人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギル「霊基の強化の為に神性を付けた試みは評価せんでもないが、それも相手による良し悪しと知るがいい。安易に数値だけを見た付与が何れ程愚かかは──今貴様らが体験している通りよ」

ギルが担当するサーヴァント、それら全てが指ひとつ動かせず束縛されている。付与された神性はアキレウスへの対策由来のものであったが──もれなく神性に真価を発揮する天の鎖の餌食となったのだ。下手をすれば付与される前の方が骨があったわ、と嘆かわしげに王は首を振る

フォウ(わー、神性が仕事してるなー)

──神性見てエルキドゥさん余裕でした・・・っ!手抜きではないのです!どう考案してもこれが一番早かったのです!

《最適解を選ぶは怠惰ではない。むしろ英断だぞエア。全く、これだから神性はデメリットスキルなどと吹聴されるのだ。神の血などが役に立った局面、我が参加せし戦争の記憶の何処にも存在せぬわ!》

──いつも出来るだけ難関かつ果たせれば確実な勝利を掴める手段を選んでいるつもりなので、あっさりな勝利はなんだか身体がむずむずしますね・・・研鑽なき勝利はくすぐったいですが、王とフォウの身の安全には代えません!それでは、〆をお願いいたします!

《うむ。次に強化されるならばせめて魔力放出にするのだな。それと神性は外すがいい。我等が為すのは蹂躙であり作業など願い下げなのだからな!》

その戦闘時間約一分。慈悲なき御機嫌王の手により、一騎一騎頭蓋を砕かれる再現体であった──

──あれ?いち、に、さん・・・

《・・・む?どうしたエア、撃墜数カウントはよせ、今さら数え・・・──》

──シェイクスピアさんの再現体がいらっしゃらない・・・!?

《・・・む。もしや分断を試みたか?──まぁ心配はあるまい。何故ならヤツにつく護衛はあの覚者よ。それが真ならば──》


志なき反逆

「先手必勝──油断大敵!」

 

バーサーカー、スパルタクスを前にしたジーク、そしてリッカが選んだ手段。それは初手における全身全霊、躊躇いなき一撃必殺。宝具を使用した決戦の決着である。かのバーサーカーは痛め付ければ痛め付ける程力を蓄え、攻撃という圧制に大いに反逆を行う。戦いを楽しんだり血沸き肉踊らせている暇は無いのだ。聖女の護り無い今、万が一にでもマスターたるリッカが消し飛ばされれば全てが終わりなのだ。出し惜しみする理由など何処にもない

 

【おぉおぉあぁあぁあぁあッ!!『爆発しちゃう!(ディアナ・セレーネ)』───!!】

 

黄昏色のエーテルを解放し、天まで届く刃と為すジーク。彼が力を借りし英雄の最高の奥の手を、仲間を護り勝利を掴むために全解放した一撃を生成し深く踏み込む。ガルバニズムにより、魔力効率を循環させ多数の連射を実現する一撃。片やリッカは全身の魔力を拳に凝縮させ、青白き輝きの全解放を極限まで溜め込む。月女神の祝福を魔力として全霊と共に放つ物理的な殲滅的狂気の発露。月の祝福を敵対者の災いとする一撃を、ジークと共に放つ。バーサーカーたるスパルタクスを、一撃にて吹き飛ばすための必殺技──

 

「やる気満々!『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』──!!!」

 

【『私の想い(ノヴァ)』アァアァアァアアァアァーーーーッッッ!!!!】

 

落陽に至り、邪竜を滅ぼす剣の一撃、月の女神の祝福砲。二人の持てる最大火力が合体し、絶やさぬ笑みのスパルタクスを呑み込む。並のサーヴァントならば受け止める処か核すら残らぬ至高の一撃に呑み込まれたバーサーカーに、生存の芽はなく一たまりもない・・・筈であった。そう、普通のサーヴァントならば即死の一撃であったのだ

 

『(ニッコリ)』

 

そう、筋肉(カレ)は全くもって普通のサーヴァントではない。圧制には反逆を。理不尽には蜂起を、傷には誉れを、忍耐には勝利を。其処に意志が介在するかなど些細な問題でしかない。彼が彼である事に理由はいらない。彼が彼であるならば、何を為すべきかは全身が、細胞の一片が知っているのだから。

 

「な──」

 

【嘘ぉ!?】

 

『彼は堪えきった』。当然のように半身を吹き飛ばされ全身を蹂躙されながら。当然のように笑みを絶やさず。勝利の為の忍耐を良しとしたバーサーカーは、その身に二人分の致命的な一撃を受け入れた。──意志は無くとも、スパルタクスは知っているのだ。己が凱歌の歌い方を。勝利を納める戦い方を

 

同時に人間の形を保っていたその姿がおぞましき異形に変わる。爆発寸前の風船が如く溜め込み膨らんだ身体は膨張し、その腕は八つに増え、巨大なティラノサウルスがごとき上顎と下顎が肩から生え、見上げるような巨大へと変貌する。自重を支えるため無数の副脚が生え、眼球は肩と腹部に新たに生える。スパルタクスを襲った極大の攻撃は、そのまま彼の反逆の糧と、エネルギーへと変換されたのだ。それがチャージされたバーサーカーの姿は、怪物と呼んで差し支えない。

 

「これでも足りないか・・・!ならば二度三度打ち込むまでだ!」

 

すかさずバルムンクを連射するジーク。巨大な異形に打ち込まれる落陽の一撃。巨体を抉り取り、削り取り、破滅をもたらす一撃が何度も何度もバーサーカーを抉り取る。削りとり、吹き飛ばし、破壊する。並のサーヴァントならば十は消滅する一撃の波状攻撃。異形と化したスパルタクスですら進むことが叶わない一撃を叩き付けていくジーク。──だが。

 

『(ニッコリ)』

 

スパルタクスは止まらない。堪えぬ笑みを浮かべ、自らを圧制する彼方への反逆者を討ち滅ぼさんと異形にて進撃する。決してジークが、ジークフリートが貧弱であり脆弱なのでは決してない。スパルタクスの耐久が規格外であり、強靭に過ぎるのだ。最早ここまで至った彼を吹き飛ばすには、対城宝具か対界宝具が必要な領域にまで変貌しきっているのだ

 

「不味い、爆発の体勢に入った・・・!この一帯が更地になる、リッカ!俺の背に!防御宝具の用意はあるか!」

 

蹲り、同時に練り上げに練り上げられた魔力が隆起し励起し辺りを震撼させる。スパルタクスの顔が付いた異形が、辺り一帯を消し飛ばす反逆の一撃をする時がやって来たのだ。こうなれば阻む手段は無い。迅速な撤退か防御に徹するかしか打つ手はない。ジークがリッカを庇い、前方に立ち塞がる。最早離脱か防御しか手段が無い・・・──そう、本来ならばそれしか打つ手はない筈だった

 

【確かエルキドゥがやってくれた時は核を引きずり出した・・・!核さえあるなら何度でも堪えるなら、逆に言えば核さえ撃ち抜けば・・・!】

 

かつてのバレンタインの戦いを思い出す。スパルタクスは強靭なれど不死身ではない。彼もまたサーヴァント、消滅と無縁では決してない。必ず致命傷、反逆の失敗はあるのだ。それをもたらすには──彼の核を、一点にて討ち貫くしか無い。爆発する彼、爆発を一気に行う為の瞬間の凝縮の極限に合わせ、穿てば活路は開ける──!

 

【逃げはしない、背は向けない──!】

 

月女神の弓矢を展開し、いつもの様な光の射撃に、ガンド・・・指向性のスタン魔術を込める。凝縮と縮退を繰り返し痙攣を始めたスパルタクスを前にして、祝福と魔力を束ねガンドの矢を、一直線に放つ。──逃げも隠れもせぬと告げる様に、常に笑顔にてこちらを見詰める、スパルタクスの眉間に目掛け──

 

膨張し、膨張し、圧政者への最大最高の一撃を放たんと全身のエネルギーを凝縮し今爆発せんと、その刹那──爆発の為に、全ての魔力を内に込めたその瞬間。全てが一瞬停滞したその瞬間。──すぐ其処に迫る死の恐怖を、断崖を飛翔せし起死回生の一撃が、放たれた

 

【其処だぁッ!!!】

 

ガンドを練り上げたレーザーアロー。爆発の瞬間の一瞬を駆け抜け、臨界のスパルタクスを貫く。数瞬の静寂、一瞬の世界の停止。訪れるのは反逆凱歌か、勇気の結実か。──答えは、訪れた

 

『──、──』

 

巨体が、停止した。訪れし愛の爆発、反逆の咆哮の一瞬に穿たれた一瞬の勇気。それを讃えるかのように、それに応えるかのように。反逆の英雄の全身全霊は、留まったのだ

 

【今だよジーク!!──貫けぇえぇえ!!!】

 

「あぁ──!これで決まりだ──!!」

 

すかさずつがえし、アルジュナより受け取りし渾身の矢を構え、全身全霊にて引き絞り核目掛け、内部のスパルタクスに目掛け撃ち放つ。炎神の矢を、アルテミスの弓にて放つという必殺の一撃。これより上はない渾身の一射。誘導式のミサイルがごとき一撃が、スパルタクスの顔面ごと、脳の霊核を穿ち貫いた。放たれた矢は飛来した後、リッカの手に戻る。核を破壊され、ぐらりと傾く巨体。やり場のなくなった膨大のエネルギーを──

 

「おぉおぉぁあぁあぁあぁあぁ──!!!!」

 

リッカの勇気に、剥き出しの気迫にて応える。竜の心臓を励起させ、バルムンクの極限の一撃にて残骸を呑み込み、今度こそ破壊の反逆を潰えさせる。巨体を覆い尽くす全力全開の一発が、今度こそスパルタクスの全身を吹き飛ばし、沈む陽が如くに消し去ったのだ。

 

・・・──そして、此処で勝敗を分けたもやはり『意志』であった。もし此処にスパルタクスの意識があったなら、その思考が、魂が再現されていたのなら。例え核を穿たれようとも動きが止められようとも『反逆を完遂した』のだ。もしそうなれば、此処に勝利していたのはスパルタクスであったのは間違いない

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・──俺達の、勝ちだ・・・!」

 

【ひやっひやしたぁ・・・!ありがとうアルテミス、アルジュナ・・・カルデアの皆・・・!】

 

・・・──崇高なる志なき反逆は無秩序の行使。小さくとも偉大なりし勇気に、勝る道理は何処にも無かったのである

 

反逆とは、虐げられし弱者を想い立ち上がる者が掲げる誇りの刃。魂なき再現体に、その真髄が果たせる筈が無いのだから──




ミレニア城塞にて

シッダールタ「お帰りなさい。此度も全員揃っていらっしゃり大変素晴らしきかな。此方もアクシデントあれど、問題なく」

シェイクスピア「おぉ!!仏に感謝しなくては!!いやはや死ぬかと思いましたぁはっはっは!!」

分断を試みたが故に素早くシェイクスピアの安全を確認に戻った一同を待ち受けていたもの。朝のご飯を作るシッダールタとサンドイッチを頬張るシェイクスピアであった。無事に生きていたらしい

リッカ【良かった、おシェイ壮絶に急死とかなってたかと思った!】

ジーク「フラグ回収ならずで何よりだ。シッダールタも、お疲れ様」

シェイクスピア「確かに正直申し上げて自分が襲いかかってきた時はこれまでと!城塞の上で焦りましたがなんとシッダールタ殿が振るいし古代インド武術カラリパヤットが火を吹き!あちらの吾輩全身を砕かれ城塞より投げ出された吾輩を見て思いましたな!あーこっち来て良かったなと!」

リッカ【古代インド武術!?カラリパヤット!?】

ジーク「知っているのかリッカ・・・!」

ケイローン「かの覚者を創始者とする古代インド武術を修めているとは・・・あなたの主はインドへの理解が深かったようで」

シッダールタ「ははは、通信教育の賜物でござるよ。それに戦闘などとはとてもとても。スタスタ歩いてぺちぺちしてただけでござる」

シェイクスピア(スタスタあるいてメキドゴの間違いでは無いですかな?あの人心を把握し尽くした動き、果たしてこの人類に相手となるものがいるのかという印象しか懐けませんでしたが!)

ケイローン「ともあれありがとうございます、シッダールタ殿。この後戦力が増強できるはずなので、シェイクスピアは私から離れないでください」

シェイクスピア「はい教授、離れるとどうなるのでしょう吾輩」

「私とて心苦しいです。仮初めの存在とはいえ、世界に名高き文豪をハリネズミにするなど・・・」

ジャック「解体♪解体♪」

シェイクスピア「ワクワクしてるぅ・・・了解です!」

ジーク「強かったんだな、シッダールタ。・・・リッカとどっちが強いんだろう?」

リッカ「──試したいとは思ったけど、いいや。なんだか・・・貴方にはどんな暴力も振るいたくないなぁ、って」

シッダールタ「えぇ。全く同じ気持ちですよ。リッカ殿。ささ、サンドイッチを食べなされ。大変お疲れ様でした」

リッカ「わぁい!」

ジーク「・・・うん。俺も、それが一番いいと思う──」

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