人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『ごめんなさい、ちょっとだけ向こうに集中します。日曜日と言うことで見逃してもらえたら』


『また明日、お逢いしましょう』


ラヴァー・バーサス・シュート

「・・・・・・」

 

【──!!】

 

無言、しかし凄烈極まりないほどの銃と刀の攻防が押し付けられ叩き付けられる激闘。無感情に銃弾を放ち続ける名を喪った男。弾き飛ばし叩き落とし続けるクリシュナの名を名乗るリッカ。一度の被弾も直撃も許さない駆け引き、超常クラスの戦いが非道なる施設の地にて繰り広げられていた

 

無感情にして無銘の、効率良く生命を奪う弾丸。それは役割、歯車、執行者としての冷たき銃撃。魔力の込められた殺戮の弾丸。マズルフラッシュが照らすは、虚ろにくすむ男の私情無き慟哭である。それらが、獣の手により利用し向けられている

 

【・・・!!】

 

その無感情の弾丸を、片端から叩き斬り無力化するリッカ。扇風機のように刀を回し、弾丸を床に並べ無力化するデビルハンター刀術にて対応していく。──が、決してその刀を反撃には使わない。切り捨てるのは死骸ではない、その先にいる嘲笑いし獣ただ一人なのだから

 

視界外から、正面から、死角から。効果をもたらす全ての可能性から放たれる全てを斬り飛ばし、叩き落とし、そして拮抗する。おおよそ人間の認識で銃撃を総て対応するのは些か困難であるので──

 

『予測と反射、そして対応はこっちでやる。リッカ、私達を信じて』

 

『絶対に怪我はさせませんよ!ムーンセルをフル活用した先輩と私の演算は無敵なのです!いけいけー!リッカさーん!』

 

行動アシストの予測演算により、サーヴァントの予測と行動を上回り、──雷位を抜きにした高速戦闘を行えている。更に童子切より放たれる魔力の電流、そして魂に宿りし【丑御前】がその武威を遺憾無く発揮している。三位、ならぬ四位一体の姿勢にて総てを救う戦いを行うのだ。理想を叶え、誰も喪わない理想を掴む戦いを執り行っている

 

【こうして防戦一方と言うのはもどかしいかもしれませんが、よく御覧なさい。かの空虚な方は、無機質ゆえに行う手管が極めて狭められていくのです】

 

丑御前の指摘を以てロストマンに目を向けてみれば、魔力の効率よい生成と伝導を突き詰めるために・・・そして殺傷の威力を高めるために自らにアンプルを投与している。そうすることで必ず殺傷を行う為に最適解の行動を取る。いや、取らねばならないのだ

 

【己の意志に関わらず破綻と強化を繰り返すのみ・・・救うというには些か脆きに過ぎますが。我等親子の前には充分すぎる猶予でございましょう】

 

【──】

 

雷位。如何なる場所に隠された因果や宿業を両断せし神雷の太刀。それを振るう事を決意するならば勝負は一瞬で片が付く。なればこそ勝負をかけるは一瞬であり、生かさず殺さずを保っていられるのだが・・・

 

【・・・・・・・・・】

 

【ッ──】

 

勢いと鋭さ、重みを増していく銃弾。アンプルによって魔術回路が増設され、込められていく魔力が段階飛ばしにて上昇したのだ。腕に伝わる衝撃がより深さと重さを増したことが実感できる。鎧の防護にて貫通はしないだろうが、万が一にも意識を手放してしまっては総てが終わってしまうだろう。最早振るう腕が常人には見えないほどに高速化しているリッカの刀が、その弾丸を弾き飛ばしていく

 

同時に──いや、ともすればリッカ以上に甚大な被害を受けているのはロストマンである。後先を考えずのアンプルの使用は自らの身体の急速な腐敗と崩壊を代償として促進していく。血管が切れ、骨が砕け、臓器が破裂していくような衝撃と反動すらも意に介さず・・・否、介する意すらない状態にて排除を行わんとしているのだ

 

超速の連射を受け、それを弾いていく。無力化していき時間を稼ぐ。そしてそれを打開するためにアンプルを使用していく。堂々巡りの拮抗ではあるが──其処に光明は、確かに存在していた

 

『魔力上昇、アンプル所持本数計算残り六本!──後一本の使用で宝具解放に魔力生成が追い付きます!つまり・・・!』

 

『宝具を撃ってくる。──ここが正念場。目を離すわけにはいかない瀬戸際』

 

そう、其処こそがリッカらの狙い目だ。アンプルを所持した状態で、今ある魔力の総てを注ぎ込みロストマンが宝具を放つ。そうすることで対象を排除し自分もまた活動を終え破棄される。非常用のアンプル五本を残した状態にて活動を停止させるには、最大の切り札を切らせるタイミングの他に無いのだ

 

【──!】

 

ロストマンがアンプルを手に取り、投与したタイミングに合わせるように片手で振るっていた刀、村正を構え向かい合うリッカ。──此処こそが勝負にして正念場。彼の行く末を決める刹那の交錯が行われる

 

【──⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛】

 

抑揚の無い詠唱を唱え、高まり凝縮した魔力・・・そして自らの魂を切り売りした弾丸を放たんと構えるロストマン。その一撃こそ宝具の具現。自らの心象風景を他者に弾丸として潜り込ませ、内側から破裂させ葬り去る必殺の一撃──

 

【──!!】

 

童子斬を腰に差し、全身に雷を宿らせ奥義を放つ為の肉体の活性化を行う。あらゆるものを置き去りに、あらゆるものを駆け抜け追い抜く剣の至高。殺すためではなく救うための剣を構え、その最大の一撃を迎え討たんと決意するリッカ

 

『霊基解析、転送位置個数設定!後はリッカさんが彼に接触すれば一気に交換は行えます!』

 

『・・・そろそろ教えてほしい。彼にすり替えて投与するものって?』

 

BBの指示に従いながら言われるままに行動するはくのん。何か病を患っているのだと言われて気持ちいいものではないので詳細を教えてほしいのだが・・・──

 

『自覚無いんですか先輩!?アレですよアレ、使うべきときに使うものを、勿体無いと思って上手く使えないケチんぼさんの患う──』

 

『それってもしや、私が溜め込みに溜め込んだ──むっ』

 

いざぶつかり合うその瞬間、初動が速いリッカが勝つと疑わずに準備をしていた二人を青ざめさせる事態が其処に起こった

 

【──!?】

 

突如、【床より伸びた黒き魔力の縄】。それらがリッカを刀を構えた姿勢のままにきつく戒め、行動を阻害してきたのだ。今こそ切り裂こうとした瞬間の妨害に、対応叶わぬリッカは縛り付けられてしまう

 

『ええっ!?これ、コードキャスト!?大丈夫ですかリッカさん!?』

 

【ぐぬっ・・・!動けない・・・!】

 

『ゴウンコクジョウとかいう立川流の縛り技・・・キアラ、妨害してきたか』

 

もしかしなくてもキアラの気紛れの支援だろう。邪魔をすると言うのは或いはリッカを少なくとも危険視しているのかどうか。その女の思考回路を考慮するのは迷いのない迷宮に迷うものと同義なので排除するとして、今はその一瞬にて起きた状況の悪化こそ懸念される事態である

 

【小賢しい・・・!この様な小癪な縄で我が娘を縛るなど・・・!】

 

もがくリッカらに向けられる銃口。縫い付けられたリッカが抵抗なく直撃することとなる形を強いられる事となる。強度自体は力付くでレジストは叶うものであるが、その一瞬にて弾丸は身を貫くだろう。そうなれば、最早敗北は必死である

 

【──⬛⬛⬛⬛⬛】

 

引き絞られる引き金。身動きとれぬリッカ。懸命にレジストせんとBBとはくのんが足掻き、それは正しく形を成すが・・・その一瞬にて宝具が叩き込まれる。まさに進退窮まりし状況に持ち込まれんとした、その時──

 

「──何度も何度も水を差させるなんて、無粋な人もいたものですね。本当に」

 

【カーマ・・・!?】

 

カーマは静かに呟き・・・──疎ましく、二度と使うまいと決意していたその宝具、奥の手を解放する事を決意し、静かに構える

 

「──特別です。あなたが邪魔をするなら、私は──」

 

・・・何もさせてもらえず、愛することが叶わなかった者。その窮地を救うため──

 

「──『恋もてかれるは、愛なきなり(カーマ・サンモーハナ)』」

 

疎み、嫌い、そして倦んていたその『矢』を、躊躇うことなく打開の為に放つ──




【!カーマ・・・!】

放たれた矢は『黒き縄』を総て撃ち放ち戒めを断ち切る。放たれし情欲を引き起こすものを、無償にて──リッカ本人を決して射抜くことなく、そして──

【・・・──ッ、ッ・・・】

ロストマン・・・喪った者を貫き、喪われた『情欲』を無理矢理叩き起こし、致命的なエラー、動作不良を起こした彼に、付け入る隙を・・・突破口を開く

「ほら、隙だらけですよ。決めちゃいましょう。クリシュナ」

【──ん!】

戒めより解き放たれしリッカが吠える。雷が咆哮となり、金色の眼光が軌跡を引き──村正が、喰らうべき相手を見定め、総てを置き去りにする速度。因果を駆け抜ける一閃──

【──龍哮一閃・雲曜神雷(ブラフマーストラ)

『今です先輩!アンプルを使わなかった『アレ』に!』

『──あぁ、アレかぁ。・・・病気ってそういう事』

反応、身動ぎすら赦されぬ一閃。人間は愚かサーヴァントすらも及ばぬ一撃にて、【ロストマンを操りし霊基の澱み】を総て切り裂き、吹き飛ばし──

【──、・・・──】

倒れ伏すロストマン。──行動と生命活動を完全に停止し倒れ伏し、僅かな身動ぎすらも行わなくなる。──『誰の目から見ても絶命している』。完全に、討ち果たしたのだ

【──ふぅうぅ・・・】

残心し、刀を振るい納刀せんとしたその時──

『うふふ、想像以上ですわ。ですが──私の縄張りを荒らすは其処まで』

【!】

『此処でお二方の活躍は終わりです。どうぞ──お引き取りくださいませ?』

──セラフ権限が発動し、カーマ・・・そして、リッカの身柄を、強制的に退去し、弾き出す──

『リッカさん──!』

『──やはり、そう来たか。キアラ──』






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