人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「おはよう、こんにちは、こんばんは。どの時間帯でしたっけ。御心配お掛けしました」


「よく解るインド神話も半端ですから、きっちりやります。エタりません。ご安心ください。ですが、その前に──」

「やらなきゃ、やっておかなきゃいけないことがあるんです」


?????

「──あぁ、いましたいました。煮ても焼いても食べられそうにない毒の塊、スペアリブにもならない毒入り肉。やっぱりいましたね。消えない焔に焼き尽くされるのもいい、とかドン引きなので。言わないで結構ですからね」

 

 

そこは、何処かの宇宙。愛に満ち、氾濫する筈だった愛の宇宙。だが今の其処には、無限に存在した『愛』の形は存在していない。ただ──何よりも輝く星が一つ。そして、幻のように煌めく星が一つだ。

 

そこに、ひたすらに燃え続け灰になることすら許されないものがあり、そこに少女・・・否、【本来ならば同類たるもの】が歩み寄る

 

「はい、消してあげます。キチンと見せてください。年増で負け犬、無様に喚き散らして燃え尽きた『純真』な女の顔を」

 

「あぁ、ああぁっ・・・!はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

焼き尽くされ、未だに消えずに残り続けた残骸・・・消え去ることすら赦されなかった【ソレ】を、彼女は拾い上げたのだ。そう──『愛するものと過ごす場所に、不純物は持ち込まないため』に

 

「ここは私の内面概念的宇宙。リッカさんが私の焔で焼き尽くしたんですもの。当然いますよね。現在進行形で焼き尽くされていますよね。ふふっ・・・負け獣には相応しい末路です♪」

 

「・・・消えることも赦さず焼き続けさせるとは。心配ですわ。そのような性悪で、あなたが心に決めた方に愛想を尽かされないか・・・」

 

「──リッカさんを嘗めないでくれます?こんな私を愛してくれると言った方が、ちょっとやそっとで誰かに失望する筈が無いでしょう」

 

「──ふふっ。お可愛いこと。この宇宙がこの様に暖かいのは貴女が愛されて満たされているとの暗喩でしょうか?」

 

「御想像にお任せします。──愛の女神として、愛を否定はしませんから」

 

「まぁまぁ・・・余程素敵な出逢いがあったので・・・っ、あぁあぁっ──!!」

 

瞬間、キアラの身体をカーマの焔が焼く。【リッカの泥】を燃料として燃やしたので、一時的にリッカの泥の分だけ火力を増せる焔は、快楽など感じさせぬ勢いでキアラを焼き尽くす

 

「あの人達の事を口にしないでください。愛が穢れます」

 

「っ・・・、ふぅ、ふぅ・・・、それで、此度は私に何用ですか?敗者は私、勝者は貴女。最早私に関わる理由など無いのでは?──或いは・・・」

 

ビーストⅢとして、取り込みに来たのかとキアラは問う。半身と半身。共に掛け合わせれば完全体となるが故の──

 

「ふふっ。馬鹿ですか?私達が一緒になる訳ないでしょう?私達の性質は決して相容れない。在り方から何まで何もかも。お腹が減っても、真っ先に自分の身体を食べる人なんていないでしょう?」

 

決して一つにはならない。Lは与え、Rは集める。ラプスは無限の氾濫。ラプチャーは巨大な愛欲。快楽から生まれたと言うだけで、その性質は、方向性は真逆なのだ

 

「仲良く握手する腕なんかじゃない。背中を合わせて別々の方向を見つめる敵同士。そんな相手を取り込んでどうするんですか?私、そんなゲテモノやカニバリズムに興味は無いんです」

 

「うふふ、それは残念。喰われたならば胎から突き破って差し上げましたのに。・・・では、この憐れな女に何用でしょう?」

 

最早勝敗は決した。ならば自分に何用かと問うキアラに、カーマ・・・人類悪の要素を討ち果たされた存在は告げる

 

「えぇ、『私の宇宙から出してあげます』。あちらのカルデアにでもなんでも、行けばいいと思いますよ」

 

「・・・はい?」

 

「どうせアレだけされても、改心や心変わりなんて無縁でしょう?あそこは・・・リッカさんのいる楽園は、負け犬や毒婦がいるような場所ではないので。負け犬は負け犬らしく、『あちらのカルデア』にでも行って、挽回がてら禁欲生活でもしていればいいんじゃないでしょうか」

 

ちょちょいと、概念的宇宙から弾き出す準備を整えるカーマ。ここはカーマの宇宙、内面のようなものだ。これから、心に決めた相手を愛すると言うのに意中の相手以外を心に住まわせるなど冗談じゃないとカーマは言う。だから──

 

「気持ちよければ恥も好きなんでしょう?私はリッカさんに愛された勝者、アナタは無様に負けた敗者。藤丸さん辺りにでも召喚されて、犬のようにコキ使われればいいと思います」

 

「・・・──禁欲、前戯のみの誓願を立て、清く正しい行いを積めと?」

 

カーマはこの残骸を拾い上げ、自らの宇宙より弾き出す。楽園に向かう自分とは異なる場所など、月を除けば一つしかない

 

「私だけ楽園でいい思いをするのは申し訳無いので、アナタはカルデアで正しく頑張ってくださいね?誘惑しても構いませんよ?マシュさん大好きな藤丸さんを誘惑できれば、の話ですが」

 

そう。どうせ燃やすなら、あちらにプレゼントしてあげようという目論見である。こんな存在でも使い様はある。そして何より、『いくら気を引こうと、見向きもされないのは最高に面白い』という、彼女が愛を集める女に課した罰でもあったのである

 

「縁は結ばれました。どうせ気持ちよければ何でもいいなら、放置禁欲プレイで自慰をひたすら行っていてくださいよ。それで、私達の繋がりは本当にお仕舞いです」

 

「──気持ちよければ何でもいい。・・・えぇ、どこかのゼパなんとかさんも仰っておりました。・・・あのように下劣な身に落ちるもまた、苦行にしても快楽に繋がるならば・・・」

 

「──・・・」

 

「えぇ、それに。『少年か少女のどちらかを招き入れるのも、愉しそうでございましょう』?」

 

そう。楽しみはいくらでもある。ここで、痛く苦しいだけの焔に焼かれ続けるよりは。それならば。青臭くじれったい恋愛を間近で眺めるのもまた一興であると定義し、頷くキアラ

 

「やってみればいいじゃないですか」

 

それに対する彼女の反応は、とても淡白で。そして・・・

 

「──その度に負けると思いますから」

 

彼女は知っている。本当の愛を知っている。そして、夢見る心も、確かに生まれた事を知っている。

 

リッカと、彼の人生、触れあい。それら全てに何も手をつけず。ずっとずっと続いていてほしいと感じたあの気持ち。ただ求め、手に入れようとする気持ちの愛とはまるで違うもの・・・──

 

きっと。その気持ちに。『ビーストⅢ(わたしたち)』は敗れたのだから

 

「えぇ。かのマスターは多くの縁、多くの絆によって奮い立つ貴人。──うふふ、それならそれで私も奮い立つと言うものです。そのような貴人を堕としてこその快楽天。どちらが先に音を上げるか競うとしましょう。その為ならば、禁欲もまた悦楽として──」

 

「御自由に。あなたは誘惑し、私は全霊であの人を愛する。──互いに、新しく見つけた目的の為に頑張りましょう?」

 

愛を知った、受け取った女神。新たなる対象と機会を見つけた菩薩は笑い合う。互いに向ける牙が如くに

 

「──それでは、さようなら。決して相容れず、生まれ変わった、誰かに尽くし・・・無限の愛を与えるお方」

 

「──えぇ、さようなら。決して相容れない、全ての愛を奪う女」

 

お互いの愛は尽きず、終わらない。世界が終わるその日まで。己が理に従い、ただひたすらに誰かを、己を愛し続け──

 

その果てに掴むのだろう。己だけの愛を、それ以上の何かを。今はただ、その果てへの道への一歩を互いに踏み出すのみ──




楽園

カーマ「・・・むむ。ここは・・・楽園ですね。リッカさんがいるという・・・無事に来れました。良かったです」

(・・・リッカさんのお部屋はどこでしょう。まずは私が、あの悪夢の目覚めを告げてあげなくちゃですね。もう、私が愛してあげなくちゃまだまだ自分に自信が持てない可愛い人なんですから・・・)

「──あいたっ!?もう、どこ見て歩いてるんですか・・・、──!?」

キアラ「まぁ・・・!すみません、お怪我はありませんでしたか・・・!?申し訳ありません、私の不徳の致すところです。痛むところは・・・?」

カーマ「な──なんでいるんですか!?あっちに行けって言ったじゃないですかー!」

キアラ「ええっ・・・!?」

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