人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

775 / 2547
セミラミス「どうやら、全てに幕は降りたようだ。・・・フン、あの金色も串刺し公も、我が前で王の気概を見せるとは」

ジーク「ベリーサンクスだ、セミラミス。貴女の庭園は厄介で、頼もしかった」

セミラミス「拙い世辞よ。まぁいい。・・・地上への強制転移術式だ。我はこの庭園と共に最後の一時を過ごす。・・・邪魔立てはするまい?女帝足りうるマスターよ」

【ん!ばいばい、セミラミス!】

「うむ」

モードレッド「カメム」

セミラミス「強制転移!さっさと大地に戻るがいい!」



天草「終わった様ですね。あ、私はただの通りすがりです。聖杯を簒奪とかそんなまさか」

セミラミス「・・・・・・」

「金のルーラーですから。お疲れ様でした、赤のアサシン。最後の一時、月見酒などいかがです?」

「・・・・・・八つ裂きにしても飽き足らぬ狼藉でありながら、怒りが沸いてこぬのは。何故であろうな・・・」


告解

「あのカメムシ女め!言わせたんなら最後まで言わせろっつーんだ、バーカ!!」

 

悪口、不完全燃焼。戦いを終え、黄金の粒子となり退去していくサーヴァントの光が、柱となり天と空を彩りし大地に、聖杯大戦のサーヴァントは無事に転移を成功させた。闘いは終わり、最早敵など肉片すら残っていない。金の陣営は役目を終え、そして消え去った。・・・此度の戦いの主役は、ここにいるサーヴァントの再現体、否・・・『英雄達』であるが故に

 

【やっぱり言ってたんだ、カメムシって・・・】

 

「なんかスッゲー言いやすいんだよ、アイツの悪口。・・・父上は、やっぱもういねぇか」

 

「ウ?」

 

「いや、いいんだ。確かカルデアは人類の未来を護る楽園だったか?・・・其処に父上がいる。それだけで、オレはいいんだ」

 

騎士道に邁進し、正しき道を歩んでいるならそれでいい。いずれ、いつか。その騎士道に添える日があるのなら。・・・或いは、もう寄り添っているのなら。

 

「なぁリッカ、そっちにオレはいたりするか?いたとしたら、まぁアレだ。ガンガンコキ使ってやれ!騎士王と一緒にな!」

 

【うん!フランちゃんも、モードレッドも!バイバイ!あと男のアルトリア、アーサーもいるよ!】

 

「ウー!(敬礼)」

 

「じゃーなー!・・・は?男の父上もいるぅ!?」

 

爆弾発言を土産に、モードレッド、フランは退去する。自爆でも、無念の敗退でもない。胸のすくような、凱旋を行いながら

 

「圧制は潰え、魔術師の夢は消えた。黄金の王もまた、次なる愉悦を求めに発ったのだろう。ならば私もいざ往かん!次なる圧制の地へ!!」

 

「ありがとう、スパルタクス。誇り高きその不屈さを、俺たちは忘れない」

 

【楽園にも来てよ、スパさん!圧制とか暴虐とか何処にもない、ギルと姫様の愉快な王道がカタチになってる場所だから!】

 

「それは素晴らしい。いつか目の当たりにするその日まで・・・さらば!!」

 

スパルタクスもまた、次なる反逆を為すために消え去っていく。圧制を敷かぬ王という奇跡。それを前にした時に、彼は一体何を思うのだろうか。

 

「やれやれ。・・・アルテミス様の名代たるマスターよ」

 

【あっ、はい?】

 

「それだけの神威を託された汝の道は、きっとアルテミス様が照らしてくれている。迷わず、惑わず。駆け抜けるといい。きっと聡明で慈悲深き・・・いや慈悲深くはないか・・・実践的な祝福を授けてくれるだろう。狩猟の女神だし」

 

【ソウメイ?ジヒブカイ?・・・あまこーの話かな?エレちゃん・・・は慈悲深いよね。ケツ姉は明るいし、将門公は優しくて頼れるお爺ちゃんでじいじはじいじだし、パールヴァティーは人妻だし・・・】

 

「・・・汝、巫女か何かか?」

 

その言葉を最後に、というか疑問を懐きながら。アタランテは退去する。知らなかった事は幸運であろう。ギリシャ最高クラスの女神は『アレ』なのだから

 

「うーむ。吾輩感動しておりまする。喜劇の上に痛快娯楽!スペクタクルに無双の英雄譚!悲劇の挟まる余地なき物語がこんなにも──愉快であるとは!」

 

「だな。あの面子で、負ける方がおかしかった」

 

「まさにまさに!完全無欠の叙事詩・・・是非私もアンソロジー作家の如く招かれたいのですが如何でしょう?」

 

【いいんじゃない?『ですな!』とか『ですぞ!』しか台詞無いと思うけど!】

 

「喋るヒゲオヤジのbotとか誰得ですかなー!」

 

「やれやれ・・・ともあれ、さらばだ。そして君達には、これをあげよう」

 

「・・・無花果、か?」

 

「英霊であれ、残せるものはあるということだ。・・・そちらの僕に、よろしく頼む」

 

「・・・・・・・・・『ぶっちゃけまして、簡潔さこそが叡知の塊!長話などするだけ無駄な枝葉末節ってことですよ!』」

 

【このおじさん意地でも引用を捩じ込みおった!!】

 

「苦行に挑むバラモンか何かですかな?」

 

「ノルマ達成!それでは皆々様!そして──叙事詩を支える皆々様の旅路が、幸福に満ち溢れておりますように!」

 

おシェイ、アヴィケブロン。共に退場。シェイクスピアが最後に残した祝福は、作家を常に支え続ける沢山の『誰か』に捧げられた祝辞であり、無花果はアヴィケブロンが残した、記憶であるのだろう

 

「それでは、オレも立ち去る。言葉は無用だ」

 

【お前たちとの縁は途切れない。言葉にするも無粋な想いと絆は、確かにある。・・・だよね、カルナさん?】

 

「・・・。オレの心は分かりやすいのだろうか・・・」

 

「いやいや、この娘が特別なのですよ、カルナ殿。スーリヤ自慢の息子にして、誉れも高き施しの英雄殿」

 

「──その言葉、忘れはしない。人類至上の答えを得た者の魂を宿す自然の寵児よ。あなたの願いが叶うことを祈っている」

 

カルナ、退去。その言葉は簡潔なれど、溢れんばかりの労りと労いに満ちていたのは、一目瞭然に他ならなかった。

 

「おかーさん」

 

そして、ジャックも、また。だが、彼女たちに、哀しみはない

 

「そっちのわたしたちを、いっぱい暖めてあげてね。あと・・・わたしたちに祈ってくれた人に逢えたら、伝えてくれる?」

 

【うん。・・・なぁに?】

 

「ありがとう、って!──ばいばい、おかーさん!いっぱいぎゅーってしてくれて、ありがとう!」

 

 

アサシンも、未練を残さず退去する。怨霊、悪霊の集合体たる彼女達が笑顔で立ち去れたのは、そこに確かな温もりと暖かさがあったからだろう。・・・血の繋がらない、親子の絆の価値を。リッカは知っているから

 

「じゃあボクも帰る!どうだったどうだった?ボクの活躍は凄かった?強かった!?」

 

【凄かったよ!敵の時は!】

 

「凄かったな。敵の時が」

 

「どーいう事なのさー!!」

 

「──ははははっ。じゃあ、また会おう。アストルフォ、俺の、自慢のサーヴァント」

 

「──うん!また会おう!はじめて会ったけど、運命の鎖で繋がれてそうな君達!」

 

「鎖とか重すぎではないですかな?」

 

アストルフォ、退去。彼は弱く、敵では厄介だが・・・この闘いで初めて、ジークの笑顔を引き出せたサーヴァントであった。

 

「それでは、俺も退散しよう。・・・マスター、そして管理者殿。君達が邪竜であったなら・・・俺はきっと、竜と解り合えただろう。そうすれば、俺は不死身ではなかったかもしれないな」

 

「・・・それでも、貴方は絶対に誉れ高き英雄となるだろう。弱きを懸命に助け、生命を失う恐怖に立ち向かう・・・」

 

【正義の味方に!ね、シッダールタくん!】

 

「然り。道は、一つではないでござるよ。あなたが歩む道は、必ずや誇り高いものでありましょう」

 

「・・・感謝を」

 

短き挨拶。しかしそこに込められた万感の想いを示し・・・ジークフリートは、静かに消え去っていった。

 

「それでは、私もこれで。──時にリッカ殿。そちらにいる私の生徒の顔ぶれは・・・」

 

【ヘラクレス、アキレウス、イアソン・・・それくらいかな?ヘラクレスは私、アキレウスは私の友達、イアソンはドライバーの師匠だよ!】

 

「成る程。──医療に精通するマスターがいるのなら、アスクレピオスを召喚する事をお勧めいたします。医術、医療という点では、彼は私以上ですよ。・・・やや偏屈ではありますが、ね」

 

最後まで、後進の指導を忘れない。アイリスフィールという医療魔術の存在に、新たなる師事が生まれるやもしれぬ提案を残し、大賢者はにこやかに去っていった。

 

「・・・弟子、か。このオレが、誰かに手取り足取り教える立場になるとはね。面白い事もあるもんだ」

 

【物凄く可愛がってるよ!物凄く強くなっててスタイリッシュだよ!蹴られると一瞬意識なくなるくらい!】

 

「ハハッ、先生の才能がオレにもあったか?──いやちげぇな。その弟子がきっと逸材だったんだろうな!じゃ、これからも!そっちのオレと楽しくやってくれ!オレは仲良くなったヤツにはとことんあまっちょろいからよ!──いい戦いを、ありがとうな!」

 

暴虐も虐殺も無い。もう次の戦いもない。本当に──満ち足りた戦いの終わり。それを告げ、アキレウスは消え去った。悔いもなく、後悔もない。英雄として、至上の終わりを迎えて。

 

「・・・皆、あるべき場所へ。では、次は我等ですかな?ジーク殿」

 

そして──

 

「うん。・・・リッカ」

 

【ん?なぁに?ジークに、シッダールタ君。二人ともニコニコして・・・どったの?】

 

「いやいや、いやはや。実はそなたに・・・」

 

【あ!そうだジーク!ジークの友達はどうなったの!?いなかったよね!?】

 

「あぁ、その事だ。『君に、紹介したい人がいるんだ』。・・・さぁ、行くとしよう」

 

邪竜となり、飛び立つジーク。シッダールタに手を引かれ、背中に乗るリッカ。

 

 

「──君の心残りを、無くしに行こう」

 

「会いたい人が、待っていた人がいるのでござるよ、リッカ殿」

 

【・・・え?】

 

・・・──想いを乗せて、竜は飛ぶ。最後の、救済の地へ──

 

 

 

 




あーぱー「此処をカルデア到達の領域とします!!」


ジーク(なんかいる・・・ッ)

ギルガメッシュ「遅かったではないか、貴様ら。昔話に花でも咲かせていたか?」

白き花畑に突き刺さった『しゅく!カルデアはここまでやってきました!』という旗を掲げ、待ち構えていた白い聖女みたいな何か。そして──

シッダールタ「然り。積もる話などいくらでも。ですが・・・順序があるのでござる。なぁ、リッカ殿」

【・・・──へ?どゆこと・・・え?】

「──『善き旅路を、歩まれましたな。リッカ殿』」

【────】

此処に、少女の心の。最後の闇が晴らされる──

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。