・・・実践的な祝福を授けてくれるだろう。狩猟の女神だし」
【ソウメイ?ジヒブカイ?・・・あまこーの話かな?エレちゃん・・・は慈悲深いよね。ケツ姉は明るいし、将門公は優しくて頼れるお爺ちゃんでじいじはじいじだし、パールヴァティーは人妻だし・・・】
「・・・汝、巫女か何かか?」
その言葉を最後に、というか疑問を懐きながら。アタランテは退去する。知らなかった事は幸運であろう。ギリシャ最高クラスの女神は『アレ』なのだから
「うーむ。吾輩感動しておりまする。喜劇の上に痛快娯楽!スペクタクルに無双の英雄譚!悲劇の挟まる余地なき物語がこんなにも──愉快であるとは!」
「だな。あの面子で、負ける方がおかしかった」
「まさにまさに!完全無欠の叙事詩・・・是非私もアンソロジー作家の如く招かれたいのですが如何でしょう?」
【いいんじゃない?『ですな!』とか『ですぞ!』しか台詞無いと思うけど!】
「喋るヒゲオヤジのbotとか誰得ですかなー!」
「やれやれ・・・ともあれ、さらばだ。そして君達には、これをあげよう」
「・・・無花果、か?」
「英霊であれ、残せるものはあるということだ。・・・そちらの僕に、よろしく頼む」
「・・・・・・・・・『ぶっちゃけまして、簡潔さこそが叡知の塊!長話などするだけ無駄な枝葉末節ってことですよ!』」
【このおじさん意地でも引用を捩じ込みおった!!】
「苦行に挑むバラモンか何かですかな?」
「ノルマ達成!それでは皆々様!そして──叙事詩を支える皆々様の旅路が、幸福に満ち溢れておりますように!」
おシェイ、アヴィケブロン。共に退場。シェイクスピアが最後に残した祝福は、作家を常に支え続ける沢山の『誰か』に捧げられた祝辞であり、無花果はアヴィケブロンが残した、記憶であるのだろう
「それでは、オレも立ち去る。言葉は無用だ」
【お前たちとの縁は途切れない。言葉にするも無粋な想いと絆は、確かにある。・・・だよね、カルナさん?】
「・・・。オレの心は分かりやすいのだろうか・・・」
「いやいや、この娘が特別なのですよ、カルナ殿。スーリヤ自慢の息子にして、誉れも高き施しの英雄殿」
「──その言葉、忘れはしない。人類至上の答えを得た者の魂を宿す自然の寵児よ。あなたの願いが叶うことを祈っている」
カルナ、退去。その言葉は簡潔なれど、溢れんばかりの労りと労いに満ちていたのは、一目瞭然に他ならなかった。
「おかーさん」
そして、ジャックも、また。だが、彼女たちに、哀しみはない
「そっちのわたしたちを、いっぱい暖めてあげてね。あと・・・わたしたちに祈ってくれた人に逢えたら、伝えてくれる?」
【うん。・・・なぁに?】
「ありがとう、って!──ばいばい、おかーさん!いっぱいぎゅーってしてくれて、ありがとう!」
アサシンも、未練を残さず退去する。怨霊、悪霊の集合体たる彼女達が笑顔で立ち去れたのは、そこに確かな温もりと暖かさがあったからだろう。・・・血の繋がらない、親子の絆の価値を。リッカは知っているから
「じゃあボクも帰る!どうだったどうだった?ボクの活躍は凄かった?強かった!?」
【凄かったよ!敵の時は!】
「凄かったな。敵の時が」
「どーいう事なのさー!!」
「──ははははっ。じゃあ、また会おう。アストルフォ、俺の、自慢のサーヴァント」
「──うん!また会おう!はじめて会ったけど、運命の鎖で繋がれてそうな君達!」
「鎖とか重すぎではないですかな?」
アストルフォ、退去。彼は弱く、敵では厄介だが・・・この闘いで初めて、ジークの笑顔を引き出せたサーヴァントであった。
「それでは、俺も退散しよう。・・・マスター、そして管理者殿。君達が邪竜であったなら・・・俺はきっと、竜と解り合えただろう。そうすれば、俺は不死身ではなかったかもしれないな」
「・・・それでも、貴方は絶対に誉れ高き英雄となるだろう。弱きを懸命に助け、生命を失う恐怖に立ち向かう・・・」
【正義の味方に!ね、シッダールタくん!】
「然り。道は、一つではないでござるよ。あなたが歩む道は、必ずや誇り高いものでありましょう」
「・・・感謝を」
短き挨拶。しかしそこに込められた万感の想いを示し・・・ジークフリートは、静かに消え去っていった。
「それでは、私もこれで。──時にリッカ殿。そちらにいる私の生徒の顔ぶれは・・・」
【ヘラクレス、アキレウス、イアソン・・・それくらいかな?ヘラクレスは私、アキレウスは私の友達、イアソンはドライバーの師匠だよ!】
「成る程。──医療に精通するマスターがいるのなら、アスクレピオスを召喚する事をお勧めいたします。医術、医療という点では、彼は私以上ですよ。・・・やや偏屈ではありますが、ね」
最後まで、後進の指導を忘れない。アイリスフィールという医療魔術の存在に、新たなる師事が生まれるやもしれぬ提案を残し、大賢者はにこやかに去っていった。
「・・・弟子、か。このオレが、誰かに手取り足取り教える立場になるとはね。面白い事もあるもんだ」
【物凄く可愛がってるよ!物凄く強くなっててスタイリッシュだよ!蹴られると一瞬意識なくなるくらい!】
「ハハッ、先生の才能がオレにもあったか?──いやちげぇな。その弟子がきっと逸材だったんだろうな!じゃ、これからも!そっちのオレと楽しくやってくれ!オレは仲良くなったヤツにはとことんあまっちょろいからよ!──いい戦いを、ありがとうな!」
暴虐も虐殺も無い。もう次の戦いもない。本当に──満ち足りた戦いの終わり。それを告げ、アキレウスは消え去った。悔いもなく、後悔もない。英雄として、至上の終わりを迎えて。
「・・・皆、あるべき場所へ。では、次は我等ですかな?ジーク殿」
そして──
「うん。・・・リッカ」
【ん?なぁに?ジークに、シッダールタ君。二人ともニコニコして・・・どったの?】
「いやいや、いやはや。実はそなたに・・・」
【あ!そうだジーク!ジークの友達はどうなったの!?いなかったよね!?】
「あぁ、その事だ。『君に、紹介したい人がいるんだ』。・・・さぁ、行くとしよう」
邪竜となり、飛び立つジーク。シッダールタに手を引かれ、背中に乗るリッカ。
「──君の心残りを、無くしに行こう」
「会いたい人が、待っていた人がいるのでござるよ、リッカ殿」
【・・・え?】
・・・──想いを乗せて、竜は飛ぶ。最後の、救済の地へ──
あーぱー「此処をカルデア到達の領域とします!!」
ジーク(なんかいる・・・ッ)
ギルガメッシュ「遅かったではないか、貴様ら。昔話に花でも咲かせていたか?」
白き花畑に突き刺さった『しゅく!カルデアはここまでやってきました!』という旗を掲げ、待ち構えていた白い聖女みたいな何か。そして──
シッダールタ「然り。積もる話などいくらでも。ですが・・・順序があるのでござる。なぁ、リッカ殿」
【・・・──へ?どゆこと・・・え?】
「──『善き旅路を、歩まれましたな。リッカ殿』」
【────】
此処に、少女の心の。最後の闇が晴らされる──
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