カルナさん「アルジュナ、今日はホワイトデーだ。リッカへのお返しは用意しているか?」
アルジュナ「む・・・確か、感謝を伝えるべき日だったな。私は・・・悩んでいる」
ラーマ「ほう、悩むとな?」
アルジュナ「彼女がくれたチョコ・・・それほどの信頼と親愛に応えられるものを、私は持っているのかと。応えられるのかと。失礼にならないかと考えてしまい・・・」
カルナさん「・・・そうか」
「?カルナ、何処へいく」
「ならば率先して手本を見せよう。オレが返したならば、お前もできない筈はない。・・・決して無理難題ではないのだ。躊躇うな、アルジュナ」
アルジュナ「カルナ・・・」
カルナ「ついてはカーマに助力を乞わねば。・・・リッカは何処にいるのだろうか・・・」
そして、カーマのリッカ察知から数分後・・・
「リッカ、少し時間を貰いたい。構わないだろうか」
ホワイトデーにて、数多の御返しを受け取りに奔走するリッカを呼び止める鋭い声に、彼女は思わず立ち止まる。その声音は短くとも揺るぎない決意を含み、決して素通りしてはならないと思わせるほどに真摯で誠実であったからだ
「ほぁ?・・・カルナさん?どうしたの?」
その声の主はカルナさん、楽園の最強クラスの戦力たる聖杯にてリミッターを解除されたエクストラサーヴァント。カルナ・オリジンであった。身体を隙なく覆う黄金の鎧に、神殺しの槍を両立させたインド神話の有り得ざる奇跡の姿を聖杯にて再現した彼が、マスターのリッカを呼び止めたのだ
「あぁ、すまない。大した用事では・・・いや、オレにとっては重大だがリッカにとっては大した用事では無いという意味だが、誤解を招くようならば申し訳ない。・・・そうだな、暫し待て」
言われるがままにカルナさんの前でピタリと停止するリッカ。カルナさんは珍しく何を言うべきか、何を伝えるべきかを思案している様子で、その鋭き瞳にて彼女を射抜いている。知らぬ人が目の当たりにすれば怒っているようにしか見えない彼だが、そんな事はなく。彼は次なる句を慎重に吟味しているのだ
「・・・おはよう。今日もいい朝だ。広く広大な楽園にて、お前とこうして顔を合わせられた」
「あ、うん!私もカルナさんがのんびり過ごせてくれて嬉しいよ!」
カルナさんが幸せそうでいてくれるだけで嬉しい、それはリッカの実直な願いである。黙々とゴミ拾いをしてくれていたり、ぼーっとしていてくれたり、アルジュナやカーマやラーマと楽しく話してくれていたり。そんな姿を見ているだけで、リッカは本当にちょっと涙ぐんでしまう。そしてカルナもその言葉に頷き、意を決して言葉を紡ぐ
「──リッカ。お前は先月、有り得ない奇跡をオレにもたらした。覚えているか?一ヶ月前の今日だ」
「え、一ヶ月前の・・・バレンタイン?あ、チョコの事?」
勿論リッカはカルナさんにもチョコを渡した。親愛を込めたカルナさんが喜んでくれるような気持ちばかりのチョコ・・・ぞうさんチョコと神殺し槍チョコバーである。少しでも和んでくれればいいなと作り上げたものであり、じゃんぬやエミヤにも協力を頼んだ力作であった記憶がある
「そうだ。──正直な話、オレは深く感動した。分け隔てなく施し、そして感謝を告げるお前の姿に、オレは人間としての輝きと素晴らしさを見たのだ。授かりの英雄たるアルジュナだけでなく、本来卑しい身分であるオレにまで心の籠ったチョコをくれた。その事に対して、オレはどうしても直接お礼を言いたかった」
そんな大袈裟な、と言う前にカルナさんは深く深く頭を下げた。カーマや皆から教わった、理想的な角度たる御辞儀である。最敬礼と言った方が正しいかも知れない
「ありがとう。このような素晴らしき場所に、このような素晴らしきマスターを持てた事はオレの最大最高の幸運だ。やはりオレは、マスターに恵まれる幸せものらしい。心から感謝している」
「いやいやいやいや!そんなこちらこそ!カルナさんはいてくれるだけで安心というか、槍技の参考にもさせてもらったし感謝するのは私の方です!はいだからそんなに畏まらずにお願いいたします!はい!」
チョコくらいでインドの大英雄にこうまでされては逆に申し訳ない。インドラじゃあるまいし見返りがほしかった訳でもない。感謝に感謝を返されるのはなんと言うかくすぐったいのでリッカは顔をあげさせる。同時に、カルナさんは顔を上げ更なる決意を示す
「──このように、マスターからの信頼の証を僅かばかりの言葉で返してしまうのは非常に心苦しい。と言うわけで、今からオレは少しばかり席を外す」
「ふぁ?」
「ここで待っていてほしい。決して移動する事なくオレを信じていてくれ」
それだけを告げ、楽園の部屋に引っ込んでいくカルナさん。その物言いにポカンとしながらも言われるままに待つリッカ。・・・カルナさんが姿を現したのは、それから数分、三分後くらいの事であった
「待たせたな。準備がいいとは言えない男だが、こちらを受け取ってくれ」
「え、あ、・・・うん、うん!?」
そうしてカルナさんから手渡されたもの・・・それは『黄金のピアス』であった。地球上のどこにも存在しない素材にて、極めて荘厳かつ圧倒的なオーラを放つ品物・・・紛れもなく、宝具たる存在感である。いや、これはもしかしなくても・・・
「あ、あ、あの。これ、これ・・・カルナさんの、黄金の鎧の一部の耳輪・・・」
「あぁ。持ち合わせで作ったものだが、巧く出来ているだろう?オレには珍しく会心の出来だ。ダ・ヴィンチやロマンに手伝ってもらった部分もあるが、それでもオレの手によるものだと自負している。・・・──いや、本来ならその場で鎧ごと渡そうとも考えたが、お前には漆黒の龍鎧があり、二つも鎧は不要だと考えてな。頼光やヘラクレスのように、オレもお前に距離と関係無く繋ぐものを遺してみようと考えたのでな」
リッカ、呆然とピアスを見つめる。カルナさんの気遣いにて打ち直されたそれは魔術的価値では到底図れないものだ。触媒としてカルナさんを確定させる聖遺物であり、値段などつけられないであろうが、仮定した場合、三代までの借金まみれの貴族の負債をこれだけで返済できるだろう。──インドのカルナさんの鎧の一部とは、そういうものなのだ
「女性として自分を磨くお前を、少しでも輝かせたいとイメージして打ち直したんだ。オレもそれくらいの気が利く男だと言うことだ。そのピアスを見たら思い出してほしい」
「カルナさん・・・」
「この輝くピアスの何倍も・・・──お前は魅力に溢れた人間であるのだと。このピアスは、お前の人間性と輝かしさの証明であるのだと。お前はとても、魅力的な女性であると、オレは断言しよう」
──カルナさんからしてみれば、返礼に対して全力で返した結果であり、きっちりと誠実に言葉を返した当然の返礼であるのだが
「はっ、あの、その・・・──ありがとうございましゅ・・・」
「あぁ、マシュにも見せてやってくれ。誰にも恥じることのない力作だ。きっとお前を際立たせてくれるだろう。耳に穴を空ける必要の無い、ロマンとダ・ヴィンチの驚異的な技術にも注目だ」
照れと恐縮で顔を耳まで真っ赤にしながら、カルナさんに一礼しトコトコと歩いていくリッカの後ろ姿を、カルナさんは誇らしげに見送るのであった・・・──
カルナさん「無事に渡すことが出来た。協力感謝するぞカーマ。きっと喜んでくれた・・・筈だ。オレはそう信じよう」
カーマ「それは良かったです。慣れないことをした甲斐がありましたね、カルナさん」
カルナさん「あぁ。渡されたチョコの甘さと、人間の優しさをオレは忘れないだろう。今後も一層、オレも楽園の為に奮闘しよう」
カーマ「その意気です。私はいなかったので、その分の想いも込めて渡してあげてくださいね」
アルジュナ「・・・それでは、私も受け取ったものに恥じぬものを」
ラーマ「よし!じゃあ余もシータと相談して、とびきりの御返しを渡すとしよう!やるぞー!」
カーマ(・・・後で何を渡したか聞いてみましょうか。変なものじゃないならいいんですが・・・)
その後、お洒落な特注ピアスをつけたリッカが、スズカやメイヴにべた褒めされ照れでしわしわになっていたという──
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