人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「抜け駆けですか・・・やりますね」


「・・・仕方ありません。出会い頭に目と目が逢う、で魅了、あるいは石化させましょう・・・」


「あ、おっきいおねーさんだ」
「おっきなおねーさま。お茶会はいかが?」

「くふっ――!」


所長

とある日、シミュレーションルームにて

 

 

 

「これより――カルデア職員、フィジカル強化鍛練を開催する!!」

 

 

カルデアを治めし王、器たるギルガメッシュが黄金のジャージを着込み声をあげる

 

 

「裏方作業とはいえ、貴様ら職員どもの身体管理は疎かにできぬ。運動不足は贅肉、肥満の元でもあるからな。適度な試練なき贅沢は魂を腐らせる!そこで!シミュレーションにて、各コースを設け貴様らを鍛え上げることにした!」

 

竹刀を叩きつけ、説明の弁を振るう

 

 

「人理を修復した後も貴様らの未来は続く!顧客たる我が貴様らの面倒をいつまで見れるかは解らん。所詮我は受肉を果たしておらぬ故な!する気はないぞ、今の時代に受肉を果たせば導き出す結論は一つであるからだ!」

 

――言い方からして、器はしたことがあるのか、受肉

 

「そんな話はよい!順に貴様らを鍛える先達を雇った!ウルク、スパルタ、ケルト、新撰組!どれも必ず骨がある鍛練になるだろうよ!」

 

 

「スパルタは!より良き鍛練、より良き休息を学んでいただきます!英雄王にて整えられた万全の環境にて培われたあなた方の肉体はッ!今までの五倍の筋肉を付与するでしょうッ!」

 

担当者は、無論レオニダス

 

「俺は、まぁあれだな。サバイバル技術とか生き抜く為の知識を教える。影の国に向かったときのトライアスロンもそのうちやらせてぇな。俺の走るフォームは結構綺麗なんだぜ?」

 

クー・フーリンが手を挙げる

 

「俺が教える事はたった一つだ。『誠』の一文字――不退転と度胸を、てめぇらに徹底的に叩き込む!泣き言は聞かねぇ、音を上げたヤツからたたッ斬る!!ここが新撰組だ!!」

 

土方歳三が壁を殴り付ける

 

「そして我、ウルクの完成された無駄なき運動を貴様らに伝授する!これを乗り越えれば、貴様らは神のいやがらせにも負けぬ肉体を手にしていよう!」

 

竹刀を突きつける

 

「一日に三時間!人理修復までの長いスパンを見据え貴様らを鍛えていくぞ!案ずるな、褒美は貴様らの望む総てがあろう!――さぁ行くぞ!死にもの狂いで励め、職員!」

 

 

「「「「「「「うぉおぉおおぉお!!!!」」」」」」」

 

 

嫌がらせではなく、自らを案じた上の提案に猛る職員たち

 

――男たちが熱く汗を流す、その一方で

 

 

 

 

ダ・ヴィンチちゃんの魔術工房で、一人の少女が勉学に励んでいた

 

 

 

「ここの理論がこうなって、道筋がこうだから」

 

 

カルデア所長、オルガマリーがダ・ヴィンチちゃん手製の魔術パズルを解いていく

 

「――解明。こうね」

 

複雑怪奇なパズルを、かちりと解き明かす。拘束がとけ、パーツが飛び散る

 

「おめでとー♪ダ・ヴィンチちゃん手製のパズルをこうも早く解こうとは!流石は愛弟子、飲み込みと才能は抜群だね!」

 

「何言ってるんですか。天才のあなたには児戯でしょう、こんなもの」

 

「『児戯に真摯に取り組んだ』君の姿勢を私は評価しているのさ。小さな事こそ細やかに丁寧に。それが万物に影響を与える存在にかわる一歩なのさ♪」

 

「……ありがとうございます。やれることはやらないとね」

 

「これなら道具作成をモノにする日も遠くはなさそうだねぇ。よし、休憩だ愛弟子。君、一週間は不眠だろう?そろそろ頭に甘味が足りなくなっている頃合いだ」

 

――思い返す。そういえばオルレアンは不眠不休だったっけ。平気だから忘れがちでいけない

 

「解りました、師匠。また後で」

 

「はいはーい。またね、愛弟子~」

 

手を振り、工房を後にするオルガマリーであった

 

 

「――ん。美味しい」

 

 

テーブルクロスにて産み出したチョコレートパフェを食べながら、オルガマリーは思いを馳せる

 

 

時代修復は、一つだが成功した。力を合わせて、フランスをとりもどした

 

――先頭に立っていた二人を思う。マシュにリッカ。半人前でありながら、偉業を成し遂げた二人

 

本当なら、自分こそがしなければならない事を、……二人の友は、成し遂げてくれた

 

「……ありがとう、二人とも」

 

48人目のマスター。明るく快活で、挫けぬ少女

マシュ・キリエライト。気弱で優しく、けして折れぬ少女

 

……不謹慎だけど。この二人が生き残ってくれて、今は良かったと思う

 

――魔術師と呼ばれる他のマスターなら、きっと私なんて見下しているだろうから

 

無理はない。自ら以外を低く見るのが魔術師だし、自分だってそうだったから

 

もしかしたら、レイシフト中に空中分解していたかもしれない。協調性なんてない、プライドの塊みたいな連中のマスターならば

 

 

……あの、人間的に明るい彼女だからこそ、フランスを突破できたのだと思う

 

二人はよくやってくれた。期待以上に。――私の、自慢の友達だ

 

……ならば、自分もやらなければなるまい。彼女たちの奮闘に報いる敢闘を。後方支援ならば、万全の後方支援を

 

 

「まったく、まだまだ手間がかかるんだから」

 

幸い、無茶と無理をできる身体は……あの王様が与えてくれたのだから

 

「……ギル」

 

英雄王ギルガメッシュ。私の運命を変えてくれた、無敵の王様

 

――初めて私を褒めてくれた、優しい王様

 

あの人の期待に、応えたい。あの人が与えてくれた、二度目の生で、必ず

 

あの人に、一言。大儀である、と言ってもらえるだけで……生きていて良かったと思えるから

 

「……――」

 

深い、敬愛と尊敬を

 

いつか、あの王様の自慢の存在になれるような自分になりたい。

 

目標は高いけど、できるかぎりやってみよう

 

誉められたくて、ヒステリーに辺りに当たり散らすアニムスフィアはもう死んだ

 

ここにいる自分は、カルデア所長。誰でもない、オルガマリーなのだから

 

 

「……あっ!溶けてるじゃない!」

 

長々と考えていたら、パフェが崩れ始めていた。あわてて頬張る。とろっとした甘味が心地よい

 

そんな余暇を過ごすオルガマリーに、一人の英雄が声をかける

 

「こんにちは、働き者のお嬢さん?相席、よろしくて?」

 

フードを下ろした水色の髪の女性。――キャスターの魔女

 

「メディア女史……」

 

「うふふ、畏まらないで。続けていいわよ?」

 

「は、はい」

 

視線を感じながら、パフェを頬張る

 

「……あなた、聖杯と融合した存在なのですってね?」

 

「!」

 

核心を突く一言に顔をあげる

 

「ダ・ヴィンチから聞いたわ。道理であなたから、不思議な感じがすると思った」

 

「……はい」

 

「隠さないのね?」

 

「事実ですから。私は、もう、普通の人間ではありません」

 

「……そう。貴方、これから真っ当には生きられないのではないかしら?聖杯と融合した人間なんて、魔術師達からしてみれば奇跡もいいところよ?」

 

――解っている。確実に自分は封印指定に定められ、協会につけ狙われるだろう

 

ホルマリン浸けになるかもしれない。まともな生活には、戻れないだろう

 

でも

 

「構いません。私はカルデアの所長。カルデアと共に生き、カルデアと共に死ぬ覚悟は出来ています」

 

「へぇ……?」

 

そうだ。人理を取り戻し、カルデアが正しき運用を果たしたならば、自らも役目を終えよう

 

ホルマリン浸けにでもなんでもなる。総てが終わった後ならそれで構わない

 

――そんな未来を、取り戻すために、今は

 

「今は、私の未来は些末です。カルデア職員と、マスターやサーヴァントを背負い、私は責任を果たすのみ。そのあとは……どうなろうと構わない」

 

そう、決めたから。自分の生き方を

 

「私は止まらない。例え、自分を待つのが標本の未来でも、私達がたどり着くべき場所に行き着くまで」

 

「――――」

 

「その先に、皆を私が連れていく。私は――カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアなのだから」

 

――そうですよね、英雄王

 

 

「――ふふ、私の目に狂いはなかったわ」

 

クスクスと笑うメディア

 

「――ねぇ。貴方が助かる方法を教えて差し上げましょうか?」

 

「?」

 

「簡単な話。『この時代で、唯一の魔術師』になればいい。凡百の魔術師など指先一つで追い払える魔術師に。例えば……神代の魔術をかじる、とかね」

 

「……神代の魔術?」

 

「喪われた技術、この世界の魔術師風情では到達できない高み。……まあ、それを修めた魔女が貴女の目の前にいるのだけど」

 

「それは……」

 

つまり、それは。

 

「――オルガマリー。私をもう一人の師匠にする気はないかしら?」

 

――奇蹟の、申し出だった

 

「い、い、いいのですか……?」

 

「えぇ。珍しく貴方、偉そうでない魔術師なのですもの。もう一人の弟子のマスターとは、正反対の資質もあるしね?」

 

「リッカも、貴女の弟子に……」

 

「何より――貴女の魂、覚悟は好ましい。魔術師ごときにくれてやるのは勿体無いわ」

 

――魔女とすら呼ばれた神代の魔術師。その教えを受けられる

 

「どうかしら?後悔はさせなくてよ?」

 

――そんなの、考えるまでもない

 

「やります!やらせてください!」

 

――私を、もっともっと磨けるのなら

 

皆の役に立てるなら。なんだってしてみせる

 

「ふふ、決まりね。ついてらっしゃい。私の工房に案内するわ。あぁ、パフェは完食してね?」

 

「はい!」

 

――足掻くこと、もがくこと。皆を、頑張って引っ張ること

 

 

――白い華に、希望の華か。彩られてきたな、我の旅路も――

 

 

――それが。『希望の華』である、私の願いなのだから




「・・・貴方は?」


「ん?あぁ。拙者は名もなき農民、刀を振るうが趣味の酔狂ものよ。そこの女狐に、護り手として召喚された」

「英雄王に許可を取ってね。いらなくなったらマスターに譲るつもりだけど、役には立つわ。さ、こっちよ」

「少女をたぶらかすとは、妖術も極まったものよ」

「うるさいわ、合意の上よ!」

「ふ、案ずるな娘よ。こやつはこう見えて根は善良で」

「刺すわよ?小次郎。高速神言からの無慈悲なルールブレイカーがお望み?」

「いや、何も」

「・・・な、仲良しなんですね」

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