人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ヘラクレス「ぬぅう・・・何ということだ。リッカにバレンタインで貰った『ヘラクレスジオラマチョコ~ネメアの獅子との激闘~』にお返すつもりでしたためた『自著・ヘラクレスの生涯~その忍耐と栄光の旅路~』がよもや紛失しようとは・・・挿し絵に結構拘りを持っていた故割とショック。探さねば」

ケイローン「書いたのですか・・・歴史考察書として価千金ですね、それは・・・」

ヘラクレス「愛弟子に贈るものが我が人生の書しか無いとは・・・不覚。来年は我が戦利品フルセットを御返しするとしよう」

「いえ、そのですねヘラクレス。リッカを大事に思うのは良いのですが何事も手心を」

アキレウス「大変だ先生ェ!!ヘラクレス!!俺が、俺がオルガマリーに渡す筈だった、渡す筈だった・・・!!」

ケイローン「・・・盾はリッカに渡していましたね。何を渡すつもりだったのですか?まさか母上の鎧などとは・・・」

「クサントスとバリオスとペーダソスと戦車がねぇ!!」

ケイローン「あなたはライダーの自覚があるのですか?」

アキレウス「だって俺走れりゃ十分だし。弟子の想いには!全身全霊で応えねばだろ先生!!」

「・・・これが英雄観点を現代に写した弊害ですか・・・」


申し訳ありません、私の背中は淑女用なのです──クサントス

馬車をやってみたかった──バリオス

ただの名馬って誉められてるんでしょうか──ペーダソス


素直じゃないさっかさん

「・・・来たか。楽園だろうと地獄だろうと痛快に進むブルドーザーめいたマスターとその御一行め。今度はどんな騒動に巻き込まれた。話だけは聞いてやる。・・・一足先の質問攻めでやや疲れぎみだが、作者の状態などファンには関係無い。いつもの事だ、気軽に話してみるがいい」

 

訪れたアンデルセン、楽園の物語を形にする要請を受け取っている王御気に入りの作家たる少年の姿なる渋い成年ボイスを発する男子である。アンデルセンが居を置く書斎には一片の足の踏み場も・・・否。アンデルセンの傍ら、人一人分が居座れるようなスペースが存在している。つい先程まで人がいたような形跡・・・即ちそう言うことである

 

「何よ、一足先の質問攻めって。あんたのファンに創作現場でも覗かれてたわけ?」

 

「まさしくその通りだ不老不死の仙女!あの後光が眩しく俺の創作を一番近くで見たいと宣う何処かで自己改革を起こした化学反応女がな、さっきまでそこにいて手当たり次第に俺のカルデアで書いた本を持っていったのだ、新しく寄贈しにいくなどといい鼻息荒くな!」

 

その人物評を聞いて思い当たるは只一人。そう、一人で山にいた際読んだり、お医者様に読んでもらったとされる童話、アンデルセン童話ガチ勢殺生院キアラに間違いあるまい。書斎にて憧れの作家に出逢えた事で、心が弾み入り浸っていたのだという

 

「あの女と来たら、絶妙に邪魔にならず的確に御茶と菓子を出してくるから始末に終えん。追い払うにも何もせず創作を見つめるばかり、こちらの欲求を読み取り対処してくる!お陰で迂闊に罵倒もできん、どんな洗剤を使いどんな洗濯機を使ったかは知らんが随分と漂白に力を入れたな!」

 

「語るわね。自分の推しを凄く語ってくるわね・・・全く、節度や貞淑とか無いのかしら」

 

「それぐっちゃんが言っちゃうんだ!・・・あれ、大丈夫?式部。なんだか静かだけど・・・」

 

ぐっちゃんの我が身振り返らぬ感想に突っ込まざるを得ないリッカが紫式部を気にかける。なんだか彼女は書斎にお邪魔してから妙に静かな気がするが・・・何か思うところがあるのだろうか?

 

「・・・すみません、リッカ様。私、いま・・・感動していて・・・!」

 

「感動?」

 

「こうして、こうして憧れの作家の英霊の私生活を覗き見られるというのは!はい!大ラッキー!

 

帰ってきたのはミーハー極まる反応であった。紫式部、物を書き語る者として作家の英霊にはリスペクトを懐いていたらしい。先程とは異なるテンションに、ぐっちゃんは気圧され眼鏡がちょっとずり落ちた程だ

 

「あ、推しのアイドルや声優に出逢えた私達みたいになってる!ミーハーなんだ紫式部!」

 

「そ、そうでしょうか?そうかも・・・。嘗ての平安の頃、生前よりもそうでした。各歌、美文で歌われた方々の知性と才能に憧れる日々でした」

 

文字や言霊を使いこなしてのける文化人達。そんな産み出す創作家達に憧れる紫式部の気持ちは無限大と頷いて見せる。そのアグレッシブさからするに余程嬉しかった様である。見ていて楽しくなるほどだ

 

「紫式部こと藤原香子、精神年齢19才、好みのタイプは在原業平様です!」

 

「テンション乱高下し過ぎじゃないかしらこの読書リッカ(オタクは皆リッカだと思ってる)」

 

『はっ、イケメンだけが取り柄では無い蘭、お側に。イケメンだけが取り柄ではないこの蘭に何か』

 

「いや別に呼んでないから!?何で二回言ったの!?」

 

「成る程・・・その胸に詰まっているのはリスペクトだったのか・・・!!」

 

「あんたも妙な解答に至ってるんじゃないの!そればっかねおっぱいドラゴン!」

 

「それはダメ!イッセーと被る!」

 

「あ、勿論生きた時代は違います・・・憧れの対象、という意味なのです」

 

書斎にてやってきて騒動を届けに来たリッカらに呆れながらも、新しい出逢いと騒動を書き記すアンデルセン。こう見えて、いま彼の創作意欲は高いのである。衣食住、締め切りなしの空間で筆が動かねば作家の名折れと彼は言う。愉快な王に突き付ける叙事詩のアウトプットに奔走しているのだ

 

「あ、あの。アンデルセン様。もしもお気が向かれて新たな著作など綴られた折には、その。ぜひ私の図書館へ寄贈していただけたら・・・などと、虫のいいお話を・・・」

 

「──なんだ。編集者に鞍替えしたか?気持ちは分からんでもないがな。ネタの渦中で書く創作は中々無い、職場に向こうから舞い込むネタというのも愉快なものだ。だが覚悟しておけ。お前が望む物語の寄稿は壮絶な時間がかかるものとな」

 

それはつまり、といいかけた処。コホンと話題を打ち切るアンデルセン。あまり自分語りには慣れていないが故、恥ずかしくなったのだろう。彼は基本、聞き専なのだ。

 

「それで、王お抱えの三流作家に何用だ?聞くだけは聞いてやる」

 

「はい、それが──」

 

そうして事情を説明する。動き出す本、最初の呪本を見付けるために楽園を散策しているのだと。そして同時に、色んなものを見ているのだと

 

「・・・呪本とはな。東洋の魔術はそんな暴走も有り得るのか。波乱の人種が興した技術はやはり一味違うな」

 

「ホントよね。東洋の島国にいる人種は本当に色々おかしいわ。なんなのアレ、なんで個々の感性が吹っ飛んでるの?」

 

「日本人が凄いのはまぁ、母上とかからそうだしね!」

 

文化や武術、発展において日本はどこか凄まじいものを持っている。神秘が人に宿っているのか、ぽかぽかの太陽がのびのび育てたのか威厳ある守護神が見ているからなのかは解らないが・・・外国人の評価は大体『日本やべぇ』である

 

「俺が感知してやってもいいが・・・呪術は解らん。魔術も得手じゃないんでな。と言うわけで、家探しなら好きにするがいい。だが、あまり散らかしてくれるなよ?片付けるのが面倒だからな」

 

「はい!それでは失礼しまして──」

 

了承を得た紫式部が、感知の為の魔術を起動させる。魔力を分け与えし、呪本の魔力を探し当てるために──すると。

 

「はっ、これは!あります!この書斎に複数の呪本!!一冊ではありません!」

 

『いいですね、きんつば、羊羮。日本の菓子は素晴らしい・・・おや、呪本の反応がありますね』

 

「食っとる場合かーッ!」

 

『もぐもぐ反応もぐもぐ!先輩!反応もぐもぐです!魔力がもぐもぐします!先輩!!』

 

「何この健啖だねぇとしか言えないようなオペレーション!?マシュも天草くんもゆるっゆるじゃん!?」

 

「気を引き締めなさいリッカ!油断すれば・・・死ぬわよ!ここは先輩の私の勘と経験を信じなさい・・・!」

 

「不安!!」

 

『あっ、実体化するみたいですね。さぁ頑張りましょう。皆さんの分もありますから御心配なさらず』

 

「騒動解決には愉快な輩だな!いいぞ、俺も見守るだけは見守ってやる!バフを盛り他力本願こそがキャスターの本懐だからな!」

 

と言うわけで、始まった回収作業。肉体労働がごとき本回収が今、始まる・・・!!

 

 




蘭『今度こそ我らの汚名、返上の時!いざ、マスター!』

「さっきの戦いぶり、蘭は明らかに調子が悪いわ・・・!蘭、あなたは休んでいなさい!」

『そんなぁ!?や、やる気は存分なのですが・・・!』

「リッカ!ここは私があんたを指揮するわ!サーヴァントとして契約するときの為の練習も兼ねて協力するわよ!」

「へっ!?何でそれ知って・・・あ、はいパイセン!アーマーターイム!」

呪本【【【【!】】】】

リッカ【行くぞーッ!!】

ぐっちゃん「相手をよく見なさい!パンチよ!!」

【はぇ!?お、おりゃー!】

スカッ

「蹴りなさい!」

【どりゃー!!】

スカッ

「刀よ!刀!!」

【せ、せりゃあ!!】

ヌーン

リッカ【あれぇ!?】

【【【!!】】】

【おぶふっ!!】

式部「リッカ様!今治癒を!」

ぐっちゃん「どうしちゃったのよリッカ!らしくないじゃない!」

リッカ【うぐぐぅ・・・こんな筈じゃあ・・・】

解説『リッカ、ラジコン指揮に全く適応できず!これじゃマスターとして不甲斐なさすぎると猛省中である!』

解説『ぐっちゃん、割と衝撃!リッカがこんな雑魚に!?自分の指揮のガバガバぷりは配慮の外である!』

アンデルセン「?・・・バカめ、染み込んだ技術を当てにさせないでどうする。しかもよりによって『最悪手』しか振るわせないとはある意味才能だな」

リッカ【くっそー!まだだぁ!!】

アンデルセン「・・・待てよ?ヤツが最悪の手ばかり打つならば・・・そうか。おい、紫式部」

紫式部「は、はい?」

「リッカの耳に細工を施せ。そうだな、聞いた事がアバウトになるものをな!」

「は、はい!──失礼!」

リッカ【パイセン指示!】

「そうね!『ドガンと行きなさい』!」

【!はいっ!!】

唸りをあげるパンクラチオン。形になった兵士を軽々と吹き飛ばす

「そのまま『ガーッと行って』『ガツンと決めるのよ!』フィニッシュは『ズバー』よ!!」

【了解!!】

アンデルセン、紫式部にて指示がアバウトになったリッカの動きは精彩を取り戻す。瞬く間に呪本を討ち果たし、戦闘不能にし・・・

【紫式部!回収!】

「承知です!」

すかさず紫式部が回収を施し・・・なんとか封印を果たし、戦闘は事なきを得たのだった・・・

ぐっちゃん「よくやったわリッカ。75点くらいあげる」

リッカ「やったぁ、久しぶりに100点以外を取れたぁ・・・ちかれた・・・」

アンデルセン「・・・ふむ。急にお前たちのパーティーが不安になった。仕方あるまい。俺も暫く付き合ってやろう」

ぐっちゃんという特大のやべーマスターを抱えたリッカらの先行きは、アンデルセンが皮肉抜きでフォローせねばと思うほどであった──

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